【22/06/17更新】学食2F次元2022.05インタビュー!【前編】
2022年5月に『学食2F次元』(@愛知県立芸術大学)でひっそり開催されていた展覧会…企画者の小野絢乃さんが参加者の方々にインタビューをしました!
【展覧会情報】
会場:学食2F次元(愛知県立芸術大学 学食二階)
会期:2022年5月23日〜27日
参加者
安達充徳(陶磁4年)
おおのるな(油画4年)
小野絢乃(日本画3年)
倉橋絃(彫刻4年)
トミヤマモニカ(芸術学2年)
中坪小鈴(油画1年)
山本丸楠(デザイン3年)
米谷莞爾(油画2年)
(以下、作家ごとのインタビュー文)
【安達充徳・倉橋絃】
小野
まず自分から安達さんに今回の展示の件をお話ししたところから始まっておりますが、本展に出品されていた作品が安達さんと倉橋さんの「合作」となるまでにどんな経緯があったのか気になります。→
安達
自分達はどっちも専攻に男子1人なので、お互いのアトリエにちょこちょこ遊びに行ったりしていました。2年生の時くらいに一緒に作品を作れたら良いねって話していたんです。
倉橋
と言いつつ、やる機会がなかったんですよね。
安達
今回の展示で、立体作品の人を呼びたいというお話を聞いたので、じゃあこの機会に合作をやろう!と思いました。
小野
そうだったんですね。実は自分の方でも彫刻専攻から誰か呼びたいなと考えていたので助かりました。
合作なので、どの部分が誰の采配で作られているのか気になりました。
倉橋
木の部分は自分で、陶の部分は安達さんが。
例外的に、茶碗の作品の顔は自分が絵付けさせてもらいました。
安達
倉橋さんが木彫に顔を描いていた作品に入っていて、じゃあこの陶器にも描いてもらおうと思って。
前にお碗を50個くらい作ったんですけど、その中で使わなかったものがありました。その器を三つ重ねて、顔を描いてもらい、髪の毛のアタリを取ってもらいました。
釉薬は自分が作ったものの中で黄色く発色する釉薬があったので、それを使って金髪っぽく仕上げました。
小野
お茶腕はかなり合作感あってかわいいです。
それに対してこちらは各々の作品を組み合わせて、ワンシーンを作っていますよね。
倉橋
そうですね。僕の作品に棍棒持ってるやつがあるってことを安達さんが知ってて、組み合わせたら良いんじゃない?って言って割れたお皿を持ってきてくれました。
小野
お互いの作品を知ってないとできないことですね。倉橋さんの彫刻には結構ぎょっとする部分もありました。棍棒持ってるのもそうですが、なんか台座から足が生えていたり…。
倉橋
彫刻の台座を自分なりにかわいい形で作ってみようと思って、足とか生やしてみました。
それに顔が描いてあるお茶碗を乗せようと最初は思ってたんです。顔と体と足みたいな感じで。
安達
でも顔の作品は顔自体で完成しちゃったというか。
倉橋
展示室で実際に乗せてみたらあんまり良くなかったんです。
なのでどういう組み合わせで展示するかは、搬入しながら判断していきました。
イメージしたものと完成したものには差があるんですけど、合作だとそれがよりありました。
安達
でも合作だからイメージが膨らみやすくて、完成まですぐだったところもあります。
茶碗とかは顔を描いたのが展示の3日前で、焼いたのがその夜でした。
小野
焼きたてほやほやだったんですね…。
なんか普通に二人展とかやってほしいです。お話ありがとうございました!
安達・倉橋
ありがとうございました。
【小野絢乃】
小野
一応自分も出品しているので、その話を少し…。
普段の制作から外れて、遊びや悪戯心が欲しい時に粘土をこねます。そんな感じで昨年制作した陶芸作品をいくつか出品しました。画像はその内の一つです。
『SuperFake』という架空ブランドを想定して、何らかの偽物を制作・販売するシリーズです。ちなみにこの作品は盆栽の偽物です。
お城にある襖絵とかって、偉い人がラクして楽しめるようになっていますよね。大木とか花鳥風月とかの実物を見に行かなくてもそれを感じられるように、技術者たちに室内を装飾させている。
そういう側面は盆栽にもあるのかなと思います。大木のミニチュア化みたいな。
なので、盆栽から「生きている」という情報を抜き取れば、手入れとか水やりが要らなくなってもっとラクになるはずです。なにより陶器になることで寿命が飛躍的に伸びて素晴らしいです。
そういう考えで《Fake Green》ができてます。
シリーズを通してアンチ真実至上主義みたいなテンションがあるかもしれません。
【米谷莞爾】
小野
昨年秋に2F次元で開催されていた米谷さんと冨川漠さんによる『ぬ展』、自分はそこで初めて米谷さんの作品を拝見しました。
その時から共通して、少ない言葉数と神経質な画面が魅力だと思っています。またモチーフ選びや題材から奇妙な印象も受けます。
米谷
今回出品した3点は、絵画の空間に対する関心があります。
《砂漠の正方形》は制作の目的が特に明確でした。境界杭が4つ並んだ単純な構成ですが、空間の面白さを練った作品です。
地形の歪みが多い砂漠に四方の領域を生み出す境界杭を設置する、視覚の面白さ。
土地を規定する境界杭を移動可能なグリーンバックにのせる、意味の面白さ。
そして油絵具の光沢や筆跡が残ることにより、グリーンバックとしての機能を損なわれます。
構図、素材ともに絵画空間への問いかけが目的の作品でした。
小野
なるほど。境界杭は測量や土地にまつわるアナログな道具だと思いますが、それを絵画やグリーンバックなどの仮想空間と結びつけている点がユニークですね。
このモチーフに着目したきっかけなどありますか?先日デザイン棟の方で杭を見かけたので少し親近感があります。
米谷
子供の頃に生活した環境からですね。
私は盆地の出身なのですが、なだらかな場所がほぼ無く歪んだ斜面が多かったです。
また冬は雪がよく降り、真っ白になった雪風景に埋もれず頭を出すガードレールやカーブミラーをよく見ていました。
どちらの視点も、今回のモチーフ選びには関係していると思います。
小野
作家が見てきたものが作品にどう落とし込まれているのか。自分はそういう観点を踏まえて鑑賞するのが結構好きなので、米谷さんから出身地の話を引き出せてよかったです。
ありがとうございました!
米谷
こちらこそありがとうございました。
執筆:日本画専攻 小野絢乃
監修:デザイン専攻 黒江ののか