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宇宙ステーションのような高速エレベーターに乗って
建築現場とひとことで言っても
色んな現場があります。
その中でも大きくふたつに分けると
野丁場(のちょうば)と町場(まちば)
というものになります。
野丁場というのは主にビルや高層マンションなど
規模の大きな現場のことで、
町場というのはアパートや小さめのマンション、
戸建住宅などの比較的小さめな現場の
ことを言います。
私はどちらの現場でも作業しましたが
小さい現場に行くことが多く
たまに行く野丁場現場では驚くことが
たくさんありました。
そして今回のお話しはそんな野丁場現場での
エピソードをお話ししたいと思います。
まず、野丁場現場は規模が大きいので
現場の人数が100人単位で動きます。
朝の朝礼からラジオ体操など決まったルールに
従って大勢の作業員が動くのです。
また新規で現場に入ると朝礼で挨拶する
ことがよくあります。
これは現場にいる人への顔合わせのようなもので
通常はどこの会社所属の何者なのかを名乗る
程度ですみますが、
厄介な現場だと趣味を言わされたりします。
現場の雰囲気を和ませる目的なのか
職人同士上手くやっていくためのものか
何らかの意味があるかと思いますが、
100人以上の人の前で大声で
自己紹介というのは何度やっても
慣れませんでした。
私の場合、女職人ということで
出来るだけ目立たないようにしたいものの
この自己紹介で一発でバレてしまうのが
とても居心地悪かった記憶があります。
なぜなら当時100人以上の職人の中
野丁場現場にいる女性は2〜5人未満くらい。
職人さんと言っても色んな人がいます。
わざわざ顔を見てくる人や露骨に煙たがる人も
いました。
気にしないようにしていても
出来れば気づかれないで作業出来るに
越したことがない状況でした。
そんな中一番嫌だったのは
ラジオ体操の後にあった
『肩揉み』…
建築現場はどうかしてると正直思いました。
自分の会社メンバーでも微妙なのに
見ず知らずのおじさんの場合は
かなり気まずいです…。
そしてその気まずさを紛らわすため
大体のおじさんは
「やだなぁ〜セクハラになっちゃうよ〜〜〜。」
と大声で言う
→
それが聞こえてみんな見る
→
そして笑われる
このセットで初日から否応なく自分の存在が
目立ってしまうのです。
そんな中、作業現場は35階建てビルの屋上部分。
現場にある高速エレベーターというものに
はじめて乗り込みます。
列に並んで一回につき20人くらいの作業員を
鉄格子のような檻の乗り物に乗せて
結構なスピードで一気に上がっていきます。
その中でもやはり女性だとバレると
おじいちゃん職人さんは訛りの強い方言で
何か言っては笑ったりしてました。
笑われた意味すら分からないまま
地上がどんどん小さくなっていく。
想像よりも結構なスピードで上がっていく
この簡易的な乗り物。
そんな状況を不安に感じながらも
もう身を任せるしかない。
自分の荷物が下に落ちないよう
強く握りしめてました。
そんな中、訛りの強いおじいちゃん職人さんは
ポケットから飴を出して私に渡してきました。
どうやら悪いことを言われてた訳では
なさそうです。
こんな不思議な乗り物に乗っていると
宇宙ステーションにでも繋がっていくような
不思議な感覚になります。
それでもフロアに到着した瞬間
現実に戻されます。
そして野丁場現場の日常は淡々と進みます。
地上からこんな離れたところで
今日もたくさんの人が働いている。
自分もそのひとりになったことで
はじめてリアルに知った出来事でした。