2024.8.17 新日本プロレス G1 CLIMAX 34 東京・両国国技館 準決勝戦 試合雑感

◼️第7試合 時間無制限1本勝負
G1 CLIMAX 34優勝決定トーナメント・セミファイナル
辻 陽太 vs デビッド・フィンレー

この2人、節目節目で縁がありますよね。次世代のベビーの柱vsヒールの総大将としてドームのメインイベントになり得るか否か、ある程度それを想定した一戦だった気もします。

試合内容は準決勝らしい壮絶な削り合いであり、序盤は辻が押していたものの場外戦を交えて今度はフィンレーのペースに。フィンレーは場外でしっかり追撃を忘れないあたりが丁寧ですよね。ただ、定番の黄金カードになり得るポテンシャル面を互いに重要視しすぎたのか、ベビーvsヒールの一戦としてはやや王道的で全体的に綺麗すぎるなと思っていたのですが、机を取り出したあたりでそうした空気に変化を加えてきたのは面白いですね。

テーブルはチェーホフの銃のように、出してしまえば壊れる帰結が必ず訪れる関係上、位置関係で緊張感が生まれる反面、そこに焦点が映ってしまってやや散漫になる難点もあり、テーブルを取り出したのが展開上やや早かったせいか、少しそれに足を取られた気はします。しかしながら、辻のスパニッシュフライという大技に対してテーブルクラッシュでダメージの帳尻を合わせつつ、エクストリームな大技で張り合ったフィンレーは見事ですし、その後のコーナーパワーボムを二度に渡って敢行して完全破壊を見せたのもダメ押し感がありましたね。

辻を限界まで追い込む一撃としてのパワーボムの過度な連発は絵的は映えたものの、パワーボムをフィニッシュに昇格させた今回のリーグ戦のことを思うと、これでやや価値が落ちてしまったなと思ってしまった側面もあり、全体的に今回の試合はアクセントが効果的に機能した部分と、追加したことで難点として表れた部分が両隣だった気がしますね。

やや苦言はありつつも、クライマックスの展開は凄まじく、辻のジーンブラスターをドンピシャのタイミングで首固めで切り返したフィンレーのセンスたるや素晴らしいの一語しかなく、やはり切り返しのセンスのみなら歴代バレットクラブのリーダーNo.1と言っても過言ではありません。そしめ万事休すかと思われた辻も、ヘッドバットからフィンレーの両腕を閂で捉えてのカンヌキスープレックスで形成が逆転させた瞬間は思わず声が出ましたよ。志半ばで終わった上村の技を逆転に使う主人公ぶり!いやあ……これはズルすぎますよw最高ですwここからのジーンブラスターが位置関係も完璧で、フィンレーを突き刺して決勝進出を決めました。

もうとっくに辻は立派なメインイベンターだと思いますが、ポジションとしてはいまだ「大関」であり、それを覆すにはNJC優勝だけではまだ足りず、時代を変えるのであればIWGP戴冠かG1優勝という最高峰のタイトルがどうしても必要なんですよ。衝撃的な凱旋帰国やらあと一歩届きそうで届かない状態が続いたからこそ、春夏連覇で一気に爆発して欲しいですね。

◼️第8試合 時間無制限1本勝負
G1 CLIMAX 34優勝決定トーナメント・セミファイナル
鷹木信悟 vs ザック・セイバーJr.

G1公式戦の中で屈指のベストバウトだった鷹木vsザックですが、この2人のリマッチは何度も見たいですね。準決勝戦での再戦は前回より試合としての意味合いが重いせいか、より重厚感のある試合となっており、そこに2人のハイレベルの切り返しの攻防が加わって極上の一戦となりましたね。

相手の腕を重ねて腕を殺し、当身のように打撃を使って絞めや関節を極める隙を作ったりと、ザックの動きは間合い管理含めて常にリアリティがちゃんとあるのがいいのですよ。そんなザックの技術に見惚れると同時に、この試合で目を見張ったのは鷹木の受けっぷりの良さでしたね。ザックに足を攻められてケンケンでやったロープワークは素晴らしく、また最後の膝十字固めで悶絶するときの表情とリアクション……何もかもが完璧です。

試合中に決まったヒールホールドはその関節技の一撃性が担保されてるせいかニアロープで終わる緊張感がありましたし、その場面があったからこそ、最後の「耐え」が恐ろしく光るという。顔を覆い、歯を食いしばるまではよく見る光景なのですが、ギブアップを言いそうになる自身の口を力づくで塞ぐというのは凄すぎますよ。そしてそれらを積み重ねた上での無念のタップアウト。いやあ……鷹木信悟、千両役者ですね。

ザックの要所要所のテクニックに唸らされると同時に、鷹木の受け攻め含めた柔軟性に驚かされる。この両者の対戦カードは間違いなく現新日のトップカードの一つですね。ストーリーやライバル関係はあろうとも、組まれたら即試合のみでベストバウトを叩き出すことができる。メインに相応しい極上の一戦でした。

試合終了後に現れた辻と握手を交わしたザック。どちらにも勝って欲しいと思わせる組み合わせこそ、勝負論があっていいと思います。個人的にはザック優勝見たいんですよね。観客席で笑顔で叫んだ「また明日ネ」の爽やかな期待感。観客のコールの中で両手を上げるザックの光景が脳裏に焼き付きましたし、ケニーに続く外国人選手のG1制覇の記録を作って欲しいですね。

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