[明石昌夫]アレンジャーとディレクターの役割分担の話
レコーディングのミュージシャンを選ぶのは主にアレンジャーでしょうか?またディレクターとはどのような仕事で制作にどういった関わり方をするのでしょうか?
この辺ね、基本的にはケース・バイ・ケースなんですけども。アレンジャーっていう人とか、ディレクターっていう人とか、あとはプロデューサーって人とか、いろんな名前の人がいて。部長とか課長とか係長とかそんな感じ。一応そうやって優先権はあるんですけども。でもそれでもその現場現場で、いろいろケース・バイ・ケースだったりします。今回のこのコメントで言うとですね。レコーディングのミュージシャン、例えばドラムは青山さんにしようとか、そういうふうな話は、B'zの場合はディレクターの寺島くんが、それを松本さんが承認した、承認ってことは、ああいいっすねみたいな感じで。そういう経緯なのかな。それか、僕はとりあえず全然関わってないです。青山さんに関しては。なんだけども、本当にもうケース・バイ・ケースで、僕はどうしてもこの人やりたいな、ってそれをお話しして、じゃあそれに行きましょうと。松本さんって基本的には、じゃあそれで行ってみましょうかみたいな。あの人はね、それで気に入らなくても、それをそのままゴーしちゃうっていう、すごい懐の深い人なんですけども。
アレンジャーっていうのは、基本はドラムのパターンがどうなるとか、どういう楽器を使うかとか、でもそれもその松本さんとかのそのプロデューサーが、そういう話だとそれに合わせていろいろアレンジを考えたり、そんな感じなんでね。僕がそのBeingっていう会社で、アレンジャーを始めた時に最初はすごい20曲ぐらいボツになって、うまくいかなかった時。その時に教えていただいたことが、アレンジャーってのは内装屋みたいなもんだ。家を作る時の内装のやつ。ここに窓を作ってくれって言ったらそこに窓を作るんで、内装屋が、いやここじゃなくてこっちの方が窓がいいんです、いいと思うんで、こっちにしましたみたいなのとか。例えばここの壁紙は何色にしてくれって、いやでもこの家はこっちの方がいいと思ったんでこうしましたみたいな、そういうのはダメだろうと。アレンジャーってのはそういうもんなんだから、とりあえずは発注されたものに対して、じゃあどういう風にするか実際に。そういう風な仕事なんだって言われて、ある種もうアーティストとアレンジャーっていうか、アーティストとスタッフのその辺のやつが、もう全然僕は分かってなかったんで。そういう風なことを教えていただいたりして、なるほどねって。それで自分のやってることが、虚しくなったりそんなこと全然なくて、やらせていただけるだけでありがたいっていう。それまでも本当にいろんなお店でベースを弾いたり、自分のアマチュアのバンドでアレンジしたり、そういう風なことしかできてなかったのが、それはそれでありがたいことなんですけども。そのメジャーのレコーディングのアレンジをさせてもらえるっていうことで、納得がいかないというかね。だったらやめるかっていうね。こう二択になっちゃうんで。でもそれはもうやりたくなかったっていうか、もう30過ぎてたんで、後がないぞっていう感じだったりしますね。なんでアレンジャーってのも本当にケース・バイ・ケースで、ミュージシャンを選んだり、そういう風なこともあるし、どっちかっていうと、この人はどうですかみたいな感じ。
ディレクターっていうのはですね。基本的にはその原盤制作会社というか、要は原盤権というものを持ってる人達。これが出版権というのと原盤権というのがあって、もうめちゃくちゃ昔の動画で話してると思うけど、絶対に検索できないと思うけども。いろんな権利があるんですけども、音楽に関しては。その中で出版権というのと原盤権っていうのが大きな権利なんですよね。出版権ってのは基本的には曲の権利。なんでカバー曲も出版権っていうのは全部同じところが持ってるって感じなんですけど。原盤権ってのは音源の権利。それをカバーしたらそれの別のところが原盤権を持つっていう。基本的には原盤権っていうのはそのレコーディングの費用、アレンジャー代だったり、スタジオ代だったり、そういう風なものを負担した人達が原盤権を持つっていう、そういう風なしきたりになってるっていう、習慣になってる。そのディレクターっていうのはそこのその原盤権を持ってる会社、そこの社員っていうパターンがほとんどなんで、フリーランスのディレクターっていうのは、いるかどうか分かんないですけども、あんまり聞いたことないですね。フリーランスのアレンジャーとかプロデューサーっていうのは、そっちの方が多かったりすると思うんですけども。なんで基本的にはディレクターというのはそこの組織、そのレコーディングに関わってるメインの。基本的にはその原盤権を持ってる、そこの現場の人っていうのがディレクターで。基本的にはディレクターっていうのはアレンジはそんなに助言するっていうか、その上司とか会議で言われたことをこういう風なんじゃなくて、こういう風な感じになってるんですよねって言ったり、こういう風にした方がいいですね、してほしいですね、言い方はもう人によって全然違うんですけども。
大体はディレクターっていうのは歌入をするっていうのが、通常というかよくあるパターンでしたね、今は全然分かんないけども。アレンジをしてオケを作って、スタジオミュージシャンに来ていただいて、演奏OKとか、ああだこうだそういう風な部分とか、そういうところってのはアレンジャー、編曲家っていうことがして、その後に歌を入れるのが普通なんですけども。よくあるパターンっていうか、ほとんどのパターンだと思うんですけども。その時にディレクターっていうのが歌入をする。その時はアレンジャーは立ち会わないっていうパターンが普通っていうか、なのだと思います。だから、ZARDだったり、V6だったり、B'zだったり、そういうところの歌入ってのは僕は全然関わってないっていうそういう話になります。
ただアレンジャーなんだけども、ギターダビングで立ち会ってなかったりね。そこは結局その決定権っていうのはプロデューサーの方が最終的にはあるんで。プロデューサーがいいと言えば助言はしますし、松本さんもそれを取り入れたりは当然しますけども。ギターダビングは本当にもう松本さんにお任せするというか、彼がプロデューサーなんで、彼がOKと言えばそれでOKっていう感じだったりします。
なんでヒエラルキーっていうか、地位っていうか、あんまりそういう言い方は好きじゃないんですけども。そういうふうに解釈していただいてもいいです。そういうふうな考え方、この地位っていう考え方、わかりやすいんでそういう考え方をすると、まず基本は資本主義なんで、お金を出してる人っていうのがあって、それ音源に対しては原盤制作会社っていう、原盤権を持ってる人達、それは通常は事務所とレーベル、レコード会社それが半々だったりっていう感じ。そこにタイアップが決まったりすると、それをまたこう分けたりそういうふうなことはあるんですけども。基本的にはレコーディングとか音源を作った、お金を出した人達。その人達が最終的に決定権がある。簡単に言うと一番偉いんですよ。人としてじゃなくてね。ビジネスとして。
その下にプロデューサーっていうその原盤制作会社の制作全般を委託されているっていう。それはそこの事務所の所属だったり、レコード会社の所属だったり、フリーランスだったり、そういうふうなことはいろいろあるんですけども。そういうところでB'zの場合だと、そのプロデューサーっていうのが、松本さんだったり。それがSIAM SHADEだと僕が、そのソニーっていう原盤制作会社と、アミューズと、半々ぐらいだったと思うんですけども。そこから委託されて僕がプロデューサーなんで。SIAM SHADEはドラムとか、そういうのも全部メンバーなんですけども。例えばそれが僕が気に入らなくて、いやこの曲はメンバーじゃなくてスタジオミューションで使いたいって言うと、そこはそこで、一応考慮はしていただけるっていうか、最終決定権はそこの原盤権を持ってる会社っていうところの会議で決まったりすると思うんですけども。そういうふうな仕事ですね。
まず原盤制作会社ってのがあって、そこに委託されたプロデューサーってのがいて、そのプロデューサーのある種お目付け役みたいなところで、ディレクターってのがいるわけですよ。なんで共同原盤、レコード会社と事務所と2つあったとすると、そこには2人のディレクターがいたりして、どっちが歌入をするか。プロデューサーになると、プロデューサー自身が歌入をする。僕はそうだったんですけども、プロデュースの時は。なんでSIAM SHADEとかその辺も全部。ただV6とか華原朋美さんとか、そういうところの歌入は全く関わってないんで。その辺になると、アレンジャーっていう仕事になったりします。V6だと基本的にはプロデューサーはジャニーさんなんで。恐れ多くもかけまくもって感じなんですけども。なかなかその辺の原盤制作会社っていうところと、プロデューサーと、アレンジャーと、ディレクターっていうのは本当にもう現場を体験しないと肌ではわからないし、もう本当にケース・バイ・ケースなんで。
例えばディレクターっていうのは予算管理だったり、レコーディングでどこでどうやって使ったみたいな。そういう風なところをやるっていうのが、基本なんですけども。僕はプロデューサーの時はそういう風な部分、その予算管理とか、そういう風なとこまで全部請け負って、バジェットと呼ばれる、まとめていくらみたいな感じ。1曲200万円とかシングル1枚200万円とかアルバム2,000万円とかそういうのをバーってバジェットで請け負って、でそこでスタジオ代を節約して自分の儲けを増やすみたいな、そういう古俗なことも結構やってましたけども。いろいろそうやって、いろんなやり方があるんですよね。一概には言えないんですけども。そんな感じだったりします。どうもありがとうございます。