Vケット3エントランスに込めた狙い
挨拶
ごきげんよう。
お久しぶりです。そしてVケット3お疲れ様でした。
イベントの後って何か文章に残しておきたい欲が出てくるので、今回もまた色々綴っておこうと思います(1週間経ってしまった…)。
いくつかのノートに分けてジャンル別に述べていこうと思います。ひとまずこれはエントランス編ということで。
今回私はワールドのクリエイティブな部分についての監督を務めました。いわゆる見た目の部分で直した方が良いところを指摘したり、導線などUXを整えていく段階で助言したりする役です。
またワールドの中でもエントランスとquest ワールドは設計から制作までやりました。
そのエントランス、実は色々な想いを詰め込んでるので、このノートはそこにフォーカスした話をしようと思います。
テーマとワールドの関係
今回のVケットのテーマは「Another Reality」。
もう一つの現実です。最近よく言われるパラリアルのことを主に指してます。
もう一つの現実とは、今いる空間から見ると異世界とも言えると思います。でもそんな異世界も、実は隣り合ったあるいは混ざり合った空間の中に存在する、自分が多かれ少なかれ知覚してる別の世界に過ぎなく、もはやどこから自分がいる現実でどこからが現実ではないかなんて定義するのも難しいぐらい複雑な思考と空間構造をしているのが現実です。
話は飛びますが、私は割と身近な異世界がコミケ(というよりあの有明周辺の空間そのもの)なんですよね。りんかい線で国際展示場駅に降り立ち改札を出るところが異世界への切り替わりポイントの一個です(あくまで私の中の感覚です)。
そんなこともあり私は今回、いわゆる想像しやすい現実(今回は電車や駅)というレイヤーからVRの世界に移り変わる空間の遷移、はたまたそこから色んな世界に更に繋がっていくという形態が合っていると考えました。
テーマに合わせたシナリオ
先に盛大なネタバレをします。このエントランスにはストーリーというか、シナリオが存在しており、そのシナリオがAnother Realityを体験するような構造になってます。
以下設定したシナリオ
1. バーチャルマーケットへの道が、現実世界(駅)に空間を呑み込む形で出現し、リアルとバーチャルを繋げる。
2. VR東日本 臨海有明線が異常事態とみなし、運休する。
3. Vケットが現実側まで飛び出て好き放題する。ポスターを貼ったり専用車両を作ったりVケットちゃんがお客さんを案内したり。
4. お客さんが専用車両で来てリアルからバーチャルへ、エントランスからまた別世界の各ワールドへ訪れる。
5. 濃い8日間が終わるとVケットはお祭りなので全て撤収。空間も元どおりになる。
6. 残ったものは異常事態で運休していた駅のみ。
エントランスはこのような流れがありました。それぞれの事象から伺える裏の働きを書くと、
1.の時は我々が半年かけて準備したAnother Realityを開放する瞬間ですね。開会式を行なって初めて機能するデザインです。
2.しばらく現実のことは忘れ(休んで)お祭りを堪能してくれっていう示唆です。人間は様々な空間に移動は出来ますが、体験は同時に一つしか行えません。バーチャルに来たならリアルは一時的に考えたくないです(個人的見解)。
3.現実とバーチャルのグラデーションを表現してます。そもそもどこか(現実だとしても)別世界に行こうと思っても、ディズニーランドは券売所がありますし、コミケも駅から出ると長くて広い道路を歩きますし、空間と空間の間にはなにがしかお互いの要素が滲み出てきている空間が存在するものです。私はその次の空間への片鱗を見つけることでテンションが上がります。曲のサビに差し掛かる前のビルドアップみたいですね。
4.来場者の心象を表してます。現実でも心はVケット(バーチャル)へ行こうと思っているので、あなたの心は目的地が一つしかない専用列車に乗せられたようなものです。そしてエントランスからその先更に色んなワールドへと赴くという行動そのものが、レールみたく一本の抽象的な導線を表現してます。
5.あくまでVケットはお祭り・イベントなので終わりがあります。バーチャルはまたバーチャルの世界へ一旦引っ込みます。
6.「Vケットは終わったんだ」って思っているものの、心の中ではどこかまだ終わりたくないと思ってる、まだ残留した高揚感がある、そんな中途半端な気持ちを表現するために帰る電車もなくシャッターも閉まってる運休したままの虚無空間で表現してみました。お陰で残された虚無空間で寝転がるスクショがTLに流れてきて私は大変満足しております(それと、あの分かりやすく隠したメッセージも気づいてくれてありがとう😊)。このフェーズを挟んで皆さまクールダウンできましたでしょうか?
さて、駅の部分を語るだけでもめちゃくちゃ長くなってしまいましたが、エントランスのストーリーは駅からワープして神殿に飛び、あとは別ワールドに移動したらストーリーが完了します。
空間の明るさと広さを利用してプレーヤーの気分を制御する
こういう体験型の空間を作る場合、プレーヤーの気分を制御することは大切です。照明の置き方ひとつで盛り上がったり盛り下がったりします。今回は技術的な話は置いておいて、全体の流れを説明します。曲を作る感覚でこのように今回はしてみました。
動画や曲やプレゼンも抑揚やテンポや展開に変化がある方が面白いですよね。空間も同じです。今回は特にワープゲートの部屋と神殿に強くギャップを付けることでリッチな展開を作ろうと試みました。
Vケットちゃんの存在
今回バーチャルマーケットのマスコットであるVケットちゃんが初めて立体で登場しましたね。ワールド担当してた私がそのまま魂を吹き込んだんですが、Vケットちゃんのイメージを私が決定しかねないかビクビクしながら作業してました。
来場者を手招くというよりかは、待ち構えてて、お客さんが近づくと逃げていくという構図が見受けられたと思います。
私の中でVケットちゃん1号は神秘的で不可思議な存在、妖精みたいなポジションだと勝手に思っていて(解釈違いだったらごめんなさい)、どこか近くて遠い存在にしたかったので、あまりサービス精神のあるムーブではありません。しかし神殿にワープしたら、そこは流石のアンバサダー。しっかりと拡張メニューのチュートリアルは案内してくれます(ここスクショポイント)。宙に浮くのはVケットちゃんズは妖精さんだからです(確固たる意志)(2号は羽根のデザインまでされていましたし)。
なんか一部ではVケットちゃんと神殿にどちらが速く到達できるかレースしてる人もいたみたいですね。そういうことをやる方が出てくるのは承知でしたので、制作時に私自身がVケットちゃんとレースして速度とアニメーションを調整してました。Vケットちゃんには絶対に勝てない…
Vケットちゃんが無料配布されたことによってアバターにされてる方も多く、ついつい見かけると話しかけてしまいます。かなりこだわった改変をされてる方もいらっしゃってとても良いですね。
Vケットチャン カワイイヤッター!!!
神殿について
私は勝手にワープ先の白い空間を神殿と呼んでるんですが、あの神殿真っ白ですよね。実はVケット1の会場の作風をオマージュしてて、現実っぽいけど現実じゃない感を出すのに、床から壁から何から白いのは結構有用な手段です。また2のエントランスも白いクジラでした。エントランスは往々にして白を基調にしてますが、これは毎回清潔感、新鮮さ、神秘さを表現しようと思っての配色になります。
突然ですが皆様サクラダファミリアはご存じでしょうか。めちゃくちゃ簡単に言うと、バルセロナにあるハチャメチャにでっかい教会で1882年から作り始めてるのにまだ完成してない建築物です。
今回のエントランスではサクラダファミリアの雰囲気を踏襲しており、あの威風堂々な佇まいを再現してみました。
ワープ直後、少し見上げるとドドン!とそびえており、迫力のスケール感があると思います。
建物の高さは125mぐらいあります。秋葉原UDXに25mプールを縦にくっつけたぐらいの大きさです(分かりづらい)。
前面にあるゲートを含めると三角構図を作ることができ、堂々さ、ダイナミックさを表現できます。逆にこの構図にするにはめちゃくちゃ高い建造物を作らなきゃいけなかったので、造形が大味になって(色も白1色なので)情報量が物足りなくならないように工夫するのが大変でした。
↓ある程度の階層ごとにデザインの傾向を変える。
なぜサクラダファミリアなのか。
私がVTuber始めて初期のころupd8の担当者さんと雑談していて、「各所に色んな趣があって人が増えてくたびに色々な機能や空間が増築されていくバーチャル事務所みたいのがあったらいいよね(当時VRオフィスが流行ってた)。サクラダファミリアみたいに永遠と建設してるでっかい建物になりそう。」という話をしてました。
Vケットは様々な思想、作品が並ぶ街・世界そのものになりつつありますが、その様子は長い目で見るとどんどん人が増えていき、新しい世界を構築していっているように見えます。まさに私が担当者さんと話していたバーチャルサクラダファミリア思想に近いものを感じたので、今回はそれを象徴的に表現してみたくなったのです。
終わりに
また某プロダクションの某氏に文章なげーよって言われそうなので(前回のVケットの私が書いたノートを見て言われました)、そろそろこの辺で区切ろうかと思います。ここまで読んでいただきありがとうございます。これはエントランスのみにフォーカスしてますが、ほかにもVRでUXを作るときに言えることについてや技術的な話も書いていこうと思います。
それではみなさま、ごきげんよう。
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