2024.7.28 新日本プロレス G1 CLIMAX 34 福岡・福岡国際センター DAY6 試合雑感

◼️第5試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Bブロック公式戦
エル・ファンタズモ vs ボルチン・オレッグ

辻への勝利で光明こそあったものの、まだ完全復活には程遠いファンタズモ。そのローテンションかつ落ち込みモードのままでも、意外性のある腕ひしぎや、ズモを捉えて振り回すボルチンシェイクなどでどよめきを生み出す怪力無双のボルチン相手に、ファンタズモはコミカルでありながらも意気消沈のまま変わらずという絶妙な塩梅の感情表現を見せています。このG1のズモの試合は昨年と比較すると明らかに面白くなっており、感情表現のアヤがまるで違うんですよね。オーバーリアクションが前ほど嫌味になっていない。持ち前の軽さも浮き足だった感じと合わさってあんまり違和感がないせいかもしれません。

サンダーキス'86を被弾し苦しい展開となったボルチンでしたが、カミカゼ狙いを抵抗したズモをそのまま振り回してバーディクトで場外へと放り出す。この技って豪快な面に反して意外と小回りの効く技で、すでに応用編すら開拓しつつあるボルチンには驚かされるばかりです。ファンタズモの押さえ込み連発にぎこちなく豪快に逆さ押さえ込みをやり返したのは面白かったですね。足を痛めたファンタズモをショットガンドロップキックで吹き飛ばすと、最後はカミカゼ葬でボルチンの勝利。ようやく一勝を得たファンタズモを再び敗北へと追い込みました。ややエンジンはかかりつつも復活はいつになるのか。このストーリーは気になりますね。


◼️第6試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Bブロック公式戦
上村 優也 vs ジェフ・コブ


組み合いでのパワーで勝り、オリンピアン相手ではレスリング勝負も厳しく、アームドラッグもドロップキックも微動だにせず通じない。無傷の3連勝をマークしつつも相手としてのコブは上村にとっては非常に厳しい相手です。シュミット式というには直接の膝蹴りに等しいバックブリーカーに波乗り、そして抱えてのベアハッグとその攻めは厳しく、風格がありますよね。

セカンドロープからのボディアタックが無理なら加速をつけてのプランチャで速度を足したり、トップロープからのボディアタックで高さを増しての一撃にする。コブを体格差とパワーのある強豪外国人として受けに回りつつ、攻略法としてはスマートでロジカルではあると思います。拙いながらもストロングスタイルを標榜する上村らしい風車の理論なのですかね。ただ、個人的に気になったのは場外での追撃をせずに二度ほどリング内に戻したところや、マッドスプラッシュを二連発で見舞いにいったりと、やや全体的に「青さ」が見えたところで、試合構築としてはまだ改善の余地があるかもです。

それでもクライマックスの押さえ込みの連発は一発逆転のカタルシスがありましたし、この爆発力には定評がありますよね。しかしながら最後はF5000で振り回され、最後はツアーオブジアイランドで一蹴。初黒星は悔しいながらも、見て納得のこれは色んな意味での完敗でした。

◼️第7試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Bブロック公式戦
HENARE vs KONOSUKE TAKESHITA

HENARE、竹下の醸し出す強さを真っ向から否定しにかかったのが素晴らしいですね。闘魂もストロングスタイルも今は外国人選手のほうが継承しているんじゃないかと思います。しかしそんな猪突猛進のHENAREを嘲笑うようにコーナーや鉄柱を使い勢いを削ぐ竹下。フォールの仕方もややナメてる感もあり、王者のような余裕と風格があります。

打撃戦では流石にHENAREに分があるのか、バリエーション豊かな蹴りを見せますが、それを得意とする重い右のエルボーで竹下は黙らせにかかります。肘と膝でいつでも相手をグロッキーに追い込めるのは竹下の長所ですね。この試合、直情径行なHENAREをいなして消耗させつつ、全力でぶつかる所はぶつかって覇を見せる竹下の老獪さに目を見張りました。

HENAREもヘッドバットで追いすがりますが、最後はレイジングファイヤーで竹下の勝利。回転数と突き刺さる角度がとにかくエグく、この一撃でHENAREを沈黙させました。圧倒的なアビリティとアジリティ。いやあ……HENAREの猛攻をいなしつつも真っ向からも張り合える怪物感。戦いあった二人はグータッチでの共鳴。武人として認め合った感はあるものの、それでもやっぱり悔しいですね(笑)

◼️第8試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Bブロック公式戦
デビッド・フィンレー vs 成田 蓮

開始早々場外戦を仕掛ける成田。そして背後から金丸の乱入。外道をスリーパーで絞めるなど、悪vs悪の荒れ模様の一戦となってきました。鉄柵へのネックブリーカー兼バックブリーカーやサードロープへのシーソーホイップなど、テクニシャンなヒールとしてすっかり開眼しましたね。

成田のフォールを反転して返すなど、細かい部分での技術を見せるフィンレー。そして成田を軽々と放り投げるなど、パワーは流石にフィンレーに軍配が上がりますね。成田は成田でブリザードやハーフハッチからのフロントネックロック、コブラツイストなど、ストロングスタイル時代の引き出しを容赦なく開けます。この辺のテクニシャンなヒール像ってどうしてもアメリカンな香りが漂うものなのですが、恐らく金丸やディック東郷の薫陶を受けたこうした部分だけでなく、ストロングスタイル時代に培った技術も流用してるのが今の成田の面白いポイントなのですよね。

かなり手を焼いたフィンレーでしたが、成田の改造プッシュアップバーに対してフィンレーはシレイリで応戦。そして相手の身体を粉砕するコーナーを利用してのパワーボム三連発葬で成田轟沈。まさに制裁といった感じで、オーバーキルを出さないことでの格上感の強調もありながら、フィンレーのパワーボムがそれ単体でフォールを取れることの証明にもなっていて、つまりはいつものオーバーキルは文字通りのオーバーキルだったんだなということが分かっただけでもこの決着は良かったです。あと、公式サイトを確認したら決まり手がパワーボムホイップとなっててファイプロっぽい表記で笑いましたw個人的には投げっぱなしパワーボムという書き方の方が好きですw

◼️第9試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Bブロック公式戦
後藤 洋央紀 vs 辻 陽太

NJC決勝のリマッチとなった今回のメイン。一度は登攀を許した壁ではありますが、一度勝ったぐらいで越えた証明にならないのが壁というもので、前回の優勝=IWGPへの片道切符という期待感とはまた違った期待感が、今回の後藤に対してはあったように思います。新世代トップを走り王手をかけ続けている辻だからこそ、後藤の役目は必然的に重くなったわけですね。

辻は血気に逸る後藤に対し、一度間を取りつつも冷静に腰へのエルボーやボディシザースなど腹部に絞って削りにかかります。辻のボディシザースは足のフリンジやジーンブラスターへの布石というのもあってか、かなり似合っていますよね。苦しい展開の後藤でしたが、追走式のラリアットで反撃。今回のこれは非常にスムーズでまさに奇襲という感じがあってよかったです。

後藤に対して「打って来い」や後藤への歓声に浮かべる薄笑いなど、この辺の先輩に対しての上から目線はちょっとオカダっぽさがあったというか、後藤vs辻が棚橋vsオカダのような空気感を纏ってきたのはちょっと面白いですよね。後藤もリバースGTRからのラリアットで対抗しますが、最近の後藤のリバースGTRは切り返し一本に絞っていて、フィニッシャー派生なのに意識的に技の格を少し落として小回りを効かせた使い方にしているのが興味深かったです。

しかしながらカーブストンプの連発で地に伏す後藤。ほぼグロッキーながらマーロウ・クラッシュやジーンブラスターはなんとかかわすと、スクールボーイでペースを返すとGTWで活路を見出します。そして決勝以来の久しぶりの昇天・改!やはりいつ見てもこの技のインパクトは凄いものがあります。そして抵抗する辻の腕を捉えてのリストクラッチ式GTRこと「GTR改」で後藤、激勝!思い返してみれば昇天・改も、元は数回ほどしか使わなかったにせよ昇天だったわけで、GTRが改に進化するのも納得ではあるのですよね。

いやあ……それにしても今の時代に上位技としてリストクラッチ式を選択するこのセンス!受け身を取りにくくするリストクラッチではなく、抵抗を防ぐためのリストクラッチという進化というのが面白いですね。いやはや、恐れ入りました。そしてG1のGは後藤のG!での大・後藤コール。壁になる存在を宣言したことも含めて、今の後藤は全ベットですよ。素晴らしいですね。辻vs後藤は結構発展性があるせいか黄金カードの空気感も若干あり、まだまだ先がありそうです。

辻もここで三敗目はかなり手痛いですが、それでも竹下へのリベンジを考えると決勝トーナメント進出は見たいですね。いい試合でした!

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