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君たちは前衛ごっこで分断を生み支持者を失った

左翼・左派が負ける原因ははっきりしている。原因はとても簡単なわかりきったことだ。そして彼らに勝ったのは右翼・右派ではない。また彼らにとって選挙に勝つことは、もっとも大切な目的ではなかったのだ。

加藤文宏

 民主党が存在したとき、以下のイラストがインターネット上に広く出回った。

作者不詳のイラスト

 自民党支持者はキモオタ(気持ち悪いオタク)でネトウヨ(ネット右翼。ネット上に存在する右翼思想を持つ人物。特定の国や人種に対する差別的発言をするなど攻撃的な人物)とされ、見かけのよくない男性像として描かれている。いっぽう民主党支持者はイケメンでリベラル思想の持ち主として、エリート風の見かけのよい男性像として描かれている。このイラストを持ち出して、自民党支持者またはネトウヨを馬鹿にする者がいた。
 イラストを見た自民党支持者は、「キモオタでネトウヨと見られたくない」と民主党支持に鞍替えしただろうか。この問いの答えは、イラストの登場から10年以上経過した、2024年7月現在の両党支持率を比較すれば自ずと明らかになる。自民党の支持率は28.4%、民主党の後継政党である立憲民主党は5.2%にすぎない。このイラストは民主党支持者を悦に入らせ、自惚うぬぼれるのには好都合だったが、非支持者に反感を抱かせただけの代物だった。
 そして都知事選で蓮舫候補が3位に終わったとき、彼女に投票しなかった人々のことを左派が「愚民」や「ミソジニスト(女性蔑視者)」と呼んだ。蓮舫支持者には世の中が、前掲のイラストのままに見えているのだろう。あるいは、そういうことにしたくてたまらないのだ。

 都知事選で蓮舫を支えたのが共産党だった。共産党の勢力は機関紙しんぶん赤旗の購読数に現れ、1980年代に355万部、90年代に230万部と減り、現在は100万部にまで減っている(さらに割り込んでいると見る人もいる)。しかも取材・編集のための人員が確保できないという。
 共産党の支持率は2.6%で、前記した通り立憲民主党の支持率は5.2%、このほかれいわ新選組と社民党を合わせても左派は10%を切る支持率しかない。彼らは、彼ら以外である90%の層から支持者を獲得しなければ党勢拡大や、左派勢力の拡大は望めないが、獲得すべき人たちを愚民呼ばわりした。
 いわゆる「Rシール」をめぐっては、街中に貼られたシールに不快感を抱く人や、これを蓮舫陣営や貼った当人が剥がすよう求めるSNS(X/Twitter)での発言に、とぼけるだけならまだしも攻撃的であったり、ヤクザ者が因縁をつけるように食らいつき、問題提起したくりした善行に対してしばき隊(C.R.A.C)の野間易通は、「しばき隊は最初の立候補時からお前を標的にしている」「くりしたは敵の本丸」と異様な発言をした。

 これらの言動が広まるほどに、Rシールに無関心だった層や「とっくにシールや落書きが溢れているから大目に見てもよいのではないか」などと鷹揚に構えていた人々も、左派を自分たちとは相入れない集団、加害する集団と感じたことだろう。
 繰り返すがRシールを製作して配布し、これを選挙運動と連動して貼った側は10%を切る支持率しかなく、大多数側を切り崩さなければ政治的な目的を達成できない層なのだ。

 蓮舫や左派と対立しているものは愚民やミソジニストではない。世間一般または、この期に及んでは良識と対立していると言ってよいかもしれない。左派は右派と対立しているのではなく、世間から孤立しているのだ。この以前からわかりきっていた状態を、あからさまに可視化したのが蓮舫と都知事選だったのである。
 まじめに左派の再構築を考えている人々がいるものの、どの考えも手遅れで、なぜ手遅れかと言えば現状の認識が甘すぎるからだ。それほどに左派による社会の分断を多くの人々が嫌悪している。
 しかも選挙に勝つことが目的でなかったのも、白日の下に晒されてしまった。
 選挙に勝って、理想とする社会を民主的に作り出すのが目的なら、批判者や非支持者を「愚民」呼ばわりするはずがなく、敵対的に身構えて異様な発言をするはずもない。
 『彼らはなぜ神宮外苑再開発反対のデマに乗ったのか』で指摘したように、自分こそが愚かな大衆を善導する「前衛」と勝手に思い込み、自惚れたいがために左派を名乗り、蓮舫を支持していただけだったのだ。ゆえに、分断を広げる馬鹿げた言動が止まらないだけでなく、多少真面目に危機感を抱いた者たちでさえ認識が甘く、左派を再構築すればどうにかなると考えているのだ。
 これは共産党、立憲民主党、蓮舫自身が凋落した原因でもある。

 しかも、しばき隊や残党たちがRシールで何をしたか見れば、暴力によって相手を圧倒して黙らせるのが手段ではなく目的化している。これはファシズムそのものの様相と言ってよい。
 こうした「前衛ごっこ」で社会を分断し続けた結果、彼らは支持者を失ったのである。1個のりんごを半分に割り、さらに半分にして、また半分に──としたのに等しいのだから、最後に切れっ端だけが残って当然だ。

 りんごを切れっ端になるまで切り分けて行くように、社会を分断し続ける左派の行為は、彼らが右派と呼ぶものを拡大させた。言うまでもないが、彼らが捨てていったりんご(社会)の大半が相対的に右派になったのである。これこそ報道機関や政治家などが口にする「右傾化」の正体だ。
 この過程で、左派が本来の政治思想としての左派でなくなったように、右派もまた概念上の存在として残ったものの、その実態は溶解してしまった。
 左派と右派という区分が意味のないものになっていることを、若年層は理屈ではなく体感しているのだろう。これが左派からの支持離れだけでなく、怠け者や年寄りを叱ってくれそうな石丸への支持として現れた。この仮説が誤りであったとしても、左派に魅力を感じる若者が限りなく減ったのは間違いなく、次回の選挙でも左派は相手にされないだろう。
 だが左派は、前述の通り左派を諦めきれずにいる。
 「左派」という幻想上の居場所を死守しようとしているのだ。この幻想上の居場所なるものの先輩が、現在の「極左」だ。半世紀前の闘争の残滓として、あるいは活動家の老人グループホームとして極左は盲腸のように生き残っているが、左派は同様のリアリティがない割に邪魔くさいものに成り果てようとしている。

 最後に筆者がX/ツイッターで蓮舫に語りかけたポストを転載して当記事を終えることにする。

あなたは、神宮外苑再開発反対のデマを都知事選で利用しました。騙されたと言うなら、調査どころか、一般人でもアクセスできる資料さえ、ご自分で探さなかったのはあきらかです。
デマで分断された社会を回復させないまま放置するのですか?
あなたのどこにファクト重視と改善の姿勢があるのですか?

蓮舫さん自ら外苑再開発反対デマへの加担を反省されるのを、私は待っていました。しかし反省の言葉はなく、分断された社会を回復させる動きもありません。
あなたが嫌われるとしたら、外苑問題に限らず、この2点ではありませんか。
さて反対運動は続けられるのですか。利用しただけでおしまいですか。

蓮舫さんは空になった瓶へタバスコを詰め替える前にやるべきことがありました。都知事選の後片付けです。外苑デマ、勝手連のRシール等々で分断された社会を、寛容な社会へ回復させなければなりません。女性だからいじめられているのではなく、あなたの分断扇動体質とやりっぱなしが問われているのです

蓮舫さんの20年に及ぶ政治活動で分断された社会。蓮舫さん側ではない分断された人々が圧倒的多数になった結果が、都知事選の結果です。政治家は対立する利害、立場、意見の仲を取りもつのが仕事ですが、あなたは分断を扇動して相手をせせら笑ってきました。都知事選の後片付けをしてから泣いてください

(原文 ママ)

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加藤文宏
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