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ローグライクハーフシナリオ『腐った金貨』


ローグライクハーフシナリオ『腐った金貨』 作者:もるも

ローグライクハーフ基本ルール入手先

本シナリオは下記を想定して作成しています。
・プレイヤー(人数):1
・プレイ時間(分):15~30分
・対象年齢(歳):10~99歳
・ゲームマスター:不要

・ジャンル:ファンタジー
・レベル:初級
・難易度:Normal
・形式:シナリオ(d33)
・世界:アランツァ

『腐った金貨』はテキスト形式とWebブラウザ上で遊ぶ形式の二種類の形式で公開しています。
Webブラウザ上で遊ぶ場合は、下記のリンクからゲームを実行してください。テキスト形式のシナリオを参照する場合は、このまま読み進めてください。


序文

背景

 アランツァ南部に位置する商業都市ナゴール。
 薄桜川の西岸に築かれ、交通と流通の要衝として古くから栄えた大都市だ。
 水運技術では大陸一を誇るナゴールの港には大小様々な貨物船や旅客船が行き来し、中にははるか大陸の反対側に位置する貿易都市ビストフへ向かう船もある。

 ナゴールの市内は新しく整然とした新市街と、雑然とした旧市街に分かれる。

 新市街はドラッツェンとの戦争後に整備された区画で、綿密な都市計画に基づいて設計された。
 石畳で舗装された街路は幅広く、荷馬車や手押し車がスムーズに行き来することができる。
 街路に沿って街路樹が植えられ、その下には大小様々な露店が連なり、異国から仕入れた珍品の数々を並べている。
 ナゴールを統治する4人の代表者の邸宅も新市街にあり、庁舎や衛士隊本部などの行政施設も新市街に集中している。
 ナゴール経済を支える商業組合の本部や交易所も新市街に存在し、大陸各地から集められた様々な品物が取引され、1年を通して賑わいが絶えることはない。
 
 一方旧市街はドラッツェンとの戦争前から残る地区だ。
 古い建物が密集し、細い路地がまるで迷路のように入り組み雑然としている。
 旧市街には新市街のような大きな交易所はないものの、昔から続く小規模な商店が数多く存在している。
 そこで扱われている商品は、新市街では扱われないような珍しい品々も多い。
 そして、それには非合法な禁制品や麻薬も含まれている。

 この物語は欲望渦巻くナゴールの市内が舞台となる。

プロローグ

 彼は石畳の道を行き来する人々を濁った目でただ眺めていた。
 ナゴールの新市街の通りに植えられた街路樹の下、地面に座り込んだ彼の前には欠けた陶器の小鉢が置かれている。
 小鉢の中には数枚の銅貨と1枚の銀貨が入っていた。
 
 今日は実入りが少ない。

 通りを歩く人々を眺めながら、彼はぼんやりと考える。
 昨日までは比較的実入りの良い日々が続いていた。
 4日前には羽振りの良さそうな商人が金貨を1枚投げ入れた。
 だが今日は午前中いっぱい座り、銅貨数枚に銀貨1枚だ。

 まぁ、こんな日もあるか。

 そんなことを思った途端、小鉢からチャリンと音が響いた。
 彼は小鉢を見ようともせず、投げ入れた男を目で追った。
 
 ケチな商人め。銀貨くらい入れやがれ。

 物乞いになって何年経ったのだろうか。
 今では音を聞いただけで投げ入れられた硬貨の種類が分かるまでになった。
 銅貨と銀貨を聞き分けることはもちろん、同じ銀貨でもナゴールの銀貨なのかフランチェスコ司祭の横顔が彫られた聖フランチェスコの銀貨なのかも音だけで判別できる。

 歩き去って行く商人の後ろ姿を目で追っていた彼の視界に見回りの衛士の姿が割り込み、そちらに視線を移す。
 2本先の通りに二人組の衛士が見える。
 おそらく見回りだろう。
 新市街での物乞い行為は禁止されている。
 衛士に見つかれば追い払われ、場合によっては今日のわずかな上がりすら没収されかねない。
 しかし彼は衛士達をぼんやり眺めながらも、地面に座ったまま動こうとしない。
 やがて衛士達は別の通りへと消えていった。

 この街の乞食達は皆、乞食組合に所属している。
 乞食組合は盗賊組合の下部組織で、街の乞食達を統率しているのだ。
 組合は傘下の乞食達から儲けの一部と見聞きした噂などを集め、その見返りとして乞食達を保護している。
 乞食達が仕入れた取引、事件、醜聞の噂は盗賊組合に流されるのだ。
 彼が今日物乞いをしている場所は組合から指定された場所だ。
 組合が指定した通りには、”なぜか”衛士達の見回りはやってこない。

 チャリンと乾いた音が響く。

 衛士達を目で追っていた彼は、その音に視線を戻す。
 小鉢には黄金色の金貨が1枚入れられていた。
 ナゴールの紋章が描かれた金貨だ。
 
 おかしい。

 彼は違和感を感じ、硬貨を投げ入れた男を目で追った。
 商人ではない。
 旅人のような服装の男が、足早にその場を去って行く。
 急いでいる雰囲気が伝わってくる。
 
 彼が感じた違和感は、投げ入れられた金貨の音だった。
 聞き慣れた金貨の音とは違っていたように感じたのだ。
 
 彼は自然な所作で小鉢を抱えると、ゆっくりと立ち上がった。
 そして大通りを外れ、細い路地へとゆっくり歩いて行く。
 3回ほど角を曲がった先の物陰で立ち止まると小鉢の中身を確認する。
 
 小鉢の中に入っているのは紛れもないナゴールの金貨だ。
 手に持ってみるが、重さや光沢、表面の感触には違和感が無い。
 試しに小鉢の中に放ってみるが、その音には先ほど感じたほどの強烈な違和感は感じられなかった。

 気のせいか。

 しかし、一度感じた違和感を拭うことはできず、金貨は小鉢に戻さず懐にしまっておいた。
 仕事が終わったら組合で確認しよう。
 そう考えながら通りに戻ろうとした彼は、通りから聞こえてくる声に足を止めた。

 そう遠くには行っていないだろう、探せ!
 金貨を取り戻したら、乞食は殺せ。

 くそったれ。

 彼は懐にしまった金貨を握りしめて悪態をつくと、踵を返して通りとは反対方向へ歩き出した。
 彼の小鉢に投げ入れられたのは、金貨では無く厄介事だったようだ。

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 時を同じくして、ナゴールに到着したあなたは新市街の街路を人混みに揉まれながら歩いていた。
 聞いていたとおりの活気に溢れた街の様子を眺めながら、当面の予定を考える。

 何にせよ、まずは腹ごしらえか。

 腹から上がる抗議の声に背中を押されながら、あなたは露店の建ち並ぶ広場に向かった。

概要説明

 ■ゲームの概要
 「ローグライクハーフ」シナリオ「腐った金貨」へようこそ。このゲームはプレイヤー1人で遊ぶことを想定しています。
 あなたは自分の分身である「主人公」を作成します。これは「冒険者」とも呼ばれる、万能ではないが十分に強いキャラクターです。
 『腐った金貨』ではレベル10~13のキャラクターでのプレイを想定しています。
 ゲーム進行の詳細については後述します。

 ■ゲームの特徴
 「ローグライクハーフ」のシナリオは、短い時間でTRPGを遊んだような満足感を与えてくれます。部屋を探索し、ワナをかいくぐり、敵を蹴散らして、最終的な目的へと臨みます。
 しかし、気をつけてください。冒険の一部はランダムで形成されているため、必ずしも成功するとは限りません。判断を誤り、運に見放されたとき、あなたの大切なキャラクターは冷たい墓石の下で、永い眠りにつくことになるでしょう。

 ■ゲームに必要な物
 筆記用具と六面体サイコロ1個があれば、すぐにもゲームをはじめられます。「冒険記録紙」をプリントアウトしておくと、手もとで情報を管理できて遊びやすいでしょう。

 ■ゲームの準備
 本作『腐った金貨』を始める前に、あなたは主人公を準備してください。冒険を進めるためのルールを読むか、いつでも読めるように手もとに置いてからゲームを開始します。
 本ゲームはレベル10~13のキャラクターでのプレイを想定しています。
 基本ルールブック記載の装備の購入および従者の雇用を行ってください。
 冒険の舞台はナゴール市内のため、ナゴールを舞台にしたサプリメントに追加の装備や従者のデータがあれば、利用してかまいません。

 ■ゲームの進行
 『腐った金貨』の進め方はゲームの進行によって変わりますが、最初は1本道モードで進行します。
 1本道モードではあなたは次のイベントを決定するためにダイスを振る必要はありません。「次へ進む」ボタンをクリックすることで、ランダムに決定される次のイベントへ進みます。
 ゲームが進行すると、別の進め方で進行することになりますが、その際は本文の指示に従ってください。

 ■冒険とゲームの勝利
 このゲームの勝利条件はゲーム開始時点では不明確な状況になっています。
 それはゲームが進行するにつれて、はっきりするでしょう。

 ■隊列
 『腐った金貨』における戦闘には、隊列という概念はありません。主人公と「戦う従者」は、敵を好きなように攻撃できます。
 敵側の攻撃は、主人公が1人の場合には、攻撃の半分を主人公が受けてください。残りの半分は従者が受けます。
 いずれの場合でも、余った攻撃をどちらが受けるかは、プレイヤーが決めてください。

 例:インプ7体が主人公と「戦う従者」である兵士3人を攻撃した。インプの攻撃は合計で7回である。プレイヤーは攻撃のうち3回分を主人公が、残りの4回分を従者が受けることに決める。従者である兵士は【防御ロール】に失敗するたびに1人ずつ死亡する。

 ■ゲームの終了(冒険の成功と失敗)
 主人公が1人死亡したら、冒険は失敗で終了します。最終イベントを終えた場合にも、ゲームは終了します。そのときに条件を満たしていれば、冒険は成功に終わります。

 ■制約事項
 戦闘からの逃走は明示的な指示がない限り行えません。
 ブラウザの「戻る」ボタンや、「再読み込み」ボタンはクリックしないでください。

ナゴール旧市街

【冒険の始まり】

 ナゴールを訪れたあなたは、露店で買った羊肉の串焼きを街路樹にもたれながらかぶりついた。
 脂がしたたり、ほどよい塩味が食欲をそそる。
 
 ナゴールの新市街には人が溢れ、あなたと同じ冒険者と思われる者達も多い。
 あなたは羊肉を頬張りながら、しばらくこの街に滞在して冒険のネタを探すのも悪くはないかとぼんやり考える。
 通りを行き来する人々を眺めていたあなたは、一人の人物が目にとまった。
 ぼろぼろの布を纏ったみすぼらしい男だ。
 物乞いなのだろう。周囲の人々に近づくと、小銭をせびっているようだ。
 男の動きを目で追っていたあなたは、不意に顔を上げた男と目が合った。
 すると、男はよぼよぼとした足取りであなたに近づいてくる。
 
 やれやれ、目をつけられてしまったか。
 あなたは小銭入れから銅貨を数枚取り出した。
 銅貨数枚の施しくらいはかまわない。
 しかし、あなたの目の前にやってきた男は差し出した銅貨を受け取ることは無く、代わりに紙に包まれた何かをあなたの手に握らせるとそのまま離れていった。
 あなたは怪訝な思いで男に渡された紙を見る。
 皺だらけの紙には殴り書きで何かが書かれている。

 「骨董街のゴルダ爺に」とだけ読むことができ、その後は全く読めない文字が書かれている。
 そして、紙には1枚の金貨が包まれていた。
 あなたは顔を上げて先ほどの物乞いを探したが、すでに雑踏の中に紛れ見つけることはできなかった。

 この紙を骨董街のゴルダという者に届けてほしいということだろうか。
 金貨はその報酬ということなのだろう。

 あなたは咀嚼していた羊肉を飲み込むと歩き始めた。
 急ぎの予定があるわけでは無い。のんびりと街を散策がてら届け物をするのもいいだろう。

 -------------------------- 
 
 ナゴール旧市街の骨董街で「ゴルダ」という人物を探すことが目的だ。
 D33を振り、次に訪れる出来事(マップタイル)を決定する。
 探索により「手がかり」を二つ入手すれば「ゴルダ」の居場所が判明し、中間イベントへ進むことができる。 

【旧市街 11】露店

 旧市街の細い路地を歩いていたあなたは、鼻腔をくすぐる甘い匂いに足を止めた。
 匂いの元は焼き菓子を売っている小さな露店だ。
 桜森産の蜂蜜を使ったという焼き菓子は甘い匂いを漂わせ、あなたの胃袋を刺激してくる。
 あなたは食欲に負け、銅貨を払って焼き菓子を購入した。
 (小銭のため、所持金を減らす必要は無い)
 香ばしく焼けた菓子は、サクサクとした食感で一口食べるだけで蜂蜜の甘みが口いっぱいに広がっていく。
 露店で焼き菓子を売るコビットの女性は、桜森の蜂蜜は春から初夏にかけてが旬なのだとあなたに告げた。
 あなたは焼き菓子をもう一つ購入し、蜂蜜の甘みを存分に堪能しながら路地を先に進むことにする。

【旧市街 12】ポプリ売りの老婆

 旧市街の細い路地を歩いていたあなたは、道ばたに座った老婆に声をかけられて足を止めた。
 老婆は大きく広げた敷物の上に座り、老婆の前には様々な乾燥した草花が並べられている。

 香り袋はいらんかね。

 老婆は上目遣いであなたを見ながら、もごもごとした口調で声をかけた。
 どうやら花や香草を混ぜた香り袋を売っているようだ。
 値段を聞くと、一つ金貨1枚だという。
 試しに嗅がせてもらうと、爽やかで甘い花の香りが漂ってくる。
 冒険の役に立つとは思えないが、香りが気に入ったなら買っていってもいい。
 その場合、所持金から金貨1枚を減らし、持ち物に『香り袋』を加えること。

【旧市街 13】ドブネズミの王冠亭

 あなたは1軒の酒場の前で足を止めた。
 『ドブネズミの王冠亭』という看板が掛けられた酒場には水煙草の煙が漂い、数人の客がおのおののテーブルでエールや水煙草を味わっている。
 
 あなたは酒場に入るとカウンターに銀貨を1枚置きエールを注文した。
 (小銭のため、所持金を減らす必要は無い)
 酒場の主人は中年のコビットで、カウンターの奥を忙しそうに走り回っている。
 おそらくカウンターの向こうには人間の腰丈くらいの台が置かれているのだろう。
 彼はあなたの前にジョッキ入りのエールを置いた。

 冒険者か、見ない顔だな。ナゴールは初めてか?

 あなたはエールを飲みながら、骨董街のゴルダという人物を探していると主人に告げた。
 ゴルダという名を聞いた途端、主人が笑顔はそのままで目だけを細めるのに気づいた。

 古時計のゴルダじいさんだな。
 骨董街で古い時計店をやってる。目立つ店だから行けば分かるだろうよ。

 それだけ告げると踵を返すと、他の客の応対に戻っていった。
 あなたはエールを飲み干すと、店を出て先に進むことにする。

 「手がかり」を一つ入手した。
 あなたがすでに「手がかり」を一つ入手していれば、これでゴルダの居場所が分かる。
 【中間イベント】へ進むこと。
 これが最初の「手がかり」なら、まだ探索を続ける必要がある。

【旧市街 21】礼拝所

 旧市街の細い路地を歩いていたあなたは、ある建物の前の人だかりに足を止めた。
 建物は石造りの古い建物で、入り口のゲートには鉾を掲げたマーマンの彫刻が設置されている。
 どうやらここは海神ホリィドゥーンの礼拝所のようだ。
 海運業が盛んなナゴールでは海神ホリィドゥーンを信仰する人が多く、新市街には大きな神殿が建てられている。
 新市街の神殿以外にも街のあちこちに小規模な礼拝所が点在し、海の安全を祈願する人々が絶えず訪れているそうだ。
 
 ちょうど礼拝の時間だったのだろうか、日焼けした肌の男達が次々と礼拝所の中に入っていく。

 見かけん顔だが、あんたも礼拝に来たのか?

 真っ黒に日焼けした肌の老人が、あなたを見上げながら話しかけてきた。
 あなたは通りがかっただけだと伝えると、老人は噛み煙草で黄色く染まった前歯を見せながら豪快に笑った。

 そうか、そうか、船乗りにしちゃ青白いと思ったんじゃ。
 わしは明日から航海じゃからな。海が凪ぐよう海神様にお願いに来たんじゃよ。

 老人はそう言うと、あなたに背を向けて礼拝所の中に入っていった。
 あなたは礼拝に向かう人々に背を向け、先に進むことにする。

【旧市街 22】チンピラ

 旧市街の細い路地を歩いていたあなたは、ガラの悪そうな男の集団とすれ違った。
 その直後、あなたは後ろから肩を掴まれ、振り返った。
 そこには先ほどすれ違った男達がにやついた顔であなたを見ている。

 おい、今ぶつかっただろ。人にぶつかっておいて詫びも無しか。

 あなたはぶつかってなどいないと返すが、男達は聞く耳を持たない。
 人数が多いためか強気な姿勢を崩さず、これ見よがしにナイフをちらつかせている。
 やれやれ、少し痛い目を見せた方が良さそうだ。

 『チンピラ(Thug)』
 分類:弱いクリーチャー
 種別:善の種族
 レベル:4
 出現数:1D3 + 3
 宝物:1D3
  1 :金貨1枚
  2 :金貨1D3枚
  3 :金貨1D6枚
 反応表:1d6
  1-4 :ワイロ(一人あたり金貨2枚。断れば敵対的になる)
  5-6 :敵対的(半数が死亡した場合、逃亡する)

 戦闘を回避するか、倒したら先に進もう。

【旧市街 23】乞食

 旧市街の入り組んだ路地を歩いていたあなたは、地面に座った乞食から声をかけられて立ち止まった。
 地面に座り込んだ乞食は大きな火傷の痕のある顔を上げ、あなたに施しを求めた。
 両目は白く濁っており、おそらく盲目なのだろう。

 あなたは腰の財布から銀貨を1枚取り出すと、乞食の前に置かれた欠けた椀に投げ入れた。

 乞食はあなたに何度も礼を言うと、捜し物があるなら力になれるかもしれないとあなたに告げた。
 なぜ自分が捜し物をしている事が分かったのかと乞食に尋ねると、乞食はあなたの足音が捜し物をしている足音だったと答えた。
 にわかには信じられない話だったが、あなたは乞食に骨董街のゴルダ爺という人物を探していると伝えた。

 骨董街なら、この先の十字路を左に折れた先で・・・

 乞食はあなたに骨董街までの道筋を教えてくれた。
 
 「手がかり」を一つ入手した。
 あなたがすでに「手がかり」を一つ入手していれば、これでゴルダの居場所が分かる。
 【中間イベント】へ進むこと。
 これが最初の「手がかり」なら、まだ探索を続ける必要がある。

【旧市街 31】サイコロ賭博

 建物の軒先で、小さなテーブルを囲んで数人の男がサイコロ遊びに興じている。
 テーブルの上には賭け金と思われる金貨が何枚も置かれている。

 くそったれ!今日はやめだ!これ以上負けたらヨメに殺されちまう。

 負けが続いていたのだろう。男の一人が叫び声を上げて天を仰いだ。
 男は懐から金貨を取り出し、テーブルに叩きつけると席を立った。
 
 どうだ、あんたちょっと遊んでいかないか?

 テーブルに残った男の一人があなたに声をかけ、空席になったスツールを視線で示した。
 あなたは誘いに応じてカード賭博に参加してもいい。
 気が乗らなければ断って先に進んでもいい。

 サイコロ賭博に参加するなら、以下のルールで判定を行うこと。

 ・ゲームはあなたと相手の1対1で行う
 ・サイコロ2個をお互い同時に振り、ゾロ目(2個とも同じ数字)を出した方が勝ちになる
 ・同時にゾロ目になった場合は数字の大きい方が勝ちになる。
 ・二人とも同じ数字でゾロ目になった場合は、ギャラリー全員に酒を奢る。(金貨1枚を減らすこと)
 ・敗者は勝者に金貨1枚を支払う。
 ・サイコロを振りゾロ目にならなかった場合は、次のサイコロの振り方を2種類から選択できる。
  1.サイコロ2個を振る
  2.サイコロ1個の出目をそのままキープし、1個だけ振る。
 ・相手は6の出目があればキープを行い、そのほかの場合はサイコロ2個を振るものとする。

 所持金が許す限り何回勝負を行ってもいい。
 ゲームを終えたら先に進むこと。

【旧市街 32】スリ

 おっと失礼。

 その男は酒に酔っているのかふらふらとした足取りで、すれ違いざまにあなたにもたれかかるようにぶつかったのだ。
 至近距離から酒臭い息浴び、あなたは思わず顔をしかめる。
 おとこは片手をあげてあなたに詫びると、そのままふらふらとした足取りで歩き去ろうとしている。

 目標値5の【器用ロール】を行うこと。

 男はスリだ。
 
 【器用ロール】に成功すれば、財布をすられたことに気づき、男を捕まえることができる。
 スリがばれた男はあなたの財布を返すと、見逃してくれるように懇願する。
 あなたは次に自分を狙ったら問答無用で衛士に突き出すと言い含め、男を解放してやる。

 【器用ロール】に失敗した場合は、腰から下げていた財布をすられてしまう。
 所持金は何カ所かに分けて持っていたため所持金すべてを失うことは無かったが、所持金の半分を失ってしまう。

【旧市街 33】薬売り

 旧市街の路地を進むあなたは、薬草を売っている露店の前で足を止めた。
 地面の上に敷いた敷物の上に乾燥させた薬草や水薬を並べている。
 店主は目深にフードをかぶっており、種族も性別もはっきりしない。
 商品を見ると麻薬など新市街の店では見かけないような薬も多い。
 役に立ちそうな薬があれば購入してもいい。
 
 ・強壮薬(金貨5枚)
  戦闘時0ラウンド目に飲むことができ、3戦闘ラウンドの間攻撃ロールに+1のボーナスを得ることができる。
  ただし反動により4戦闘ラウンド目はすべての判定ロールに-1のペナルティが加わる。(ペナルティは1ラウンドのみだ)

 ・しびれ薬(金貨5枚)
  戦闘時0ラウンド目に敵に投げつけることができる。
  【器用ロール】の達成値が敵レベル以上だった場合、対象のレベルを3戦闘ラウンドの間-1する。
  【器用ロール】の達成値が敵のレベルの2倍を超えた場合、追加でもう1体の敵にも影響を与える。
  例)敵のレベルが4で【器用ロール】の達成値が8だった場合、敵2体を痺れさせることができる。

 ・狂化薬(金貨20枚)
  従者にあらかじめ飲ませておくと、戦闘で死亡するダメージを受けても1戦闘ラウンド活動でき、その後に死亡する。
  その間にポーション等で生命点を回復させることはできない。

 買い物を終えたら先に進むこと。

【中間イベント】

 あなたは『ゴルダ時計店』という古びた看板の店の前で立ち止まった。
 どうやらここが『ゴルダ爺』の店のようだ。
 あなたが店に入ると、カウンターの後ろに立っていたコビットの店員があなたに挨拶した。

 いらっしゃいませ。どんな時計をお探しですか?
 うちの時計はどれも最高の品質です。一度ゼンマイを巻けば10日は動き続けます!
 これなんかいかがでしょうか?フーウェイ産のトレント樫で作った置き時計です。他には・・・。

 コビットの店員はカウンターの上に所狭しと商品を並べ始めた。
 あなたは客として来たのではなく、ゴルダ爺宛ての手紙を預かったのだと伝え、広場の乞食から受け取った紙を差し出した。
 店員は落胆の表情を隠そうともせず紙を受け取ると、その場で待つようにあなたに告げて、肩を落として店の奥に入っていった。

 親方がお会いになるそうです。こちらへ。

 暫くの後に店の奥から戻った店員は、あなたに奥の工房へ行くように告げた。
 あなたはカウンターの横を回り込むと、店の奥へと続く戸を開けて工房へ入る。
 入った先は工具や作りかけの時計、工作盤などが無造作に置かれた雑然とした部屋だ。
 その中央の作業机に片眼鏡をかけた白髪頭の年老いたコビットが陣取っている。
 どうやらこの年老いたコビットがゴルダ爺のようだ。
 
 おまえか。
 金貨はどこだ?見せてみろ。

 ゴルダ爺は横柄な口調であなたに向かって手を差し出した。
 あなたは最初何を言われているのか分からなかったが、紙に包まれた金貨のことだと思い当たり、懐から金貨を取り出すとゴルダ爺に手渡した。
 金貨を受け取ったゴルダ爺は、片眼鏡で金貨の表面を調べ、秤に乗せて重さを量ったりと、あれこれ調べ始めた。
 あなたは所在なく立ち尽くすしかないが、ゴルダ爺はあなたのことなど気にも止めずに金貨を調べている。
 あなたがしびれを切らして声をかけようとした矢先に、ゴルダ爺は片眼鏡を外すとあなたの方を見上げた。

 まったく、厄介な物を持ち込んでくれたもんじゃ。

 大きなため息をつくゴルダ爺に、あなたは金貨がどうかしたのかと尋ねた。

 どうかしたのかじゃと!?
 そうじゃ。どうかしたのじゃ!
 よく見ておけ。

 そう言うとゴルダ爺は作業机の上に並べてあった工具で金貨の端を削り、削りカスをランプの炎に振りかけた。
 途端、火が一瞬だけ赤紫に変色したのだ。

 金はこんな色にはならん。
 何かが混ぜられている。これは偽金貨じゃよ。
 
 ゴルダ爺は、年季の入ったパイプにパイプ草を詰め、火をつけた。
 それを咥え、ゆっくりと味わった後に煙を吐き出した。

 精巧な偽金貨じゃ。
 わしでも普通の金貨に混ざったら見分けがつかんじゃろう。
 誰が作ったのかは分からんが、これが大量に流通すればナゴールにとっては大きな打撃じゃ。

 その時、若いコビットの店員が会話に割り込んできた。
 
 表にガラの悪い客が何人か来ています。
 ウチのモンじゃないです。
 こちらの冒険者の方を探しているようです。

 なるほど、この金貨はよほど知られては困る物らしい。
 わしが応対しよう。

 ゴルダ爺は腰をさすりながら作業台の椅子から立ち上がった。
 そして、持っていた金貨をあなたに投げ返した。

 この金貨はお前が持っていろ。
 他の金貨と決して混ぜるなよ。
 ピロー、こいつを裏口へ案内しろ。
 わしが時間を稼ぐ。裏口から出て新市街の衛士隊本部に向かい、隊長のイングリッドに金貨を渡せ。
 じゃじゃ馬にはこちらから鳩を飛ばしておく。
 
 さあ、こちらです。急いで。

 あなたは受け取った金貨を懐にしまうと、ピローと呼ばれた店員のコビットの後に付いていく。
 ピローはあなたを連れて工房の奥にある倉庫へ向かい、床の板を取り外し始めた。
 床板を外すと、そこには地下へと続く縦穴が現れた。

 この穴は地下の下水道に通じています。
 ナゴールの地下には下水道が張り巡らされていて、これをたどれば新市街まで行くことができます。
 下に降りたら、南東を目指してください。新市街のはずれに着きます。

 あなたはピローに促されるまま、縄ばしごを降りていく。

下水道の冒険

【冒険の幕間】

 縄ばしごを降りた先は地下の下水道になっている。
 中央に下水の流れる幅10フィートほどの水路があり、両側はそれぞれ3~5フィートほどの狭い通路になっている。

 下水の饐えた匂いが充満している。
 まったく、数刻前には賑わった広場で焼いた肉にかぶりついていたのに、とんだ災難に巻き込まれたものだ。
 とは言え降りかかる火の粉は払わねばならない。
 あなたは磁石で方位を確かめると、言われたとおり南東を目指して歩き出した。
 下水道は網の目のように分岐し、まるで巨大な地下迷宮のようだ。

 一刻ほど歩いたところで、あなたは足を止めた。
 水音に混じり、聞き慣れない音が聞こえたような気がしたのだ。
 気のせいだろうか?
 あなたは立ち止まり、耳を澄ます。
 気のせいでは無い!下水が流れる音に混じり、今度ははっきりと聞こえた。

 犬の吠え声だ!それも複数の!

 どうやら追っ手は地下下水道に犬を放ったらしい。
 今はまだ遠いが、楽観は到底できない。
 急いで出口に向かわねばならない。
 漆黒の下水道で決死の逃走劇が幕を開けた。

 下水道は地下のため、ランタン等の明かりがない場合、判定ロールに-2の修正が加わる。

 下水道でのゲーム進行では二つの特殊ルールに従って進行する。
 
 ◇特殊ルール1
 下水道のマップは11から66の36タイルで構成されているが、次のマップタイルを決めるためのダイスロールはD33を使用する。
 各マップタイルでは次に移動する方向を選ぶことができ、方向によりD33に指定された補正値を加えて次のマップタイルを決定する。
 なおD33に補正値を加えた結果、十の位または一の位が6を超えた場合、6として扱う。
 例1)補正値+10と指示がある場合、D33の結果が12であれば、補正値+10を加算した【22】が次に進むマップタイルとなる。
 例2)補正値+25と指示がある場合、D33の結果が12であれば補正値+25を加算すると37となり、6を超えた場合は6として扱うため【36】が次に進むマップタイルとなる。
 (Webブラウザ上で遊ぶ場合はD33および補正値の計算は自動で実行されるため、あなたがD33を振る必要はない。)
 なお、D33の結果が実施済みのマップタイルであっても、そのマップタイルを再度実施する。
 マップタイルで発生するイベントは初回しか発生しないイベントと、2回目以降にも発生するイベントがある。記載内容に従うこと。
 ただしD33に補正値を加えた結果が、現在のマップタイルと同じになった場合は、D33を振り直すこと。

 ◇特殊ルール2
 下水道では経過時間をメモしておくこと。(最初は0だ)
 マップタイルでは「経過時間+1」のように経過時間を加算するように指示があるため、記載に従って加算を行うこと。
 出口を見つけるのに手間取ればどうなるかは、遠くから聞こえる犬の吠え声を聞けば容易に想像がつく!
 
 あなたが今いるのは【11】のタイルで、目指す下水道の出口は【66】タイルだ。

【地下下水道 11】

 遠くから聞こえる犬の吠え声が、あなたの足を否応なく速めさせる。
 一刻も早く地上に脱出しなくてはならない。

 もしここを訪れるのが2回目以降なら、あなたはスタート地点に戻ってしまったことになる。
 毒づいている暇はない!急げ!

 東または南の方向へ進むことができる。
 
 東へ向かうなら、D33に+1の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+10の補正、経過時間+1

【地下下水道 12】

 地下下水道を南東目指して進んでいるあなたは、足を止めた。
 東に向かう水路は脇の足場が崩れており、水路を飛び越えないと進むことができそうにない。
 南に向かう水路は特に問題なさそうだ。

 東に向かうなら、目標値5の【器用ロール】を行うこと。
 失敗した場合、下水路に落ちてしまう。
 失敗した場合でも東側の足場にたどり着くことはできるが、生命点を1点失い、余計な時間をかけてしまったことで経過時間に1加算すること。

 東に向かうなら、D33に+2の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+10の補正、経過時間+1

【地下下水道 13】

 下水路は西と南に延びており、東に向かうことはできない。
 南に向かうか、一旦西の方向に戻ることもできる。

 南に向かうなら、D33に+11の補正、経過時間+1
 西に戻るなら、D33の補正無し、経過時間+1

【地下下水道 14】

 地下下水道の水路に沿って東に進んでいたあなたは、通路に横たわる人影に足を止めた。
 近づいて確認するが、すでに死亡して白骨化している。身につけている装備から冒険者と思われる。
 持ち物を調べるとガラス製の小瓶が見つかった。中身を確かめたところ油のようだ。
 この『油の小瓶』を持って行ってもいい。
 戦闘時に敵に投げつけて火をつければ、『炎球』と同じ効果が期待できる。
 なお、判定は『器用ロール』で判定を行う。その他は『炎球』の魔術を参照すること。

 この場所を訪れるのが2度目以降の場合、『油の小瓶』はあなたが持って行っていなければ、そのまま残っている。
 ただし、先の訪問時に持ち去っていれば、当然存在しない。

 下水路は東にも南にも進むことができる。

 東へ向かうなら、D33に+3の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+12の補正、経過時間+1

【地下下水道 15】

 地下の下水道を東に進んでいる。
 目指す出口は南東の方角だ。
 時折聞こえる犬の吠え声が、若干近づいてきているように感じる。
 急がなくてはならない。

 下水路は東にも南にも進むことができる。

 東へ向かうなら、D33に+4の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+13の補正、経過時間+1

【地下下水道 16】

 地下の水路を東に向けて歩いていたが、壁に阻まれてこれ以上東に進むことはできそうにない。
 南に向かおうとしたあなたの真横、壁に空いた穴の奥から何か物音が聞こえる。
 そして、それは徐々に大きくなっている!

 目標値5の【器用ロール】を行うこと。

 失敗した場合、壁の穴から勢いよく噴出した汚水に弾かれて下水道に落ちてしまう。
 生命点-1、経過時間+1すること。
 成功した場合は、間一髪で避けることができる。

 この場所を訪れるのが2度目以降の場合、汚水の噴出は発生しない。

 東には進めないため、南に向かうか、一旦西の方向に戻ることもできる。

 南に向かうなら、D33に+14の補正、経過時間+1
 西に戻るなら、D33に+3の補正、経過時間+1

【地下下水道 21】

 あなたは地下下水道を南東を目指して進んでいる。
 東、または南の方向へ進むことができる。

 東へ向かうなら、D33に+1の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+20の補正、経過時間+1

【地下下水道 22】

 地下下水道の暗がりから、ガサゴソという物音が聞こえる。
 足を止めたあなたの目の前に、物陰から巨大なネズミの群れが飛び出してきた!

 この場所を訪れるのが2回目以降の場合、大ネズミは出現しない。

 『大ネズミ(Giant Rat)』
 分類:弱いクリーチャー
 種別:動物
 レベル:3
 出現数:1D6 + 4
 宝物:なし
 反応表:1d6
  1-4 :ワイロ(食料1食。与えなければ敵対的になる)
  5-6 :敵対的(半数が死亡した場合、逃亡する)

 戦闘を回避した場合は経過時間の加算はない。
 戦闘を行った場合は、3戦闘ラウンド以内に勝利できた場合、経過時間+1すること。 
 4戦闘ラウンド以上かかった場合は、経過時間+2すること。

 水路は東もしくは南に向かうことができる。

 東へ向かうなら、D33に+2の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+20の補正、経過時間+1

【地下下水道 23】

 あなたは地下下水道を南東を目指して進んでいる。
 東、または南の方向どちらへも進むことができる。

 東へ向かうなら、D33に+3の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+21の補正、経過時間+1

【地下下水道 24】

 あなたは地下下水道を南東を目指して進んでいる。
 時折聞こえる犬の吠え声が否応なくあなたの足を速めさせる。
 東、または南の方向どちらへも進むことができる。

 東へ向かうなら、D33に+3の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+22の補正、経過時間+1

【地下下水道 25】

 物陰からカサカサという音と共に、黒光りする姿の巨大な甲虫が現れた。

 この場所を訪れるのが2回目以降の場合、巨大甲虫は出現しない。

 『巨大甲虫(Giant Roach)』
 分類:弱いクリーチャー
 種別:虫類
 レベル:4
 出現数:1D6
 宝物:なし
 反応表:1d6
  1-4 :ワイロ(食料1食。与えなければ敵対的になる)
  5-6 :敵対的(半数が死亡した場合、逃亡する)

 戦闘を回避した場合は経過時間の加算はない。
 戦闘を行った場合は、3戦闘ラウンド以内に勝利できた場合、経過時間+1すること。 
 4戦闘ラウンド以上かかった場合は、経過時間+2すること。

 水路は東もしくは南に向かうことができる。

 東へ向かうなら、D33に+4の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+23の補正、経過時間+1

【地下下水道 26】

 東側は壁に阻まれて進むことができず、南方向に進むか西に戻るしかない。
 壁の前には小さな古びた箱が無造作に置かれている。
 調べてみると、どうやら鍵がかかっているらしく蓋が開かない。

 解錠を試みても良い。
 その場合、目標値6の【器用ロール】を行い、成功すれば解錠することができる。
 解錠できた場合、箱の中の『身代り人形』を一つ入手できる。
 これは所持者の受けるダメージを1点のみ引き受けてくれる魔法の品だ。
 従者に持たせることもできる。
 ダメージを引き受けた人形は粉々に壊れてしまう。
 解錠を試みた場合、成功失敗にかかわらず経過時間+1すること。

 この場所を訪れるのが2度目以降の場合、箱はなくなっている。

 南に向かうなら、D33に+24の補正、経過時間+1
 西に戻るなら、D33に+3の補正、経過時間+1

【地下下水道 31】

 あなたの目の前には壁が現れ、来た道を戻る以外に進める方向はなさそうだ。
 辿っていた水路は壁の下の穴に吸い込まれている。

 不意に漂ってきた悪臭にあなたは顔をしかめる。
 周囲を見渡すと、すでに腐敗した食料の山がある。
 もちろん食べることはできない。
 だが、この下水道に住むクリーチャーにとっては別だ。
 持って行けば戦闘を回避することができることもあるだろう。

 この場所に来るのが2度目以降の場合、腐った食料はすでになくなっている。
 あなたが持って行ったのでなければ、下水道に住む生き物が処理したのだろう。
 
 悪臭を我慢できるなら、『腐った食料1食』を持って行ってもいい。
 食料1食分のワイロとして使用することができる。
 ただし持っている間は悪臭により、すべての判定ロールに-1の修正が加わる。
 匂いに我慢できなくなったら、いつでも捨ててかまわない。
 なお『香り袋』を持っていれば、悪臭によるペナルティは受けない。

 北へ戻るなら、D33の補正無し、経過時間+1

【地下下水道 32】

 地下下水道を南東目指して進んでいるあなたは、足を止めた。
 南に向かう水路は脇の足場が崩れており、水路を飛び越えないと進むことができそうにない。
 東に向かう水路は特に問題なさそうだ。

 南に向かうなら、目標値5の【器用ロール】を行うこと。
 失敗した場合、下水路に落ちてしまう。
 失敗した場合でも南側の足場にたどり着くことはできるが、生命点を1点失い、余計な時間をかけてしまったことで経過時間に1加算すること。

 東に向かうなら、D33に+12の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+30の補正、経過時間+1

【地下下水道 33】

 物陰から、緩慢な動きで屍食鬼が現れた!
 新鮮な肉を前によだれを垂らしながら、あなたに迫ってくる。

 この場所を訪れるのが2回目以降の場合、屍食鬼は出現しない。

 『屍食鬼(Ghoul)』
 分類:弱いクリーチャー
 種別:アンデッド
 レベル:5
 出現数:1D3
 宝物:1D3
  1 :金貨1D3枚
  2 :金貨1D6枚
  3 :宝石(金貨10枚の価値)
 反応表:常に死ぬまで戦う

 屍食鬼に『炎』の特性を持つ攻撃を行う場合、判定ロールに+1のボーナスを得る。
 屍食鬼の攻撃に対する防御ロールに失敗した場合、目標値5の【幸運ロール】を行い、失敗したら麻痺を受ける。
 麻痺した場合、この戦闘中すべての判定ロールにー1のペナルティを受ける。

 3戦闘ラウンド以内に勝利できた場合、経過時間+1すること。 
 4戦闘ラウンド以上かかった場合は、経過時間+2すること。

 東と南、どちらの方向にも進むことができる。

 東へ向かうなら、D33に+13の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+31の補正、経過時間+1

【地下下水道 34】

 地下下水道を南東目指して進んでいるあなたは、足を止めた。
 東に向かう水路は脇の足場が崩れており、水路を飛び越えないと進むことができそうにない。
 南に向かう水路は特に問題なさそうだ。

 東に向かうなら、目標値5の【器用ロール】を行うこと。
 失敗した場合、下水路に落ちてしまう。
 失敗した場合でも東側の足場にたどり着くことはできるが、生命点を1点失い、余計な時間をかけてしまったことで経過時間に1加算すること。

 東に向かうなら、D33に+13の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+32の補正、経過時間+1

【地下下水道 35】

 地下の下水道を南東に向けて進んでいる。
 ここは広場のような空間が広がっており、腰を下ろして休むことができそうだ。
 
 ここで休息をとり食料を食べる場合、通常の生命点2点に加えて更に副能力点を1点回復することができる。
 ただし休息を取った場合、経過時間に+1すること。

 下水路は東にも南にも進むことができる。

 東へ向かうなら、D33に+14の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+32の補正、経過時間+1

【地下下水道 36】

 東側は壁に阻まれて進むことができず、西に戻る以外は南方向に進むしかない。
 どうやらここは地下下水道の東端にあたるようだ。
 このまま南に進めば出口にたどり着けるかもしれない。
 
 南に向かうなら、D33に+25の補正、経過時間+1
 西に向かうなら、D33に+13の補正、経過時間+1

【地下下水道 41】

 地下の下水道を出口を目指して進む。
 狭い通路を慎重に進むが、突如あなたの足下が揺れた。
 
 目標値5の【器用ロール】を行うこと。

 失敗した場合、足場が崩れてバランスを崩し、下水路に転落してしまう。
 生命点-1、更に這い上がるのに時間を要してしまうため、経過時間+1すること。
 成功すれば間一髪転落を免れる。

 ここを訪れるのが2回目以降の場合は、足場の崩落は発生しない。
 
 下水路は東にも南にも進むことができる。

 東へ向かうなら、D33に+21の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+30の補正、経過時間+1

【地下下水道 42】

 地下の下水道を進んでいる。
 目指す出口は南東の方角だ。

 下水路は東にも南にも進むことができる。

 東へ向かうなら、D33に+22の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+30の補正、経過時間+1

【地下下水道 43】

 地下下水道を進んでいるあなたは、進行方向を壁に阻まれて立ち止まった。
 東にも南にも壁があり、これ以上進むことができない。
 
 遠くから犬の鳴き声が聞こえる。
 焦る気持ちを抑え、一旦西か北に戻るしかない。

 北に戻るなら、D33に+1の補正、過時間+1
 西に戻るなら、D33に+10の補正、経過時間+1

【地下下水道 44】

 地下の下水道を進んでいる。
 目指す出口は南東の方角だ。
 今、どのあたりまで進んでいるのか見当がつかない。
 不安な気持ちを抑えて、とにかく先に進むしかない。

 下水路は東にも南にも進むことができる。

 東へ向かうなら、D33に+24の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+42の補正、経過時間+1

【地下下水道 45】

 地下下水道を南東目指して進んでいるあなたは、足を止めた。
 東に向かう水路は脇の足場が崩れており、水路を飛び越えないと進むことができそうにない。
 南に向かう水路は問題なさそうだ。

 東に向かうなら、目標値5の【器用ロール】を行うこと。
 失敗した場合、下水路に落ちてしまう。
 失敗した場合でも東側の足場にたどり着くことはできるが、生命点を1点失い、余計な時間をかけてしまったことで経過時間に1加算すること。

 東に向かぬなら、D33に+24の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+42の補正、経過時間+1

【地下下水道 46】

 東側は石壁に阻まれて進むことができない。
 石壁沿いに南に進むか、後戻りを承知で西に戻ることもできる。
 時折聞こえる犬の吠え声が、かなり近づいてきたように感じる。
 急がなくてはならない。
 
 南に向かうなら、D33は振らずに【56】へ進む。経過時間+1
 西に戻るなら、D33に+22の補正、経過時間+1

【地下下水道 51】

 地下の下水道を南に進んでいる。
 目指す出口は南東の方角だ。
 どれくらい進んだのだろうか。
 時折遠くから犬の吠え声が聞こえるが、反響しているためか距離が掴みづらい。

 下水路は東にも南にも進むことができる。

 東へ向かうなら、D33に+31の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+40の補正、経過時間+1

【地下下水道 52】

 地下下水道の天井で羽音が聞こえ、あなたは足を止めた。
 見上げたあなたの目前にオオコウモリの群れが襲いかかってきた!

 『オオコウモリ(Giant Bat)』
 分類:弱いクリーチャー
 種別:動物
 レベル:4
 出現数:1D6 + 3
 宝物:なし
 反応表:1d6
  1-3 :ワイロ(食料1食。与えなければ敵対的になる)
  3-6 :敵対的(半数が死亡した場合、逃亡する)

 空中を飛び回るオオコウモリには近接武器での攻撃は難しい。
 近接武器の【攻撃ロール】には-1のペナルティが加わる。

 この場所を訪れるのが2回目以降の場合、オオコウモリは出現しない。

 戦闘を回避できた場合は経過時間の加算は無い。
 3戦闘ラウンド以内に勝利できた場合、経過時間+1すること。 
 4戦闘ラウンド以上かかった場合は、経過時間+2すること。

 下水路は東にも南にも進むことができる。

 東へ向かうなら、D33に+32の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+40の補正、経過時間+1

【地下下水道 53】

 地下の下水道を南東に向けて進んでいる。
 ここは広場のような空間が広がっており、腰を下ろして休むことができそうだ。
 
 ここで休息をとり食料を食べる場合、通常の生命点2点に加えて更に副能力点を1点回復することができる。
 ただし休息を取った場合、経過時間に+1すること。

 下水路は東にも南にも進むことができる。

 東へ向かうなら、D33に+32の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+41の補正、経過時間+1

【地下下水道 54】

 地下下水道を南東目指して進んでいるあなたは、足を止めた。
 南に向かう水路は脇の足場が崩れており、水路を飛び越えないと進むことができそうにない。
 東に向かう水路は問題なさそうだ。

 南に向かうなら、目標値5の【器用ロール】を行うこと。
 失敗した場合、下水路に落ちてしまう。
 失敗した場合でも南側の足場にたどり着くことはできるが、生命点を1点失い、余計な時間をかけてしまったことで経過時間に1加算すること。

 東に向かうなら、D33に+24の補正、経過時間+1
 南に向かうなら、D33に+42の補正、経過時間+1

【地下下水道 55】

 地下の下水道を進んでいる。
 地下下水道に降りてからかなり時間が経過している。
 歩いた距離からして出口は近いはずだ。
 あなたは焦る気持ちを抑えながら、歩みを進める。

 下水路は東にも南にも進むことができる。

 東へ向かうなら、D33は振らず【56】へ進む。経過時間+1
 南に向かうなら、D33は振らず【65】へ進む。経過時間+1

【地下下水道 56】

 饐えた下水のにおいに混じり、南の方から新鮮な空気が漂ってくる。
 出口は近いようだ。
 しかし足を速めるあなたの足に何かが巻き付いた。
 驚いて足を止めた途端、あなたの足に絡みついたそれは、恐るべき力であなたを下水路に引き込もうとする。
 バランスを崩してあなたは尻餅をついてしまう。
 足の方を見ると、下水路から何本もの触手が伸び、あなたの足に巻き付いているのが見える。
 
 1D3を振ること。
 出た目の本数だけ触手があなたの足に絡みついたことになる。

 絡みついた触手1本ごとに目標値5の【筋力ロール】を行うこと。
 成功すれば触手を引き剥がすことができる。
 引き剥がすことのできなかった触手が1本でもあれば、あなたは下水の中に引きずり込まれてしまい、生命点1点を失う。
 以後、残った触手をすべて引き剥がすまで目標値5の【筋力ロール】を行うこと。
 判定ロールに失敗するたびに生命点を1点失う。
 
 下水に引き込まれた場合、経過時間に+1すること。

 出口はもうすぐそこの筈だ。
 あなたは下水路を南に向かう。D33は振らず【66】へ進む。経過時間+1すること。

【地下下水道 61】

 地下下水道を進んでいるあなたは、進行方向を壁に阻まれて立ち止まった。
 東西南の方角には壁があり、袋小路になっている。
 
 遠くから犬の鳴き声が聞こえる。
 焦る気持ちを抑え、一旦北に戻るしかない。

 北に戻るなら、D33に+20の補正、経過時間+1

【地下下水道 62】

 地下下水道の南の端にたどり着いた。
 南は石壁があり、これ以上進むことはできない。
 出口を目指すなら東の方向へ進むべきだが、北に戻ることもできる。

 東へ向かうなら、D33に+42の補正、経過時間+1
 北に戻るなら、D33に+20の補正、経過時間+1

【地下下水道 63】

 地下下水道の天井から何かがしたたり落ち、あなたは足を止めた。
 途端、半透明の巨大なゲル状の物体があなたに向けて降りかかった。

 『スライム(Slime)』
 分類:弱いクリーチャー
 種別:怪物
 レベル:4
 出現数:1D3 + 1
宝物:1D3
  1 :金貨1D3枚
  2 :金貨1D6枚
  3 :宝石(金貨10枚の価値)
 反応表:常に死ぬまで戦う
 
 スライムの攻撃に対する【防御ロール】でファンブルした場合、金属製の防具は溶かされてしまい、
 防御ロールに対するボーナスが無くなる。
 非金属製の防具は影響を受けない。

 この場所を訪れるのが2回目以降の場合、スライムは出現しない。

 倒したら先に進むことができる。
 3戦闘ラウンド以内に勝利できた場合、経過時間+1すること。 
 4戦闘ラウンド以上かかった場合は、経過時間+2すること。

 南は石壁があり、これ以上進むことはできない。
 出口を目指すなら東の方向へ進むべきだが、北に戻ることもできる。

 東へ向かうなら、D33に+42の補正、経過時間+1
 北に戻るなら、D33に+21の補正、経過時間+1

【地下下水道 64】

 地下下水道の南の端にたどり着いた。
 南は石壁があり、これ以上進むことはできない。
 これまで歩いた距離から考えれば、出口は近いはずだ。
 出口を目指すなら東の方向へ進むべきだが、北に戻ることもできる。

 東へ向かうなら、D33は振らず【65】へ進む。経過時間+1
 北に戻るなら、D33に+22の補正、経過時間+1

【地下下水道 65】

 突然下水路の水面が音を立てて泡立ちはじめた。
 立ち止まるあなたの眼前に汚水の中から巨大な肥喰らいが現れ、襲いかかってきた!

 『肥喰らい(Slime Eater)』
 分類:強いクリーチャー
 種別:怪物
 レベル:5
 生命点:6
 攻撃回数:2
宝物:1D3
  1 :金貨1D3枚
  2 :金貨1D6枚
  3 :宝石(金貨10枚の価値)
 反応表:常に死ぬまで戦う

 あなたと従者は毎ターンの最初に目標値5の【幸運ロール】を行うこと。
 失敗した場合、肥喰らいの発する悪臭により意識がもうろうとして、すべての判定ロールに-1のペナルティを受ける。
 ただし、あなたが『香り袋』を持っていれば、この判定を行う必要は無い。

 倒したら先に進むことができる。
 3戦闘ラウンド以内に勝利できた場合、経過時間+1すること。 
 4戦闘ラウンド以上かかった場合は、経過時間+2すること。

 東の方から新鮮な外の空気が漂ってくる。出口はもうすぐそこの筈だ。
 あなたは下水路を東に向かう。D33は振らず【66】へ進む。経過時間+1すること。

【地下下水道 66】

 地下下水道の南東の角にたどり着いた。
 あなたの頭上には地上へ繋がる縦穴があり、はしごがかけられている。

 経過時間の合計が9以下なら、犬に追いつかれる前にここにたどり着くことができた。
 はしごを登り、地上へ出ること。

 経過時間の合計が10以上の場合、あなたはついに追っ手の犬に追いつかれてしまった。
 獰猛な犬たちがうなり声を上げて、あなたに襲いかかる。

 『軍用犬(War Dog)』
 分類:弱いクリーチャー
 種別:動物
 レベル:5
 出現数:1D3 + 4
宝物:なし
 反応表:常に死ぬまで戦う

 ここは足場が狭く、バランスを崩すと下水路に落ちてしまう。
 【防御ロール】でファンブルした場合、バランスを崩して下水路に落ちてしまう。
 その場合、次のターンは攻撃を行うことはできず、【防御ロール】に-1のペナルティを受ける。

 軍用犬をすべて倒したら、はしごを登って地上へ出る。
 【最終イベント】へ進む。

【最終イベント】

 地下下水道の出口から、あなたは地上に戻ることができた。
 はしごを登った先は新市街の外れ、薄桜川のほとりのようだ。
 太陽はだいぶ西に傾き、夕日が薄桜川を朱く染めている。
 悪臭に包まれジメジメした下水道からようやく出られたのだ。
 あなたは爽やかな外の空気を胸いっぱいに吸い込む。

 とは言え、これで終わりではない。
 預かった金貨を衛士隊本部に届けなくてはならない。
 あなたは懐に入れた金貨を手で確かめると、新市街の方向へ向けて歩き出した。
 しかし数歩歩いたところで、あなたは刺すような殺気に足を止める。
 あなたを取り囲むように、黒いフードを目深にかぶった集団がゆっくり近づいてくる。
 手に持った短剣の刀身に夕日が反射する。
 どうやら先回りされていたようだ。
 あなたは内心毒づきながら、武器を構えた。

 『暗殺者(Assassin)』
 分類:弱いクリーチャー
 種別:善の種族
 レベル:5
 出現数:1D3 + 3
宝物:なし
 反応表:常に死ぬまで戦う
 
 暗殺者の短剣には毒が塗られている。
 暗殺者からダメージを受けた場合、目標値5の【幸運ロール】を行うこと。
 【幸運ロール】に失敗した場合、身体が痺れ、この戦闘ではすべての判定ロールに-2のペナルティを受ける。
 なお、毒の効果は重複しない。(何度毒を受けてもペナルティは-2だ)

 暗殺者をすべて倒したら、先に進むことができる。

【急襲】

 暗殺者の集団をなんとか倒したあなたは、新市街へ向けて歩き出す。
 しかし数歩歩いたところで、あなたの足は地面に縫い付けられたように動かなくなってしまう。
 足だけでは無い。手も指も全身が硬直して動かすことができない。
 毒では無い。魔法か呪術の類いのようだ。

 やれやれ。手間を取らせてくれる。

 あなたの視界に、先ほどの暗殺者と同じ黒いフードをかぶった一人の人物が現れる。
 声から判断すると男だろう。
 男はゆっくりとあなたに近づくと、懐をまさぐり、金貨を手に取る。
 男はあなたから奪った金貨をしばらく眺めていたが、やがて溜息をつくとあなたの方に顔を向けた。

 巻き込まれただけなのかもしれんが、己の不運を呪うのだな。

 男は短剣を逆手に抜くと、あなたの首に刃を向ける。
 あなたはなんとか身体を動かそうとするが、指一本すら動かすことができない。
 首筋に、短剣の冷たい感触を感じたその時だった。

 ちっ!

 舌打ちと共に男があなたから離れた。一瞬の後、先ほどまで男がいた位置を矢のような何かが空を切る。
 男が離れた途端、あなたは身体の自由を取り戻す。
 急に身体の自由が戻ったため、バランスを崩して尻餅をついてしまう。
 あなたが振り返ると、そこには衛士5人がクロスボウを構えている。
 そして衛士達の前には、長い金髪を無造作に束ね衛士隊の鎧を身につけた女性が立っている。
 女性は手にした長剣の切っ先を男に向ける。
 
 ジャルベッタの犬がナゴールに何の用だ。

 氷のような冷たい口調と共に、刃のような視線が男を射貫く。
 男は無言で身を翻し、一切の躊躇無く薄桜川に身を躍らせる。
 同時に手に持っていた金貨を川面に向かって投じた。
 
 撃てっ!

 女衛士隊長の声と同時に弦を弾く音が響き、クロスボウが放たれる。
 男の身体に数本のボルトが突き刺さり、男の身体は投じた金貨と同時に大きな水しぶきと共に川に落下する。

 逃がすな!
 港湾局に連絡!係留中の船も含めてすべての船を臨検しろ!

 女衛士隊長は素早く部下に指示を出し、部下の衛士達がそれぞれの指示に従い走り去る。
 やがて指示を終えた彼女は、あなたの方へ足を向けた。

 ゴルダじいさんから連絡を受けて駆けつけたのだが、間に合って良かった。
 話は聞いているかもしれないが、私が隊長のイングリッドだ。

 先ほどまでの冷徹な表情とは変わり、イングリッドと名乗った女性は柔らかな笑みをあなたに向け、尻餅をついたままのあなたに片手を差し出した。
 あなたはイングリッドの手を取り立ち上がると、助けてくれたことの礼を言った。
 そして金貨をイングリッドに届けるよう頼まれた事、その金貨は先ほどの男が川に投げてしまった事を告げた。
 川に沈んだ金貨を見つけることは難しいだろう。

 しかし、イングリッドは悪戯っぽい表情を浮かべると、懐から1枚の金貨を取り出す。

 あいつが投げたのは本物のナゴール金貨だよ。
 こっちが君がゴルダじいさんに届けてくれた偽金貨だ。

 イングリッドは懐から取り出した金貨をあなたに見せる。
 あなたは訳が分からずイングリッドの持つ金貨を呆然と眺める。
 やがてあなたは、工房でゴルダ爺があなたに金貨を投げ返した場面を思い出した。

 この金貨はお前さんが持っていろ。
 他の金貨と決して混ぜるなよ。

 あの時、ゴルダ爺が金貨をすり替えていたのか!
 どうやらあなたは囮に使われたらしい。

 まあ、そう怒るな。
 君が追っ手を引きつけてくれたおかげで件の金貨を無事に届けてもらえたんだ。
 これはささやかだが礼金だ。受け取ってくれ。

 憤然とした表情のあなたにイングリッドは金貨の詰まった袋を差し出した。
 イングリッドは金貨の袋をあなたに手渡すと、男の捜索に向かうため薄桜川の方向へ歩き出す。

 散々な1日だった。
 厄介事に巻き込まれ、囮にされて臭い下水道をさまよう羽目になったのだ。
 金貨の袋を手にしつつも、憮然とした表情を崩せないでいた。
 そんなあなたの表情に気づいたイングリッドは、振り返ってあなたに告げた。

 心配するな。それは本物の金貨だよ。

【冒険の終幕】

 偽金貨を巡る事件に巻き込まれてから、数日が経過した。
 あなたはその間宿屋で静養し、傷も癒えすっかり元通りになった。
 そろそろ次の冒険のネタを探した方がいいだろう。

 酒場にやってきたあなたはカウンターに座り、エールを注文した。
 エールを飲みながら周囲の客達の会話に耳を傾ける。
 なんでもナゴールを統治している4人の統治者の内の一人が、隣国のドラッツェンと内通していた嫌疑をかけられて失脚したそうだ。
 皆、空席となった統治者の椅子に誰が座るのかという話題で盛り上がっている。

 あなたはイングリッドが口にした言葉を思い出した。

 ジャルベッタの犬。

 かの国では錬金術が進んでいると聞く。
 偽金貨を作ったのがドラッツェンであれば、内通者がいてもおかしくは無い。
 失脚した統治者が内通者だったのだろうか。
 それとも、濡れ衣を着せられたか。

 そこまで考えたあなたは、頭を振る。
 それはあなたの冒険の領分では無い。
 あなたには権謀術数よりも、洞窟やダンジョンでの冒険の方が好みだ。
 エールを一気にあおったあなたは、酒場の主人に声をかける。

 何かいい儲け話は無いか?
 洞窟や地下迷宮なら大歓迎だ。


 金貨を巡る冒険はここで終わりだ。
 あなたは経験点1点とイングリッドから受け取った金貨30枚を入手した。


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