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被災地写真を誇張するれいわ体質 風評と怒りの伝道者 山本太郎研究

(注/タイトル画像は被災地を撮影したものではありません)

追記
2024.5.3 20:35 リードを追加。
2025.5.6. 9:27 Xアカウントが行った輪島市の同一地点からの報告を追加。

──この写真に感じる違和感はなんだろう。やはた愛氏が輪島を訪問してX/Twitterに投稿した写真は1477×1108ピクセルと、いまどきの感覚ではかなり小さく画質もよくない。特殊なサイズはLINEで共有した低画質写真のように思える。初夏の日本海側の天候は、かつて生活し幾度も訪ねていることもあり記憶しているつもりだが、どうも空や光や色の調子が変だ。無理な時間帯に撮影されていたり、撮影したカメラがチープであったり、低画質になる要因があったため画像がおかしくなった可能性は否定できない。だが、そうとばかり思えないため違和感の正体を考えた。


加藤文宏


HDR加工された被災地

 れいわ新選組のやはた愛氏がX/Twitterに投稿した、「輪島朝市の地震火災」の様子を伝える写真4点は違和感に満ちている。
 違和感を言語化して列記しよう。
 曇り空が毒々しい。黒い雲と白い雲が劇的すぎるまでに入り混じっている。しかも白い雲だけでなく黒い雲までもが、あり得ない青みを帯びている。
 左下の写真では、光が当たっていない家屋の内側しかも天井部分まで、外部と同じくらい光が回っている。
 このため被災地はやはた氏が語っているように、絶句するまでに悲惨な様子に描写されている。

 輪島市を訪ねた人がやはた氏の撮影地を紹介している写真を見ると、印象がだいぶ違う。

 やはた氏の写真が異様に劇的なのはHDR(ハイダイナミックレンジ)加工などが施されているからにほかならない。HDR加工は、この機能を持ったカメラ(または撮影アプリ)で撮影すると同時に施される場合と、撮影後にPCなどで施す場合がある。いずれにしても、恣意的な操作でつくられた写真だ。
 ではHDR加工とは、どのようなものか説明しよう。

 下掲の画像は解体中の家屋を曇天の日に撮影した写真だ(なお被写体は被災家屋ではない)。

 空、屋内、外壁は、それぞれ明るさが異なるため、空は露出オーバーになって白どびして、屋内は露出が足りずに暗くつぶれていて、外壁だけが正常に描写されている。ありのままに撮影して、ありのままに画像化すると、このようになる。
 いっぽうHDR加工は明るすぎたり暗すぎる部分の露出を調整して、見た目を整える加工だ。ただし過剰に使用すると、先ほどの写真が以下のように異様な状態になる。

 白いだけだった空は雲が強調され、見えるはずのない屋内の暗がりまで描写されている。これらは「存在していないもの」を「存在しているかのように」書き加えるAI処理とは違い、画像に潜んでいるデータを増幅したり、逆に抑えこんで、見た目を変えているのだ。(HDR加工には、一度に複数の露出違い写真を撮って、これを重ね合わせて合成する方法もある)

 では、やはた氏が投稿した写真を見てみよう。

やはた愛氏の投稿より。https://twitter.com/aiainstein/status/1785605898670686513

 あまり明るくない曇り空とはいえ、空に露出を合わせると建物の内部は暗くつぶれるはずだ。
 やはた氏や周辺の様子に露出を合わせると、前掲の「解体中の家屋」写真のように空は白くとび、建物の内部は暗がりになるはずだ。
 建物の内部に露出を合わせると、空は露出オーバーが過ぎて真っ白になり、やはた氏と周辺も明るくなり過ぎる。
 1枚の写真に、すべての部分を強調しつつよく見えるように収めるのは無理だ。
 他の写真と比較して、やはた氏の髪の色が明るいのにも注目したい。これは建物内部を明るく見せたため、髪まで露出を多くする操作が加わって赤茶けてしまったのだ。
 また建物の輪郭に近い空に「ぼんやり明るい領域」が発生して、まるで家屋がバリアを纏っているみたいになっている。これは無理に明るくした暗部と、明るさを抑えた明部が接しているとき生じる現象だ。他の写真以上に、この写真では過剰に演出がほどこされたと言ってよいだろう。

禁じ手の演出

 HDR加工など過剰な演出が施された写真を、報道や政治の場で使用するのは禁じ手である。
 私たちは「写真は真実を写し撮るもの」で、写真に写し撮られたものは現実に存在していると思いがちだ。しかし現実に存在しているものであっても、誇張が過ぎれば歪曲された虚像であって事実とは言い難いものになる。
 やはた氏が投稿した写真は、「事実」を撮影したものだが加工が過剰だ。加工によって劇的に演出されたことで、事実の報告ではなく、見る者の感情を意図的に煽る写真になっている。このような写真を「現実」であるかのように報道や政治の場で使用すると、写真を見たものは誤った感想を抱き、誤った選択をしてしまう。
 投稿された4枚の写真には、劇的かつ悲劇的な雰囲気に満ちた空が描写されている。被害を強調した被災家屋がある。これらを見つめるやはた氏は映画のヒロインのようだ。このように見せかけるため、やはた氏またはスタッフが画像を加工したのだろう。

事実を誇張し歪曲するれいわ体質

 これは、東日本大震災後の2011年11月6日に行われた講演イベント「全国学校給食フォーラムin札幌」で、被災地に派遣されたレスキュー隊員が被曝死したと山本太郎氏が語る動画だ。
 なおレスキュー隊員が原発事故の影響で被曝死した事実はなく、山本氏が何者かに騙されたか、あり得ない話を捏造したかのいずれかだ。前者であるなら講演で語るのは軽率すぎる。後者なら言語道断の非道である。そして山本氏は現在に至るまで、この発言について訂正も謝罪もしていない。
 また被災瓦礫の焼却をめぐって山本氏は、以下の大袈裟きわまりない発言をしている。

 原発事故に漠然とした不安感を抱いていた人々のなかには、山本氏が語る被曝死の逸話や大袈裟な健康被害報告などで感情を煽りたてられ精神に不調をきたす者もいた。たとえば、まったく避難する必要がなかった関東から関西などへ自主避難した者たちは、鬱状態になっていたり、怒りやすくなるなど性格が激変した人が多く冷静な判断力を失うほど心が混乱していた。
 事実を誇張し歪曲する山本氏の言動は人々の不安感や怒りに火を着け、彼は支持者を増やしていった。この成功体験が山本氏のみなならず、れいわ新選組の基本姿勢を決定づけ、やはた氏もまた同党のセオリー通りに写真に過剰な演出を加えたのではないか。

誇張と歪曲の先にあるもの

 原発事故が発生し、放射性物質が飛散したのは事実だ。しかし、山本氏が原発事故の現実を歪曲した結果、支持者はあり得ないことや、存在しないことに怒りだし、虚像を根拠として政権与党や東京電力を打倒しようと騒いだ。事故から10年以上経過して、幾度となく事実が伝えられても彼らは未だに虚像こそが事実であると信じ込んでいる。
 能登半島地震が発生し、輪島が被災したのも事実だ。しかし、やはた氏が写真を過剰に加工した結果、支持者は演出された悲惨さが事実であると認識して感情を揺さぶられた。そして支持者たちは演出された虚像を根拠として、政権与党や自治体が悪いと騒ぐのだった。
 誇張や歪曲は現実を元にして行われる。だが、誇張や歪曲によって生み出されたものは事実ではない。事実ではない虚像をもとに、支持者の感情を煽り立てるのがれいわ新選組の政治だ。
 あり得ないこと、存在しないことに感情を煽られて、虚像に向けて振り下ろした拳が誰かを叩き潰す。殴られるのは政権与党や企業だけではない。福島県が被っている風評被害は、こうして生み出されているのだ。
 幻覚に向かって喚き散らし拳を振り回す人は、滑稽で愚かなだけでなく悲惨きわまりない存在だ。彼らは悲惨な人々だが、寄り集まれば凶悪な加害者の群れになる。彼らと彼らを生み出す政治家は、「絶句するまでに悲惨」な社会をつくろうとしていると言えないだろうか。

──『風評と怒りの伝道者 山本太郎研究』

──写真分析


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加藤文宏
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