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扇動装置と化した放送局【全放送アーカイブ化と放送法】

加藤文宏


はじめに

 前回『衆院選を左右した報道汚染の実態』の後半で、台湾におけるマスコミ報道の混乱ぶりを解説した。戒厳令解除と報道の自由化が、マスコミの営利化とイデオロギー傾斜に拍車をかけたことを説明したが、当記事では中華人民共和国からしかけられた認知戦の影響に話を進める。
 さらに我が国の状況を振り返り、第四の権力と言われるほどの力を行使しているにもかかわらず、偽情報によって大衆の認識を誤った方向へ導いたり、判断を誤らせても規制されないマスコミにどのように対応すべきか、手始めに全放送のアーカイブ化と放送法の運用から考えてみたいと思う。
 形骸化している放送法第4条と、アメリカの連邦通信委員会(Federal Communications Commission/FCC)、台湾の国家通信放送委員会(国家通訊伝播委員会/NCC)についても言及する。

日本の報道と台湾の認知戦被害

 台湾は戒厳令が解除されたのち、1990年代に爆発的な勢いで報道の自由化が進み、違法・脱法ケーブルテレビの市場拡大、インターネットメディアの浸透による新聞とテレビの市場縮小が進んだ。こうした背景のもと、親中企業が放送グループを買収した事例を取り上げ、偏向報道、放送免許取消しを経て、動画配信に転身したのを『衆院選を左右した報道汚染の実態』で紹介した。
 いま台湾は、こうした営利主義とイデオロギーがあからさまに結びついた報道の問題だけでなく、中国政府から情報工作の「認知戦」を仕掛けられ、悪影響に悩まされている。日本でもALPS処理水が汚染水と活動家によって連呼され、同様に報道されていた背景に、中国政府がSNS上の工作アカウントを通して影響力を行使しようとしていたと報じられているが、このような策動が台湾では日常茶飯事になっている。台湾の国防安全保障研究所と中央研究院欧美研究所の研究者が「認知戦」と指摘したできごとは、自殺者が出ただけでなく、選挙結果まで左右した。
 出来事は、台風21号が日本に上陸して猛威をふるった2018年9月4日にさかのぼる。


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