一か月経った「hololive 1st fes. ノンストップ・ストーリー」 感想レポート

2020年1月24日、豊洲PITにて開催された「hololive 1st fes. ノンストップ・ストーリー」の感想レポート

何かの感想をツイッターで散発的に投稿するというのは普段からしているものの、こうして文書としてまとめて投稿するというのは初めて、かつライブのレポートというのも初めてであるので、かなりまとまっていない、というより今書きたいことを書き留めただけのものだが、投稿したいと思う。

また、1か月も経ったタイミングでというのも妙だと思うが、何かの節目なので箇条書き状態だったものを書き直そうと思った次第だ。
PCを休止モードで運用し未だにタイムシフトの視聴ページを閉じることができていない気持ちへの整理という意味もあるかもしれない。

ライブレポートのようなものではあるが、何人もが投稿しているような全体や一曲ずつを紹介するしっかりしたものではなく、バッサリ割愛している部分も多い、あくまで自分の覚えていること、覚えておきたいことをまとめた言わば感想文的なものであることは先に断っておく。評論のような書きぶりになっているのも申し訳ない。

さらにホロライブのメンバー皆が好きだとはいえすべてを追う時間もなく、ちゃんと追えていると思えるのもときのそらちゃんのみという状態で、あくまで自分はいち「そらとも」であるという視点からの文章であることはご容赦願いたい。

入場

ライブの前に悲劇が起きた。
多くの現地参加者にとっては、橋の半ばまで待機列が伸び開場直前になっても列が絶えなかった狂気の物販列を思い浮かべるだろうが、自分にとっては「胃腸炎から内臓が快復しきらず食欲がサッパリない」という大事件であった。
既に治っていたものの胃腸の機能不全は長く続き、当日も実はあまり快適といえない状態で現地入りする羽目となった。
健康体であればきっともっと感動できたであろう。事実、ステージのアップなどカメラワークがつき集中できる環境にあったニコニコのタイムシフトでようやく感無量な思いをする場面もあった。
特にスタンディングのライブイベントは過酷になることもある。健康第一だ。

また、うっかり厚着のまま入場し滝のような汗をかいてしまっていた。さらにせっかく買ったタオルをロッカーに入れてしまうという凡ミスも犯した。
途中のMCパート(YAGOOコールのあたり)で狭い中必死に服を脱ぐという非常に近所迷惑なことをしてしまった。申し訳なく思っている。

入場時にまず気づいたのが「花の香り」だ。
このイベントで一番印象に残っていることかもしれない。
開場前に続々と搬入されエントランスを埋め尽くしていたフラワースタンドが、今日ステージに立つ23人を祝う爽やかで芳醇な香りを湛えていた。
リアルのアーティストと同じようにこれだけの花が届けられるというホロライブの愛されっぷりに感動するとともに、Vtuberのイベントで「嗅覚」を刺激されることがあるのだという体験があまりにも新鮮だった。
その内の1つ(参加者が集まり過ぎて3つになっていた)に自分が少額ながら協力出来たことは嬉しく思う。

かつてコラボした企業やVtuber運営からのフラワースタンドもそれぞれの絆が感じられた。
また「ホロライブ保護者会」と称した担当イラストレーター一同からのものは特に感慨深い。
Vtuberの容姿を作るデザイナーは俗に「パパ」「ママ」と呼ばれるが、ホロライブではその言葉のままに「娘」に愛を注ぐ方が多いと感じる。我が子がステージに立つ姿は感動もひとしおだっただろう。

これをきっかけにして、ライブの後に「ときのそら」最初期のデザインを担当したいかき先生とときのそら本人とが数年越しにツイッター上で感謝を伝え合うという一幕もあった。
親子の感動の再会なんて言うと陳腐だが、彼女の方向性を決定づけたのは紛れもなく旧衣装や「初期のそら」の姿であり、それが2人の今に繋がっていることを思うとどうしようもなく涙腺が刺激される思いだった。

入場はトイレに並んだせいでかなり遅くなり、ぎゅうぎゅう詰めの出入り口付近から押し出され少し前の方に流されていった。
どうせ端の方なら、ひょろ長い体型の自分は壁際に寄って他の方に前を譲ろうと思っていたのだが、ペンライトを振るのも気をつけないといけないような満員状態だったので移動が困難だったのが心残りだ。

3000人が集まった豊洲PITの熱気は既に高まっており、えーちゃんの影ナレで叫び声が上がるなど、声出しの練習がなくてもきっと一発目から全力でコールが上がるな、とホロリスナーのライブへの意欲を再確認できた。
えーちゃんの影ナレは少し上ずっていて裏方ならではの緊張が感じられ、それがまたライブへの期待を増させた。
集大成であり始まりでもあるライブの開始を告げるのは、大きなプレッシャーだっただろうと思う。

はじまり

ライブはそらちゃんの語りから始まった。
それはときのそら、そしてホロライブのこれまでとこれからを端的に表したものだった。
公式サイトにも掲載され涙を誘ったその言葉が読み上げられると歓声が起こると同時に、泣き出しそうになる思いだった。
実際タイムシフトを観るとこのアタック映像で毎回泣いてしまう。
ときのそら1stワンマンライブ『Dream!』の時もだったが、一撃目で旧衣装のそらちゃんを見せると涙腺が即死するというのをえーちゃんはきっとわかってやっている。ズルいぞ。

使われているBGMはインスト版の『ヒロイック・ヒロイン』ときのそら1stアルバム『Dreaming!』収録曲だ。
この曲は「走り出した夢」について歌ったものであり、まさしくそらちゃんのメジャーアーティストデビューを飾るに相応しい内容。そしてアイドルとして数々の困難と不安に立ち向かいながら自分らしく輝きたいという、ホロライブの全員に共通する命題を歌っている。
それに合わせてメンバーの立ち絵と意気込みの一言が次々に表示されていく。全体曲というわけでもないのに、自然と掛け声が湧き大きくなっていく。
23人それぞれが、ここに観に来た誰かにとっての「ヒロイック・ヒロイン」なのだ。

冬コミでお披露目された『SSS』のノンストップ・ストーリー版MVの続きのような存在であるこの映像の最後は色とりどりのペンライトの海で終わる。
その光景が次の瞬間、目の前に現出したのだから、涙をこらえることができなかった。

『Shiny Smily Story』

そう、アタック映像が終わるや否や披露されたのはいきなり23人全員での『Shiny Smily Story』
いきなりの全力全開に否応なしにボルテージも上がる。周囲の人も慌ててペンライトを推しの色に変えた。
ニコ生では「走れGO!」のタイミングで会場の引きの画になる。メンバーが増え、これだけの人を熱狂させる存在に彼女らが成ると想像できた人がどれほどいただろうか? 考えただけで泣いてしまう。ホロライブに泣かされてばかりだ。

「23人全員」とずっと強調してプロモーションが行われてきたが、果たして技術的に可能なのか?という杞憂を初めに打ち消してくれたのは本当に心強かった。
さらに後ろに下がると暗闇に消える出捌けの仕組みも素晴らしかった。バーチャルならではではあるが、それでいて自然なステージ演出を維持していた。

ホロライブの演出手法の根底にあるのは「現実との融合」であると思っている。運営のカバーは元々AR・VRアプリ開発の企業であり、その過程でVtuber事業を始めアイドル事務所となったが、それでいてなお内製ツールのホロライブアプリやARアプリ「ホロリー」の一般リリースなど技術面の開発に余念がない。特にホロリーはバーチャルとリアルの垣根を越える思想を持ったアプリで、これが元来の目標のひとつだったのだろうと思う。純粋に歌のみで勝負をかけた『Dream!』やAZKiちゃんの配信で使うライブセットの造り込みを見ても、体験の質を現実世界に近づけようという努力が垣間見られる。
後のソロパートの背景映像もごくシンプルなもので、派手な演出は一切用いず主役を引き立たせようという意図が見える。
ただ、プロジェクタの画質については改善していただきたい。

また、白上フブキ・ときのそら・湊あくあ・夏色まつり・大空スバルの5人で歌うパートがあった。白上フブキ・ときのそら・湊あくあの3人は言わずもがなホロライブを特に引っ張ってきた存在。そこに夏色まつり・大空スバルが加えられたメンバーだったのは、個別に後述するがきっとこれからの期待を込められてのことだったのだろうと感じた。
今回3Dの姿が初お披露目となった3人を含めた23人が再び揃い、「私たちがホロライブです!」と名乗った時、もはや3時間のライブを見終えた後のような感動があった。

ソロパート

曲については特に気になったポイントのみ押さえていきたいと思う。

一発目、夏色まつりによる『ファンサ』
「NG無しで体当たり挑戦」という言葉がこれほど似合う人もいないのではないだろうか。清楚なお姫様とは一体。
という定番ネタはともかくとして、歌に振り付けにそのステージを沸かせる力は本物だと感じた。清楚と程遠い配信内容で物議を醸すのがもはや板についている彼女だが、いざ歌って踊ると一瞬で数千人を熱狂させる。まさにこれこそ「ホロライブのアイドル」なのだろう。
そして「ステージ上では泣かない」と決めていた、という話を合わせると相当な努力をしていたのだろうと思う。当日の朝にYouTubeの収益化が誤認により剥奪されていたことも、かなり心へのダメージになっていたはずだ。舞台袖で感動のあまり泣いていたと暴露されてしまっていたが、そのプロ根性はすさまじいものがある。
前述の『SSS』の件と合わせて、これからのアイドル事務所・ホロライブを是非引っ張っていってほしい存在だ。

『ファンサ』自体はそらちゃんの『Dream!』をきっかけに知り、その意味でかなり思い入れのある曲だったために、まつりちゃんがこれを歌ったことも感慨深かった。

会場で一瞬でペンライトが、ニコ生ではコメントの色がオレンジに変わる様は圧巻。箱推し、またそうでなくてもメンバー皆を愛する土壌がホロリスナーにあることが大いに表れていた。

ロボ子さんによる『はなびら』
かき消えるような独特の切ない歌声のロボ子さんの魅力が存分に味わえるステージだった。
激しく明るいいわゆるアイドルっぽい曲が連続していた中でしっとり聴かせるバラードはホロライブ内でもやはりロボ子さんにしか出せない持ち味だ。
『IMAGINATION vol.1』収録の『secret base』ほかでがっちり心を掴まれてしまっていたこともあり、ペンライトを振るのも忘れて聴き入ってしまった。
後の感想配信で、これからはもっと歌を歌っていきたい、観客を泣かせるライブがしたい、と語っていた。ぜひ実現してほしいし、泣きに行きたい。

ちなみに現地ではペンライトの色が紫、ピンク、薄ピンク、赤と入り乱れる状態だった。赤は恐らく『でいどり~む』の経験者だろう。
良し悪しではあるが、合わせて「ロボ子さん色」になっていたのが面白かった。

この時まだ統一衣装ではなかったが、ロボ子さんはソックスを履くためにパパに膝のメカが露出していない滑らかな脚を作ってもらったのかな、などと想像している。

戌神ころねによる『こちら、幸福安心委員会です。』
原曲を知らなかったので、イントロではキレイな歌を歌うんだなぁ、と。続く呼びかけが訛りもあり歌詞だと気づかず、MCかな?と、途中まで色々と勘違いしたまま聴いてしまっていた。ぶっ飛んだ歌詞も相まって、実にころさんらしい選曲。
物騒なワードが続く歌詞に「義務なんです!」のコールはライブや音楽の経験が浅い自分にはそれなりに衝撃体験で、ペンライト振って叫んでる間に「なんかよくわかんないけど気持ちよくなってきた」という感覚を味わった。
危ない精神状態だったかもしれない。ゆびゆび
「ワケわかんないけど面白い、かわいい」という「ホロライブのアイドル」を体現したような天才的なステージだった。

星街すいせいによる『天球、彗星は夜を跨いで』
冒頭にも書いた通り自分は全てのメンバーを追うことができていない。そらちゃん以外はあまり見ることができていないのが現状だが、それでも今回特に期待をしていたのがこの星街すいせいちゃんだ。
個人勢からホロライブへの移籍を果たした異色の経歴の持ち主。それも一度オーディションを落とされたにもかかわらず食い下がり、所属を勝ち取った不屈のアイドルVtuberだ。その圧倒的歌唱力は言わずもがな、個人勢時代は配信で見せる自らの姿形も自分で描き、自らオリジナル曲を計2曲プロデュースして歌った彼女はバーチャルアイドルとして破格の「強さ」を誇る。

それらを知って、「絶対にすいちゃんには活躍してほしい」と思うようになった。配信を追えてないので推していると言えるか怪しいが、ステージに立つ姿を願っていた。
そんな彼女が心待ちにしていた3Dの姿(本人曰く、「良いカメラ」)がお披露目になるのだから興奮も大きい。
『SSS』でちらりと見えてはいたが、いざ一人でステージに現れるや否や大歓声が巻き起こった。顔を見せず、こぶしを高く掲げる凛とした後ろ姿に、「今日もかわいい!」と叫ぶつもりだったのに言葉を失ってしまった。『天球』のイントロで再び歓声が上がるまで、すべての空気を持っていかれたようだった。
自分の想像でしかないが、泣き叫んでいた星詠みさんたち、ひいてはこめとも時代から応援していた方々の感動のほどは計り知れない。
後の感想配信で明かしていたが、初のオリジナル曲『comet』を選ばなかった理由は「初めての人を歌唱力で殴るため」。その美しくクールな歌声と振り付けに完全にノックアウトされた。現地で聴く歌は動画よりさらに上手くなっていた。
サポート強化を目的としてイノナカミュージック所属からホロライブへ転籍扱いとなったすいちゃんの今後一層の活躍を期待したい。

大空スバルによる『金曜日のおはよう』
「芸人」「地獄」「ダック」などなどが代名詞になってしまっている彼女。「ホロライブは芸人事務所」と言われる所以の一端となっており、年末には特番の裏で6時間蕎麦を打ち続ける謎の企画を運営にもやらされるなど、アイドルとは程遠いように思われることが圧倒的に多いと思う。
この認識が改まったのはドラマ『四月一日さん家の』スピンオフボイスドラマ出演のオーディションについて語った配信と、『四月一日さん家のON STAGE』出演時だ。詳細は割愛するが、演出へ自主的に意見を出すなど役に対して本当に真摯に取り組もうとする姿勢にプロ根性を感じ、ひいては強烈な芸人ムーブも(弄られキャラであるのと同時に)数々の経験と努力によって手に入れたのではないかと思うようになった。本人はこんなこと言うと絶対嫌がりそうだけれども。

ステージに話を戻すと、そこに居たのは圧倒的なアイドルだった。
バッチリ決まったかわいい振り付け、ステージを全部使ったパフォーマンス、何より元気いっぱいの歌声。さらに第一声から全力のスバ友さんたちのコール。
左右だけでなく、最前列に屈んで近づき手を振るファンサービスも忘れない。そこに芸人はいない、完璧なるアイドルだ、と思わされる素晴らしいステージだった。
この時まだ衣装は普段と同じものだったが、統一衣装にはそらちゃんのものと似た、だが形の違う「星に羽」の意匠が取り入れられており、これはアイドルとしてホロライブを牽引する存在になるようにとのデザイナーのおるだん先生の思いが込められているという。まさしくスバルちゃんは今後の第一線を担う存在になるだろうと確信している。
芸人だがかわいい、ではなく、今や自分の中では「大空スバルはカッコイイ」だ。


アキ・ローゼンタールによる『シャ・ル・イース』
自分が「そらちゃん以外のホロライブメンバーも見てみようか」と思い至ったのが昨年の「ホロアトレ」コラボのことだった。
この時購入待機列の店内放送で聴いたのがアキちゃんの『シャ・ル・イース』で、こんな歌があるのか、と興味を持ったのをよく覚えている。
初期は上手く配信ができず、さらに手術による活動休止など、当時をよく知らない自分でも波乱の道のりを歩んできたと聞いていたが、同時に伝わってきていたのが「ダンスが一級品」ということ。
曲が始まると会場は一気に異世界の空気に包まれた。民族調の音楽に合わせてしっとりと歌いあげる姿はただただ美しかった。
優雅なダンスと透き通った歌声を現地で聴くことができて、本当に良い体験ができたと思う。今後ダンサーとしての活躍が広がってくれると嬉しい。

白銀ノエルによる『太陽系デスコ』
『太陽系デスコ』といえばそらとも的には「ときのそら初のボカロ曲カバー動画」であり「その高音を強みだと明確にした出世作」。今でもYouTubeチャンネルでの再生回数はぶっちぎりの一位だ。
事前の配信でノエル団長自ら語ったが、このそらちゃんが歌った『太陽系デスコ』がホロライブ加入のきっかけとなった曲だというのだ。そう、3期生以降は「ホロライブの活躍を知りVtuberになった世代」なのだ。
その曲を初めてのステージで歌う。ただでさえ難しいボカロ曲のさらに人の歌唱を想定していない曲を歌う。ボイトレに通い始め、先生に正気じゃないと言われながらも歌う。すさまじい覚悟だったのだと思う。ヤケクソだったのかもしれないが、それでもその決意を称賛したい。
授業参観のようだったなどと感想が飛び、後に数度行われた公式同時視聴配信などでは散々な言われようだった(えーちゃんが新しい性癖に目覚めた)が、この度胸があればきっと大成するだろうと思う。


さくらみこによる『マイネームイズエリート☆』
ハイテンポでたくさんコールがあり楽しい曲。みこちゃんの声とも相まってライブではかなり盛り上がると『でいどり~む』で体験した。
今回はコールをちゃんと覚えて臨もうとできるだけ聴き込んでいたため、すべて完ぺきとまで行かなくてもおおよそのコールは合わせられたのでとても楽しかった。
惜しむらくは周囲でコールを覚えている人が少なかったのか集団で盛り上がる感覚が今一つだったこと。次は堂々とコールしたい。
以前のそらちゃんとのコラボ3D放送で「振り付けがバタバタした感じになる」とダンスやポーズのレッスンを受けていたみこちゃんだが、むしろその楽しそうな動きが彼女らしさなのかなとも思う。また、身体をひねることを意識するなどわずかにレッスンの成果のあるカッコかわいい動きになっているような気もした。
トラブルのあったぺこみこのMCパートもアドリブで切り抜け、ライブを盛り上げる実力は確実に高まっていると思う。今年のエリート巫女アイドルの活躍に期待。


夜空メルによる『ヒバナ』
カッコよくてライブ映えもするこの曲をまさかメルちゃんが歌うとは!と驚いた。
メルちゃんといえばとにかく「かわいい」イメージが先行していた。歌動画もだし、3D配信や『でいどり~む』で見せた動きはホロライブ屈指のカワイイムーブだったと思う。そもそも、声がかわいい。
事前にツイッターでの告知で「ヘドバンがある」と告げており、「カッコいい曲が来るのか?」という推測はあったものの、未知数であった。
ヘドバンについてはあまりに狭く危険だったので気持ちだけで失礼させていただいた。余裕のあった中央付近はできていたらしい。
かわいいだけでなくヴァンパイアらしく激しくカッコイイ、またはスタイリッシュな曲もいけると証明した今後のステージに期待したい。


ときのそらによる『フレーフレーLOVE』
豊洲でそらちゃんが何を歌うのか正直全く予想がつかなかったが、結果は『Dream!』で初披露された最新のこの曲だった。完全に個人的な話だが、元気の出る曲なので目覚ましにして毎日聴いているし、耐えられないほどつらい出来事があった時、これを聴いて命を救われたこともあった、思い入れのある曲だ。
最近のライブだと煌びやかなDream!衣装をよく着ていたので、普段と同じ衣装だったのは一つ気になった。

ステージに立った瞬間の歓声と、その立ち居振る舞いだけでそれを鎮め静寂を作り出す、ホロライブにおいて圧倒的なオーラ。ときに優雅、ときに激しいかわいさ溢れる振り付け。前奏の自己紹介と「これからもどんどん盛り上がっていきますよ!」の声。

「ちょっと歌が好きでちょっと頑張り屋さんだっただけの普通の女の子」がこんな事ができるようになるなんて、と思うだけで涙がこぼれてしまう思いだった。これはライブのたび毎回であはるが。
そらちゃんのダンスは「本能ダンス」と本人も自称する「その場で思いついた適当なもの」だったが、今は明らかに違う。昨年からダンスレッスンを受けながら一流のアイドルたちを独自に研究しており、推測だが「多数のかわいい・カッコいい振り付けを身体で覚え、その場で本能のまま組み合わせる」という意味の「本能ダンス」へと変貌を遂げている。
そしてその振り付けの一つ一つに意味があると思われる。披露した『フレーフレーLOVE』の明確に定めたわけではないコールが最初の「ハイ!」からバッチリ合ったのも、そらちゃんが「ダンスの振り付けとしてその場でコールの煽りを入れている」事が大きい。
掛け声を出す時は手を大きく挙げ跳ぶ。前奏終わりの静かな時は手を大きく広げる。彼女が何度か語っているように、「ライブはみんなと作るもの」なのだ。

全身を使ってリズムをとり、ステージ左右を全て使ったパフォーマンスに「声枯らしていくよ!」の煽り。普段の温和な彼女の配信や、活動初期の配信だけを見ていればこんな圧倒的なステージを作り上げることができると思う人は少ないだろう。ときのそらは歌を歌うと、ステージに立つと化けるのだ。自分も、昨年夏に初めてライブに行き、今までこんなすごいことをしていたのかと驚愕した。
互いに全力を出し合い『フレーフレーLOVE』はステージと観客との巨大な応援合戦となった。
「みんなありがとう!」と笑顔で走り回るそらちゃんの髪がなびき、汗で貼り付いたのかおでこが出ていた。息を切らして退場する彼女は楽しく歌えてとても幸せそうに見えた。

ユニット曲

0期生による『Dream☆Story』
「0期生」というのはときのそら・ロボ子さん・さくらみこ・AZKi・星街すいせいの5人を指す。この5人は「ソロデビュー組」とホロライブ内で呼ばれていたことが判明しているが、この度この呼び方が本人たちからも出るなどしており、どうやら公式に?定まったらしい。それぞれバラバラの時期に特異な加入の仕方をしていること、加入自体が5人それぞれのドラマを生んだことを考えると「何期」と呼ぶのはちょっとそういう点が見えづらくなるような感じがあるように思う(そらちゃんとロボ子さんの時代はそもそも「ホロライブ」ではなかった、など)。

さて、ここからチームごとのパートとなるが、最初のサインとビジュアルが出る演出がアイドルのゲームのオマージュだと全く知らず、ずいぶん経ってからそうらしいと知った。SSR演出?(これもよくわかっていない)でかなり感動するものらしいのだが、単にカッコイイ演出として見ていた自分のあまりの無知さ加減に悲しいやら腹立たしいやら。きっと今までも気づいていない仕掛けがたくさんあるのだろうと思う。

このパートが統一アイドル衣装のお披露目となった。イラストでのビジュアルはインパクトの強かった冬コミの等身大パネルの展示をはじめ何度も目にする機会があったが、彼女たちが実際に着て歌って踊るのは初。必然テンションも上がる。
統一衣装と言いつつベースが3パターン、さらに色やアクセサリーが全員異なるという、全員がアイドルであり、かつそれぞれの個性が前面に出たまさしくホロライブらしいアイドルの衣装だ。冬コミで既に驚愕していたが、この日のために23人全員の新衣装を用意したと考えると、ホロライブの本気が伝わってくる(さらに正月2D衣装や何人かの3D衣装を同時並行で進めていたはずで、恐ろしくなってくる)。

丁度いいのでここに記すが、この統一衣装でそらちゃんの「星に羽」の髪飾りが外されている。無くなったわけではなくソックス部分にマークとなってプリントされているものの、頭には新規デザインの帽子がつくことになった。この髪飾りは無個性に悩んでいたそらちゃんに、現行の新衣装をデザインしたおるだん先生から「新たなアイコンになるように」と贈られたもの。特徴的なシルエットは広く親しまれ、ロゴマークにもなったそれが、同じく統一衣装をデザインしたおるだん先生によって外された。これは自分の推測と解釈でしかないが、「誰もが認めるバーチャルアイドル・ときのそら」となった今、髪飾りのパワーを借りなくても本人自身の力でステージに立てる。もはや無個性に悩むバーチャルJKはいない、というメッセージなのではないだろうか。

そして歌う曲の『Dream☆Story』はそらちゃんの自己紹介曲。アルバム『Dreaming!』の最初に収録された元気溢れる曲、そしてワンマンライブ『Dream!』で最後に披露された(そらともにとっての)泣き曲である。
この5人でこの曲を歌うのは予想外だったが、選曲の理由で思い当たるのは1つだった。歌詞に「とまらねぇぞ!」のフレーズがあるのだ。
そうでなくても歌詞はそらちゃんを、ひいてはホロライブの方針を象徴するかのような自由でポジティブなものとなっている。全く違う理由でホロライブへ加入し、それぞれに活躍するこの5人にピッタリだ。

現地では気付かなかったが、ロボ子さんがうっかりコールの「ハイ!」を多く言ってしまい、「あ!」と声を上げて慌てて曲に戻る姿がニコ生ではなんとアップで抜かれていた。笑いを誘うかわいらしい一幕だったが、後の感想配信で「楽しすぎてつい多く言ってしまった」と語っており、ロボ子さんがこの大きなステージを全力で楽しんでいたことが微笑ましく嬉しかった。

自己紹介曲なだけあって歌詞とコールに「ときのそらだよ!」という部分があるのだが、どうコールすればいいのか全く考えていなかった。そこへ到達した瞬間「ときのそらだよ!でいいのか?」「違うワードなのではないか?」「ホロライブだよ!だろうか?」「ホロライブって5文字?語呂あってる?」と頭がフル回転。結局追いつかず「とぃのぁぁだよ!!」と謎の叫びが口から出てしまった。
ニコ生のタイムシフトで確認すると「ホロライブだよ!」が正解だったのだが、こういう機転を効かせるのが苦手なのは課題かもしれない。


1期生による『夢見る空へ』
2曲披露されると予告されていた新曲の1つめ。「夢」「空」というワードから「ときのそら」を連想してしまうのはもはや性だろう。
そらちゃんとホロライブの始まりから今までを描いた『SSS』の次なる全体曲は1期生によるユニット曲。

元々ホロライブは「何期」としての繋がり感を重視していなかったように思う。全員がいい意味でマイペースで、集まって何かをするというのも「箱推し文化」を受けてから活発になった印象だ。特に1期生は赤井はあとちゃんが留学しており、さらにアキロゼちゃんは一時活動休止していたなど、集まろうにも集まれない事情もあった。
センターはホロライブ随一の苦難を乗り越え活動するアキロゼちゃん。まつりちゃん発案で全会一致で決定したという。ときのそら・ロボ子さんに続くホロライブ生の最初の世代にしてVtuber界の初期から今までを支えるこの5人がこの並びで「受け継がれていく想い」を歌うのは感慨深いものがあった。
ダンスもぴったり合っていて美しかった。未来への展望に満ちた歌詞のように1期生の活躍に期待したい。

2期生による『五等分の気持ち』
白状すると、ショートアニメ『ホロぐら』にそんなのがあったな、と思いつつ、元ネタを全く知らないまま聴いていた。
ネットミーム(なのか?)に明るくないとこういう時最大限に楽しめないのは非常にもどかしい。

こちらも1期生と近い感想になってしまうが、2期生は輪をかけてマイペース。集まって何かをすることはあれど、むしろそれぞれのスタンドプレーが関係性を構築していったような印象だ。3期生の登場まで「何期生」を意識することは薄かったように思う(正直、どちらか時々わからなくなる)。強烈な個性を放つこの5人が並んだ状態を自分は恐らく初めて見たかもしれないが、歌声は不思議と一体感を感じるものだった。

ゲーマーズによる『新宝島』
ゲーマーズらしいぶっ飛んだ選曲、と言いたいところだが、「サインの演出」、『五等分の気持ち』に続いて自分が詳しくないネットミーム第三弾となってしまった。
爆発的に流行していたのは知っていたがまだまだボンヤリとホロライブを見ていた時期でもあり、「ネタ曲らしい」という情報しか持ち合わせていなかった。
だがこれが不思議なことに、曲が始まると妙に乗ることができ、歌詞も相まって妙な感動が沸き起こり、自然と発生した大合唱にも参加することができた。
歌い終わった後は、「ゲーマーズ、やっぱすごいな」とよくわからないが爽やかな余韻が残った。

3期生による『Connecting』
多くの人が待望していた3期生の3Dの姿でのステージ。特に3期生は「ホロライブファンタジー」とチームコンセプトまで定められて大々的にデビューし、活動開始後も積極的にコラボ配信をしあうなど、同期としての結束が特に強いユニットだ。先行して3人が3D化したがそのお披露目配信の時も自分のことのように互いに喜び合っていたのが印象的だ。

相変わらず原曲は知らなかったが、人とのつながりを歌ったまさしくVtuberとして活動する彼女たちを象徴するような歌詞。ホロライブがVtuber事務所として十分に軌道に乗り、どんどん拡大していく中でデビューした彼女たちは、それ以前のメンバーを遥かに超える破竹の勢いで人気を伸ばしている。そういった事情故にリスナーとの関係性ともとれるこの選曲がまさにピッタリに思えた(元は別の曲の予定だったらしく、その意思があったかは定かではない)。
その美しく、時にパワフルな歌声に魅了されてしまった。それぞれあまりにも特徴的な声質の持ち主だが、5人が歌うと不思議と調和が生まれ、心が揺り動かされる思いだった。

ときのそら・白上フブキ・湊あくあによる『気まぐれメルシィ』
言わずと知れたホロライブを牽引してきた3人による特別ユニット。こういう場でもなければ、この組み合わせを見ることはなかなかないだろう。むしろ意外ささえ感じた。
さらにフブキちゃんに至っては堂々のユニット曲3曲目。「フブキング」の名は伊達ではない。

一部ではこのユニットを「トップ3」と呼ぶ動きもあるようだが、個人的にはあまり使いたくない名称だ。Vtuberであるという以上、登録者数や売り上げなど実際に出る数字が絶対的なものではあるのは事実だが、彼女らが選んだ「人を楽しませる」という活動にそういう考え方を持ち込みたくないというのが本音だ。
事実として配信でこの言葉が出た時そらちゃんははぐらかすようなことを言い、しばらく後の記念配信でフブキちゃんはそういう見方をされる重圧と戦っていたことと併せホロライブ全員への愛を語っていた。「数字が増えればうれしい」という以外は、綺麗事かもしれないが野暮だと少なくとも今の自分は感じる。

スタイリッシュな曲で三人のセクシーな振り付けはこれまでの空気を一変させた。
特にライブに限らず今まで歌った曲が「かわいい」路線であったこともあり、カッコよくて大人っぽい雰囲気をこの三人が出していることに理解が追い付かない瞬間さえあった。凛とした佇まいの立ち姿は美しく、腰の入った振り付けは滑らかで、自分としてはそういう印象のなかったあくあちゃんが妖艶にさえ見えたことが驚きだった。
高音の伸びはそらちゃんの十八番ではあるが、フブキちゃんとあくあちゃんも負けてはいない。それぞれのパートごとに歓声が沸き起こり、この日だけのスペシャルユニットはこの上なく上質で満足感のあるものだった。

いよいよ閉幕が近づき、それぞれ夢を語るパート。思い思いに、だが大きくて彼女たちらしい夢を語っていく。

まず気になったのはAZKiちゃんの「AZKiがいなくなっても、みんなの心や記憶に残り続ける音楽を作りたいです」という言葉。
本人やプロデュースのツラニミズさんの言葉をすべて追うことはできていないが、当初より生と死を強く意識させる音楽活動を行ってきていたのが印象深い。
そしてそもそも、「いつか居なくなることを視野に入れた活動」を行っていると半ば公言しているということがVtuber(Vsinger)として特異だと改めて感じさせられた。
自分のようなオタクとしての新参者にとってはかなりキツイ話ではあるのだが、未来を見据えていること自体はとても有難い。

そして何人かから「みんなで武道館ライブ」の夢が出た後、最後にそらちゃんの「いつか横浜アリーナでソロライブがしたい!」の宣言。
そらちゃんはブレない。「みんなで武道館ライブ」の方が大きな夢だと捉える人の方が多いとは思うが、ホロライブの、このノンストップ・ストーリーの始まりであるこの夢は、果て無く遠く、そして大きい。最初からブレずにこの大きな夢を掲げてきたからこそ、多くの人を動かし、この今を作り、未来も作っていくのだと思う。

23人のアイドル

全員による『キラメキライダー☆』
2曲目の新全体曲。明るく爽やかな曲に、即座にコールの付いた「キラ・メ・キ・ライダー!」の掛け声がとてもキャッチーで、すぐに心奪われてしまった。タイムシフトを見ながら楽曲配信を心待ちにしている。
『SSS』は全体曲と銘打っておきながら、もはや隠す素振りすらなく完全に「ときのそらの曲」という趣が強かったが、3期生や0期生まで含めた全員で歌唱するこの『キラメキライダー☆』はまさしく「23人を超えたホロライブの曲」だった。

箱の仲間やリスナーと楽しみ、時に悩み、そしてわがままを押し通して前に進んでいく。
事務所の方針転換というメタな事情は大きいにせよ、そもそも「アイドル」としてデビューしたわけではなく、とてもじゃないがアイドルらしいと言い難い活動をする者の多い彼女たち。このステージでも振り付けが合うことはなく、むしろ思い思いに体を動かして自分を表現している、一匹狼の集団のようなグループだ。
そんな彼女たちが箱という繋がりを経て、より大きな舞台でより多くの人を笑顔にするべく奔走し、それぞれのキラメキを纏っていった姿をリスナーはよく知っている。彼女たちはこの歌をもって完全なアイドルになったのではないだろうか。いや、アイドルの定義というものを自分はよく知らないまま語っているが、このステージ上で輝く彼女たちをアイドルと呼ばずして何と呼ぶのか。

「これが、新時代のアイドル。」

人を楽しませ人の憧れとなるアイドルとしてステージ上で輝きを放つ23人に、自分は涙ぐみながら声援を送っていた。


「ホロライブはアイドル事務所」という言葉は、芸人や狂人めいた言動の多いメンバーを茶化す言葉でもあったが、歌動画などへの反応を見るに、「アイドルのライブ」と銘打ったノンストップ・ストーリーを以てその言葉のままに捉えられることが増えたように思う。
「ときのそらがいるからホロライブはアイドル事務所なんだ」という言説はよく聞くが、彼女だって最初からアイドルだったわけではない。むしろ真逆の、配信時にコメントを拾うことすらできない平凡な女の子だった。
「アイドルになれる」「歌が上手い」「もう立派なアイドルだ」と声援を送り続けた結果、今やその言葉のままにバーチャルアイドルとして名を馳せる「ときのそら」という存在がホロライブには居る。
配信主体のVtuberとして成功を収めようとしている者も居る。アーティストを目指す者も居る。ゲーマーもいる。マイペースも居る。ライブ後の感想配信で新たな目標ができたと語るメンバーも居た。その全員がリスナーと一緒にそれぞれの思うアイドルとなって夢を掴んで欲しい。
夏にいきなり現れた「hololive IDOL PROJECT」とは、そういうものなのではないか、と思う。

ただこのライブから一週間でみんなアイドルから文化のかけらもない原始人に戻りゲームの『ARK』で一大ブームを作り出しVtuber界を席巻した、というオチがつくのだが、これも新時代のアイドルならではかもしれない。

曲のラストで飛んだ銀テープについては最初理解が追い付かず、拾うという思考もなく、そもそも端だったためその選択肢もなく、ひたすらビックリしただけになってしまった。ライブコンサートのフィナーレといえば銀テープという知識自体はあったと言えばあったのだが、非常にもったいないことをした。

エンディング

エンディングはインスト版の『SSS』に合わせたクレジット
メンバーと歌った曲名がセットリスト順に次々表示されるが、その間歌もないのにこれが最後とばかりの全力で完璧なコールをリスナー一同叫び続けていた。
いくらノンストップ・ストーリーと言ってもライブ自体の閉幕はある。それが名残惜しいのか、まだまだ熱量を発揮しきっていないのか、自分でもわからずともかく全力でコールした。あえて言うなら、感謝の念が近いかもしれない。
「一人じゃないから」の部分ですいちゃんが表示されたのはちょっと涙腺に来るものがあった。

セットリストが終わると、「Special Thanks」としてホロリスナーのそれぞれのファンネームの表示。
常々そらちゃん、並びにホロライブは「ライブはリスナーと作るもの」と掲げていた。こうして目に見える形で自分たちの名前がライブの一部に組み込まれたことがたまらなく嬉しく、涙が零れる思いだった。

また、Vtuberによるライブイベントは「演劇、映画に続く新たな芸術表現」なのではないかという思いを新たにした。
人と技術によるデジタル時代の総合芸術であるのと同時に、配信やツイッターによる普段からの交流がそのままステージ上に反映されるというのは今の時代ならではだ。
それゆえ、もはや第四の壁が最初からない、と捉えることもできるように思う。
唯一、透過スクリーンがその透明度と裏腹に厚く険しい壁と化しているが、これも何らかの方法で解消できるのではないかと期待している。

どうせなら、舞台袖が自身のステージだったえーちゃんや、このライブの企画と運営に携わった人全員を合わせたスタッフクレジットも欲しかった。そのすべての名前にペンライトを振って称賛を送りたい。

そしてラストの「おわり」の文字が出かけては隠れを繰り返し、たっぷり焦らした後に「おわらないホロライブ」になる演出。
感動の一言だった。「これが始まり」と何度も告知があったにもかかわらず、やっぱりライブの終わりは来る。その寂しさを完全に打ち消してくれた。このニクい演出は、間違いなくえーちゃんだろう。
ノンストップ・ストーリーはおわらない。そらちゃんの「とまらねぇぞ!」から始まった物語は、おわることのない物語に形を変えて続いていく。

同時視聴配信で泣き崩れていた4期生も、既にこの物語の一部だ。3期生以上に癖のある5人がどんなステージを見せてくれるのか、今から楽しみだ。


えーちゃんの影ナレは、「ありがとう!」の感謝の叫びと拍手が絶えなかった。
裏方、運営として初期から尽力しているえーちゃんに、どうしても感謝を伝えたいという感情が皆にあったのだと思う。
えーちゃん、ありがとう。

そして配信は既にストップしていたが、この後すぐにアンコールの声が巻き起こった。
「明転したら客出し」という不文律に則り、名残惜しさはある中退場の準備を進めていたのでこれには驚いた。
ほどなくして大慌てのえーちゃんの影ナレが入り、感謝の言葉と共に退場を促す案内がなされた。

ノンストップ・ストーリー

会場の汗臭さはもはや不快ではなかったが、エントランスに出た途端に再びあの柔らかな花の香りに包まれ、清々しかった。
おびただしい数の祝い花はその名の通りにこのライブを祝うための花だが、自分にはこの「ノンストップ・ストーリー」自体がホロライブのメンバー、並びに続くバーチャルアイドルへの祝福のように思える。
かつて冗談から生まれた「止まるんじゃねぇぞ」「とまらねぇぞ!」の掛け合いはそのままときのそらという存在を象徴する言葉となり、最初にそらともから提供されたsoraSongの歌詞になり、彼女とそらともの原動力となった。
ただし、この言葉が呪いの言葉となった未来もあったのではないかと思う。とまらないということは、本当はかなり困難なことだ。本人はほとんど語らないが、何度も何度も辞めようと思うような出来事があったということは漏らしている。結果としてはそらちゃんは言葉通りにとまらずに今も進み続けている。

ノンストップ・ストーリーの開催告知は『ホロの試練』と銘打たれたやらせや茶番の露骨なバラエティ企画配信において行われた。
それはそれはひどい内容ではあったが、「この芸人集団が数か月をかけてアイドルになる」という大きな物語自体がプロモーションとして機能していた。
実際にそう感じた人がどれほどいたかは不明だが、アイドルらしくないと言われるメンバーたちがボイトレを始めたり、ライブの告知をしたりする様子は既にノンストップ・ストーリーの一部だった。
余談だがARアプリ「ホロリー」のリリースや、衝撃的な冬コミの巨大企業ブースでの統一衣装の等身大パネル展示も彼女たちのモチベーションを高めるのに一役買っていたことだろう。本人たちやリスナーが物語の一部になるという体験、これがバーチャルアイドルであること、ノンストップ・ストーリーであることなのだろう。


ノンストップ・ストーリーは少なくとも国内では初のVtuberによる大規模バーチャルアイドルフェスで、結果は大成功と言える。この成功が、続くホロライブ生、或いは他のバーチャルアイドルに与える影響は計り知れない。豊洲PIT、統一衣装、トラブル対応など業界に遺したものは大きい。
「とまらねぇぞ!」と同じように、「ノンストップ・ストーリー」もホロライブプロダクションやバーチャルの世界への呪いではなく大いに祝福になることを願っている。



夜風が冷たく、ライブ後の熱気をもってしても帰り道は寒かったが、運良く買えた「えーちゃんTシャツ」が長袖ということもあり重宝した。汗に濡れたライブTのまま帰っていたら間違いなく風邪をひいていただろう。
こういう「ホロライブのグッズ」が今後増えると嬉しい。


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