2025.1.5 新日本プロレス JR東海 推し旅 Presents WRESTLE DYNASTY 東京ドーム 試合雑感

1.4に続いて即公開……のつもりでしたが、愚かなことに書くだけ書いてアップした気になって下書き状態で放置してました……。普段書くときしかnoteを開かないのもあって気づくのが遅れてすみません……。一週間以上経ってかなり遅くなってしまい鮮度もクソもないのですが、このまま遅れたことを理由にお蔵入りするには惜しい試合が目白押しなので恥を忍んで記録として残しておきます。では前置きもそこそこにやっていきましょう。

◼️第0-1試合 時間無制限1本勝負
『International Women's Cup』4WAYマッチ
渡辺桃 vs ウィロー・ナイチンゲール vs ペルセフォネ vs アティーナ

ペルセフォネ、いでたちがキャットウーマンみたいで良かったですね。ブラックウィドウというのもナイスな異名です。試合で目立ったのはナイチンゲール 。キュートな笑顔からのパワーと突き刺すようなビッグブーツは受けも相まって迫力がありましたね。 

この4way、参戦選手全員の知識があるファンが恐らく少ないであろうというのもあってか、キャリアのある王者、パワーファイター、ヒール、ルチャとキャラクターの色分けが巧みであると同時に、試合展開もそれに合わせて目まぐるしく展開していったのが良かったです。と、いうか単なる4wayとして見てもレベルが非常に高いですよ。

最後はテクラのレフェリー妨害から黒バットでの一撃。ピーチサンライズで渡辺桃がダーティーに勝利。勝ち方こそ反則めいていましたが、ヒールとして申し分ない働きですし、それでいてフィニッシュのピーチサンライズも日本の女子プロレスというものを存分に打ち出していて、最後の最後で主役をきっちり奪取したのが凄いですね。

◼️第0-2試合 60分1本勝負
ROH世界タッグ選手権試合
サミー・ゲバラ&ダスティン・ローデス vs 金丸義信&SHO

ゴールダストことダスティン・ローデスの風格たるや。立ち姿だけで絵になる。これこそレジェンドのなせる技です。あまりにもカッコいい……これに尽きます。武藤清宮やスティング&ダービー・アリンもそうですが、こうした親子ほど歳の離れたタッグってめちゃくちゃいいですよね。

実際、試合を見てみると単なる知名度や人気だけでやってるわけでなく、その歴戦のキャリアに裏打ちされた「身振り」の上手さがあるんですよね。若い衆の見せ場を過度に奪うことなく、全然バタバタしていない抑制の効いた感じがある「無駄のなさ」それでいてパワースラムのキレも軌跡も抜群という。深呼吸アピールが見れただけで僕はもう十分ですよwダスティン・ローデスと相対するとあの金丸ですら小僧感が際立ってしまうことに驚きましたし、その中でムーンサルトを足に被弾させたりと、細かい部分で足殺しの帰結をやっていたことに金丸の抜け目のなさを感じました。

最後はダスティン・ローデスのお株を奪うウイスキーミストからの旋回式ブレーンバスターであるファイナルレコニング。サミー・ゲバラのスワントーンボムでフォールを奪いました。いやあ……ダスティン・ローデス本当に良かったですね。これぞプロですよ。


◼️第1試合 時間無制限1本勝負
ルチャ・ガントレットマッチ

藤田とエチセロで開幕。このジャベの攻防、面白いですね。藤田が評価されているのはその若さもありますが、何よりこうした往年の新日を思わせるグラウンドの攻防も TMDKの薫陶を受けていてきっちり対応できることで「新日らしさ」を感じることができるというのがデカいですね。その中で隙を見てカンパーナを極めるなど、エチセロのテクニックもまた素晴らしいものがあります。

あと二代目ドラダのキレがハンパなく良かったです。エチセロとドラダ。この両者の醸し出すルチャの両側面が、そのまま続くファンタスティカマニアや今年のBOSJへの期待感へと繋がっているという。オープニングマッチとしてもプロモーションとしても完璧です。それに単純な話としてドームでこうしたスケール感のある跳び技は映えますよね。

最後の入場は王者であるデスペラード。それをリング上の全員が眺める構図が最高でした。王者に対する敬意を感じると同時に逆アベンジャーズのような豪華さもあるという。そこからの花道での大乱闘からリング上でのお約束の制裁タイムのルチャ教室までの流れはリズムがあって良かったですね。

そうした「狙われる首」としての価値を示すように、最後はネ申クラッチをレフェリーをぶつけて妨害すると石森が外道クラッチでデスペから勝利。再びのデスペvs石森へと。このカードもやや見飽きた感はありつつも何度も繰り返した鉄板の黄金カードであり、実力者である石森に対し戦うごとにサイヤ人のように強くなっていくデスペが見所でもあるんですよね。楽しみです。


◼️第2試合 5分1本勝負
スペシャルエキシビションマッチ
棚橋弘至 vs 柴田勝頼

棚橋引退ロードで成立した5分だけの邂逅。戦いではなく肉体と痛みを通した会話であり、評価できる類の試合というわけではありません。柴田はいまだ見慣れない逆水平。棚橋もこれまた珍しい胸への張り手と、行われたのは打撃の打ち合いのみであり、棚橋がエルボーではなかったあたりは柴田の頭部へのダメージを慮ったものであることは明白で、TAKAYAMANIAやAEWでは多少の制約がありつつも柴田が普通に試合を行えてることを思うとヤキモキする部分もありつつも、新日本で行われる以上は仕方のないことだと納得するしかありません。柴田には成田戦の「前科」がある以上、ひっくり返しもあるかなと少し期待しましたが、社長が棚橋であることを思うと顔を潰すわけにもいかず、それもまた信頼関係であると思います。

裏を返せば、そうした猪木vsアリ戦に等しい雁字搦めの制約の中でも成立したこと自体が奇跡のような試合であり、社長棚橋の最大限のワガママ。たとえファンに何をどう言われてもやりたかったという両者の思いだけで泣けてきますし十分ですよ。倒すためではなく、振り返ったときに棚橋引退ロードの中に柴田戦が組まれていたという「記録」があることに意味のある試合で、そこに過度なエモは必要ないのですよ。それは見た人間が脳内で補完すればいい。

夢のような時間はあっという間に終わり、あくまでエキシビションはエキシビションのまま幕を下ろしました。機会があればマットを変えての「もう一度」それがあるかどうかは分かりませんが、とりあえず柴田戦が組まれたという事実のみで僕は満足です。


◼️第3試合 30分1本勝負
STRONG女子&RPW統一ブリティッシュ女子ダブル選手権試合
白川美奈 vs メルセデス・モネ

モネのセーラームーンコスはとても良かったですね。やはり元WWEのオーラは素晴らしいものがあるのですが、白川美奈のオーラがそれに負けていなかった点に驚かされました。自己肯定感のせめぎ合いはエゴイズムの発露であり、この大舞台でもそれが見て伝わってきたのが良かったです。

モネの柔軟性と多様な攻めに対し、白川も負けじと雪崩式ドラスクを皮切りに徹底した足殺しで抗戦。モネも執拗に段階を踏んで何度もダブルニーを突き刺すも、それを切ってニークラッシャーからの足4の字固めを見せたのはセンスが光っていましたね。肩車式のドラスクも以前見た時よりニーブリーカーに焦点を合わせていて改良の余地が見て取れましたし、それだけでなく雪崩式のインプラントDDT、正調のインプラントDDTに足を痛めて浮き足にさせておいてのグラマラスドライバーMINAと、技セットのキャッチーさも素晴らしいです。

ゴリーボムからの膝固めを挟んでのゴライアスバードイーターのような腕極め式の足4の字。業師としての側面を見せて徹底的に追い込むも、モネメーカーと見せかけての逆さ押さえ込み、再三に渡る足4の字を見切っての押さえ込みから、一撃必殺のモネメーカーでメルセデス・モネが逆転勝利。いや、前の女子4wayマッチもそうでしたが、この試合も1.5の興行内でもトップクラスにいい試合でしたよ。どちらも最高でしたね。


◼️第4試合 30分1本勝負
スペシャルシングルマッチ
デビッド・フィンレー vs ブロディ・キング

GLOBAL王座から陥落したとはいえ、それ即ちIWGP世界ヘビー級戦線への準備が整ったことの証左であり、それを踏まえてみるとリスタートとして申し分ない一戦ではありますね。レスラーの変化ってベルト戴冠した直後と陥落した直後に最も色濃く出ると思っていて、ベルトを失ってなお纏うオーラや貫禄は以前とは比べものにならないほど輝いている印象がありますね。

ぱっと見だと両者に体格差はあり、序盤はそれを活かしたパワフルな攻めにフィンレーは苦しみます。裏テーマとしてフィンレーはガタイに似合わず投げっぱなしのパワーボムなどの力技を見せてきたわけで、そうした中でそれがあまり通用しそうにない紙屑のように放り投げる敵が現れたというのはチョイスしては絶妙ですね。以前も書きましたが、フィンレーってその粗野なキャラクターに削ぐわず団体側の育成方針がめちゃくちゃ丁寧なんですよ。それが逆に育ちの「お坊ちゃん」感を際立たせていて、そのアンヴィバレントな感じがたまらなく好きです。

分かりやすい剛vs柔の対決ながら、フィンレーは一般的な柔のイメージではなく、WAR DOGSらしい獰猛さで張り合っているのが新しく、手数で勝てないと見るや単なる突進やトップロープからのボディアタックなど速度と加重でダメージを与えていったのは面白いですね。呼応するようにブロディ・キングもパイルドライバーやラリアット、コーナーデスバレーにキャノンボールという「らしい」危険技で対抗。フィンレーも雪崩式回転エビから着地してのパワーボムと見せかけてまさかのジャンボスープレックスwithコーナーで顔面を叩きつける荒技!最後は持ち前のパワーを活かしての正調式パワーボムで叩きつけてのOVER KILLでブロディ・キングに勝利。いやあ……きっちりと与えられた難題をクリアしつつ最終的にはパワーで上回り自分の我を崩さない。フィンレーのポテンシャルはヤバいですね。難解かつテクニカルだったジェイと違い、切り返しのセンスのある分かりやすいデストロイヤーとしてのスタイルが完全に定着したのを感じます。これは今年IWGP世界ヘビーを取りますよ。その時こそがフィンレーの真の時代到来ですね。


◼️第5試合 30分1本勝負
スペシャルシングルマッチ
海野翔太 vs クラウディオ・カスタニョーリ

1.4ドームメインでの挫折と手厳しい声を一身に受けながらも迎えたセザーロことカスタニョーリ戦。元WWEの大物である以上、普段なら名目通りのスペシャルシングルマッチではあるのですが、あの1.4メインを見た後だと受け取り方がだいぶ変わるというか、より厳しい「査定」の目に晒された試合だったように思います。

今回の試合。個人的にはこの試合もアリ……というか、これが海野の評価の難しい所なのですが、厳しい査定の目で見ようとすると叩かれるほど悪い試合には見えないというか……端的に言えば難点がさほど目につかない「失点のない」試合なんですよね。優等生的というか。もちろん次代のエースとしてそれじゃ困るというのもあるのですけど、転じてそれは「刺さる」もののない試合であるのと同義ではあるのです。

彼にとっての不幸は、厳しい声は多くとも寄せられた批判の声に共通項は意外となく、その具体性や内容もファンによって千差万別なんですよね。ざっとダメな点を挙げるなら、技のオリジナリティや説得力、打撃の弱さ、過剰なまでのオーバーアクト、試合中の不必要なまでのアピール過多、軽薄なキャラクター性、マイクアピールの振り切れなさetcetc……。色々とあるのですけれど、人によって、ここは気にならないけどここは許せない、みたいな感じでグラデーションがあり、分かりやすい形で「これはダメだ」というのが共有されていないのが非常にもどかしいなと思います。それでいて、なんとなく至らない点やダメな点はファンがうっすらと共有している状態がずっと続いており、失敗らしい失敗ができていない。1.4のあの試合でも当人の技量の問題ではありつつも、最初に出てくる評価は試合時間の長さであるあたり、個人の責任を問われるほどではなく、転じてまたその責任を果たすだけの力がないことが浮かび上がってしまっているわけで。令和闘魂三銃士の中でいまだ凱旋帰国後にベルト戴冠がないことを考えてもそれが現時点での団体側のシビアな評価であることは明白なのですが、結果が伴っていないが機会のみは与えられている。この煮え切らない感じこそが閉塞感の正体なのかもしれませんね。

思い返せば1.4のメインに名乗りを挙げたときにブーイングが飛んだのは「ブーイングしてもいい存在」だと許容されたのはキツいなと思う反面、観客側からわかりやすくリアクションできるようになったという点では僥倖でもあったかもしれませんね。水面下の不満が表面化したとはいえ、それはきっかけの一つにはなったはずなのですよ。ただ、そうしたブーイングの声すら持続されなかったというのが問題で、1.4を終えてもなお半端な形で受容されてしまったことが一番の問題かもしれません。熱烈な海野ファン以外は評価の甘さを自覚しつつも生暖かい目で見守る感じに留まり、ブーイングを飛ばすファンも変革を願うほどには彼に興味がなく、そこまで熱烈でもない……。いや、書いてて思いましたがこれは本当に厳しいですよ。僕自身はどちらかといえばかなり気の毒に思いながら彼を見ていますが、同時に夢中になるほどにはまだ何も見せてもらっていないため、その才能は認めつつもいまいち評価しにくいな、という曖昧な形で保留したままになっています。

そうしたブーイングや批判を受けて、棚橋や内藤と比較されることもありますが、はっきり言って全然違いますよ。棚橋のときは団体そのものが傾いていた上に、ここで棚橋が変わらなければ団体自体が終わるという瀬戸際に立たされた切迫感があり、内藤のときは対オカダという明確な目標に加えて、オカダより年上という年齢への焦燥感があったわけで、今の海野にはそのどちらもありません。海野が頑張らずとも新日は業界No.1のままであり、海野以外にも新世代は豊潤に揃っている現状、エースが彼である必要性がどこにもないのです。全てが整った後の世界でこの空虚感や絶望感を抱くというのはある意味では棚橋や内藤よりキツいものがありますよ。

彼の語るエースへの固執とその曖昧さは転じてアイデンティティの置き所に迷ってる部分もあり、棚橋や内藤とはまた違った苦悩がそこにはあるのです。見る側からしても上記二人のようなキャッチーさがなく、棚橋は間違いなく価値観の変化故の「認められなさ」でありましたし、内藤へのブーイングは明らかに期待感の裏返しであったわけで、どちらも理由が明確ではあったのですよ。海野へのブーイングにその両者ほどの熱があるか?と言われたら現状はそこまででもないため、僕含めて各々持論はありつつも揶揄の域を出ないんですよね。そりゃ当人も反発したくはなるだろうなと。

あと、これは身も蓋もない話になりますが、海野の評価において「世代差」というのは間違いなくあると思います。どうにもおじさん世代からすると受け入れ難いタイプの若者像というか、僕はそこが逆にちゃんと「若者」やってるなという意味では変な安心感があるのですけど、感情移入を阻害されるのってそうした鼻につく青臭さはあるのではないかと思いますよ。これはいい悪いの話でもだからダメだというわけでもなく、要因としてあるだろうなというだけの話ですし、そこで真っ二つに評価が分かれるのもまた面白いなと思います。

あ、レスラーとしての評価ばかりで肝心の試合内容について触れてなかったですね。ビッグショーもボディスラムで抱えて叩きつけるほどのカスタニョーリのパワーと20回転ジャイアントスイングは分かりやすい盛り上がりポイントではありましたが、試合は海野がデスライダーで勝利。悪い試合ではないものの復活のきっかけになったかと言われたらそこまでのインパクトはなく、とはいえ各種DDTの使い方はそれなりに上手く前述の通り失点の少ない試合ではありました。ただ、一番求められているのはキャッチーなインパクトと全ての悪評をひっくり返す「海野翔太としての名勝負」それはまだ先の話かなと。色々と厳しいことを書きましたが、結局問題点は試合内容なのでこればかりは数をこなすしかないでしょう。そして数さえこなせばそれなりに仕上がるのは過去の歴史も証明しているのでそこの部分はあまり心配しておりません。ただそれがクリアされたとして大きくハネるかどうかと言われたら博打であり、それも含めてこれからに期待ですね。


◼️第6試合 60分1本勝負
NEVER無差別級選手権&AEWインターナショナルダブル選手権試合
KONOSUKE TAKESHITA vs 石井智宏

鷹木戦は両者共に切り返しとインパクトの強さで拮抗していたのもあってか、いい試合ではあったものの同系統特有の色の薄さがやや難点ではあったのですが、今回の石井戦のほうが「熱」という意味では上回っていたように感じました。石井はやはり戦う相手を選ばない新日本の番人であり、プロレス巧者というのもあって竹下はだいぶ苦戦はしたものの、圧倒的な体格差と瞬発力は凄まじいものがあり、二夜連続でドームスケールのプロレスを堪能させてもらいましたね。目立つのはエルボーの速度と人でなしパイルドライバーからのホイールバロージャーマンであり、ブルーサンダーとレイジングファイヤーの旋回式の二段構えと、とにかく技がド派手なのがいいですね。石井を下しましたが、この挑戦者としての主人公と大物外敵としての立場を両立させてるのは稀有な存在だなとも。竹下の凄さは認める反面、鷹木に続き石井という新日の最高戦力の両翼が落とされたというのは少しばかり悔しい気持ちもあり、それに反して周囲の竹下への歓迎ムードを見ると、こうした対抗心を抱くのも感覚が古いのかなとも思ってしまいます。裏を返せば凄いものは凄いと認める柔軟さが今のファンにあることの証左でもありますし、それだけ新日本プロレスがグローバルになった証であるとも言えるのですけど。

試合後には竹下は新日所属を発表。前人未到の三団体所属となりました。これはいよいよ本丸にまで切り込んできた感じがあるというか、日米を股にかけてプロレス界の中心部に躍り出たと言っても過言ではないかもしれません。少なくとも新日所属になったということはIWGPを巻く可能性は出てきましたね。G1での大活躍自体がプロモーション、竹下にとっては前日譚に過ぎなかったというのは恐ろしい話ですよ。最強の新世代トップランナーとして荒らし回って欲しいですね。


◼️第7試合 60分1本勝負
第106代IWGPタッグ王者チーム決定戦3WAYマッチ

ヤングバックス vs 内藤哲也&高橋ヒロム vs グレート-O-カーン&ジェフ・コブ

久しぶりに見たヤングバックスが全然ヤングじゃなくてオッサンバックスになってて笑いましたwまあそれはそれとして貫禄が身につきましたね。しかしながらタッグチームとしての練度は相変わらずズバ抜けており、新日に参戦した歴代タッグチームの中で頭一つか二つは抜けてるなと実感します。

ややコンディションに難のある内藤もヒロムとのタッグなら粗は目立たず、それでいてエモが身体を突き動かしてる印象もあり、物語性もあってかプロレスを全面に楽しむ感じが出るのでタッグ路線も悪くはないかなと。棚橋からオカダに至るまで近年の顔役はシングルプレイヤーとしての実績はあってもタッグとなると実はそれほどでもなく、棚橋オカダタッグは豪華さや今までの因縁があるからこそのゲストタッグ感のほうが強くて実戦的かと言われたらイマイチだった気もするんですよね。その中で内藤はSANADAとのタッグもかなりの良タッグでしたし、ヒロムとの師弟タッグもコンビネーション含めて仕上がりは上々だったので、この方面で壮年期のキャリアを彩るのは個人的にはかなりアリです。

オーカーンとジェフ・コブもタッグとしてはかなりの強豪かつ、特にジェフ・コブvsヤングバックスは見所もあり面白かったのですが、最後はヤングバックスが得意の連携でオーカーンを料理。終わってみれば奮闘はしたもののタッグ戦としてはヤングバックスの完勝に等しく、これに勝てるタッグチームを探すとなるとかなり難しいなと思ってしまいました。現状だと毘沙門かオリジナルTMDKになりますが、後藤のIWGP路線を考えるとここはTMDKに全ベットしたいですよ。てか見たいですよね?ヤングバックスvs TMDK。期待しますよ。


◼️第8試合 60分1本勝負
IWGP GLOBALヘビー級選手権試合
辻陽太 vs ジャック・ペリー

ジャック・ペリー、海野を葬りHOTのニューカマーとして姿を現したインパクトはまだ記憶に新しく、三銃士に対抗しての四本柱として新世代の外敵というポジションはいいのですが、動きに対してのリアクションを見るとまだ新日ファンに浸透しきってるとは言い難いのが惜しまれますね。ただ、辻の初防衛戦の相手としては格としてもちょうどよく、HOTとThe Eliteのハイブリッドブランドとしての期待感も申し分ないと思います。

辻はまだ耐える王者像としての振る舞いや受けにはややカタさやモタつきがあり、間の取り方も少し難があるのですが、一気呵成に攻めるときの持ち前の迫力やカタルシスは素晴らしく、それだけで一気に空気を取り戻せるのは強いですよね。

雪崩式スパニッシュフライやジーンブラスターvsグラスジョーという突進技同士の激突など派手なシーンを交えつつ、金的からの変形バンプハンドルスラムであわやという場面はありつつも、最後は交差法からのジーンブラスターで辻が快勝。ややコンパクトでありつつも、こうしたドライブ感のあるフィニッシャーを使えるのが最大の強みではありますよね。


◼️第9試合 時間無制限1本勝負
スペシャルシングルマッチ
ケニー・オメガ vs ゲイブ・キッド

今大会のベストバウト……どころか下手したら年間ベストバウトを取ってもおかしくない名勝負です。全体的に不調で終わった1.4ではありましたが、続く1.5でドーム興行らしい歴史に名を残すこの試合があったことで面目が保たれた感じがあります。

ケニー・オメガ。もはや語るまでもない2010年代の新日本プロレスを代表する歴史を変えた変革者の一人であり、ジャパニーズドリームを体現したサクセスストーリーの覇者でありながら、悲劇的結末に終わった裏切りの男。それを前面に出したナイーブかつ大物の外敵ヒールとしてのキャラクターは虚実皮膜のインパクトがありましたね。

しかしながらそうしたケニーの登場シーンに喰われるどころか、善でも悪でもない闘魂の狂信者としてのキャラクターで塗り替えたゲイブの凄まじさたるや。もはや絶対ベビーと言ってもいい支持率の高さを誇りますが、主流ではない人間が一番「闘魂」の二文字を体現してるという構図もこのゲイブフィーバーに寄与していると思います。根底にある新日愛がホンモノというのもあるのですが、絶望のドン底から復活した持たざる者の魂とプライド。そして団体主導ではないファンの手で押し上げた感じがあるのがいいんですよね。

ゲイブのコスチュームはWAR DOGSのプリントと新日のライオンマーク。直近だと新日参戦時のKUSHIDAを彷彿とさせますが、個人的には若き日の中邑真輔の短パンのコスチュームを思い出しました。そしてこのヒールでありながら闘魂を背負った特攻隊長としての試合内容と高い支持率というのは2003〜2004年の柴田勝頼に非常に酷似しているという。

試合内容は壮絶の一語に尽き、顔面が鮮血で赤く染まった血で血を洗う死闘となりましたが、それに反して驚くほど試合のテンポとリズムが良く、双方の受けっぷりの良さもあって攻防がかなりスイングしていていたんですよね。両手で椅子攻撃を受けてたゲイブに少し思うところがあったのと、許されざる者同士の戦いにしては少し噛み合いすぎというかやや綺麗すぎる攻防が多かったかなとも言えますが、逆に噛み合わないことがノイズになってしまう危険性が皆無であり、重くなりすぎない危険な心地よさがあったと思います。ひとえにそうなったのは危険領域に容易く足を踏み入れるエクストリームな攻防のおかげで、ここの部分で互いに一歩も退かなかったのが良かったですね。

ハイライトは片翼の天使を切り返してのゲイブのコブラツイスト。一瞬、大木金太郎のX固めのようで驚きましたが、足の向きが逆でコブラの形でしたし、全体的には腕極め式のコブラでしたね。ケニーの体勢もあってか卍固めや卍とコブラの複合技のように言われてましたが、コブラツイストでも卍固めでも闘魂の象徴となる技ですし、ここでゲイブがこれを出してきたのはまさに感涙必至です。そしてコブラの別名は「アバラ折り」であり、腹部に重傷を負っていたケニーを痛めつける意味でも最適だったわけです。勝負論と運命論の交差したコブラツイスト。これは間違いなく1.4の歴史に残るシーンであり、この見せ場をケニーに簒奪されなかっただけでもゲイブの勝利と言ってもいいんじゃないですかね。もう一つ、猪木の代名詞である延髄斬りも繰り出していましたが、ゲイブのそれはムチのようにしなってて意外と面白いなと思いました。

最後は中指を立てるゲイブの腕を取って飯伏幸太のカミゴェを発射。そして片翼の天使でケニーのピンフォール勝ち。対新日にゴールデン⭐︎ラヴァーズの文脈を叩きつけての勝利というのはめちゃくちゃ悔しいですね。全体的にデンジャラスなテイストであり、そのテイストはやはりケニーの試合だったなと思いつつも、その領域でも負けないどころかファンからの後押し込みで輝き続けたゲイブに敗者という評価は似合わない。間違いなくこの試合でゲイブはその価値を上げました。いや、それにしてもケニーのベストバウトマシーンの呼び声に疑いの余地はないですね。好き嫌いは人それぞれとしても、ここの評価だけは揺らぐことはないでしょう。

負けてなおこのレスラーに賭けて良かったと思わされる。信頼が裏切られたことはない。それがゲイブ・キッドというレスラーです。これ、今年のNJC優勝もあり得るかもしれないですよ。求心力だけなら新世代随一でありますし、どうかIWGP戴冠までひた走って欲しいものですね。

試合後のケニーのインタビューに関してなのですが、とにかくナイーブでかつての功労者でありながらも受けた大ブーイングとゲイブへの大歓声にショックを受けている感じもありましたが、あれも虚実皮膜の一つであり、喧嘩を売ったりヒートを買ったりと率先して誘導していたのはケニーなので、あれはケニーなりの「リアリティ」なのだと思います。ただ全てがケニーの想定内かと言われたらそうではなく、ヒールとして上手く転がすつもりが思いのほかゲイブへの後押しが強かったというのは驚きと悔しさもあったのではないかと思いますよ。そうファンが感じ取るだけの「余白」があるのがこの試合のいいところであり、ゲイブを、そして新日をナメるんじゃないぞと胸を張って言えたという意趣返しの意味でも、負けてもフラストレーションのたまらない名勝負だったと思います。


◼️第10試合 60分1本勝負
IWGP世界ヘビー級選手権試合
ザック・セイバーJr. vs リコシェ

前の試合が凄すぎたのもあってどうにもワリを喰った印象もあったのと、大物の一人ではあれど新日マットだとBOSJ参戦と一般層にバズったオスプレイとの伝説の一戦といったJr.戦士としてのイメージが根強く、ヘビーとしてのバリューはさほどでもなかったというのが試合がハネそうでハネなかった理由の一端になりますかね。こういう言い方はアレですが、セミにケニーならばメインはオスプレイにしたほうが新日本ファンの好みには合致したでしょう。

ではリコシェは顔ではなかったか?と言われるとそんなことはなく、どちらかといえばスペシャルゲストであり、敵対心のある外敵としてのイメージでは馴染みのないリコシェをメインに据え置く「ズラし」によって、ちょっと海外向けの雰囲気が出た印象はありますね。確かに対抗戦という意味ではこちらのほうがスマートだった気もします。前の試合の壮絶さを踏まえて、奇襲でスタートしたリコシェは慧眼だったなと思います。

試合は飛び回って空中戦で撹乱するリコシェをサブミッションで捕獲して引き摺り込もうと試みるザックの異色対決となり、スタイルとしては真逆でしたね。本来この手の試合だとサブミッション側がヒールになることが多いのですが、そこがベビーというのも面白いポイントでした。

ハイライトはリコシェのクラッチを解かずにエプロン→場外と叩きつけながら移動したブレーンバスター連発でありここはかなり盛り上がったわけですが、前試合のデンジャラスな余韻がここに至るまで後味として残り続けていたんだなとも。それに呼応するようにザックも雪崩式ザックドライバーというデンジャラスな技を敢行。捕まえたら離さないリコシェとそれに応じて飛ぶザックという風にスタイルが融和していったのも興味深かったです。

最後はリコシェをクラーキーキャットで完全捕獲してザックのタップアウト勝ち。対抗戦でのサブミッション決着は降伏勧告という感じがあって好きですね。同時に両者のスタイルからもわかりやすい帰結であり、メインは喰われたなと断じることすら「惜しい」と思ってしまいました。





1.4、1.5と合わせて久しぶりのダブルドームではありましたが、その派手さに反して中身はかなりドメスティックであり、特に海野のメイン起用は終わった今でも評価込みで荒れそうではありますね。全体的なクオリティとしては名勝負に終わったケニーvsゲイブがなければ少しヤバかったかなとも思いました。ただ、それでも新日のドーム大会はやはり特別なものがあり、これを見なければ年が明けた気がしないのは続けてきたことの積み重ねにあるのでしょう。今年の新日本プロレスも楽しみにしていきたいですね。ではでは、今日はここまで。

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