2021.07.23 知らねーよお前の主人公意識なんか
高2の時、大学探訪という行事があった。1泊2日で東京に行き、有名大学をあちこち回るというものだった。将来の進路の参考になればと思って設けられた行事だったのだろう。
1日目の夜、ホテルに泊まった。仲のいいクラスの男子5人と同じ部屋だった。修学旅行なり林間学校なり、クラスメイトと共に夜を過ごしたら普通は深夜まで寝ないでずーっと喋ってるもんじゃん。そのために行ってるようなもんじゃん。
だけど俺は22時にはもう寝てた。泊まった客室は2つの部屋があって、真ん中にすりガラスの引き戸があり、2つの空間に分けることができた。その扉を閉めて、片方の部屋では消灯して俺が寝ていて、もう片方の部屋に4人が集まって騒いでた。
眠かったのだ。新幹線による長時間移動、そして大学探訪…。疲れていたし、普段からこれくらいの時間に寝る生活リズムだったからというのもある。
消灯して寝ようとはしたのだが、隣の部屋から盛り上がってる声が聞こえるし、すりガラスからは光が差し込んでくるし、結局みんなが床に就く24時まで眠れなかった。
何だよ、起きてても寝ようとしても睡眠時間は変わりないのかよ。じゃあ起きてればよかったわ。みんなめちゃくちゃ盛り上がってたからなぁ。
クラスのグループLINEで通話を初めて、別の部屋の女子とも喋ってたのを覚えてる。今やこっそり女子部屋に侵入しなくたって女子と喋れるんだな。安全な方法が生まれたのか。技術の進歩だな、恐ろしいな。俺も女子と喋りたかったな。別に女子と喋りたくないから寝てたわけではない、本当は女子と喋りたかったのだ。
あと別の部屋の男子が何人かこっちの部屋まで来てたな。よく先生の目をかいくぐり抜けられたな。
何でみんなはあんなに体力があったんだろうか。新幹線で富山から東京に行って、大学をめぐって、その上で何で深夜まで起きていられるんだろう。大学探訪が苦にならないって、みんなすごいなぁ。それだけの体力が欲しかったよ。
あと先生に怒られるのが嫌だったんだよ。深夜騒いでる生徒って先生に怒られるじゃん。林間学校の時も先生に小言を言われてたわ。
何でみんなは先生に怒られても平気だったんだろうか。何でみんなは怒られるということを何とも思ってなかったんだろうか。なんでそんな強靭なメンタルを持ててたんだろうか。先生に怒られるのって精神的にきつくない? ひどく屈辱的というか、情けないというか、悲しいというか、恥ずかしいというか、そんな気持ちにならない? 何で俺はそこまでのメンタルを持てなかったんだろうか。学生時代なんか、怒られることを何とも思わない人の方が楽しく生きられるよね。実際にあの夜、あのホテルの一室でも、俺以外の4人はとても楽しそうだった。買い食い・スマホ・おしゃべり・サボり…。怒られてる人ばかり楽しそうにしてる。怒られたくなかった俺は全然楽しくなかった。こっち側ばかりが損をする。マジメに生きてる方が損をする。良い生徒ばかり損をする。割に合わない。善行と人生が釣り合ってない。なんだかんだ怒られっぱなしだったけどギリ大学に行けたって人の方がよっぽど輝いてる。
悲しくなってきたな。素行不良は問答無用で退学にするってぐらいじゃないと割に合わない。そんな学校、それはそれで間違ってるけど。
先生も先生だよ。どうせアイツら、自分達が学生だった時は深夜までさんざん騒いでたくせに。お前らに俺たちのことを怒る権利なんかあるのか? 俺たちは20年前のお前らなんだよ。お前らと同じことをなぞってるんだよ。自分たちは遊び惚けて俺達には校則を強要するなんてやってらんないよ。
そういや俺たちの部屋に担任のA先生がやって来たけど、全然怒ってなかったな。A先生は自分の過去としっかり向き合って、自らの分際をわきまえてたんだな。怒られないなら起きてればよかったな。
そういや別室のクラスメイトは、朝方の4時まで起きてたって聞いたな。そんなに無茶したらイカンよ。24時就寝がベストタイミングだよ。
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怒られることを何とも思わない、ツラの皮が厚いヤツらへの悪口を書き殴っていた。2021年の日記だが、高2の時となると話は2017年にまでさかのぼる。さらに4年前の出来事である。
どうして怒られることをこんなにも怖がるのか。怒られ飽きているのだ。小学生の頃から連帯責任で毎日のように怒られていた。自分は何も悪いことをしていないのに毎日そんな生活だったから、つまんない人生に飽きていたのだ。
安寧が欲しかった。同じ管理教育に詰め込まれただけの関係性の人に、もうこれ以上人生の邪魔をしてほしくなかった。誰だお前。気づいたら同じ学校に通っていたけど、お前は一体誰なんだ。何でそんなにちょっかいをかけてくるんだ。
アイツらは「自分の人生の主役は俺だ!」という、強烈な主人公意識があるんだと思う。だから周囲の人間に迷惑をかけようと、俺が楽しみたいから深夜まで起きている、俺が楽しみたいから深夜まで騒いでる。そんな思考回路になるのだろう。
その意識自体は分からんこともない、むしろ俺だって同じ気持ちだ。自分の人生だから、自分を生きていかないとつまんないというのは分かる。
ただそれは、自分の家の中と、自分の心の中に限った話ではないだろうか。自分の空間は自分で作り上げていいものだし、自分の心は誰にも侵されてはならない聖域である。その2か所で主人公ヅラするのは分かる。
その意識が暴走して社会にはみ出してしまった途端、誰かに迷惑をかけても何の感情も湧かない、横暴な人間になるんだと思う。迷惑の自覚があって何かしらの感情が湧いたら、俺に謝ってきてくれるはずだもん。
それは先生だって同じだ。悪いことをした人を小部屋に呼び出して、マンツーマンで説教する先生は善い先生だと思う。連帯責任かなんか知らんけど関係無いヤツまで巻き込んで全体で説教する先生って、教壇の上で強烈な主人公意識に酔ってるんだと思う。
40人もの大勢の人間を、自分の意思で自由に操作できる。悪いことした・してないは関係ない。気分はまるでカルト教団の教祖様、ないしはキューバのカストロ議長。10時間にもわたる演説。
知らねーよお前の主人公意識なんか。心にしまうか家に帰れよ。生徒はお前の信者じゃねーんだよ。
いつだったかネットでこういう論調を見たことがある。「学生時代が楽しかったからその延長線上で先生になったのであって、そんなヤツに学校が楽しくない生徒の気持ちなんか分かるわけがない」と。
その真偽は別に知らないけど、個人的にはものすごく納得できるメカニズムだなって思った。だから俺はとことん虐げられる学校生活だったんだ。俺の味方になってくれる先生なんかいなかったのは、だからだったんだ。
怒られても知らん顔できるのも、深夜まで起きていられる体力があるのも、連帯責任とかほざくのも、全部主人公意識。俺はアイツらの主人公意識に必死に抗って生きている。誰かのモブにされてしまいそうなところを、俺は戦っている。