少女談話

【登場人物】
少女①:種を探している
少女②:種を持っている

*****

少女①「ねぇ、種持ってる?」
少女②「種?」
少女①「そう、種」
少女②「どんな種?」
少女①「えっどんな種?」
少女②「どんな種が欲しいの」
少女①「種って、そんなに沢山あるの?」
少女②「あるよ。星の数ほどあるよ」
少女①「え、今はそんなにいらない」
少女②「じゃあ、いくつ欲しいの」
少女①「数じゃないんよ」
少女②「数じゃないの?」
少女①「質なの」
少女②「質」
少女①「そう、質」
少女②「どんな質の種が欲しいの」
少女①「まぁ質も大事なんだけど、その次に数も大事かな」
少女②「やっぱり数じゃん」
少女①「でも今は質重視で」
少女②「質って、どんな?」
少女①「栄養価が高いやつ」
少女②「雑な指定だなぁ」
少女①「雑じゃないよ、大事でしょ栄養」
少女②「大事だけどさ」
少女①「栄養価が高いと、どんどん大きくなってくれるから」
少女②「なにが?」
少女①「そりゃあ、種から生まれたアイツだよ」
少女②「種から生まれたアイツが大きくなるのは、栄養価の高いこやしのお陰じゃないの?」
少女①「こやしも大事だけど、種の方が重要なの」
少女②「なんで?」
少女①「いくら肥やしが上質でも、種の質自体が良くないと大きさにも限度があるでしょ」
少女②「それは種自体の栄養価じゃなくて、種の種類によるんじゃないの?」
少女①「それはそれ、これはこれはこれなの」
少女②「どうゆうことよ」
少女①「質のいい花子と質の悪い花子なら、質のいい花子がいいに決まってる」
少女②「花子が可哀想」
少女①「質のいい太郎と質の悪い太郎なら、質のいい太郎がいいに決まってる」
少女②「太郎も可哀想だよ」
少女①「でも、質のいい花子と質のいい太郎を比べても、花子は太郎じゃないし、太郎は花子じゃないから、どっちの質がいいとか比べられることじゃないの。だって花子は太郎じゃないし、太郎は花子じゃないから」
少女②「同じ種類同士じゃないと比べることは出来ないって言いたいの?」
少女①「そうとも言う」
少女②「言い方が紛らわしい」
少女①「で、種、持ってる?質のいいやつ」
少女②「花子と太郎なら、どっちが欲しいの」
少女①「んー、今は花子かな」
少女②「残念、花子は品切れです」
少女①「なんで先にそう言わないの?!」
少女②「太郎じゃダメ?」
少女①「ダメじゃないけど……今は花子の気分だった」
少女②「花子のこやしならあるけどだめかな?」
少女①「えっ待って。花子のこやしで太郎の種を育てるの?」
少女②「できないの?」
少女①「出来るとは思うけど……」
少女②「はい、太郎」
少女①「質は?」
少女②「太郎の中じゃ上等じゃないかな」
少女①「そうなんだ。こやしは?」
少女②「花子の中ではわりと上位」
少女①「じゃあ、どっちももらうよ」
少女②「まいどありー」
少女①「お金取るの?!」
少女②「気分だよ」
少女①「びっくりしたぁ」
少女②「それ、どうするの?」
少女①「植えるに決まってるじゃない」
少女②「どこに?」
少女①「えっ、どこって?」
少女②「場所は重要だよ」
少女①「決めてなかった」
少女②「まじで?」
少女①「気にしてなかった」
少女②「気にしなよ」
少女①「重要だなんて知らなかった」
少女②「もう分かったから」
少女①「どこに植えればいいかな」
少女②「それ、私に聞くの?」
少女①「だって分かんないんだもん」
少女②「じゃあ、そこに植えてみればどう?」
少女①「え、どこ」
少女②「そこだよ、そこ」
少女①「そこじゃわかんないよ」
少女②「ひかる」
少女①「え?」
少女②「そこ、ひかるって言うの」
少女①「ひかる」
少女②「とりあえず、そこに植えとけば?」
少女①「ひかるに?」
少女②「そう、わからないならひかるでもいいじゃん」
少女①「大丈夫かなぁ」
少女②「ひかるが可哀想だからやめな?」
少女①「そうじゃないよ、でも私、ひかるのことよく知らないから」
少女②「よく知らないなら調べるんだよ、徹底的に。調べて調べて、ひかるでいいって納得したら、植えなよ」
少女①「そっか」
少女②「そうだよ」
少女①「じゃあ、調べてみて、ひかるにしようって思ったら、植えることにする」
少女②「それがいいよ」
少女①「ねぇ」
少女②「なに?」
少女①「ちゃんと育てられるかな」
少女②「まずは生まれてきてからじゃない?」
少女①「そっか」
少女②「そうだよ」
少女①「じゃあ、太郎をひかるに植えて、花子のこやしで育ててみるよ」
少女②「がんばれ」
少女①「うん」
少女②「できあがったら、きっと見せてね」
少女①「もちろん」
少女②「じゃあ、私行くわ」
少女①「どこに?」
少女②「決めてないけど」
少女①「戻ってくるよね?」
少女②「もちろん」
少女①「うまくいったら、あなたに1番に見せたいわ」
少女②「うれしいな」
少女①「げんきでね、またね」
少女②「うん、またね」

─少女②、どこかに去る

─少女①、決心したように種を植える

少女①「おおきくなあれ。沢山愛されますように」

─END─

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