フェミニズム6年間のたたかいはいったい何だったのか
著者:ケイヒロ、ハラオカヒサ
記録と整理です。諸般の事情から前半部を除き有料とさせていただきます。14000文字程度の文章量があります。
フェミニズム6年のポイント
フェミニズム運動は社会のあらゆる場所で展開されているはずだが、近年はフェミニストを名乗る人が短文投稿SNSのTwitterで発する言葉や活動が話題になるケースがあまりにも多い。
そこで当記事はTwitter内のフェミニズム運動があきらかに方向性を変えた2016年前後から現在まで、どのようにできごとがあり、どのように社会に影響を与え、社会から影響を受けたか整理しようと思う。
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Twitter上で展開されたフェミニズム運動には見落としてはならないポイントがいくつかあった。
・声かけ写真展批判
・伊藤詩織氏告発
・KuTooの提唱
・宇崎ちゃん炎上
・石川青織討論会
・茜さや氏炎上
・お母さん食堂
・戸定梨香炎上
8つのポイントは経緯を目撃してきた人々には「本筋とは違う」と思われるものもあるだろう。
だがこれらはTwitter内のフェミニストが何をやってきたか、どのような主張があったか、行為の対象は何であったか、その後どうなったかを考えるとき分岐点として欠かせない重要なできごとだった。
なぜ重要なのか、これから順を追ってあきらかにして行く。そして、ツイッター上のフェミニズム運動を決定づけているものはなにか最後にまとめることにする。
2016年から今日に至るTwitterフェミニズムの潮流
インターネットは現実の世界を映す鏡であると言われる。スマートフォンやSNSの普及を考慮すると、鏡どころかどちらも現実の世界そのものであると言ってよいだろう。
ニュースグループ、個人ホームページ、掲示板とインターネット上の交流ツールは発展し、SNSが一般的になればSNSにフェミニストの層がかたちづくられるのは当然の成り行きだった。
なかでも短文投稿SNSのTwitterは問題提起の簡単さと拡散力によって独自のフェミニスト層をかたちづくり影響力も大きくなっていった。以前から性被害、性役割、AV出演強要、貧困女性等の女性固有の課題や問題はあったが、Twitterでつぶやきが相互作用することで掲示板の時代とは異なる作用が生じるようになった。
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筆者にとってTwitter内のフェミニストへの考えを改めざるを得ないできごとが2021年に発生した。家庭崩壊の危機に直面した家族からの相談が舞い込むようになり、実情を1件、2件と知るうちに水面下でただならない問題が進行しているのを知った。
一例を以下の記事で紹介したが、のちにこの家庭では息子さんが母親に絶縁宣言をして関係の修復は絶望的になった。
これもまたフェミニズム運動の歴史のひとつである。
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Twitter内のフェミニストの動向が注目を集めた発端が2013年にあった。
2013年12月/人工知能学会の学会誌「人工知能」の表紙絵がTwitter内のフェミニストから批判された。スプニツ子氏が女性が性役割として家事をおしつけられるロボットとして表現されていると問題提起と批判を行なったのだった。
学会誌「人工知能」への批判以前から、イラストや漫画など二次元上の創作物に対してTwitter内のフェミニストから不満や批判が出たことはあったが、話題の広がりは炎上と表現されるほどで、掲載元がコメントを出すなどいままでにない影響を与えたできごとだった。
その後、2015年/伊勢志摩サミットの開催地三重県志摩市公認の海女の萌えキャラ「碧志摩(あおしま)メグ」が、「胸や太ももを強調しすぎ」「海で生きてきた海女の伝統と文化をバカにしている」として、やはりSNS内のフェミニストから批判された。
“乳首までうっすら認識できる巨乳、性器方向へはだけた裾、どんなやらしいことも受け入れそうな恥ずかしそうな表情”という批判者の声が広がるだけでなく、のちに香山リカは「萌えキャラは性犯罪を助長する」と東京新聞のコラムに書いた。
2015年には岐阜県美濃加茂市がアニメ「のうりん」とコラボして作成したポスターに同様に批判が集まる。以後、2016年1月/京都市営地下鉄のポスター、9月/くま川鉄道、10月/鉄道むすめ駅乃みちかといわゆるネット炎上が続いた。そしてフェミニストたちの“萌えキャラ・萌え絵”批判活動は、香山リカの「性犯罪を助長する」という断定を引き継いで現在に至っている。
現在に至る抗議活動がイラストなどの使用者(企業や団体)と制作者に影響を与えたのは事実だが、抗議行動が主にSNS上からのものであったので背景や事情が社会全般に知られたとは言い難い。
このようにWEB内と社会全般で影響や認知度の程度が大きくズレ、抗議活動の主戦場がTwitterであることから活動者はツイフェミと呼ばれがちである。
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ではこれからフェミニストたちの6年間におよぶ闘いはどのようなものであったかを振り返ってみようと思う。
フェミニストたちの活動を振り返らなければならないのは、ツイフェミとされる人々が自らの歴史を整理して発表することがなく、ツイフェミを理解するための足掛かりさえ用意されていないからだ。このため代表的なできごとを時系列に並べ、それぞれの傾向を明らかにするところからはじめなければならないのだ。
したがって当記事は結論ではなく、ツイフェミを理解する準備作業であり材料のひとつにすぎない。
なお「ツイフェミ」が侮蔑語であると指摘されるいっぽうでTwitterを使う独特の方法論で活動をしているから他に呼びようがないという意見がある。当記事では以後、侮蔑の指摘があるツイフェミではなく、呼称ツイフェミがかなり定着していること、ツイッターの機能をフル活用している運動であることを考慮して「ツイッター・フェミ」という呼称を使う。
また記事掲載をまえにして、おだやかではない檄文調の警告が筆者のnoteアカウントまで届いている。反原発運動の徒から誹謗中傷や脅迫を経験し法的対処を繰り返してきた筆者は、自らの身と記事を守る必要を感じるため前半部を除き記事を有料化(おためし、返金ともに不可)することにした。ご理解いただきたい。
できごとと影響(概説)
ツイッター・フェミは運動と運動参加者ともに調査の対象とされたことがなく、多くが匿名で参加し複数のアカウントを持つのも可能であるため全容を把握しにくい。
またポップカルチャーの一種であるイラストや“萌え絵”とされる表現が、ツイッター・フェミによってどのような影響を受けているか調査した例も見当たらなかった。
このため社会的な影響を知るため活用できるデータは限られている。(可能であれば後日調査を実施したい)
Google trendで次の項目を調べた。
[フェミニズム
(政治的イデオロギーとして)]
[フェミニズム
(一般的な検索キーワードとして)]
[KuToo
(トピックとして)]
上記の検索指数を表示させ、ここに2015年から2021年11月28日までの代表的なツイッター・フェミ案件を時系列で配置したのが以下の図だ。
興味深いのは、
・炎上したとされるできごとのネット上から見た勢いと、世の中での関心や影響はかならずしも比例していない。
・2019年後半までは炎上したとされているできごとであっても大きな盛り上がりがなく、エマ・ワトソンが胸の露出がある衣装で問題提起したできごととの差は歴然としている。
・2019年後半を境に炎上の影響は大きくなって行くが、政治的な騒動への関心は高まっても一般的なフェミニズムへの関心はさほど盛り上がっていない。(政治的な話題として消費されている)
・KuToo運動はSNS内だけでなく報道も盛んで、国へ要望書を提出するという成果をあげたが、フェミニズムへの関心や興味に大きな変化を与えなかった。
といった点だ。
これらはツイッター・フェミが思われているほどには主張や抗議活動が共感を呼んでいないだけでなく、社会への影響も限定的なのを意味している。抗議活動とその結果は単発のイベントで終わり、影響と共感と理解が回を重ねるごと広がる様子もない。これは2021年の衆議院総選挙でジェンダー問題の解決を掲げた候補や政党が結果を残せなかったことからもあきらかだ。
注目したいのは2020年10月のフェミニズムへの関心度だ。
2020年7月末、anan SEX特集号をめぐって「扇情的な表紙はゾーニングしなくてもよいのか」とツイッター・フェミが問われるできごとがあった。月末のできごのため当月の指数に影響を与えているか疑問だが、いずれにしても7月はフェミニズムへの関心が高かった。
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