2023.7.19 新日本プロレス G1 CLIMAX 33 DAY4 試合雑感
◾️第1試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Dブロック公式戦
矢野 通 vs ザック・セイバーJr.
ザックの代わりに入場したのは藤田晃生。ベルトを巻き、ガウンを纏った姿は未来の姿のようでいて微笑ましい反面、こんな形ではなくちゃんとした形で王者藤田晃生を見るその日まで取っておいて欲しかった感もあり、色々と複雑です(笑)
対する矢野も替え玉に対して中島佑斗に法被を着せて自身の代わりに投入するなど、対応力は中々のものです。しかしながら替え玉の本来の役目はブラフであり、背後から現れたザックが矢野を絞め落としにかかります。
これを足にテーピングをぐるぐる巻きにすることで場外放置でのカウントアウトを狙う矢野。矢野のテーピングは良くも悪くもプロレスの領域からはみ出している気もしているのですが、レフェリーのやる気のないスローなカウントも含めてこれはもう「こういうもの」として受け取るしかないですね。
最後は押さえ込み合戦でザックが勝利。アトラクションとして割り切るのであれば第一試合の盛り上げとしては宴会部長の矢野は本懐を果たしましたし、ザックのコミカル適性の高さも素晴らしいものです。ザック、本当にレスラーの完成度で言えば隙がないので、今のような大関ポジションではなく横綱ポジションになってもらいたいものですね。IWGP世界ヘビー級王座を巻いて欲しいものです。
◾️第2試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Cブロック公式戦
マイキー・ニコルス vs デビッド・フィンレー
上手くは言えませんがマイキー・ニコルスの正統派ベビー感、いいですよね。タイツのブルーもあってか遠目だとクリス・ベノワに見えなくもなくて、それもあって個人的には目が離せません。
フィンレーの打撃は相変わらず苛烈で、場外への鉄柱に向けて放り投げた技になってないような技が素晴らしかったですね。フィンレーの攻撃は打撃も含めて対象者の「骨」に響く痛みが伝わってきますし、父親のえげつなさをきっちり踏襲してる感があります。
こうした攻めだと凄惨な雰囲気が際立ち、やられる側に悲壮感が出てくるものですが、そうした空気感を微塵も感じさせないぐらいマイキーが明るく、このヒーロー感のある「陽」のオーラは天性のものがありますね。
しかしながら最後はバックスライドをフェイントに使ってのINTO OBLIVIONで勝利。ややあっさりめでありながらも二人の雰囲気が噛み合ったいい勝負でした。
◾️第3試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Dブロック公式戦
ジェフ・コブ vs アレックス・コグリン
コグリンのバキバキに鍛えた身体もあってか、パワー対決の雰囲気が漂ってきます。最初のロックアップからして重厚感があったのはよかったですね。
突進力では重さで勝るコブに軍配が上がりますが、その重さを仇とするようにコグリンがサイドスープレックスやミリタリープレスで放り投げます。いつも投げる側のコブが投げられる側に回ることのインパクトは凄まじいものがありますね。コブもコグリンにない武器である跳躍力で挑みましたが、いつものその場飛びムーンサルトがこういうパワー対決だと意外性となっていいスパイスになっていましたね。
重い側は投げられるだけでダメージを蓄積するわけですし、投げるコグリンもスタミナの消耗が激しく、短い時間ながら互いに「削られてる」感があったのがとてもよかったです。最後は強制島送りでコブがからくも勝利。コグリンの潜在能力が発揮されたいい試合だったと思います。
◾️第4試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Cブロック公式戦
エディ・キングストン vs “キング・オブ・ダークネス”EVIL
EVIL戦の荒れ具合を想定してシンガポールケインを持ち込んだエディキンのセンスに脱帽します。Tシャツを着たままの試合というのもあって、これだけでエディキンのインディー感が際立ちますね。対するEVILもこなれた反則に加えて、風貌やオーラはメジャー団体の元チャンピオンに似つかわしくない粗野な雰囲気があるせいか、互いの空気感が調和していたのが素晴らしいなと思いました。エディキンのオマージュ技の数々もそうした空気感に花を添えている感じがありますね。
細かな反則でEVILが積み上げたフラストレーションを一気に解消するエディキンの竹刀での大立ち回り。しっかり受け切るEVILも見事です。カウンターのジャンピングハイからのストレッチプラムという川田利明ムーブでEVILを仕留めにかかったエディキンでしたが、ディック東郷が介入。これに激昂したエディキンが不意打ちの金的を受け、そのままEVILで EVILの勝利。最後は上手くひっくり返しての頭脳戦。EVILのこのG1の試合のクオリティは高く、このエディキン戦もかなり見やすかったように思います。新日、2020年を丸々使って投資した甲斐があったなあと感慨深くなりますね。この二人の試合、ノーDQかデスマッチで見たかった気もしますが、そうでないからこそ際立った小細工とコミカルさ。いやはや、素晴らしいですよ。お気に入りの試合です。
◾️第5試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Dブロック公式戦
棚橋 弘至 vs シェイン・ヘイスト
絶対ベビー、棚橋弘至相手というのもあって、ほんのりヒール要素を差し込んでくるシェインが上手いですね。肉体美をアピールしたりと少しだけ混ぜ込んだ嫌味さが素晴らしく、目立った反則こそしないものの身振りで立ち位置の違いを表していく。前の試合のマイキーと差別化を図っているのが巧みです。
変化を打ち出した棚橋でしたが、シェインの醸し出すヒール感に対抗してか、今回はいい意味でわりといつも通りの明るいヒーロー感のある棚橋でした。完全にスタイルチェンジというわけではなく、その場、その試合、その相手において最も最適である択をこだわらずに選んでいるだけの話であり、それに対応する引き出しは今のキャリアだと十分にあるというだけの話ですね。ノスタルジー感はまだなく、いつも通りの棚橋が見れることに喜びさえ感じる。完全に捨てるわけでないのが憎らしいなと思いました。途中に見せたダルマ式ジャーマンは久しぶりでしたし、あれはマニア大歓喜でしたね。
シェインのバリエーション豊かなバックドロップで追い込まれ、雪崩式を狙われた場面では危うしといった感じでしたが、ドラゴン式張り手で突き落とすと、スタンドの相手へのハイフライアタック、そのままハイフライフローのいつもの二段構えで勝利。シンプルかつ王道的な勝利。まさに棚橋の試合でした。面白かったと同時に安心しましたね。
◾️第6試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Cブロック公式戦
鷹木 信悟 vs HENARE
HEMAREの首にはテーピングが施されており、前回の試合のダメージを思うと心配ですね。鷹木との手の合うマッチアップもHEMAREが風貌を変えたことで第二ラウンドに突入した感はありますが、ここで首のダメージによるブレーキはかなり厳しいものがあります。
しかしながらそこは「タフガイ」であるHENARE。立ち上がるときの面構えがタトゥーもあって獣のような闘争心を感じました。受けるシーンは苦しそうではありましたが、攻めのターンで違和感がなかったのは凄いですね。
ただ、恐ろしいのは鷹木信悟で、ランペイジ狙いを串刺しDDTで切り返すと、すかさずスライディング式のパンピングボンバー、さらに珍しいグラウンドコブラツイストで追い打ちをかけます。こうした場面で首一点集中をやりつつ、単にパワーで押すだけではない硬軟織り交ぜた攻めができるのが鷹木の長所ですね。
戦いは刻一刻と時間切れが迫るにつれてよりハードな打撃戦となり、拳と蹴りとラリアットが交錯する中、ポイントとなったのはヘッドバッドでした。何発か撃ち合いが続きましたが、最後打ち勝ったHENAREがストリーツオブレイジで勝利。首のダメージがキツいのかいつものデスバレーではなくフィッシャーマンバスターでしたが、無理にねじ伏せた感じがありましたね。鷹木相手の勝利は大きいです。今大会のベストバウトの一つに数えてもいいぐらいの壮絶な試合でした。
◾️第7試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Dブロック公式戦
後藤 洋央紀 vs 内藤 哲也
かつて成り上がろうとする後藤を猛追したのが内藤なわけですが、この両者のカードは迫り来る新時代の中での「あの時代」の再演のような、そんな熱さがありましたね。
試合そのものはいつも通りの、それでいて好クオリティの良試合。雪崩式フランケンを始めとしてプルマ・ブランカや浴びせ蹴りなど、普段から使っている技ではありましたが、このチョイスは内藤がもがいていた時期の技でもあったせいか、この試合に限っては妙に心に響きました。
対する後藤もヘッドバッドは初公開時は棚橋を一発昏倒させた技でもあり、ここ最近はカミゴェのように相手の両腕を封じての一撃へと進化していますよね。タッグ戦での安定感はシングルでも十分活かせており、やはりこうして見るとデンジャラスであり「怖い」男だなと思います。
この試合のスペシャルは内藤のエスペランサと見せかけてのリバーススイングDDT。以前何度かチラ見せしていた大技ですが、エスペランサ実装後に出すのはフェイントになってていいと思います。粘る後藤を腕を掴んでのバックエルボーで黙らせると、そのまま強引なデスティーノで内藤勝利。どちらが勝っても負けても双方のファンから嘆息しそうな印象のあるカードですが、ややネガティブでありつつもまだこの二人に勝負論が残っていることの証左でもあり、今回は内藤に勝利の女神が微笑んだ。そんな感じでしたね。
第8試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Cブロック公式戦
石井 智宏 vs タマ・トンガ
ベビーフェイスタマちゃんは追放劇という重いストーリーと対戦相手との苦闘が多いせいかその表情は曇ることが多く、ヤキモキすることもあるのですが、それをかき消すだけの天性の明るさがあるのがいいですよね。またこうした躍動感溢れるプロレスにきっちり合わせられるのが石井であり、目まぐるしく変わる切り返し合戦は非常に見応えがありました。
ブラッディーサンデーにガンスタンと、借り物の技を代名詞にまで昇華させ、また自身のヒストリーを大切にしているというのが伝わってくるせいか神通力は申し分なく、味方に回った敵キャラというおいしいポジションをキープしつつも、しっかりとヒーロー感を打ち出しているのは個人的には非常に好ましい部分であったりします。
こうしたタマを輝かせる石井のハードさと安定感は言わずもがなで、タマはかなり追い込まれましたが、最後は垂直落下式ブレーンバスターをガン・スタンで切り返すと、オカダを葬った危険すぎるパイルドライバーDSDで脳天を打ちつけて勝利。試合後のマイクも日本語を交えつつもわかりやすい英語でのアピールであり、タマちゃんの愛され感が伝わってきてとてもよかったように思います。タマちゃん、もっとガンガンプッシュしていいと思うのですけどね。とりあえずシングルプレイヤーとしての色はだいぶ濃くなったでしょうし、来たる新世代との対決とかも見たいものですね。タマちゃんが新日に居続けていることには感謝しかない。あらためてそう思わされる好勝負でした。
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