2024.8.10 新日本プロレス G1 CLIMAX 34 宮城・ゼビオアリーナ仙台 DAY14 試合雑感
◼️第4試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Bブロック公式戦
ボルチン・オレッグ vs KONOSUKE TAKESHITA
新世代の怪物同士のマッチアップ。とはいえ、キャリアでは雲泥の差があります。しかしながら序盤のレスリング勝負ではボルチンが圧倒的というか、やはり新世代相手だとボルチンもリミッターが外れるなというのを感じました。
投げ捨てられた竹下はリングに入るか否かの駆け引きで惑わせると、隙を見てノータッチのトペコン。さらにエプロンDDTという立体的かつド迫力の攻めでボルチンを痛めつけます。その後に見せた三沢式のフェイスロックですが、一瞬腕がシナのチンロック版のSTFのようになっていたのが印象的でしたね。竹下の鍛え上げられた上腕二頭筋と肩がすごく目立つんですよ。
ボルチンも変形の水車落としに強烈な逆水平、ショルダータックル、ボディプレスで反撃。掴まれたら終わりという構図。竹下もコーナーを利用してのブルーサンダーを見せれば、いつもよりジェイクの早いボルチンシェイクでボルチンも追いかける!いや、互いの躍動感も凄いですが、ボルチンの気合いですよ!この段階ですでに「互角」感があるのが凄いというか……竹下、やはりベストバウトマシーンですよ。
ボルチンも豪快なラリアットから助走なしのカミカゼ。竹下とボルチンでジャーマンを撃ち合いますが、角度と高さではボルチンに凱歌が上がります。竹下も重いエルボーを喰らわせるも、それに負けじと高さのあるデンジャラスな超高角度ジャーマンで叩きつけるボルチン!この竹下のジャーマン受け、飯伏のジャーマン受けをちょっと思い出しちゃいましたね。この体格、この長身でこの受けをやるとは……竹下、本当に怪物ですね。ボルチンの正面飛びドロップキックはカウント1で返してスクールボーイで丸め込みザーヒーを叩き込むも、これをキャッチされ、エルボーを挟んでのタケシタラインは抱え上げられてのF5!そしてカミカゼを決められてボルチン、まさかの大金星!
いやあ……試合結果のみだと意外性があるものの、見たら納得してしまう壮絶な戦いでした。あのジャーマンの撃ち合いと角度。そして一撃必殺F5の技の神通力でキャリアと格の差をひっくり返したのが凄いですね。いい試合でした。
◼️第5試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Bブロック公式戦
HENARE vs 成田 蓮
HENAREの入場を成田が奇襲。HENAREの荒々しさを考えるとバンダナで視界を奪うのは理に適ってますし、目隠し状態での攻撃ってやっぱり凄惨さが際立つんですよ。そしてバンダナを取ってあらわになるHENAREの怒りの形相からの反撃。ここに至るまでのシークエンスが完璧すぎて惚れ惚れしました。
場外戦でHENAREを攻めると、成田はリングに戻ってトーホールドにレッグロック、インディアンデスロックで足攻めを開始。足を極めながらHENAREのアピールを見せるなど余裕綽々がいいですね。
HENAREも怒りとともに成田の不得手とする打撃のバリエーションで攻め立てるも、ブリザードにハーフハッチと投げで外し、そして裏膝十字で極めていきます。この押し引きのセンス!いやあ……成田は本当に上手くなりましたよ。このテンポ感と先手を維持してるのは要所で見せるチョークやガウジングであり、これで相手の攻め手を潰してるのが大きいんですよね。
一度はかわされるも、二度目の改造プッシュアップバー攻撃を膝裏に見舞うと、成田は再びの膝十字!アルティマを関節蹴りで外してダブルクロスを放つもHENAREはラグビーボールキックからランペイジで一気に成田を叩きつけます。これでHENAREの流れかと思いきや、フィニッシャーを堪えると顔を覆ったレフェリーの隙を見てのローブロー。そして膝蹴りからダブルクロスで成田の勝利。すでに「型」ができつつあるのが恐ろしい所ですね。
◼️第6試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Bブロック公式戦
後藤 洋央紀 vs エル・ファンタズモ
竹下との激闘を経て復活したファンタズモはピカピカの電飾ジャケットで入場。後藤もファンの期待を一身に背負っての入場で、握手からの始まりとなりましたが、それに相応しい互いにテンションの高い試合となりましたね。
後藤が持ち前のラッシュを見せると、ファンタズモも立体的な飛び技で反撃。同じ飛び技でも低迷からの復活をかけて飛ぶのと、テンションの波に乗せて飛ぶのとでは空気感が違いますし、これでELPコールを巻き起こしたのは凄いですね。後藤のお株を奪う一人消灯を見せたシーンは良かったです。
最後は後藤との苛烈な押さえ込み合戦を制して十字固めでファンタズモの逆転勝利!わりとこの領域での勝負で後藤に勝てたのは素晴らしいですし、意気消沈する後藤とのコントラストは何とも言えない気持ちになってしまいました。最後は抱き合って健闘を讃えますが、後藤にとっては混戦突入で厳しい結果となりましたね。しかしながら試合の後味は悪くはなく、CHAOSのスポーツライクな死闘にファンタズモの明るさの曲者感が上手く噛み合ったように思います。
◼️第7試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Bブロック公式戦
ジェフ・コブ vs デビッド・フィンレー
初対決らしい独特の緊張感に包まれた一戦。パワーはあれど線の細いフィンレーと比較するとコブは厚みがあり、得意の脊椎への一点集中も重さや体格差もあって仕掛け辛さを感じました。
体格差があってもフィンレーとほぼ同速で動き、スープレックスの豪快さに加えて飛び技一つでひっくり返すコブはかなり厳しい相手ではありましたが、切り返しに一日の長があるフィンレーも上手くいなして応じつつ、久しぶりのACID DROPを決めたあたりは良かったですね。
超パワーのコブをどう切り崩すのか?ここが一番の注目ではありましたが、フィンレーの選んだ選択肢はなんと正面突破。コブの猛攻を全部受け止め、体格差に構わず投げっぱなしパワーボム2連発。この技って使い手としては細身のフィンレーのイメージには全然合わないのですけど、ヒール転向に合わせて終盤の厚みを増すために使い始めた大技レパートリーの一つかつ、人体の完全破壊を信条とするフィンレーのスタイルには合っているんですよね。コブに決めたのはまさに意地の表れであり、無理してる技だからこそ逆に決めることに価値があると思います。そしてオーバーキルで完全ピンフォール勝ち。やはり外国人対決だとフィンレーは負けるわけにはいきませんね。
◼️第8試合 30分1本勝負
『G1 CLIMAX 34』Bブロック公式戦
辻 陽太 vs 上村 優也
冬のヤングライオン時代からずっと戦い続けて構築したライバル関係だけに、濃度と密度はズバ抜けていますね。序盤は上村のじっくりとした腕攻めから幕を開け、竹下戦で見せた相手の前転回避についていく感じで極め直すリストロックに、場外からリングに戻っても追跡して腕を極め続けるねちっこさが素晴らしいです。ただ、辻に仕掛けた脇固めを辻が前転で返したのを藤原喜明のようにアームロックで極めにいかなったあたりが玉に瑕というか、上村のスタイルは好みど真ん中なだけにズレがあると気になってしまうんですよね。もっともっとねちっこくいってもいいと思ってしまいます。
辻もジーンブラスターの布石となるガットバスターに逆エビ固め。特に辻の逆エビ固めはボディシザースと並んで辻の序盤の貴重な絞め技であり、敢えてヤングライオン時代の技をやる上から目線も、対上村相手だと意味合いがより強まるのがいいですね。
しかしながら辻の場外弾で上村にアクシデント。腕攻めをしていた上村のほうがまさかの右腕を負傷するという磁場の狂いが生じます。明らかな負傷であり、一瞬レフェリーストップも視野に入るほどではありましたが、これを拒否して腕を押さえながら辻にヘッドバットを決める上村!辻も上村の負傷を見てマーロウクラッシュからのジーンブラスターで一気に勝負を決めにかかりますが、これをストームクラッチで押さえ込む上村。これはギリギリでキックアウトされるも、最後はブレーンバスターボムを首固めで押さえ込んで上村の勝利。負傷もあって試合のクオリティは高くはなりませんでしたが、偶発的な負傷のせいで逆に生々しさが生まれたというか……。それは決して肯定できる事象でないものの、それでもショーは続くんですよ。こうした局面の時にそのレスラーの本質は暴かれるわけであり、これもまた場数です。二人にとっては今日の試合はいい経験になったと思います。
最後の上村の「これは戦いなんだ!」の絶叫は良かったですね。どんな状態であれ、どんな技であれ、3カウントを奪ったほうが勝ちなのがプロレスです。3カウント入っても辻が肩を叩くまで押さえ込んで離さなかったあたりに上村の意地があり、これはG1で棚橋vs柴田の決着で棚橋が首固めを解かなかったシーンが頭をよぎってしまいました。押さえ込みは「丸め込み」というイメージがつきすぎているのですけど、3カウントを奪えば勝てるスポーツでそれを直接狙うのは、文脈としては一撃必殺に近いと常々思っています。相手をグロッキー状態にして3カウントを取るほうが馴染みがあるかもですが、どちらかといえばイージーなほうであり、相手に余力があろうとも押さえ込んでコントロールしきるほうが美学があると個人的には思うんですよね。次は万全な状態で、より大きい舞台やシチュエーションで、二人の戦いを見てみたいと思います。