2024.8.8 新日本プロレス G1 CLIMAX 34 神奈川・横浜武道館 DAY13 試合雑感

◼️第6試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
内藤 哲也 vs カラム・ニューマン

カラムの奇襲でスタートもロープ上段から突き落として内藤は冷静に対処。タメのあるネックブリーカーにヨーロピアンネックロックでジワジワと攻め立てます。ほんの少し前ならスピードスター対決の可能性すらあった組み合わせですが、コンディションもあってかそこは張り合わず、逆に老獪さと緩急で攻め立てるのは面白いですね。今の内藤は飛び技のシーンだけかなり無理しているせいもあってか多少浮いてる印象があるのですが、試合のスタイルや攻め方はよりねちっこくなっており、こういうのを見ると武藤というよりタイプ的には蝶野だよなあ……と感じてしまいます。

その老獪な庭でひたすらに走り回って飛び出そうとするカラム。キャリアやコントラストを考えてもこれは正解ですね。コーナードロップキックの当たりがかなり雑なのは目につきますが、デスティーノを切り返したのは良かったです。

しかしながら最後はコリエンド式デスティーノから正調デスティーノで内藤の完勝。デスティーノor首固めの2択は面白いですね。ある程度好きに遊ばせたあとにきっちり勝った印象がありました。

◼️第7試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
SANADA vs グレート-O-カーン

SANADAにレスリング勝負を仕掛けていくオーカーン。受けに回って様子を窺いつつ、SANADAは懐の深さで受け止めるも、オーカーンもリープフロッグのいつものムーブを外しにかかってそのセオリーを崩してきたのが面白いですね。

ラウンディングボディプレス着地で膝を痛めたSANADAにトーホールドやアマレス式のアンクルのように足を交差させてのニードロップ。膝裏へのローキックなどでオーカーンはSANADAの足を集中的に狙います。SANADAも河津落としやコリエンド式スカルエンドで打開を図りますが、シャイニングウィザードは足一本背負いで返される。このシーンは良かったですね。

オコーナーブリッジにデッドフォールを切り返していくオーカーンに対し、SANADAも後頭部シャイニングに正調シャイニングと畳み掛けますが、最後は羊殺し→変形コンプリートショット→エリミネーターの必殺コンボでオーカーンの勝利。SANADAが足を痛めているというエクスキューズありきとはいえ、オーカーンはこのパターンを構築できただけで今年のG1で得るものはありましたよね。オーカーンの試合、全体的な試合構成力というか、やはり多少のチグハグさがあるのは否めないのですが、他の試合と比べて読みにくい面白さはありますね。

それにしても SANADA、ここでの敗北は絶望的ではありますよね。一応、3位が団子状態になれば通過の可能性は残っていますが、3位を目指すといった当人の言葉が現実味を帯びてきたのは皮肉的とでと言いますか……。SANADAやEVILといった世代の優勝で、新世代の壁役を期待したのですが、どうにも波に乗り切れておらずヤキモキさせられますね。試合内容は悪くはなく、安定感もコンディションもいいものの、インパクトとしては突き抜けなかった感じもあり、衝撃的なジェイクの秒殺劇のインパクトを超えられていなかったのが手痛いように思います。



◼️第8試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
海野 翔太 vs ジェイク・リー

ジェイクvs新世代となるとNOAHのvs清宮戦を思い出しますが、キャラが似通っているようで異なるのもあって、前は高慢ちきな野心家でしたが、今は慇懃無礼な如何様師なんですよね。この新日仕様の微妙なキャラクターのスライドと微調整は面白いです。海野を早々に椅子でシバくと観客を罵倒するジェイク。背中へのエルボーや背中への蹴り。そして口撃。NOAH時代は王者であり査定を受けていたのもあって舵取りの主人公感はあったのですが、新日参戦のジェイクってまだ中核にはいないせいか、意図的に枠外を嗅ぎ回っているハイエナのような感じで、それもあってかアジテーションを多めにしている印象があります。恐らく新日仕様のジェイクが受け付けない人って、単純に「主人公」ではないからだとも思うんですよね。ここが当人の意図したものなのか、新日の采配なのか、それとも今はまだ枠外の敵なのか、それはは判別できませんが、今のジェイクも個人的には魅力的ですし、十分受け入れられてるとも思います。

こうして煽られれば煽られるほど、海野のベビー要素が際立つという。海野はなんだかんだでこういったシチュエーション先行の試合は結構ハマりやすい気もします。しかしながら叫んで受けまくるもジェイクのミドルキックでダウン。レフェリーを無視してダウンカウントを数え、10と見せかけてのサッカーボールキックは海野に受け止められ、エルボーで一撃。一瞬トンだように見せたジェイクは流石に芝居かがってるなと感じましたが(笑)変な話これが嫌味にはならないんですよね。

海野もイグニッションや、激烈なエルボーで反撃するも、ジェイクも高角度の抱え式バックドロップにアルゼンチンバックブリーカー、チョークスラムと全部腰へのダメージで海野を沈めにかかります。FBSは海野はブレイズブレイドで返し、さらにブレイズブレイドを決めるも、ジャイキリ、ハイキック。そしてFBSでジェイクが海野を倒してフォール勝ちを奪いました。

うーん……(笑)ジェイクのキャラクターは面白い。前のジェイクを知ってる身からするとわや芝居がかりすぎていて、求める強者としての役割からすると物足りない。しかしながら海野相手にしっかり新日流の試合をこなしていて、なおかつ今回の試合はクオリティもかなり高く、最後の海野の爆発力も上手く料理した感じがあります。シチュエーションの噛み合い方も素晴らしい。いやはや、頭を悩ませますね。

や、それにしてもジェイクのひょっとしたら負けるかもしれない底の知れない詐欺師キャラが、当人が演じていることよりもNOAHと新日のジェイクの扱いの違いのせいで騙されてる感じが強いんですよ(苦笑)なんにせよ、ジェイクはまだまだ執拗にG1の頂を狙っていると思いますし、竹下が怪物無双なのでそことの差別化ではあると思うのですけどね。とりあえず僕はNOAH仕様も新日仕様も、どっちのジェイクも好きです(笑)

しかしながら、星取表だと残りを取っても自身が負けてる内藤とEVILとオーカーンに並ぶ以上、現時点ではジェイクの決勝進出はほぼ詰み状態という悪夢。鳴り物入りの参戦で予選敗退の可能性が出てきたのはビックリですが、そうすんなりと予選敗退しますかね?誰かと入れ替わる形で決勝トーナメント進出かな?と思いますが、それだとG1ではなく陰陽トーナメントになってしまいますし、かといって詐欺師が他の選手の足を引っ張っただけで自身の利になってないというのも面目丸潰れで、これは色々と厳しいですね。とはいえ、G1予選敗退だ狂った計画が、今後の新日侵攻の何かのトリガーになりそうな気もしますし、敗退=新日参戦が失敗だったとするのも時期尚早ではあるのですが、それにしても驚きではあります。

海野はジェイクに敗れたことだ5敗となり、脱落。G1での結果は出ませんでしたね。皆が望んでいるのって結果以上に試合内容だと思いますが、試合内容が良ければ結果もいずれはついてくるわけで。腰の負傷はやはり尾を引いていたような感じがあります。

◼️第9試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
ザック・セイバーJr. vs ゲイブ・キッド

イギリス人同士の戦いであり、両者共にストロングスタイルに近しい存在でもあるためかなり興味深い一戦となりました。しかしながら蓋を開けてみれば壮絶な打撃合戦で、ザックの胸がゲイブの逆水平で真っ赤に染まったのが印象的でした。ゲイブはシンプルに逆水平に絞っており、ザックのフロントネックロックも場外ブレーンバスターで切り返します。

いや……それにしてもザックが受けに回ってるのもありますが、徹底してゲイブの逆水平を受けまくるザック。たまに張り手は返すものの、ザックの胸がミミズ腫れになっていきます。そして「カツヨリ、見とけ!」からの二人とも座り込んでのビンタ合戦。そしてジャーマンとバックドロップの撃ち合い。これはある種の再演ですよね。ザックは逆水平を受けまくって手詰まりかと思いきや、ゲイブの腕を殺すと逆水平を敢えて撃たせてダメージを爆発させる。こういう相手の攻撃を逆利用してダメージを与えるの、僕は好きです(笑)

そして飛びつき腕ひしぎ逆十字固めに卍固めとようやく腕攻めを解禁。逆水平を有効打とすることでそこに思考を縛ると同時に、打った側にも当然入るダメージを積み重ねに利用する。ゲイブもエメラルドフロウジョンにここ一番の大技であるムーンサルトを解禁。それをピンポイントで三角絞めや腕ひしぎに切り返すザック。これを抜けてエルボーを乱射するゲイブ。より原始的かつ、生々しい戦いですね。

未遂に終わりましたがゴッチ式パイルドライバーを仕掛けたザック。ゲイブとのラリアットの撃ち合いで被弾し、あわやという場面がありながらも、最後は執拗なスリーパーからゲイブの腕ごと締める胴締めスリーパーでゲイブからレフェリーストップ勝ち。この絵は見事ですし、逆水平一本に見せかけてことごとくザックの関節に対処してきたゲイブも素晴らしいですよ。

ザックはこれで決勝トーナメント進出確定であり、これは非常に喜ばしいです。今までの新日での活躍がようやく身を結んだというか、史上二度目の外国人優勝になってもおかしくないと思うんですよ。ただ、後藤vsザックなんてことになったら僕の胸が張り裂けてしまうのでやめて欲しくはあります(笑)

◼️第10試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Aブロック公式戦
鷹木 信悟 vs “キング・オブ・ダークネス”EVIL

鷹木とEVILは王座戦の印象が強いですが、この二人ってわかりやすいベビーvsヒールかつ、あのEVIL旋風の時にしっかりベビー側の反撃のカタルシスを出せたのって鷹木ぐらいなんですよね。加えて鷹木のハイテンションがいい具合の清涼剤になっているというか、EVILの溜めるフラストレーションのカウンターになっているのが面白いのですよ。

EVILも鷹木のテンションに釣られるのか、鷹木のグーパンチ→バックエルボーのコンボを自分で上書きしたのがよかったですね。そしてこの二人だとパンピングボンバーとラリアットの撃ち合いのリズム感も素晴らしく、鷹木のような突貫ファイター相手でも応じれるEVILの懐の深さを感じます。そしてディック東郷介入に解説のヒロムが助太刀するも迎撃。そしてBUSHI乱入かと思いきや、マスクの正体が金丸!外から見たらわからない!これはセキリュティホール!脆弱性ですよ!w

それでも鷹木はテンションを落とさずにEVILをメイドインジャパンで迎撃。と、思いきやゴングを強引に鳴らすディック東郷!スポイラーズチョーカーに金丸のウイスキーでの一撃と鷹木を潰しにかかります。しかしながらウイスキーミストの誤爆にBUSHIの毒霧の二重奏を喰らい、最後は鷹木がパンピングボンバーからラストオブザドラゴンでEVILを沈めて逆転勝利。この二人はロスインゴvsHOTのユニット抗争に雪崩れ込む豪華さがあり、今となってはこの遊園地のようなエンタメ感もこの二人のカードの見どころの一つとなりましたね。

鷹木は首の皮一枚残して望みを繋ぎました。実力的に決勝トーナメント進出は不思議ではなく、おじさんの夢の続きは期待したいところですね。

いいなと思ったら応援しよう!