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「チュウニズム」というライブ

ーこのライブを始めようと思ったきっかけは約8年前でした

前のコンビで当時まだよしもと漫才劇場所属の芸人だった頃に、漠然と何か自分が主催のライブをこの劇場でやってみたいなぁと考えていました。
ただ、大喜利が得意なわけでもなく、これといったキャラがあるわけでもない自分はどんな主催ライブをやるべきなのか全く定まっていませんでした。
ただ、他のイベントとは被らない今までにないようなライブは作ってみたいなという気持ちだけ強かったです。

そこで、周りの芸人や作家さんに相談させてもらったり、アドバイスをもらったところ「やっぱり藤本さんは中二病なので、そういった部分が色濃く出たイベントがいいんじゃないですか?」という意見を多くいただきました。

ちなみにこの【中二病】という言葉は文章での説明が難しくニュアンス強めの感覚的な言葉だと自分は思っています。
そもそもの語源は伊集院光さんが自身のラジオ内で作った造語らしく、意味合いとしては中学2年生くらいの男子は心と身体の成長バランスが不安定で一番面白い時期らしく、そういった時期の現象を全て【中学2年生特有の病気】ということにしちゃえば恥ずかしくなくなるんじゃないかという意味から創られた言葉らしいです。
それが現在では大人になってもアニメや漫画特有の世界観を色濃く漂わせている人や、変なこだわりや格好つける人を指す言葉として「中二病」という言葉が使われるようになったのだとか。

具体例を出すと、例えば友達とゲームをしていて相手が負けて「もう1回やろうよ」と言ってきたとします。
普通の人であれば「いいよ、もう1回やろうよ」とか「次も負けないよ」と言った返しになると思います。
これが中二病の場合だと「まったく、凝りねぇ野郎だな。」とか「何度やって同じことだぜ?」といった返しになります。
なぜそのような返しになるのかと言われたら理由は明確、こっちの方がアガるからです。実際自分はこのような会話を日常的に使用しています。
この文章を読んで、なんとなくその感覚わかる!という貴方は厨二病の耐性がありますし、逆に言ってること何一つわからん!という貴方は至極真っ当な生き物です。どうかそのままそっちの世界にいてください。

話をライブに戻します。
自分は周りからの意見を参考に、中二病色の濃い芸人を集めてコーナーライブをすることに決めました。普通のコーナーライブに中二病を取り込んだら面白くなるんじゃないかという非常に安易な考えです。

タイトルは中二(チュウニ)の心(イズム)を持つ芸人が集まったイベントということで「チュウニズム」にしました。(同タイトルの音ゲーがありますが実はちゃんとタイトルの使用許可を申請しています。)

ライブのタイトルと方向性が決まったので次は出演メンバーを決めなければいけません、初回のメンバーはこちらでした。

ジュリエッタ 藤本/祇園 木﨑/てんしとあくま かんざき/クロスバー直撃 前野/
プリマ旦那 野村/ロングコートダディ 兎/蛙亭 岩倉/霜降り明星 粗品/コウテイ 九条/清友 (当時のコンビ名で表記)

当時のマンゲキ所属メンバーで自分なりに中二病色が濃いと思う芸人を厳選し声をかけ、集まってくれたメンバーです。

このメンバーに加え、イベントMCとしてマルセイユの津田にも声をかけました。(イベントMCだけはゴリゴリの中二病ではない芸人の方が一般的な感覚と中二病の感覚との違和感に敏感そうなので津田を選びました、あと仕切りが上手い!)

ただ、津田にイベントの相談をした時に一つの懸念点が生まれました…集客力です。

劇場でライブをする以上ある程度の集客は必須ですし、集客力が弱いと今後そのライブ自体を打つことが許されなくなります。
初回のメンバーは、今でこそバリバリ全国区で活躍している芸人が多数いますが信じられないことに当時の段階ではまだ人気者と呼べるメンバーはほとんどいませんでした。

津田と集客人数を予想し、出た数字が「80人」でした。

よしもと漫才劇場のキャパが約300人なので予想通りの80人だと客席はスッカスカです。劇場支配人に◯されてもおかしくない集客人数です。
もう少し当時の人気者をメンバーに入れて集客力をアップしましょうという意見もでましたが、初の主催ライブということもあり本物の中二病だけを集めたメンバーだけでやりたいという自分のわがままを通してもらいこのメンバーでライブをやらせてもらうことが決まりました。

集客で苦戦することは目に見えていたのでイベントのプロモーションを頑張らないといけません‥。ということで気合い入れて作成した初回のフライヤー画像がこちら。

2017年10月16日に行われた初回チュウニズムのポスター

実はこれは「ビフォア クライシス ファイナルファンタジーVll 」という携帯電話ゲーム用の販促フライヤーをオマージュしたもので、実際の画像がこちら。

ビフォア クライシス ファイナルファンタジーVll

初めてこのフライヤーを見た時に「かっけぇぇえええ!!!」と震えるくらいに興奮したのを覚えています。黒の衣装に身を包んだ組織が漂わせる作戦開始の躍動感…フライヤーひとつでこんなにもワクワクさせることができるのかと衝撃を受けました。

それをオマージュして出来上がったフライヤーがマンゲキのロビーに貼られた時期から、明らかに前売りチケットの売上が爆伸びしました。
そしてそのポスターを見た周りの芸人からも「あのライブって何すんの?」と聞かれることが増えました。
謎めいたライブ内容に、中二心をくすぐる画像、ポケモンでいうところの[こうかはばつぐんだ!]状態でした。
たった1枚のフライヤーでも興味を持ってもらえるきっかけとしては十分すぎる影響力になりましたし、フライヤーデザインの大切さを身をもって知りました。

集客に希望が持てたところで次は中身の話になりました、イベントの趣旨はコーナーライブですが本当にコーナーだけでいいものかと…。
何かこのライブならではの事ができないかと考えた時に、オリジナルの寸劇でオープニングが始まるのはどうかという話になりました。

自らが描くの寸劇を芸人に演じてもらえるのは、妄想と実現を同時に叶えられる最高の機会だと思い普通に興奮しました。

普段から妄想することが大好きで、この芸人は属性でいうと炎属性だよなとか、この芸人に似合う武器は三節棍だよなとか、物語でいったらこの芸人同士がライバル関係で実は影で全てを操ってるのはこいつだよなというような、お笑いの痛ファンがやりそうなキモい妄想をお笑いの世界に身を置きながら最前列でゴリゴリにしていたのが何を隠そう自分です。

それをライブで実現してもいいよとなればテンションが上がらないはずもなく、寸劇の台本を書く事は楽しく全く苦になりませんでした。(むしろ寸劇を覚えてもらう出演者皆さんのカロリーの方が高くて申し訳ないという気持ち)

そうして寸劇とコーナーで構成されたイベント「チュウニズム」というイベントが出来上がりました。
初回の反響がとても大きく、イベントの噂が口コミで広がったこともあり、ありがたいことに2回目からはチケットも即完するような人気のライブとなってくれました。

このイベントでとにかく大切にしている事はワクワク感で、2回目から毎回シークレットゲストという枠を用意しました。
好きな漫画やアニメに新キャラが登場するときってとてもワクワクしますよね?あの感覚をライブで作りたかったのです。
これまで数々の芸人に協力してもらい登場の度に毎回会場を沸かせてもらいました。

そんなチュウニズムもメンバーも変わりながら6年間でなんとか10回以上の公演を行い、節目の10回目は笑いの聖地「なんばグランド花月」で開催させていただくことができました。
とても贅沢な時間でしたし、このイベントを愛してくれるファンの方がこれだけいるということは本当に幸せなことだなと実感しました。

なんばグランド花月で行ったチュウニズムの直後くらいにコンビ解散を発表し、それに伴い現在はマンゲキ所属の芸人ではなくなってしまいました。

大阪の吉本若手芸人は漫才劇場所属メンバー以外は主催のライブが打てないため、しばらくというか、もうチュウニズムはやらないかもなぁと考えていた去年の年末によしもと漫才劇場のとある社員さんが声をかけてきました。

社員さん「藤本さん、マンゲキが来年で10周年なんですよ」
自分「もう10年すかー、早いですねー」
社員さん「来年から月に1回プレミアム公演という枠のライブを行うんです」自分「ほぇープレミアムねぇー」
社員さん「過去の人気公演を復活させたりするんですよ」
自分「それは楽しそうですねー」
社員さん「チュウニズムやってくれませんか?」
自分「…へぁ!?」

というわけで、なんともありがたいことに合法でまたチュウニズムをやらせてもらえる機会が舞い込んできました。しかもマンゲキ10周年記念のライブに絡ませていただけるとはなんともありがたいお話。

2月に公演を希望とのことだったので準備期間と出演メンバーの負担を考慮し完全新作というわけではなく、以前の「チュウニズム第七幕」のリバイバル版を行うことに決めました。

なぜ第七幕をチョイスしたのかというと、過去の公演の中でも体感で一番再演を望む声が多かったように感じましたし、自分もこの回の寸劇が好きでいつかもう一度できればいいなという気持ちが強かったからです。

形は再演ではありますが、前回とメンバーも変わっていたり60分公演だったのが今回90分公演になったのことで、いやでもボリュームアップしなくてはならなくなりました。
なので再演と誕生という意味をこめて「チュウニズム第七幕 Re:birth」というタイトルを付けさせていただきました。中二っぽい理由で個人的には非常に気に入っています。

約2年ぶりのチュウニズムということで、もうこのライブの存在自体忘れてる人も多いんじゃないかという不安をよそに劇場の座席チケットはすでに完売してくれております。(こんな嬉しい裏切りなら大歓迎よ)

劇場に来られない方は配信チケットもございますので是非ともよろしくお願いします。

こちらからご購入いただけます↓
https://t.co/UIvb7jppOQ

というわけで明日2月27日はよしもと漫才劇場が最高にイタい夜になるので、出演者の皆さんもお客様も存分に中二心(チュウニズム)全開で楽しんでいただければ光栄です。

早く欲しいんだろ…?いいね…その眼だ。

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