いま、家を買うべきなのか?【2025年1月版】
こんにちは。住宅専門ファイナンシャルプランナーのNです。
2025年1月現在、住宅を買おうか迷っている方の参考になるように、最新の情報をお届けします。
本日のテーマは「いま、家を買うべきなのか?2025年1月版」です。
住宅マーケットの現在の状況
2025年1月現在、住宅購入を考えている消費者を取り巻く現状について、主なトピックをご紹介していきます。
建物価格について
あくまでも参考程度に目を通しておいてください。2024年10月に国土交通省が発表した不動産価格指数がこちらです。
戸建て住宅、マンション(区分所有)はいずれも2013年頃から急に価格が上昇していることが分かります。特にマンションの価格高騰は想像を絶するスピードです。戸建て住宅はマンションほどではありませんが、2019年のコロナ禍初期から価格の急上昇が見られます。
東京都心のタワーマンションは1億円を超えるものがめずらしくありません。立地によっては中古でも3億円を超えるケースも見慣れたものとなりました。もはや平均的な年収の会社員には買えないものとなりつつあります。マンション価格高騰の原因は、円安を背景にした海外の投資マネーの流入です。
戸建て住宅の場合、上記の指数をみると、2010年から30%ほど高くなっているようです。2010年に2,500万円だった建物が、3,250万円になっているという感覚ですね。
この原因は複数あり、まずはコロナ禍以前から始まっていた「ウッドショック」と呼ばれる木材価格の高騰です。次にコロナ禍による半導体不足、物価や海外からの運送費の高騰。そして追い打ちをかけているのが、建設業の働き方改革「2024年問題」による人件費の高騰です。
建物価格が3,250万円として、もし土地が1,000万円の場合、諸経費500万円を入れると住宅価格は4,750万円ということになります。筆者が2024年の一年間に相談会を行った約200世帯における、住宅の資金計画の平均は土地込み5,200万円でした。
2010年は土地込み3,200万円だったので、国土交通省の指数よりもはるかに上昇している実感があります。
土地価格について
住宅地の価格も、上記の指数をみると2019年から上昇していることが分かります。これは大都市部だけの現象ではなく、地方都市においても同様です。地方都市の場合は土地価格は二極化が進み、二けたの上昇を見せる都市部と、過疎化が進み価格が下がり続ける郊外とに分かれています。
※この二極化は、地方で住宅を買おうとしている人にとって非常に重要なポイントであるため、あとで説明していきます。
住宅ローンについて
住宅ローンの金利も、住宅価格のひとつです。
日本銀行が2024年7月31日の金融政策決定会合で、追加利上げを決めました。0〜0.1%としていた政策金利(無担保コール翌日物レート)を0.25%に引き上げることで、各金融機関は続々と短期プライムレートを上げています。
短期プライムレートは住宅ローンのうち、変動金利と呼ばれる金利に直接影響を及ぼします。これを受けて、各金融機関では住宅ローンの引き上げが行われています。
金利が引き上げられると、当然毎月の返済額も上昇します。しかも変動金利の場合、5年に一度、返済額の見直しが行われるため、将来どのくらいの返済額になるのか予想がつきません。
今後、住宅ローンの金利は上がり続けると想定しておくのが自然でしょう。どのくらいの金利上昇で家計が破綻してしまうのか、専門的な家計分析が必要になります。
ちなみに筆者が過去見てきた5,000世帯において、金利が2%上昇したら家計破綻を起こすと思われるものが20%ほどありました。金利上昇だけで破綻するのではなく、それに伴う光熱費の上昇、修繕費の上昇、維持費の上昇、昇給スピードなど複合的な条件が重なれば破綻してしまうというものです。
住宅購入者の多くがイニシャルコストに意識が向いてしまい、金利変動や維持費、修繕費を甘く見ているケースが非常に多くあります。屋根外壁の塗り替えだけでも10年ごとに150万円前後かかり、今後は人件費の高騰で200万円以上となるかもしれません。エアコンや太陽光発電システム、蓄電池など設備の交換も必要です。
賃貸にすべきか、持ち家にすべきか
高騰する住宅価格に、「一生賃貸のほうがいい」と主張する人たちもいます。
FPとして言わせてもらうと、一生賃貸で暮らせるのはお金持ちだけ、です。
考えてみてください。老後に必要な家賃の総額はいくらでしょうか。
家賃6万円として、65歳から85歳までの20年間で1,440万円が必要です。公的年金から支払うことは難しいため、この分の預貯金が必要になります。
また、賃貸物件のオーナーの立場になって想像してください。無職となったお年寄りに自分が所有する物件に住まわせたいと思うでしょうか。資産額を開示してもらい、一定額の現金がない場合はお断りするのが無難でしょう。
また、孤独死をされ特殊清掃・特殊修繕が必要になると資産価値が毀損します。オーナーが物件をタイミングよく売却することも難しくなります。
一生賃貸というのは、かなり過酷な生活となるでしょう。低廉な家賃で、高齢者にも貸してくれるとなると、老朽化した公営住宅のみという地方都市もあります。エレベーターなし、寒い、汚い、足腰が弱ると住めないという、QOLの観点からもあまり積極的には選びたくない住宅しか選択肢がないこともあるのです。
地方都市は人口減少する
地方都市は、今後人口が激減していくことが予想されています。
たとえば秋田県は、2050年には人口が4割減少し、全人口の半数が高齢者となります。秋田市以外は全て「消滅可能性自治体」とされるほど、過酷な将来が待っています。
これは住宅購入するにあたって、見逃してはいけないファクターです。理由をいくつか説明していきます。
近い将来、周辺が限界集落と化すかもしれない
地価が安いからといって郊外に新築する人も大勢いますが、30年後の周辺環境を想像したことはあるでしょうか。日本の高度成長期は「今後、街が発展する」という掛け声を信じたかもしれませんが、現実は、郊外は本格的に過疎化していくと考えるのが自然です。
スーパーやコンビニ、ドラッグストアは軒並み撤退。バス路線の廃止。雪国であれば除雪車がめったに来ない。近隣は全て空き家で更地も目立つ・・・野生動物が住み着いている空き家もあるようだ・・・そんな限界集落と化すかもしれません。
当然ながら家の売却は不可能になります。固定資産税がかかる売れない家を子供世代、孫世代に残し、まさに負の遺産となります。それなのに住宅ローンだけは残っているという悲惨な将来となる可能性があります。
ニュータウンも限界集落になっていく
ニュータウンとして売り出された新興住宅地は、最初こそ、若い世代が集まり新築住宅が立ち並ぶ綺麗な区域です。しかしよく考えてみれば、将来は「同世代の高齢者」だらけの住宅地となるのです。
子供が少なく、活気がなく、デイサービスの送迎車や訪問介護の事業車ばかりが行きかう、老人の住宅地です。次第に荒廃した空き家が増えていき、安く賃貸に出された家は乱暴に扱われて、住民の質や治安は下がる一方に。認知症などによってごみ屋敷となった家も目立つようになります。
子供に負の遺産を残さないためには
子供に負の遺産を残さないためには、最低でも「40年後にも売れる立地」であることが重要です。地方都市でまともな価格で売れる立地はほとんどないのが現実ですが、それでも「処分しやすい」という考え方であれば、次のようなポイントを意識するといいです。
「郡部」の土地は避ける
市の中心部を選ぶ
バスや鉄道の便がいい立地
小学校が近い立地
70坪~100坪程度の広めの土地
海のそばや工場・墓地の近隣など不利な要素がない
「夫の実家の敷地内」は悪手中の悪手
このような条件であれば、地方都市において人口が半減した時代でも最低限のニーズは残るはずです。
地方都市では家は資産ではありません。売却益を出すことは不可能です。基本的に将来「タダで引き取ってくれたら幸運」程度で考えましょう。タダでも引き取ってもらえない土地はすでに沢山あるのが現状です。
中古住宅の物件数は今後増える
厳しい話をします。
地方都市においては今後、住宅ローンによる家計破綻で家を売却する人が増えると想像できます。
特に2010年代に大流行したローコスト住宅を購入した層の多くは、低所得世帯です。共働きで世帯年収500万円台、2,500万円の住宅ローンを借りたようなケースでは、金利上昇や物価高に加えて収入の減少があったら一気に家計破綻へと向かいます。
築後10年~20年くらいでローン返済に行き詰まる人が多いと筆者は予想しています。
また、団塊世代が相続のときを迎える(亡くなっていく)のは今後10年ほどです。団塊の世代が購入した持ち家は、子供世代が売りに出すはずです。
そうなると中古物件は大量に出回り、極めて安く買うことが可能になるでしょう。もしかしたら20年後の子育て世代は「住宅ローンを借りずに家を買う」ことさえ可能になるのかもしれません。
新築住宅は高すぎて高所得者だけのものになるとしたら、一般的な会社員の子育て世代は、中古+リノベーション、ローン無しで住宅購入という時代が来るのかもと予想しています。
中古市場が成熟していくことで空き家問題が解決し、リノベーションすることで環境負荷が比較的小さい家に生まれ変わります。消費者としても、カーボンニュートラルを目指す政府としてもいいことづくめです。
いま、家は買うべきなのか?
土地は高い、建物も高い、人口は減る、でも老後に家賃は払えない・・・
そうなると持ち家をいつかは買うべきなのですが、2025年1月現在、家を買うべき時期なのでしょうか。
FPからのアドバイスとしては、次のようなポイントを考えて頂きたいと思います。
専門家による家計収支のシミュレーションを行い、「資産運用の成功」を前提としないで人生設計が成り立つのであれば新築OK
シミュレーションで厳しければ今はやめておき、将来中古を考える
金利は上昇する。どのくらいまで耐えられるか専門家に計算してもらう
資産運用の成功を前提とした借金をしない
資産運用を優先して、低性能の安い住宅を買わない
郊外の物件は避ける
建物価格は今後も上がり続けると覚悟する
年齢が一歳上がるたびに住宅ローンの審査は厳しくなる
今後は景気、物価ともに厳しい時代が続きます。かといって持ち家を買わずには将来の不安がつきまといます。
専門家によるアドバイスなしには住宅購入は避けた方が良さそうです。