おとしどころ
mosoyaro
「この方法でいこう、良いよね」
2人で顔を見合わせて同時に頷く。
「後悔しないよね」
「うん、しない。いやするかもしれない。だけどやろう」
今日は9月末だというのに残暑がひどい。
クーラーがあまり効かない部屋で私達はタンクトップと短パンで扇風機を回しながらこれからの計画を立てている。
私は前田真空、27才、独身、今親友の三浦倫子とある計画を練っている最中。
ある計画とは事件に巻き込まれた2人のもう1人の親友、中村琴の代わりの復讐計画だ。
何でこんな計画を立てる事になったかと言うと、今から一ヶ月前に遡る。
私の職業は建築家で普段は主に事務所で設計図を書いている。
まだ一級建築士の資格は取れてないが設計の評判はまずまずだった。
収入は基本給に出来高がプラスされ、頑張れば頑張るほどかせげた。
私のクライアントは女性が多く、独身の稼いでる肩書きの職業、弁護士、医師、社長が多かった。
家の相談など聞いていると、自ずとその人の人生に関わる話も出てくる。
守秘義務があるので立ち入ったりは出来ないが、お金持ちでもこんなに苦労してここまで来たんだと思える話が沢山あった。
恋愛関係の話も当然出てくる。
女が結婚という選択肢を選ばす家を建てようと言うくらいだから、何かしら思うところがあるのだろう。
仕事は気苦労も多いが面白かった。
親友の倫子は職業が看護師で近所の内科で働いている。
近所の患者が多く通院している。
高齢の方の心の拠り所のような病院で親切丁寧な診断が評判だ。
先生は大先生とまだ30代半ばの若先生で切り盛りしている。
若先生は大学病院で勤務していたが代々続く親の病院を継ぐために去年帰ってきた。
独身らしい。
入院設備はない。
重病の人、手術が必要な人は紹介状を出して大きな病院に行ってもらう。
だから夜勤はないので仕事帰りにうちに遊びに来る。
倫子と私は身長があまり変わらない。165センチ。だけど体型が違う。
倫子はやたらとグラマーで肉感的、顔がまた綺麗と可愛いをミックスした感じで、学生時代次々と告白されて男には困った事がない。
歩いているとタレント事務所にも何度かスカウトされたが、見た目とは違って性格が男っぽく、気さくで誰にでも優しいから、彼女が看護師を選んだ時、皆が納得していた。
あだ名は、リンダ。
男女問わずそう呼ばれていた。
患者さん達のアイドル的存在だが仕事はよく出来る。
頑張り屋さんだ。
私は見た目はリンダとは真逆で胸はペタンとしていて全体的に痩せっぽち、子供の頃から同じ体型。
手足が長いので洋服は上手く着こなせるのが取り柄だ。
自分で言うのも何だけど、しっかりものだ。愛想がないと言われると言われるが自覚はない。
顔は目が二重で大きいくらいで、リンダみたいに派手ではない。
落ち着いて見られる。
2人とも今は付き合っている人がいない。独身同士で気楽に酒を飲んだり、旅行に行ったりしている。
趣味はスポーツジム通い。
ある夜いつものように2人で部屋で飲んでいるところに電話がなった。
もう1人の親友、中村琴からだった。
久しぶりの電話。
「もしもし琴、久しぶりだね」
「、、、、、、」
「もしもし聞こえないけど、琴どうしたの?電波おかしいのかな?」
少し沈黙の後、泣く声が聞こえて電話が切れた。
「どうしたの、琴なんて」リンダが聞いてきた。
「それが無言だったの。
泣き声が聞こえて、何かあったのかな。こんなこと今までなかった。どうしたのかな」
「大和!大和に電話してみたら」とリンダが言った。
大和とは私の初恋の相手、立花大和。
えっ大和に。と一瞬思った。だけどためらっているわけにはいかない、電話してみた。
コール一回で出た。いかにも電話を待ってましたって感じ。
「もしもし琴、どこにいる」
慌てた声。
「もしもし大和、ごめん琴じゃ無い、真空だよ、久しぶり」
「えっ真空、ごめん琴かと思って。
実は今琴を探してて、知らない?」
「さっき琴から電話あったんだけど、無言で。泣く声が聞こえたから心配で大和に連絡したんだ。何かあったの」
「俺にもよくわからないんだ。高校の陸上部の先輩、山本岳先輩と何かトラブったみたいなんだけど、内容を聞いても絶対教えてくれないし、仕事も辞めて、ここ一ヶ月家にずっと閉じこもって泣いているし、今日こそ訳を聞こうと思って会いにきたら、言えないって言って家を飛び出したんだ。
お母さんも心配していて。理由がわからないって」
相変わらず琴を心配している。