ドン・キホーテのポップのような
中学生のころ、かわいい文字が書ける人になりたい、と思っていた。
友達に一人、森のこぐまか、こりすが書いたような、メルヘンチックな文字を書く子がいたのである。
本人も、シルバニアファミリーから抜け出してきたような風貌で、先輩や先生にたいそうかわいがられていた。
私は、というと、優等生のしっかり者扱い、まあ長女だし、そういう役割なのだろうと思ってはいたけれど、頼られるより、頼りたいときもあった。
つまり、ないものねだりで、妹キャラに憧れていたのである。
いきなり顔や体つきを変えることはできないが、せめて文字くらい、彼女に寄せられないだろうか、と思った。
奇麗な文字より、丸っこくてかわいい、愛され文字を書く人になりたい。
そう思って、まねして練習もした。
けれど、まったく上達する気配もなく、私の書く文字は、ただただバランスの悪いつぶれた形の羅列だった。
**
長じて、「POPライター」という仕事があることを知る。
30代のころだったろうか。
「子育て中でも、すきま時間に書いて納品すれば高収入!」
だとか
「初心者でも、ばっちり教えますので、だれでもプロのようなポップがすぐ書けます」
だとか、広告には書いてあったと記憶する。
後半の「誰でもプロのようなポップが書ける」というところに、10数年ぶりにハートを撃ち抜かれ、やってみようかと思ったことがあった。
だが、くわしく話を聞くと、完全出来高制で、研修期間中は、ほぼ無収入だという。
それでもなりたいか?というと、そうでもなかったので、申し込まなかった。
過去の経験から、修行して、どうにかなるレベルだとも、思えなかったし。
適材適所、きっと私には、もっとほかに生きる道があるだろう、と自分を慰めた。
けれど、今でも店頭のポップは好きだ。
ドン・キホーテに行くと、かならず商品と同じくらい、ポップを見ている。
たぶん、子どもの頃の気持ちをずっと引きずっているのだろう。
かわいい文字を書く人に弱い。
あいかわらず憧れている。
だから、私はnoteにプロのポップライターさんがいるのを見つけてから、ひそかに彼女をフォローしてきた。
そして、先日、急に思い立って、彼女に私のプロフィールnoteのヘッダー画像を書いてもらうことにしたのだった。
たぶん、この人なら、私の頭の中のイメージを具現化してくれるに違いない、と確信めいたものを感じた、と言えばいいだろうか。
(人はそれを「思い込み」と呼ぶ。勝手に確信を持たれた方には、いい迷惑である)
けれど実際、いくつかの私のタグと、好きな色と、ラフイメージをお伝えしただけで、彼女は私をリードしてくれた。
そして、めちゃくちゃかわいいポップ文字で、私のプロフィール画像を、驚くべき速さで作ってくれたのである。
さすが、時間と闘うプロのPOPライターさんである。
ドン・キホーテ言うところの「驚速」である。
(ドン・キホーテの看板の「驚安」は、何と読むのが正しいのだろう?)
ここに掲載したのは、本採用しなかったけれど、かわいすぎてどこかでお披露目したいと思った2作品である。
見てほしい!
この完璧なバランスの「は」と「す」!!
「地方在住」という漢字もまるで、ひらがなみたいに軽々と踊っている。
「野外保育士」の5文字の絶妙なサイズ感。
もう、かわいい以外の何も言えない。
ひとり、ニヤニヤしていたら、なんと、バカリズムさんも、Twitterのヘッダー画像に、ドン・キホーテ風ポップ文字を採用しているのに気づいた。
ほーらね、やっぱり時代は今、ポップ文字なのだ。
あの「ブラッシュアップライフ」のバカリズムさんだって、まるっとドン・キホーテなんだもの。
うっしっし。
本採用画像のお披露目の日は近いぜよ。
**連続投稿405日目**