エッセイ:社会でSURVIVEするために薬物を摂る行為
世の中には実に様々な麻薬、危険ドラッグと呼ばれる物質がある。覚せい剤、MDMA、幻覚剤、大麻など────
「麻薬は一度の使用で人生を壊す社会悪」
といった言葉はよく耳にするが、それは大体その通りで薬物の力にハマってしまったが最後、合法なものしか使わなくなっていたとしても物質由来の外部の「力」に頼りがちな人間性になってしまうパターンが多いように感じる。
特に最初に示したような違法薬物は強い危険性を持っているが、それを常用する人が絶えず使用問題が常に社会的に叫ばれているのはそれら薬物がそんなリスクを孕んでいてもそれでも使用に走ってしまうような、人にもたらす明確なメリット、つまり「力」を持っているからだ。
「大いなる力には大いなる"犠牲"が伴う」
まず、彼らが持つ"力"について書いておこうと思う。
大いなる、王たる"力"
・大麻
強烈なリラックス作用を持つ。
痛みやストレス、不眠症の症状の緩和などの作用が科学的に立証されており、覚せい剤と並んで医療用途にも用いられている。
身体的な依存性、健康面への害も比較的少ないとされる。(煙に含まれるタールとかはそれなりに身体に悪い)
・覚せい剤
戦時中ヒロポンとして使用されていた事実が示すように強い中枢神経興奮作用を持つ。ドーパミン、ノルアドレナリンの放出促進、再取込阻害によって疲労、眠気を絶対に消し飛ばし、絶頂の快感を底上げし、最強の集中力をもたらす。この集中力はカフェインやチロシンの比ではない。
・幻覚剤
LSDやDMT、シロシビンなど。
英語で幻覚剤を指すpsycedelicという言葉には精神拡張剤という意味を含むように、思考や感覚の幅を広げる作用があるとされている。
特に前述のものはいくつかの国で精神疾患や薬物依存症の治療にも活用されており、その他にもシナプスの再結合を進めることによって記憶力の向上、トラウマやメンタルブロックの治療に役立てることが出来るとされている。
…ここで示したものはあくまで一部に過ぎないが、これらは、あまりに強大な力ゆえ人々を狂わせ、恐れられ、時として過剰に取り締まられてきた歴史もある。
実際に覚せい剤やヘロインの依存性などは非常に危険で、実際規制もやむなしといった具合であるが、これらはリスクに目をつぶりさえすれば明確に人に与えられた「力」なのである。しかし、これら「力」の中には社会に溶け込み、現在も法の下で人々に用いられているものもある。一例を以下に示す。
世間に溶け込んだ"力"
・カフェイン
カフェインは神経を鎮静させる作用を持つアデノシンという物質と化学構造が似ており、アデノシン受容体にとりついてアデノシンの働きを阻害することにより神経を興奮させる。
言うまでも無く、覚醒作用、疲労感減弱などを得ることができる。
しかし、副作用として睡眠の質の低下、パニック障害の悪化などがあり実際にリスクを伴っている。
・たばこ
ニコチンやハルマンの作用によってドーパミンの放出、再取込阻害を行い、ストレスの緩和などを行う。
身体依存性があり、また色々な添加物により色々な発がん性等を有するとされる。
・酒
アルコール。鎮静作用を持つ。
身体、精神依存性があり発がん性等を有する。
・糖分
血糖値が上昇するか、あるいは甘味を感知した場合に、暗算による精神的ストレスが緩和される。
しかし、糖尿病や肥満のリスクがある他、依存性を有している。
…以上に示したものもあくまで一例である。
人は仕事を効率的に行うために依存や健康リスクを冒してカフェインを摂取し、社会の軋轢でストレスを感じてはたばこやアルコールの作用で紛らわし、気分が沈めば糖分を摂取しているのだ。
このように違法薬物を避けて生活している人々であっても実際は実に多くの精神・身体作用を持つ物質に頼り、社会生活を送っているのである。
物質がもたらす作用を活用して生活するという行為は、実際のところ断じて悪いことという訳ではない。大昔から大麻やケシなどは儀式の要素や文化として活用されてきた歴史があり、それらの何千年という長い歴史に比べれば世界的な規制が行われているのは1926年のハーグ阿片条約の発効から数えて100年ほどと極めて最近のことなのだ。
法による規制がすべてで無いとするならば、「善い物質」と「悪い物質」の判別は難しく、過剰に健康に悪くは無いか、過度な依存性は無いか、流行の結果社会にとって重大な悪影響を及ぼさないか。といったような基準で判断していく他ない。
逆に言えば、独自の基準であれリスクよりも自らが使うメリットの方が大きいと考えられるのなら(そして法律が許すのなら)それは「善い物質」であり、有効に活用すべきだという考え方もできる。
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最後に、筆者である私自身が選んだ社会を生き抜くために有効な「善い物質」を記す。
使い勝手を伴う"力"
・DMAE
正式名称ジメチルアミノエタノール。
アセチルコリンという神経伝達物質の前駆体(材料)で、抗炎症作用と急性の皮膚引き締め作用から化粧品に配合されることもある。
記憶力や集中力に良い影響をもたらすとされる。
自然界ではイワシなどの魚類に含まれている。
要するにセロトニンの材料であるトリプトファンのサプリメントを飲むといったような体内に存在する栄養素の補給であるので危険性は少ないであろう。
・チロシン
チロシンはアミノ酸の一種。
チーズや大豆、納豆などに含まれている。ドーパミンやアドレナリン、ノルアドレナリンの前駆体で、それらの複合的な働きによって集中力の向上が期待できる。
同上。
・エスゾピクロン※
非ベンゾ系の睡眠薬。超短時間作用型睡眠薬とされていて、ひと昔前に多用されていたベンゾジアゼピン系睡眠薬に比べて副作用が極めて少ないとされ、現状個人輸入も可能な数少ない睡眠薬である。
エスゾピクロンには脳の神経を鎮める作用があり、不安や緊張感をほぐし、気分をリラックスさせて自然に近い眠りに誘う作用がある。(3)
これを利用すれば、深刻なストレスを感じたり過度な疲労状態で極めてネガティブになっている時にも脳を鎮静化させてストレスを緩和することが可能である。
強いストレスを感じて眠れなかったり、業務に支障を及ぼすことは誰しもあるが、それが起こった時に常にリカバーが効いたり助けてくれる他人が居るとは限らず、時には耐えかねてうつ状態になってしまうこともある。それを未然に防ぐために、あくまでお守りとしてなら非常に有効に使用することが出来る、
しかし、ベンゾ系の睡眠薬よりも安全とはいえ、このエスゾピクロンにもたしかに依存性や不眠症、不眠症の悪化などのリスクがあり本来は易々と使うべきものではない。
武器を持て(まとめ)
われらが社会で独り立ちし、並みの生活を得るためには、絶えず他人を蹴落とし、上司と部下の主張に板挟みになり、無茶ぶりに過酷なタスク、評価、世間体など過度なストレスに曝されその中で歩いてゆかねばならない。
何年か耐えても孤独感や上がらぬ評価、同期の出世、結婚問題など問題はさらに山積みになっていく。その中で、いずれカフェインと酒とたばこで身体を壊し、精神も壊れることは珍しくない。
凡庸なわれわれががそんな過酷な砂漠でSURVIVEするのは至難の業で、しかも君のような先天的に注意力が散漫で記憶力が悪く、不眠症を患う”ギリ健”の人間たちにとっては特に厳しい世界であることは疑う余地もない。
犯罪行為やモラルを犯すのは以ての外だが、使える武器を存分に振るい、使える物質を使い、自分が持てるすべてのポテンシャルを最大限発揮した上でこの現代という不毛の砂漠を生き抜いてゆくのは決して間違いでは無いのではなかろうか。
社会からの重圧に耐えかねて死ぬか。それとも最低限のリスクを背負いSURVIVEするのか。判断の余地は常に存在している。