2024.8.6 新日本プロレス G1 CLIMAX 34 東京・後楽園ホール DAY11 試合雑感
◼️第5試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
グレート-O-カーン vs カラム・ニューマン
オスプレイを最も知る男の一人と言っても過言ではないオーカーンがカラムの相手をやるというのも査定めいた感じがあって面白いですね。それでいて負けたら互いにほぼ脱落確定という厳しい状況。G1ならではの残酷さですね。
同門対決って新日だとNJCやG1ぐらいでないと成立しないレアなカードではあるのですが、そのレアリティを楽しむにはカラムはまだ格が足りず、同門ならではの練り込みや技の切り返しを見るにはまだキャリアとしてまだ若い。カラムはスピーディーではありますがやや精度が甘い場面があり、この試合もそれを感じはしたものの、オーカーンがしっかり受け止めつつ色々と奔放にやらせていた感じもあります。この愛と厳しさはわりと良かったように思います。
羊殺しからの変形コンプリートショット、エリミネーターの必殺コンボでオーカーンの完勝。オーカーンに足りなかったのは確かにクライマックスのドライブ感だったのでこのカタルシス溢れる流れはいいですね。最後は握手でノーサイド。こういう形のキャリアに差がある同門対決もまたいいものです。
◼️第6試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
ゲイブ・キッド vs ジェイク・リー
こちらもこちらで名目上は同門対決ではあるのですが、新日偏愛者であるゲイブがおいそれと外敵のジェイクを許すのか?という疑問があり、そういう意味では非常にデンジャラスな空気感のある一戦です。
入場したジェイクはベースボールシャツにハイボールを両手に携えて入場。この格好、一見すると完全に球場のおじさんなのが面白いですwしかしながらゲイブはその仕掛けに乗らずに奇襲!蹴り落として椅子を振り抜くとテーブルを取り出して投げつけますが、これはジェイクがかわしてジャイキリ!その後に椅子で倍返し!ジェイクもスマートながら意外とキレやすいんですよねえ。
そして観客席の通路にまで雪崩れ込んでの殴り合い!ゲイブは通路疾走するもこれを再びジャイキリ一閃!ゲイブ人気もさることながら、この時のジェイクの顔も素晴らしく、ここまでイキイキしてるのは新日に来て初めて見ました。そしてゲイブを先ほどのテーブルに叩きつける!いやはや、ジェイクは絵になる男ですね。
そしてゴングが鳴り、ここからスタート。ゲイブのラリアットで秒殺かと思いきや何とか返すジェイク。そして壮絶な打撃戦に。ゲイブは打撃のリミッターを新日基準だと限界ギリギリまで外してる気はしますが、同じく打撃の重いNOAHから来たジェイクとのエルボー合戦は見応えがありましたね。
ジェイクは珍しいエプロンへのビッグブーツ……FBSでゲイブを蹴り落とすと、場外ジャーマンを被弾するも誤爆を誘って即座にリングに戻り、そのまままさかのジェイクのリングアウト勝ち。まさに詐欺師!鳴り物入りでやってきたにしてはイマイチ振るわなかったジェイクでしたが、この試合は面白かったです。新日ファンとそうでないファンとで賛否ありそうな感じもありますが、NOAHで培ったイメージを踏襲しつつも、より詐欺師として、より怪者(けもの)としての側面を強めてカラーを変えてきましたし、元々キャラクターを作り込んでいるのもあってガッチリとハマればこれぐらいはスマートにやれるんですよね。所変われば人間も変わる。色んな意味であのころのジェイクはいないんだなと痛感した試合でもあります。ジェイクが作り上げたジェイク流の新日らしい試合を見れたという意味で個人的にはよかったのではないかなと。なんだかんだで団体に合わせていくタイプなのでしょう。そして最後は詐欺と暴力をぶつけ合った男たちの和解。新日にようこそ、ジェイク・リー。
※こっそり最後に記しますが、個人的に気になってるのはジェイク加入によるKENTAの処遇で、僕はわりとジェイクってKENTA枠に近いと思ってるんですよね……。G1で接することがなかった今はむしろ今後の関係性が気になるというか……今はまだ単なる妄想に過ぎないのですが、どうなることやら。
◼️第7試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
ザック・セイバーJr. vs “キング・オブ・ダークネス”EVIL
開始早々、EVIL帯同でのスタート。パウダー攻撃から早々に介入の手札を切ってディック東郷と二人がかりで攻め立てるも、押さえ込み合戦からEVILの連続押さえ込みをシーソーのように返してザックが押さえ込んで秒殺勝利!この二人ならではの試合かつ、EVILにしかできないスカッシュマッチ!試合内容というよりは興行のバランスとして、前のジェイクvsゲイブのテンションを下げずにノリきったままで終わらせた所に新日の凄みを感じました。
◼️第8試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
海野 翔太 vs 内藤 哲也
内藤をいきなり奇襲する海野。ドロップキックからロープを飛び越えてのエプロンDDTにエプロンを利用してのDDT。海野は色んな人間のコピー呼ばわりされますが、内藤っぽい部分というのが個人的にはイマイチ分からず、あえていうならこのDDTかなあとも思うのですが、それだけにこれを早々に切ってきたのは面白いですね。
内藤も慌てずにコーナーに海野の足をかけてのネックブリーカーで冷静に対処。さらに高低差を利用してのエプロンネックブリーカー。そしてエプロンに足をかけてのネックブリーカーに、場外ネックブリーカーの4連発!ここで差異を出してきたのは見事ですよ。ヨーロピアンネックロックに首への低空ドロップキックに、再びのたっぷりのタメを取ってのネックブリーカー。そしてしつこいネックロック……。海野の攻めに返答する形でDDTに対してネックブリーカーという同じ領域での解答は面白いですし、こうした首への一点集中と小技を駆使してのロジカルな攻めは、やはり内藤に一日の長があります。
海野もドロップキックでペースを取り返すと、フィッシャーマンズスープレックスにエクスプロイダーと投げ技で攻めますが、前述のDDTと比較すると海野のスープレックスって少し弱いんですよね。フィッシャーマンはいいと思うのですが、エクスプロイダーは実はあまり合ってない気もします。内藤も膝で打つネックブリーカーを挟むとレッグシザースネックロックに。この辺りは淡々としていながらも首攻めの継続となっていて王者の余裕を感じさせます。久々のグロリアが不発と見るや、内藤はバックエルボー連発に。この技も同格や格上に打つ必死さと違い、格下相手だと洗礼のように見えて面白いです。しかしながらここで「来いや!」「まだまた!」と叫んだ海野は素晴らしく、攻め手はなくともこうした気迫はいいですね。内藤の老練な試合運びに対して海野のこうした若さは存外嫌味に映らず、こうした若手感を出すことに衒いがないのが彼の長所だと思います。そして倒れた海野の首を踏みつける内藤。内藤の儚さの影に感じる冷たさがいいですね。再びのバックエルボー地獄を返すと振り抜くエルボーにさらにローリングエルボーも振り抜いて打撃で優位に立とうとしますが、内藤は冷静に延髄斬りで対抗。海野もブレイズブレイドを叩きつけ、どうにか主導権を取り戻しました。
試合はより激化の一途を辿ります。海野はリバースツイストアンドシャウトにかなり高角度のトライデント。変形デスライダーはバレンティアで切り返されるも、デスティーノを今度は海野が抱え直して変形デスライダーで切り返す。そしてブレイズブレイドから旋回式デスライダーを決めるもカウント2。海野のこの対角線からの技って試合のテンポによってはどうにも間延びして映るのですが、今回はわりとスムーズで良かったです。
そしてデスライダーを仕掛けるも、内藤は切り返してデスティーノへ。これを着地に誘い込むと再び海野はデスライダーを狙いますが、これはコリエンド式首固めで内藤が切り返し、押さえ込んでカウント3。このG1での内藤のデスティーノはコンディション悪化もあってか崩れがちでヒヤヒヤしますが、崩れてもそのまま押さえ込めるコリエンド式首固めは逆にいいかもしれませんね。内藤の右腕が海野の肩の下に入ってるのはミスではあるものの、レフェリーの死角なのでギリアリかな、という感じです。
個人的にはスターダストプレスを封印したのと同じように、仕掛けるのに難があるならデスティーノも封印でよく、同じ押さえ込みならポルポ・デ・エストレージャでいいのでは?と思うのですが、それをしてしまえばコンディション悪化で飛べなくなったのを認めるようで、それが周知の事実となってしまうようで、それが嫌なのかな?とも感じます。コリエンド式首固めは空中殺法と押さえ込みの折衷案。妥協策でありスワンダイブ式首固めから派生した別系統の進化のような感じがして、そこに生き様を感じてしまうためあまり嫌いにはなれません。まあまだ使い始めたばかりですし、晩年の技として練り上げて執念深き妖刀のようにしてしまうのもいいかもしれないなと思います。
振り返ってみれば当初は一番不安だった一戦ではあったのですが、蓋を開けてみれば好勝負だったというか、こういうサイコロジーのある試合好きなんですよ。海野の悪癖もさほど目立たず、その熱気はそのままに、それを挫いて冷ますほどに内藤に老いの冷たさと執念があり、その老獪さが新世代に立ち塞がる壁として非常に噛み合っていたと思います。海野の試合としては勝利した鷹木戦よりも個人的には評価高いですよ。結構長く内藤の試合は見てますが、相変わらず何が刺さるかずっと読めないままで、だからこそその制御不能感を楽しみに試合を追い続けているのかもしれません。
◼️第9試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
鷹木 信悟 vs SANADA
この二人、初対決なのは結構意外ですよね。そしてスタイルは完全に真逆。開始からゴリゴリに押す鷹木ですが、単なるガン攻めスタイルではなく押し引きの強さが鷹木の長所でもあり、SANADAは受けに回りつつ見定めていた感じがありますね。武藤系譜のはずなのに蝶野っぽい試合運びというかw
そして鷹木のスピードに呼応するように並走しつつの反撃。最近よく見せてるSANADAの河津落とし。今回のこれは非常にスピーディーで素晴らしかったですね。新日系譜の技ではないあたりがとても好きなんですよwあとネックスクリューもコーナーを蹴って位置調整し、すぐさま決める。わりとモタつきがちな技なのですが、SANADAのネックスクリューの使い方は以前と比べると格段に良くなっていて、ここは師匠を超えたのではと思います。武藤敬司、あんまり使わなかったイメージもありますけどね。
SANADAは鷹木のスピードに合わせつつ宙を舞っての切り返しが多く、スピーディーに見せかけて地上戦と対空に特化してる鷹木に対し、空中戦の領域で挑むことで足りなかった高さ含めた「立体感」を出してきたのは面白いです。そして冷静なSANADAに対して騒々しい鷹木!SANADAがシャイニング連弾でテンポと手数で攻めるなら、鷹木はSANADAにないパワーや雪崩式ブレーンバスター等の大技で攻める。コントラストが見事なんですよ。
デッドフォール切り返しのメイドインジャパン。ここから勝負は加速します。鷹木はパンピングボンバーを狙うも、SANADAもオコーナーブリッジで仕留めにかかります。SANADAが延髄斬りを見せれば鷹木はまさかのシャイニング弾。そしてパンピングボンバーへ。最後はラストオブザドラゴンを着地してのデッドフォールでフィニッシャーを合わせ鏡のようにしてSANADAの勝利。鷹木と比較して手数に劣るSANADAがどのタイミングでフィニッシャーを切るかが注目の的ではあったのですが、相手の最大出力に被せる形でやってきたのは、切り返し合戦の極北の新日らしい解答だったなと。SANADAの作戦勝ちのような印象です。
試合後は鷹木とのユニットを超えたグータッチに、久しぶりのギフト。3位通過ではなく、鷹木に勝っての1位通過宣言。スロースターターのSANADAもようやくエンジンがかかってきた感じですかね。決勝カード予想はSANADAvs辻でSANADAの優勝だと思っているので、期待したいところです。