特殊フェミニストにとって萌え絵とは
聞き取り・調査・まとめ:ケイヒロ
コーディネート:ハラオカヒサ
この記事には露骨な単語や表現、ヌード写真や絵画が含まれます。ご注意ください。
はじめに
データは現実を的確に物語ります。
利益団体(圧力団体)化したツイフェミ集団の影響力は限定的ですが、SNS上の炎上劇が劇場化の一途をたどった結果、影響が2年間で10ポイント程度上昇しました。
これは[ある地方で暴力団が手榴弾や拳銃をつかって一般市民を巻き込む騒乱を起こしても他の都道府県に被害は及ばないし、騒乱が発生した地方でも死傷するのはごくわずかな人たちでしかない]というのと似ています。
いくら局地的であっても被害にあった人はたまったものではありません。
前々回、前回と特殊きわまりないツイフェミとは何か、これまでに何をしてきてどのような影響が出たか、一般論としてどのような対応策を取るべきか説明してきました。
今回は特殊化したフェミニストたちはなぜ萌え絵を標的にするのか、あの人たちにとって萌え絵とは何なのか、付け入る隙をどこに見出しているのかを明らかにしていこうと思います。
みなさんは「炎上させられるなら、あいつら何だっていいんだよ」と言うかもしれません。たしかにそんな感じがします。でも「なぜ萌え絵なのか」の答えにはなっていません。また萌えやされる絵とスルーされる絵があるのはなぜでしょうか。
「たぶんそうではないのか」という萌え絵制作者と使用者の意識が正しいか、それとも勘違いなのか元ツイフェミの証言と調査2件から考えてみませんか。
表現規制に利用されないように
創作はどこまでも自由であるべきだと筆者は考えています。法の縛りがあるとすれば発表する段階であって、どのようなものをどのように制作しようと他人にとやかく言われる筋合いはないという立場です。
しかし裏を返せば、発表する機会や媒体次第では法の縛りを受けざるを得ないだけでなく、慣習や常識といった他人基準の評価に晒されるのを意味します。ビジネスになれば立場が異なる人が複数関わることになり、ビジネスゆえの金銭的な問題や社会的評価の問題も発生します。
圧力団体がかかわった炎上劇は、こうしたビジネスの複雑さを人質に取るように抗議活動を行なっています。炎上してから避難したり鎮火させたりするより、事前に対策をしておくべきです。前述の他人基準の評価とは何か真相を知らなければ対策は不可能です。
つまり当記事ではツイフェミが悪いというだけの話をするつもりはありません。また表現は自由であるべきなのでガイドラインを提案するつもりもありません。
手塚治虫曰く「(バストは)どんなに大きく描いてもよい」は創作者のための創作論ですが、では受け手側はどうなのかとなったとき「どんなに大きくてもよい」とは言えない結果を示す調査結果が出ました。描き手と受け手の思惑の不一致です。
これはほんの一例にすぎませんが、思惑の不一致が「隙」になる可能性を調査結果が示している以上、事前に備えておくべきことがあるはずです。
例に挙げた「どんなに大きくてもよい」わけではないという調査結果は扱いに細心の注意を払う必要があります。調査結果を尊重すると同時に、常にこうしたことが言えるだろうかと考えなくてはなりません。表現規制派に意図をねじ曲げられて利用されたくはありません。
何を描いてもいい。発表しても、使ってもいい。それがとうぜんだから慎重に(理屈っぽく遠回りしながら)書かざるを得ない点をご理解ください。
第一部聞き取り編
元ツイフェミが答えた批判の裏側
カルト集団から離れたいと願う人の相談を受けているとき、ふとしたきっかけでツイフェミ女性の家族から家庭崩壊の手前まできているとメールが届き、それからの1ヶ月でさらに2件のツイフェミ関連の報告と相談が舞い込みました。
今回はうち1件のツイフェミをやめた女性からの聞き取りを紹介します。彼女は萌え絵批判活動などにも加わっていたそうですが、深入り後すぐに集団から離れました。聞き取りは複数回にわたって行われ、このやりとりを再構成して掲載します。
──なぜツイフェミは萌え絵を批判するのですか。
「女を苦しめるから、ですか。わたしは別の理由でフェミニズムを勉強したかっただけなのですが、そのなかで萌え絵のことを知りました。元々は漫画を嫌いではなかったです」
──Twitterで悪いものだと教わったのですか。
「教わったというか活動のなかで。男が見たがっている変態なものが女性を苦しめているというふうに考えるようになりました」
──イラストたとえば萌え絵が悪いのですか、それとも男が悪いのですか。
「男が悪いから萌え絵も悪い、です」
──萌え絵が性的に搾取されているのでしょうか。それでも萌え絵が悪者なのでしょうか。
「男は女を利用して気持ちよくなるだけ。そういう男を気持ちよくしている女も悪いし、それが萌え絵ということになっていると思います」
──スカートの皺とかバストの陰影、動画だとバストが動いたと言われて批判されています。あなたも批判していたはずです。次々と批判のポイントが出てきますが、どこからあのような発想が生まれるのですか。
「自分が恥ずかしいところ、なんだと思います。そういう恥ずかしい部分が男を気持ちよくしているんだという理屈にして、自分の恥ずかしさやエッチ感覚を裏返してツイートしていました。それで話が噛み合っていたので、こういう理解でそんなに間違ってはいないと思います」
──男性のツイフェミもいます。彼らはどうやって批判ポイントを見つけるのでしょうか。
「男ではないからわかりませんが、自分がいやらしいと思うことしか指摘できないと思います。いやらしくない普通のことと思っているのに、いやらしいと気付くはずがないので。そうやって女を見ているのかキモっとなってツイフェミがおかしなものに見えてきたんです」
──そう考えると、みんなエッチすぎますね。
「エッチなくらいならいいですが、そういう目つきがちょっと」
──この表現はいい、これは悪いと言っているのも、自分は悪いことをしてしまうくらい興奮してしまうというのの裏返しなのでしょうか。
「言い出した人はそうだと思います。誰かが言っているから自分も言ってみたって人はいます。そういうふうに言えば自分も何かやったつもりになる人……」
──フェミニズムにもとづいた統一基準はないのですね。自分の恥ずかしい部分や、自分がいやらしいと感じたり、興奮してしまう点が萌え絵で批判されているということでよいでしょうか。
「そういうことになりますね」
──炎上させられたキャラクターの例ですが、これも自分なら恥ずかしいと感じるところが絵のなかにあったり、それで自分が興奮してしまうから批判されたということになります。
「あと理解できないものが攻撃されたのかもしれません。左から二番目は、どうしてこんなかっこうをしているのかわかりません。キズナアイのときはVtuberというのがよくわからなかったのだと思います」
(キズナアイが2016年に活動開始するときVtuberと名乗ったとされています。2017年末から2018年初頭にかけてキズナアイやバーチャルYouTuberがブレーク。キズナアイ炎上時はブレーク後の認知度が高まっていた時期ですが、それだけに未知のものとして不信感や反発があったと言えそうです)
──戸定梨香くらいになると、Vtuberがわからないという時代ではないと思いますが。
「フェミニストの政治家の人たちはわからないと思いますよ。わからない人たちを煽るためかもしれないし」
──戸定梨香は肌の露出、お腹が見える衣装とか言われましたね。
「Vtuberのはお約束っていうか、アイドルの衣装あるあるというか。けっこう常識の範囲で、ファションでも変な飾りとか紐とか、独特の色とかが目立つ萌え絵とは違うでしょう」
──変な飾り? 紐?
「リボンとかアクセとかが変ていうか独特だったりしませんか? 紐がぴらぴらしていたり。うまく言えないですが、ファンションが独特でこういうところがオタクっぽいと言われていませんか」
(「わからないものが批判される」について。左の例ではシチュエーションと表情とファッション、右の例では乳首や股間を隠すための衣装としてのリボンの意味不明さになるだろうと彼女は指摘しています。これらはいわゆる「お約束」であったり、意味が完全にわからないところに趣向があります。彼女はこうした前提を理解したうえで、人によって「わからなさ」の幅の違いがとても大きいと言っています)
「メイド服で、うさぎっぽいツインテール(高い位置で縛るツインテール)とかオタクっぽいものだと思います。だけど意味がわからない人にはぜんぜんわからなくて、それでおっぱいの上側が出ていたりするとメイドじゃなくて売春婦だろうと。どう見ても童顔だし。こういうのが組み合わせになったとき、理解の差が激しすぎることに」
──お約束がわからない。わかる人とは違う気持ちになる。気持ちがエッチさに向かう。こんな感じなんですね。
「セクシーくらいのものが、もっとスケベなものになっちゃうとか。戸定梨香だと元気っぽいのがエッチと言われているかも。ほんとに最初からスケベなものもあると思いますが」
──では逆によい表現はどのようなものですか。
「言うだけなら、こういうのはダメといくつでも出てきます。でも、否定するための理屈なのでよい表現と言われてもフェミニストはうまく答えられないはずですよ。アメコミを出してくる人はいても、あれも誰かが言い出したからだし」
──バストが小さい、揺れないとかではないのでしょうか。
「バストが中途半端に小さいとそれはそれで妖しいとか危ないとかになりませんか。私が、胸が小さめの人にエッチさを感じるというだけかもしれませんが」
──これは京都市交通局のキャラクターです。以前ツイフェミが批判しましたが、いまはもう黙認状態です。うさぎっぽいツインテールや、あなたのエッチ感覚に響きそうな小さめのバストで、スカートも短いですね。
「私の感覚は個人のものなので……。スパッツを履いてるとか、ボーイッシュからガーリーまでいるとか、もっと細かいところもあると思いますが計算されてませんか。変な飾りとかもなくて」
──次の画像を見てください。Cは2015年に批判されました。この頃から乳袋というバストの表現が批判されていますが、Bも同じ表現のように見えます。Bもツイフェミに見つかると批判されるのでしょうか。
「Bはいまの時代の絵ですか」
──違います。
「私が見つけてきても、これは別にいいかなと言ったと思います。理由は昔の絵だから……。画家の作品ぽくて……。たぶん誰もいっしょになって批判しないだろうしTwitterで批判しなかったと思います」
──AとDはヌード写真ですがどう思いますか。
「Aは古そうというだけです。Dはこれだけではどういう人なのかわからない気がします。どこかで使う人がいたら、使ったことをいくらでも批判できそうです」
──Dは自然派の出産とか育児をしている人のライフスタイルです。
「だったらぜんぜんアリです」
──というのは嘘です。
「(笑)だとしたら微妙すぎる写真ですね。ただそれだけかな」
──CとFはどちらも今どきのキャラクターです。
「Fのほうがエッチかな」
──Fは講談社の雑誌で連載されてアニメ化されました。
「読んだことはないですが知ってます」
──このキャラは長瀞さんと言いますが、ツイフェミはたぶん批判していませんね。
「献血のときのように使われたら騒がれる気がします。でもあれでとくに何も変わらなかったから、口には出して言わなくてもフェミニストに負けの影響が残っていると思います。こういう大手同士の組み合わせはおもしろくないというか」
──ではEは。
「ゴーギャンですよね。海外でゴーギャンバッシングがあったらやると思いますが、こういうアートは手が出しにくいでしょう。おっぱいが出ているとか、そんなことでゴーギャンを叩けないですよ。権威だから、こういう風に描けとは言うかも」
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第二部調査編
大学生が答えた最適な表現(2つの調査から)
二つの調査結果を見て行きましょう。
1.教科書漫画の最適度
■ まず論文「大学教科書マンガにおける女性登場人物に対する好感度に関する調査」(周村諭里、柳沢昌義)からです。
教科書に図解やイラスト表現を超えてキャラクター性が強い漫画的な人物画が使われるのが珍しいことではなくなっています。この論文では教科書における女性登場人物のマンガ表現の好感度について大学生に調査を行っています。
被験者は大学生40名(男性20名/女性20名)。架空の文庫本の表紙:写真表紙とイラスト表紙の印象と好み、マンガ的表現の女性イラストの好悪を調査。と、いった内容です。
文字表紙・写真表紙・イラスト表紙
各項目に当てはまる度合いを 1~5 で評価。
・かわいい
・かっこいい
・本屋さんで手に取ってみたくなる
・この本を読んでみたくなる
・この本で勉強してみたくなる
・はずかしい
・表紙から内容に興味を覚える
・とっつき難い
・馬鹿にされている気になる
女性像24パターンの好悪
一人の女性を以下の条件で24 パターンに変化させ,それらを同時に提示した時に,好きな姿と嫌いな姿を直感で選んでもらった.
1.立ち姿,座り姿
2.髪の毛の長さ(ロング,ショート)
3.洋服(ひざ丈スカート,ショートパンツ,ワンピース)
4.胸の大きさ(大,普通,小)
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■ 考察
1.表紙について
サンプルとして使われたイラストの画風に影響されているかもしれません。
そのうえで、イラストだからといって若者の評価があがるとは限らないという論文の結論は違和感がないし、画風によって評価が変わる可能性もあると筆者は考えます。
2.女性像について
この調査は「教科書」で使用される場合についてです。[使用する媒体や場所や意図]の問題です。
と同時に、
・胸の大きい女性イラストはエロ的な要素が強くなり嫌悪感に
・「萌え」度の高いイラストを用いることに大学生は恥ずかしさと嫌悪感を抱く
といった点は、教科書以外でも嫌悪感がゼロになるとは限らないし、ゼロになるわけではないと考えたほうがよいように感じます。
表紙と女性像についての質問で得られた答えのうち、イラストを使うのは馬鹿にされた気がする、胸が大きくても萌えが強調されても嫌悪感を覚えるという部分はツイフェミの主張とオーバーラップしています。
現在のツイフェミの戦略から方向転換して、一般の人々の意識に共感を呼び起こす抗議方法がとられた場合、バストや萌えが強調されたイラストが今以上に批判の矢面に立たされるかもしれないことを筆者は危惧します。
なお「はずかしい」という感想は次に紹介する独自調査でも重要な意味をもつことになります。
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2.独自調査・28人の大学生
■ 次は独自に実施した調査の結果を見て行きます。
筆者はコロナ禍の心理を知るため都内の大学に通う学生を追跡調査してきました。今回は人員に多少の違いがありますが、大学生28名(男性18名/女性10名)にキャラクターについての質問をしました。
1.ツイフェミが炎上させたキャラクターを見せ、キャラクターをどのように感じるか問う。
2.別の複数の画像から適切・不適切を選択してもらい理由を問う。
という調査を実施しました。
(なおサンプル数が少ない点を考慮する必要があります)
炎上例/認知度・好感・反感
キャラクターの名前や背景を説明しないまま質問しました。
・キャラクターを知っていますか。
(見たことがある、名前や設定を知っている等どのような「知っている」でもよいとする)
・それぞれのキャラクターに好きか嫌いか答えてください。
(知らないキャラクターでも可)
2015年あたりの炎上で話題になったキャラクターの認知度は低いです。戸定梨香は登場して間もないためか認知度が高くありません。
認知度と高感度はほぼ相似形を描いています。そのなかで異色なのは認知度がないにもかかわらず碧志摩メグの高感度が高かったことです。
反感が良田胡蝶に集中しています。どのようなキャラクターか知らないままビジュアルが評価されたと言えます。
炎上例/デフォルメ
キャラクターが実際の人間からどの程度かけ離れた造形を施されていると感じるか質問しました。
・キャラクターは魅力や個性を出すため誇張されたり演出されている場合があります。誇張の程度を最小、2、3、4、最大としたときどれがあてはまると思いますか。
誇張や演出は体型やポーズから感じ取られているのがわかります。これは制作者の意図を汲み取っているとも言えるでしょう。
なお碧志摩メグは誇張や演出が最小だと見られています。
高海千歌の印象は、スカートが短いといっても他と同程度であり、髪の色や瞳の色に誇張や演出があると見られているのかもしれません。ただし度合いは中程度であり、キャラクターとはこういうものだという理解や納得があるように思われます。
炎上例/性的表現
キャラクターを見て「性的」と感じるか質問しました。
・性的と思えるキャラクターはありますか。「性的」の意味はみなさんの判断にまかせます。
圧倒的に良田胡蝶、続いて宇崎花が性的とされました。バストの表現が性的とみなされていると言ってよいと思います。
ここで注意したいのは、これだけでは「性的」=必ずしもネガティブな感想と断定できない点です。
炎上例/自由記述から
この調査で特筆すべきは、良田胡蝶(のうりん)について言及されるケースが多かったことです。
言及を整理すると「おもしろい」「おかしい(違和感や奇妙さ)」「気持ち悪い」の3種に分類できます。
「おかしい(違和感や奇異)」「気持ち悪い」は男女問わずほぼ同比率で出現しています。この2つの感想は、他のキャラクターにはないものでした。良田胡蝶の認知度は0だったので、コンテンツにある物語性がわからないまま造形(やポーズなど)を見たままの感想です。
好感度が高いわりに碧志摩メグは特に語られていません。
■ 独自調査 炎上例から仮の考察
各キャラクターの認知度は、2015年と2016年に騒動となった碧志摩メグ、良田胡蝶以外比較的よく知られていますが、戸定梨香は2020年に活動開始のためまだ知れ渡っているとは言い難い状態です。
好感度では碧志摩メグとキズナアイが上位につけ、続いて高海千歌と戸定梨香と宇崎花がつけています。サンプリングした人数が28人と少ないことから、高海千歌と戸定梨香と宇崎花の順位には偏りが出ている可能性が高いため気にしなくてよいでしょう。大学生はこうしたイラストを好意的に受け入れているのがわかるという程度です。
いっぽう反感が良田胡蝶、宇崎花、高海千歌に存在しています。
このようなキャラクターへの好悪は単純には比較できません。
宇崎花の場合、漫画「宇崎ちゃんと遊びたい!」を知っている人と知らない人がいて、知っている人はコンテンツの内容に影響された評価を下しているでしょう。
高海千歌の場合、ゲームがヒットして社会現象になったことや絵柄がひとめでラブライブのキャラクターとわかる個性的なものであることなど、やはりコンテンツとの結びつきによって評価される傾向があります。自由記述に「 (過激なラブライブファンである)ラブライバーのイメージがつきまとう」とネガティブな意見がありました。
反感が存在する良田胡蝶、宇崎花、高海千歌について考えます。
良田胡蝶と宇崎花を性的であると感じる人が多く、高海千歌の性的度はキズナアイと同数でした。
良田胡蝶と宇崎花はデフォルメ度が高いとされ、誇張されていると思われたのはバストの表現と考えるなら、これが性的とされた理由としてよいでしょう。良田胡蝶と宇崎花への反感はバスト表現であり、良田胡蝶がとくに好ましく思われていません。
いっぽう高海千歌はやはりコンテンツとの関係で好悪の評価がつけられていると見てよいと思います。
碧志摩メグは2015年に批判されたとき“乳首までうっすら認識できる巨乳、性器方向へはだけた裾、どんなやらしいことも受け入れそうな恥ずかしそうな表情”とまで言われましたが、今回の調査では性的であると感じた人はほとんどいません。
碧志摩メグの海女衣装には“乳袋”と言われるデフォルメ表現があり、これは良田胡蝶と宇崎花にも共通しています。またツイフェミが常に批判するポイントです。
ツイフェミの感覚と一般的な大学生の感覚を同じものではありませんでした。しかし良田胡蝶は漫画的誇張が過ぎると見られていました。現実にあり得る宇崎花程度のバストサイズであっても(そこに意図を感じるゆえに)違和感が生じていました。
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適切・不適切と理由
次の設問です。
画像A=上半身裸の海女の古い写真、B=洋画家が描いた海女、C=碧志摩メグ。
画像D=褐色の肌をしたトロピカルな女性ヌード、E=ゴーギャンが描いた絵画、F=漫画「イジらないで、長瀞さん」の長瀞さん。
これらを説明しないままA・B・C/D・E・Fそれぞれの組み合わせを見てもらい質問した。
●A、B、Cの画像が海女がいる観光地のガイドマップの表紙だったとします。
●D、E、Fの画像がビーチリゾートのパンフレットの表紙だったとします。
・かわいい
・かっこいい
・手に取ってみたくなる
・このガイドマップを読んでみたくなる
・このガイドマップで訪ねてみたくなる
・はずかしい
・内容に興味を覚える
・とっつき難い
・馬鹿にされている気になる
適切・不適切と理由/画像の印象
第1選択
第1〜3選択
第1番目にもっとも強く感じる項目が選択され、第2、第3番目で感想の幅が広がります。これは見た瞬間の第一印象の反応と、総合的な感想と反応と言えるはずです。
レーダーチャートの4つの領域は次のように解釈できます。
右半分に傾向が寄っているものは好まれているし行動を呼び起こしていると言え、左半分に傾向が寄っているものは否定的か複雑な感想に留まる可能性が高いと言えるでしょう。
興味深いのはCの碧志摩メグで、第一印象にあったはずかしい感じが、好感度や積極性に変わっているようです。碧志摩メグに対するはずかしさは、ネガティブなものだけでなくむしろ興味や関心につながる感情ではないかと思われます。
他の写真や絵は第1番目に選択された傾向が第2、第3番目を加えてもほぼ変わりがありません。
適切・不適切と理由/目的へのふさわしさ
●A・B・Cの画像のうち海女がいる観光地のガイドマップの表紙にふさわしいのはどれですか。ふさわしい理由も教えてください。
●D・E・Fの画像がビーチリゾートのパンフレットの表紙にふさわしいのはどれですか。ふさわしい理由も教えてください。
●A・B・Cについてふさわしい(または適切なものはないとする)理由。
━━「自分向きな感じがする(Cの肯定)」「現代風のものはCしかない(Cの消極的肯定)」「かわいいと行きたいは違う(全否定)」「どんな場所か具体的にわからない(Cの否定)」「レトロかありふれ過ぎたものか両極端で選べない(全否定)」
●D・E・Fについてふさわしい(または適切なものはないとする)理由。
━━「高級感がありリゾートだとひと目でわかる(Eの肯定)」「まともなものはEしかない(Eの消極的肯定)」「ヌードになりたい人はいないし、漫画を見たいわけでもない(DとFの否定)」「人間のエロもイラストのエロも気持ち悪い(DとFの否定)」
ここでもCの碧志摩メグは特異な反応を示しました。
碧志摩メグは好感度が高いうえに行動を呼び起こすキャラクターでした。「自分向き」のガイドマップと感じた人がいます。
いっぽうで「かわいいと行きたいは違う」「どんな場所か具体的にわからない」という実用的ではないという意見もあります。
このため接戦ですが適切なものはないという意見が多数派になりました。
D・E・Fからの選択では「高級感がありリゾートだとひと目でわかる」という納得感からEが選ばれています。
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■ 独自調査適切・不適切と理由の仮の考察
大学生たちは「高感度/好き」と目的ごとの適切さは別であると意識していました。
Cの碧志摩メグは高評価です。
でも碧志摩メグは「ありふれた」と表現されていました。さまざまな面で評価が高いので碧志摩メグへの「ありふれた」はネカティブな意味よりも、こうしたイラストが奇抜なのではなくあたりまえになっていることを表していると言ってよいでしょう。
さまざまな「かわいい」があることもわかりました。Cの碧志摩メグだけでなくBの洋画もどちらもかわいいと評価されています。両者のかわいいの質の違いは何でしょうか。
それは「はずかしさ」です。
「かわいい」けれど「はずかしい」という評価は「大学教科書マンガ……調査」にも表れていました。萌えキャラに「はずかしさ」を感じるのは“萌え絵”とは何か考えるとき重要なポイントになるでしょう。
「はずかしカワイイ」が萌え絵の正体ではないかとすら思われます。
さらに踏み込んで考えたとき、「はずかしい」の質や量によって期待される使い途つまり目的(適切・不適切感)が決まるのかもしれません。
エロもまたはずかしさにつながります。
「人間のエロもイラストのエロも気持ち悪い」という意見がありました。はずかしい度合いが振り切れて気持ち悪いまでになると論外で、エロ表現にも質や量によって期待される使い途があるのはとうぜんです。
写真Aも上半身が裸、画像BとCはいわゆる乳袋表現、画像Eも上半身が裸ですがエロいと指摘する者はいませんでした。
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第三部まとめ
ターゲット・お約束・防衛
大前提
萌え絵に限らずイラストや漫画などは、ターゲットとそうではない層との間に大きな溝があります。そして、溝の向こうにいるターゲットではない層と、描き手や使用者には思惑の不一致が生じます。
冒頭で紹介した手塚治虫の「(バストは)どんなに大きく描いてもよい」が通じない相手がいるということです。
思惑の不一致はツイフェミのような何にでも批判をむける特殊な人々だけに生じるものではありません。イラストや漫画慣れしていて雑食性が高いと思われる若年層であっても違和感を感じる場合があるのを二つの調査があきらかにしています。
好みではないものをスルーしてもらうことで、誰がターゲットであるか理解してもらうのがマーケティングです。カレー味スナックならカレー味が好きな人向けのお菓子ですし、[激辛]と書いてあればカレー味が好きなだけでなく刺激の強さを求めている人向けであって、カレー嫌いや辛さに弱い人を相手にしていないとシグナルを送っていることになります。
カレー味が嫌いなのにカレー味と表示してあるスナックを食べた人に文句を言われる筋合いはないという話です。
ただし塩味スナックにカレー味スナックが混ざり込むようなケースがイラストや3Dで造形したキャラクターが活躍する媒体や場所にはあり、キャラクターと見る側双方の度が過ぎればトラブルが発生します。
良田胡蝶(のうりん)に対する大学生の反応を見るかぎり、ライトノベルや漫画、アニメでは問題なかったものが、スタンプラリー用として広く告知されたり協力店に貼るなどされてターゲット以外の目にとまるときスルーしてくれない人が登場しました。
スタンプラリーよりも幅広い層をターゲットにしたうえで、否が応でも通過せざるを得ない公共交通機関で使用される京都市交通局のキャラクターは、それだけ計算し尽くして設計されているのがわかります。
碧志摩メグは萌え絵原器
碧志摩メグは萌え絵にとってのメートル原器のようなキャラクターかもしれません。(原器と言えるキャラクターは碧志摩メグだけではないはずです)
問いに対して第1番目に選ばれた選択肢は、かわいいとはずかしいが突出していました。「教科書マンガ」論文の調査でも“萌え”にはずかしいという感情が現れています。
第1番目の選択とすべて合算したものを比較するとかわいいが真っ先にくる人もいれば、はずかしさをまず感じたうえで他の感情に移行している人がいるのがわかります。
しかし真っ先にかわいいを感じた人は、次の段階ではずかしいへは移行しません。これは、萌え絵とは「はずかしカワイイ」ものだとして萌えの感情をまるごと受け入れている人と、はずかしいを意識しながら肯定的な評価をする人がいるのを意味しています。
「はずかしカワイイもの、それが萌え」と1セットで反応するのが[上級者]でいわゆるオタク。恥ずかしさを感じたあと、肯定的な評価をするのが[並みの人]。並みの人のなかに、恥ずかしさを「けしからん」ものだと否定的な態度を取る人がいて[アンチ]。このような構造があるように思われます。
碧志摩メグへのはずかしい気持ちが、馬鹿にされているに結びついている大学生がいました。前述した[アンチ]です。少数ですが性的であると答えた者もいました。これが「恥ずかしさ」がエロ嫌悪にむすびついたり、強引に結びつけられる現象の発端のように思われます。
大学生とツイフェミが同じ心理とは断言できませんが、シンプルな絵柄や設定にも思惑の不一致が発生する可能性があるのは間違いありません。
お約束がわからない人たち
元ツイフェミの女性は言いました。
碧志摩メグを萌え絵原器と表現しましたが、すらっとした足を見せる演出や腰に巻いた赤い布という性格付けがあるものの、お約束はかなり少ないのではないでしょうか。まさに原器です。
キャラ立ちさせるためお約束に則りながらいろいろなものが追加されて行きます。追加されるものには体型や表情の誇張やポーズだけでなく設定もあります。これらがわからない人の「はずかしい」という感情が好意に向かわない場合、つまり[アンチ]はエロけしからんと感じることが多いのかもしれません。
大学生たちはキャラクターの使用目的と、そのキャラクターがいるのに相応しい場所についてかなり意識的でした。キャラはかわいいけれど場違いと感じることがあるということです。大学生は、自分をその場にふさわしくない「場違いな闖入者」とは思っていません。自分を基準にして、キャラを場違いであるとしたのです。
大学生も[アンチ]になり得ると指摘済みですが、エロけしからんと感じることもあるし、クレーマーになる可能性もあります。
お約束がわかる層以外を締め出せないなら、大学生に限らず、ツイフェミだけでなく、さまざまな層で思惑の不一致が発生します。こうしたとき大概は場違いな居心地の悪さをどうにかスルーしようとするものですが、「キャラが相応しくないから気分を害した。社会に有害である」と騒ぐ人が登場しないとは言い切れないのです。
京都市交通局のキャラクターに施されている計算とはお約束を限りなく減らすことで、誰も場違いな闖入者にしないためのものと言ってよいでしょう。しかし好きなものを描いて、好きなものを使いたいし、ターゲットのセグメントを絞り込んでオタク層向きの商売をしたいという気持ちがあってとうぜんだと思います。
人と仕事を守る
「温泉むすめ」の炎上劇では少女像そのものより設定に文句がつきました。
「夜這い」などの言葉です。
夜這いは強姦でも女性が屈服させられる性行為でもなく、通い婚につながる古来の風俗で、それぞれの地域ごと女性が男性を拒否できるなどルールが確立されていたものです。しかしふしだらな性風俗をひっさげたキャラクターであるとされました。
これも「お約束」事案だったかもしれません。
こうしたお約束が必要だった今回の例では、制作者と使用者がどこまでお約束の内容を理解しているか問われたのではないでしょうか。「夜這い」の説明ができたでしょうか、それ以前に誤解や曲解や興味本位への防衛策が用意されていたでしょうか。
温泉むすめだけの問題ではありません。
元ツイフェミの女性が「変な飾りとか紐とか、独特の色とか」と指摘しているお約束による演出などに闖入者が干渉してきたときの防衛策が用意されているかどうか。徹底的に無視したり、説明してお帰りいただくのもありでしょう。反社会的勢力をビジネスに寄り付かせないための防衛策と同じです。
そして、制作者は使用者を、使用者は制作者を、制作者と使用者は顧客を守る取り組みをどこまでできるでしょうか。
炎上劇を[権威の高低]と[お約束の多少]の上に位置付けると次の図のようになります。萌え絵や漫画のキャラクターはツイフェミから実際より権威が低く見積もられています。そして権威が高いものからは相手にされず、権威があまりにも低いものは炎上させても意味がないとされているはずです。
炎上させられた萌え絵またはキャラクターたちは、タイアップが頻繁に行われて、タイアップゆえに関係者が多く、話題性や影響が大きい領域にいることがわかります。と同時に、制作者の立場が弱いと見られている領域でもあります。ツイフェミから甘く見られているのです。
これくらい萌えキャラ、萌え絵、サブカル・ポップカルチャーの少女像は攻めやすい相手、攻めがいがある相手と思われています。相手にしないのが最善の策ですが、騒ぎになるだけで消耗してしまうのですから隙をつくらない体制を整えたいものです。
全国フェミニスト議員連盟のVtuber「戸定梨香」への抗議失敗と、仁藤夢乃氏の温泉むすむ炎上劇の顛末によって、ツイフェミは新たな段階に入ったと思われます。先行きは2022年の春先までにもう一つくらい炎上劇が発生して傾向がつかめるでしょう。
そして2022年の夏には参院選が行われるはずですから、また選挙前に一波乱ありそうです。仮にツイフェミの凋落がはじまっていたとしても、萌えキャラや萌え絵が安泰とは思えません。これは描き手および使用者と受け手の思惑の不一致について、お約束がわからない人の存在として説明した通りです。
ツイフェミではない何か、国内の何かだけでなく外圧がかかるかもしれません。そういうことにしたい人が既に現れています。
会って聞いて、調査して、何が起こっているか知る記事を心がけています。サポート以外にもフォローなどお気持ちのままによろしくお願いします。ご依頼ごとなど↓「クリエーターへのお問い合わせ」からどうぞ。