デ・キリコ展の感想 ―秋色と彫刻の衝撃
デ・キリコ展に行きました。
面白かった。
私は大学で美学や美術史を学べる学科にいた。
だからといって詳しいわけではないけど、好きなのは17世紀頃の西洋画だ。
現代美術については正直よく分からないことが多い。何も知らずに嫌厭するのはやめようと、大学で現代美術史の講義は取った。それで何となく、一見意味不明な表現に存在する文脈や背景に思いを馳せることはできるようになった。
30代に入り、当時に比べれば表現の許容範囲が広がった自覚がある。もちろん歴史背景や文脈を知っていたほうが楽しみの幅は広がるが、単純に色が好き、構図が好き、この人の顔すごい、このモチーフ面白い、それぐらいシンプルに楽しんでも良いなと思えるようになった。いくつか現代美術の展示も足を運んだ。
で、デ・キリコ展である。
何となく開いたNHKプラスで美術を紹介する番組を見た時に、デ・キリコ展が紹介されていたのだ。
――何か面白いし惹かれるな。
それぐらいの興味で行ってみた。哲学も疎いので「形而上」もピンとこない。何となく夢っぽい、現実には無いものをイメージすればいいのだろうか。
消失点がバラバラだったり、立体的なのか平面的なのかよくわからなかったり。
癖はあるけれど、何か良いなと思う。そう感じたのは、色が好きだからじゃないかと思う。
赤や黄色も、煉瓦色や辛子色とでも言えばいいのか、他の色についてもダルトーンやディープトーンあたりで統一されている落ち着いた色彩。
秋っぽい、私の好きな色味だ。
確か最初の方の解説で「秋の午後は形而上絵画の理想」みたいな文章があったが、秋だからこんな色なのだろうか。それとも単にイタリア的な色?
デ・キリコ作品でよく出てくるマネキンのモチーフ。
無個性な顔に、妙に肉感のある身体がついていたり、神殿や定規などのモチーフが組み込まれたり、ある種アンドロイドやメカバレ的な要素を感じた。
展示の終盤。
そのマネキンモチーフを立体化した彫刻が並んでいた。
これがめちゃくちゃかっこいいのだ。
光沢のある金属でできたマネキンモチーフの彫刻。スッとシンプルな顔に、メリハリのある脚。
古代ギリシャ・ローマを思わせる神殿の柱や布。
直線的な定規。
これらの組み合わせが、めちゃくちゃかっこいい。
ちょっと良いホテルのロビーなんかに飾ってありそうな良さがあった。
マネキンの無個性な顔が、金属の立体になるとこんなにもかっこよくなりますか!?
写真が撮れないのが残念なので、ぜひ画像検索してみてほしい。
物販は絵画モチーフのものばかりだったけど、もっとこの彫刻作品にフィーチャーされても良いんじゃないか? と思うほど私に刺さった。
レプリカとか、そこまでじゃなくても立体のグッズがあれば買っていたかも。
調べたら御堂筋に彫刻があるんですね。
パブリックアート映えするなぁ。