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「FP」はいつから「保険屋」の意味になったのか

こんにちは。ファイナンシャルプランナーのNaoです。

今日のテーマは、「いつからFPは保険屋の意味になったのか」です。


「お金のことをFPに無料相談」という広告

最近、とある広告が目につきました。

「お金のこと、FPに無料で相談!」というのです。ああ、またこれかと思いました。
案の定、その広告は保険代理店によるもの。つまり、保険屋さんです。

多くの人が自分のお金の問題について誰かに相談したいと思っているし、マネーリテラシーを身につけたいと思っています。そういう人がそのような広告を見て、「お金の専門家なんだ、家計のことや住宅購入のことを相談してみよう」と思ったとします。結果どういうことになるでしょうか。

簡単に想像ができます。

住宅や、公的年金、資産運用など、すべてのことについて、ありきたりな一般論で講釈し、全て「保険に加入することで解決できる」という着地になるだけでしょう。
保険の勧誘ありき、で話が進んでいきます。

たとえば住宅購入資金のことを相談するとしましょう。たぶんそのFPさんとやらは、住宅の性能にも建材にも金利情勢にも維持費にもあまり詳しくないはずです。住宅の予算は安い方がいい、安く抑えた分は資産運用に回しましょうなどと言って、変額保険やドル建て保険の勧誘が始まるはずです。

住宅には維持費がかかります。修繕費もかかります。建物を相続するのか売却するのか、前提としておかなければなりません。設備を沢山つけると家は暖かくなるかもしれませんが、設備の交換時期にお金がまたかかります。繰り上げ返済はどのタイミングで予算はいくらにすべきなのかも計画が必要です。
このように住宅購入だけをとってみても専門的で緻密な家計設計が欠かせません。
専門的な知識が全くなかったら、単純に「家は安い方がお得です」「住宅ローンを安くして資産運用に回したほうがいいです」「繰上げ返済よりも資産運用がいいです」という着地になって当然です。
YouTubeでもよく見かける素人談義です。

それを真に受けたら、結果どうなるでしょうか。
「そうか、住宅はローコスト住宅にして安く住ませて、変額保険にお金を多く回そう、そうすると安泰の老後だろう」、などと勘違いしてしまうわけです。
しかしそれでは建物のメンテナンスや設備の交換に追われ、手元の現金が足りなくなれば、結局、損失を承知で資産運用の金融商品を解約しなければならなくなるでしょう。

もはやライフプランニングは大失敗です。

もちろん保険営業マンの中には保険以外にも高度な専門分野を持つ優秀なFPの方がいます。しかし現実は、圧倒的多数は「保険だけの専門家」です。住宅購入などのライフプランニングを保険の勧誘に利用しているというのが、現実なのです。

「住宅資金について、保険営業マンに相談してはいけない」というのがひとつのマネーリテラシーなのですが、やはり日本は金融に関してまだまだ未成熟なのを痛感します。

「女性のためのマネーセミナー」も誰が主催している?

昨今、「女性のためのマネーセミナー」なるものの広告もよく目にするようになりました。

これも主催者と講師の素性をよく確認してください。講師の多くはやはり保険代理店や保険会社の営業マンです。FPの名称を強調しているはずです。

セミナーの流れは簡単です。NISAやiDeCoの一般的な知識を講釈しつつ、変額保険のメリットを強調されて、「個別相談」という保険勧誘に誘導されます。個別相談と言っても、目的は保険の商談です。
あなたに個別に保険を売り込むのは講師ではありません。セミナーのスタッフとして個別相談(保険勧誘)を担当する営業マンです。

そうやって成約した保険契約は、講師役の営業マンと勧誘担当の営業マンで手数料を折半するという、セミナーを使った保険販売スキームなのです。

なぜ最初から保険の勧誘が目的だと告げないのか

誤解がないように言いますが、保険や保険営業が悪いわけではありません。保険代理店や保険会社が悪いわけでもありません。
筆者も保険の代理店なので、保険の見直しは随時行っています。

問題は、「なぜ、最初から保険の勧誘が目的だと告げないのか」なのです。

「FPに住宅購入のことを相談しよう」
「FPにお金のことを習いたい」

集客時にそう思わせているものの、実態が保険の勧誘だとは多くの人は思っていないはずです。

これ、保険の勧誘じゃないの・・・?
え、この人、保険の営業の人なの・・・?
と気づいたときに不快な気分になる人も少なくありません。

だったら最初からそう言ってよ、と思います。

勧誘の目的を明示せずに人に会う、セミナーに勧誘するというのは、特定商取引法において保険販売に関しては規制されていません。
しかし連鎖販売取引、いわゆるネットワークビジネス(マルチ商法)においては、法第33条の2においてこう規定されています。

「特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をする目的である旨」について
統括者や勧誘者等は、勧誘に先立って、相手方である個人にとって最も重要と考えられる何
らかの金銭上の負担(特定負担)がある取引についての契約の締結について勧誘をする目的で
ある旨を、明らかにすることが必要である。

つまり、面談に先立ってどんな契約を目的とし、その契約にはあなたの金銭の負担が生じますよ、という告知を相手にしなさいということです。

マネーセミナーと称して「保険勧誘という目的を告げずに」集客をし、個別相談と称して「保険の商談」を行う行為は、もしネットワークビジネスなら違法行為になるわけです。
特定商取引法においてはこのマネーセミナーやFP相談と称した保険販売スキームは規制されていませんが、問題がないとは言えません。苦情や苦言もゼロではありません。

問題が目立ってきたら法律の改正があるかもしれませんが、現状は、この販売スキームは合法であるため、当面継続していくでしょう。セミナーの主催する当事者は、これがやや問題があるスキームだとは気づいていないようです。
業界の常識が世間の非常識だと気づけないことは、いつの時代もありうることです。

もし保険の商談を望まないのであれば、保険会社や保険代理店が行うマネーセミナーには参加しないことが重要です。少なくとも個別相談は避けてください。
FPという資格ではなく、どんな会社が主催していて、目的は何なのかを確認しておきましょう。事前に問い合わせるのが確実です。

FPに対する間違った認識が広がっている

最近、保険営業マンのことをFPを称することが当たり前になっているような気がします。

本来、FPとは「金融業界を横断し広範囲の金融知識を持つ人」としての資格です。ファイナンシャルプランニング技能士という国家資格があり、これに合格した人がFPなのですが、資格がなくてもFPと名乗って違法ではありません。ただし技能士を無資格で名乗ることは違法です。

FPの資格は、金融業界や不動産業界にいる人の「金棒資格」と呼ばれています。知識がある程度ありますよという証明になるからです。しかし弁護士や税理士のように独占業務はありません。FPの資格がなければできない業務はゼロです。そのため、あくまでも補助的な資格という立ち位置です。

保険営業マン+FP資格、
銀行員+FP資格、
住宅営業マン+FP資格、という感じです。

FPの資格の中でもAFP、CFPは比較的難しく、資格更新の試験もあるため金融知識がアップデートされている人が多いと言えます。

FPの中でも私のようにFP事務所を経営している人は全国にごくわずか存在していて、基本的に相談料金が主な収入減です。その他、保険などの金融商品の販売、不動産取引などを行い収益を得ていることもあります。
FPの中には金融商品の販売を一切行わないことをポリシーとしている人もいます。

FP=保険営業マンのことではありません。最近は保険営業マンが自分の職業のことをFPと自称することが増えています。自分のことを「保険の営業職です」「保険屋です」と言うことに抵抗がある人が多いのが、保険業界です。

日本では長年、保険営業職は「転職を繰り返し、行き場のなくなった人が最後に就く底辺の仕事」としての悪いイメージがありました。(実際、そういう人物が採用されている会社が今もある)

保険営業職をFPと称することで、そんな伝統的なイメージを払拭したいという思惑はあるでしょう。しかしその「FP」を自称する人たちが全員、金融知識と相談実務が豊富にあるかというと、全く違うというのが現実なのです。

本来の意味のFP相談を受けたいのであれば、有料相談を選ぶべき

金融の専門家に、公平で中立な相談を依頼したいと思うのであれば、独立系FP事務所に依頼するのがベストでしょう。

独立系FP事務所とは金融機関などの特定の企業(銀行、保険会社、保険代理店、証券会社、不動産会社など)と利害関係を持たない、独立した立場のFPということです。

独立系FP事務所では相談は基本的に有料です。あくまでも相談に対してフィーを支払い、その上で希望があれば保険や投資の相談も行うというのが誠実な相談会の在り方です。

お金のこと、住宅のこと、資産運用のことを相談したいとき、「無料相談会」に参加するのはお勧めできません・・・

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