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蛮殻ミックスモダンってド変態(健全)

皆さんこんにちは、もそししです。
スプラトゥーン3楽しんでますか?
最高のゲーム体験を提供してくれるこのタイトルですが
代表BGMの一つ、蛮殻ミックスモダンの変態性について今日は書いていきます。

蛮殻ミックスモダンって?

蛮殻ミックスモダンはスプラトゥーンのフェス2日目で広場に流れるBGMです。
すりみ連合の3人、フウカ、ウツホ、マンタローが櫓の上で踊りつつフェスを盛り上げるこのBGMですが、現代の日本では世にも珍しい技法

微分音を使っている楽曲なんです!

微分音って何?

音を微分してどうなるんだ、意味わからんとなる方もいると思いますので
この項目できちんと解説していきます。
(音楽の知識はいりません、安心して下さい。)

ピタゴラス


皆さんはド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ドをご存知でしょうか?
おそらく99%の人は聞いたことがあると思います。
このド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ドはもう少し細かく分けることができ、我々がよく聞く邦楽、洋楽問わずポピュラーな音楽は音の高さを12種類に分けたピタゴラス音律が使われています。

音律の名前の通り、これはピタゴラスというおっさんが発見したものですが彼は有名な古代ギリシャの数学者でもあります。
難しい話はできるだけ避けますが、彼は一弦琴(1本だけ弦を張ったギターを想像して下さい)を利用して弦の長さとそれを鳴らした時に鳴る音の高さから
調和の取れる音の種類
を導き出しました。
これが我々が使う音律、ピタゴラス音律またの名を十二律です。


広まる十二律

異なる高さの音を同時に鳴らしても調和の取りやすいこの音律は
ヨーロッパだけではなく、シルクロードを辿り、中国、そして日本へも広まっていきます。
こうして広まった音律はそれぞれの国の中で独自の楽曲へと進化を遂げていくものの
その根本の十二律だけは崩されずに使われ続け、今に至ります。
私達が普段耳にする音楽はほぼ全てといっていい程この十二律で作られていて、それほどまでに私達の生活に浸透することになりました。

微分音

しかし、この十二律を更に細かく分けた(微分した)音律があります。
アラブ・トルコ・イランなどのイスラム文化圏やブルガリアの民族音楽では前述の十二律を更に分けた音律が使われ続けました。
この細かく分けられて十二律では使わない音の事を微分音と呼びます。
微分音は20世紀に入って現代音楽(実験音楽)の試行錯誤の中で用いられるまでは
西洋にも東洋にも定着はしませんでした。

で、微分音が入るとどうなるの?

一言でいうと調和が取りづらくなります。
この項目もできる限りわかりやすく書いて行きます。

音は波

理科や物理の授業で習った方もいると思いますが
音は空気を伝わる波(振動)が、我々の耳の鼓膜を揺らすことで感じられるものです。
音が大きければ大きいほど大きい波に、高ければ高いほど細かい波になります。
十二律で使う音はルールに則って使えば異なる高さの音を同時に鳴らしてもこの音の波が打ち消し合うことがなくキレイに響きます。(細かいことは割愛します。)
しかし十二律の中でもこの波の組み合わせによって不快に響く音があります。
電車の踏切の音ってどこか怖いですよね?
これは十二律のすぐ隣同士の音、ファとファの#を同時に鳴らしているからです。
細かく割った音のすぐ隣同士を同時に鳴らすと基本的には(例外はたくさんあります。)調和が取れておらず不愉快な音になる傾向があります。

じゃあ微分音って…

上に書いた通り、近い高さの音を同時に鳴らすと調和が取りづらく
さらにそれ以外のルールも相まって我々が耳にする音楽と同様の使い方をしようとすると微分音では誤解を恐れずにいうと不快な響きを作る事になりかねません、更にいうと十二律に親しんだ我々の耳には十二律から少し外れた高さにある微分音はどこか音痴に聞こえてしまうこともあるかもしれません。

だからこそ凄い

音"学"の話はこれくらいにして本題に入りましょう。

蛮殻ミックスモダンの微分音は0:35辺りから流れています。
ウツホが歌っている後ろで鳴っているラッパの音のようなメロディです。

これすごくないですか!?

どこか音の高さに違和感(聞き慣れなさ)があるものの、怪しさ艶めかしさそして異国情緒の漂う唯一無二のメロディに仕上がっています。
過去の記事でこのゲームのBGMにある混沌の要素について書いたことがありますが
蛮殻ミックスモダンも例に漏れず、様々な文化、ジャンルが複合している中で
アラブで使われる十二律を更に割って二十四分割した微分音を使ったこのメロディは間違いなくゲーム史に深く深く名を刻むことになる…と私は信じています。

けど、実は任天堂初の微分音ではない

と、ここまで驚きを持ってお伝えしてきましたが
実は任天堂のゲーム作品に微分音が登場するのはこれが初めてではありません。

任天堂の代表的作品『星のカービィSDX(スーパーデラックス)』というゲームがありますが
この作品のゲームモードのひとつ『洞窟大作戦』の冒頭で流れるBGM
曲名を『地底の木々エリア』と言いますが、このBGM

なんとほぼ全編を通して微分音です。

当時のBGMは音の高さを一つ一つプログラムで指示してゲーム内のBGMを作っていたと聞いたことがありますが、作った作曲者の方は一体何を考えていたんでしょうか、凡人には想像がつかない狂気の域です。

そして『星のカービィSDX(スーパーデラックス)』の発売1996年からなんと26年ぶりに再び微分音が任天堂のタイトルに舞い戻ってきた、これも何か感慨深いものがあります。

興味のある方はぜひ聞いてみて下さい。

最後に

ゲーム一つとってもいろんな歴史や背景、そして作り手の飽くなき探究心が垣間見える瞬間があります。

楽しみ方は自由で人の数だけ楽しみ方はありますが、普段覗かないゲームの部分に触れてみる事で新しい体験、新しい発見が私達の生活を更に楽しくしてくれることは間違いありません。

この記事がそのキッカケになれば幸いです。

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