2024.7.29 新日本プロレス G1 CLIMAX 34 福岡・福岡国際センター DAY7 試合雑感

◼️第6試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
カラム・ニューマン vs “キング・オブ・ダークネス”EVIL

カラム相手に奇襲を仕掛けるEVIL。こういう若手相手への制裁は必要以上にEVILの極悪さが際立つのでいいですね。カラムも負けん気が強く、ヒール相手に持ち前のスピードで突っかかるのはいいのですが、そうした相手こそ御し易いのもまた事実であり、最後は金具への2回の被弾からEVILで EVILの貫禄勝ち。ここにきてまさかの無敗。全勝での5勝マーク。これを予想した人はほぼいないんじゃないですかね。現在の新日のトップヒールとしての面目躍如かつ、EVILが優勝するのも個人的には箔付けの意味でも大アリなんですよね。棚橋社長を巻き込んでのvs会社に移った戦いというのもスケール感があっていいと思います。

◼️第7試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
グレート-O-カーン vs ジェイク・リー

やはり新日を侵略しにかかる「外敵」とあっては上野毛の意地を見せるしかなく、開始早々レスリングの差し合いを挑んだオーカーンはこの辺りは分かっていますよね。ここはジェイクの腕を取り、悶絶させることで舐められてはいけないな……と多少の溜飲は下がりましたが、げに恐ろしきはジェイクで、ロープワークの攻防からいきなりのジャイアントキリング。新日でのジャイキリの使い方はほとんどキチンシンクにまでデチューンした感じはありますが、これでペースを握るといたって軽やかにスマートに、オーカーンを蹂躙していきます。スマートなイケメンと粗野なオーカーンという構図をクリアにするこの振る舞いは、いい意味で「鼻につき」ますよね。

苦しむオーカーンは足一本背負いに活路を見出すと、多様な足関節で足殺しの蟻地獄へ。ジェイクも膝での迎撃で譲らず。腕を極めての柔法からの膝など、こちらもバリエーション豊かですね。最後はエリミネーターからのアイアンクロー式の体固めで咆哮とともにオーカーンの勝利。苦しい中何とか一勝をもぎ取りました。

この試合で確信しましたが、ジェイクはいい意味でも悪い意味でも今の新日に馴染みすぎているような気がしますね。SANADA戦のプロモーションは個人的には好きだったものの、その後のEVIL戦での敗戦、クオリティとしてかなり厳しかった内藤戦と、今ひとつ外敵らしい当初の期待感を達成できてない気もして、なんというか、こう言っちゃアレなのですけどNOAHのイメージがあって、KENTAと位置付けが入れ替わってG1に入ってきたような印象も受けるんですよね。すでに馴染みきった登場人物の一人と見るなら戦績も不思議ではないのですが、G1ゲスト枠としてのワクワク感は今のところそんなに満たせてないなあと。まあNOAHも初参戦のときは大丈夫か?という感じではあったので、意外とスロースターターかつチューニングに時間がかかるタイプかもしれないですが、それにしては違和感があるほどの馴染み方というか。

スーパーヘビー同士のぶつかり合いを見せる、と戦前にオーカーンが公言した通り、確かに体格では互角でそれなりに噛み合う勝負を見せはしたものの、それ特有のスケール感はさほど感じず。オーカーンのキャラクター性と合わせてジェイクのキャラクター性が負けないぐらい溶け込んでいたのもあってか、外敵相手へのヒリヒリする緊張感はあまり感じませんでした。勝負がスイングし、馴染んだ代わりに突き抜けることはなく、スーパーヘビー同士の戦いにしてはコンパクトに綺麗にまとまりすぎたかな、とも。この辺りにプロレスの難しさを感じてしまいますね。

◼️第8試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
海野 翔太 vs ザック・セイバーJr.

昨年のNJCで戦ってはいるものの、まだ少し異色対決の香りすらあるこのカード。リストの取り合いなどで序盤はザックの領域に進んで入りにいったのはよかったですね。

しかしながらエプロンでの足払いで腰を被弾してからはザックのペースに。トーホールドで足を潰しつつ腰への目配せも忘れないあたり、ザックの厳しさが窺えますね。海野のスピードを殺すように的確に入れるローキックは海野にない武器の一つです。

足への拷問技を何とか耐えたのは一つのハイライトで、乗れるかどうか別として、この光景の「映え」っぷりは天性の素養なのだなと思います。リストをクラッチしてのエメフロのようにバスターで叩きつけると、最後はデスライダーでザックから勝利。終盤での大技がやや手薄だったのでこれはいい武器になりそうだなと思う反面、現状技が多すぎる気もして、この辺りは難しいですね。海野のやりたいであろう試合をしっかり引き出せたというのが一つのポイントで、そして壁になったザックは凄いですね。ザックを止めたのは金星ながらも、ここからが海野の本当の戦いでしょう。

◼️第9試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
鷹木 信悟 vs ゲイブ・キッド

大方の想像通りの荒れ模様となった一戦で、互いに最初からフルスロットルなのがいいですよね。ただでさえ激しくデンジャラスなぶつかり合いなのに、ここにゲイブのアピールの騒々しさとゲイブ人気の相乗効果のせいか、非常にハイテンションな一戦となりました。

濃縮かつ濃密で、ほぼ無呼吸に近い全力疾走とハードな打撃戦。応じる鷹木も凄まじく、このG1でも多用しているジャンボの勝ち!固めのような押さえ込むパンピングボンバーなど、出力を落とさずに張り合いましたが、最後はタメのない速射式のパイルドライバーからレッグトラップパイルドライバーでゲイブの勝利。鷹木超えの快挙ながらも、もはや驚きがないことに驚いてしまう。わずか13分足らずで見る側も含めてフルマンソンを走り切ったような疲労感。これは凄いことですよ。

最後はゲイブにしては異例の一礼からの鷹木との握手。と、見せかけて金的で吠える。これでこそゲイブですね。ヒール云々は抜きにしても、これで終わったら幕が一旦は降りてしまうわけで、死闘はさらに怒りで継続することがわかっただけで納得感がありました。ただ、この握手自体は嘘ではなさそうな気がするのがゲイブの魅力ではありますよね。

◼️第10試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
内藤 哲也 vs SANADA

今年三度目となる内藤vsSANADA。SANADAのノーアピールでヤキモキさせてロスインゴ卒業式で幕を下ろした1.4は好勝負だったものの、間を置かずに始まったリマッチでは内藤の技ミスもあって妙に後味の悪い一戦となり、1.4の余韻を消してしまったのもあって二人とも損をしたなという苦い思いのあるリマッチでした。

そして今回の公式戦。内藤のコンディションは相変わらず不安ではあるものの、最初はねっとりとしたレスリングの攻防。二人ともIWGP戴冠者なだけに、これで貫禄が生まれるのはいいですね。内藤がこのG1で多用する必要以上に溜めのあるネックブリーカー。SANADAもまた多用している河津落としで応戦し、互いに首をじっくりと狙いにいく攻防が続きます。

内藤も自身の状態を確かめつつギアを上げている印象で、雪崩式フランケンシュタイナーは首攻めの帰結点として申し分なく、またこの技が成功するかどうかで一安心するようになってしまいました。対するSANADAもネックスクリューで首攻めの手は緩めず。トルネードDDTはスカし、デスティーノをTKOで抱え上げて切り返すことで一旦は一歩リードしました。

そしてシャイニングウィザードからラウンディングボディプレスと武藤ムーブで勝負を決めにかかります。内藤は何とか切り返してバレンティアで対抗するもSANADAはオコーナーブリッジへ。返されるや否やシャイニング。武藤殺法とSANADAの得意ムーブが上手いこと融合していますね。

デッドフォールで万事休すかと思いきや、内藤はコリエンド式デスティーノで追いすがります。やや崩れつつも反転して旋回式のように決めた一発は、G1決勝戦でのケニー戦のような全盛期のキレではないものの、何とか決めたという塩梅で、そこからの正調デスティーノも今回は何とか回り切りました。いやはや……SANADAは内藤に3連敗。オカダ相手も中々勝てませんでしたが、SANADAにとってこの壁も結構分厚いですね。

全体的にかなりギリギリの試合でしたが、試合内容としては忖度抜きで普通に良かったと思います。SANADAの強さを思うとまあ納得でもあり、毎回内藤の状態の確認のような心境で試合を見ていますが、その指が一本かかった状態で「内藤哲也」を魅せられるのか。心配ではありつつもそれも見所かなと思い始めました。今回もまた何とか生き延びることができた。それでいいじゃないですか。それが戦いであり、それもまたプロレスです。


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