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2021.08.23 三ツ屋にて~この町は何かがおかしい~
インターンシップで金沢に来ている。前日の16時半にホテルにチェックインし、時間があったからぶらり途中下車の旅をしてきた。最近雨とかバイトで旅ができてなかったからね。
北陸鉄道の浅野川線に乗り、三ツ屋駅で降りた。
浅野川線はワンマン電車で、無人駅から乗って無人駅で降りた。地元の電車もワンマン電車だったけど有人駅で乗り降りしてたから、真のワンマン電車 ※1 は初体験だわ。
先頭車両で乗って整理券を取り、車掌に整理券と運賃を渡す。知ってはいるけど、いざやってみるとちょっと緊張する。
小銭をジャラジャラ渡すのが気後れしたから、運賃がピッタリ200円の三ツ屋駅にした。最初はその1つ前の三口駅にしようと思ったが、190円だからやめた。両替でポッケがジャラジャラするのも嫌だった。
500円玉だけポッケに入れて電車に乗り ※2、両替をしたら100円玉4枚・50円玉1枚・10円玉5枚が出てきて、結局ポッケがジャラジャラした。
しばらくウロウロしてたら、住宅街の道の行き止まりにいかついポンプがあった。
極太のポンプが2つ、下から前へ伸びている。このポンプの向こうは一体どうなってるのかと思い、大きく回り道をして向かってみた。川があるのは隙間から見えたけどどうなってるんだろ。
途中、空を見上げてるおじいちゃんがいたから俺も見てみると、電線に洗濯ばさみがついてた。
結構上だから肉眼では確証が持てなくて、写真でもうーんって感じ。すぐ近くに鳩がいたけど、色合いは赤っぽいしなぁ。
何があったんだろうか、誰かが挟んだとしか思えない。でも現実的にあり得ない。そしてあのおじいちゃんはどうして気づいたんだろ。
あとエロ本が落ちてた。
エロ本だ、雨で濡れてブワーっと広がってた。まだエロ本って落ちてるんだ。もうパソコンとかスマホで見るもんじゃないの? エロ本なんて旧時代の物でしょ。
ワンマン列車とかエロ本とか、田舎だなぁと思った。京都に引っ越してからエロ本ってあったっけなぁ。
そしてさっきのパイプの裏側に着いた。大きな川へと合流していた。
水を下から前に汲み上げて、また下に流していた。なんだろう、大きな川に合流するのなら、普通に地続きの川にしたらいいのではないか。水を一旦上に持ってくのはどういうメリットがあんのか。
パイプの裏を見たから引き返して、駅近くの川の反対岸に行こうとした。川の土手の階段を見たら、なんかへんてこな造りになってた。
下からまっすぐ上に階段が伸びて、尺が足りなくて左に折れ曲がって続いてた。左向きの階段は、土手のコンクリに鉄の部品を打ち込んでコンクリの板を載せるという、見たことない階段だった。
川の土手を散歩しててよく階段を見かけるが、どれもまっすぐな造りなんだよなぁ。なんだこの階段。
この階段を目にした時に「この町は何かがおかしい」と思った。パイプだの洗濯ばさみだの階段だの、小さなことが少しづつ狂っている。
パラレルワールドに入り込んでしまったみたい。一見いつもの世界のようだが、目を凝らすとちょっとだけ狂ってる。
この時点でnoteに書くネタができたぞと思って嬉々としてた。これを軸にしようと決めた。そこで街のおかしなところを探してみたが、意識すると何も見つからないものなんだよ。
田んぼに挟まれた道を歩いてたが、いつも通りの田んぼだった。
パラレルワールドから抜け出したのかな。いつ入ったのか分からなければ、いつ抜けたのかも分からない。パラレルワールドってそういうものだよね。
帰りの電車で優先席に座る若いカップルを目にした時に、いつもの世界に戻ってきたなと思った(車内はガラガラだったから、別にそのカップルが迷惑をかけてたわけではない)。
紫のジャージのズボンをはいてる彼氏と、紫のパーカーを着てる彼女。上紫×下紫のカップル。何だあの2人。
ワンマン電車のやり方で電車を降りると、目の前に「七ツ屋駅入り口 50m先」という看板があった。
乗車駅の七ツ屋駅は、ホームからかなり離れた場所に入り口がある。駅に向かった時、駅舎はすぐに見えたけどそこから入口に着くまでが遠かった。
これが一番狂ってるよ。紫のカップルといい遠い入り口といい何かおかしい。俺はまだ、パラレルワールドから抜け出せていないのかもしれない…。
※1 有人駅で乗り降りするのは普通の電車に乗ってるのと同じであり「ワンマン電車かぁ、懐かしいなぁ」なんて思ってはいけない。無人駅で乗り降りしてこそ、真のワンマン電車経験者である。
※2 ICOCAが使えると思ってたが、念のため500円玉だけ持ってきた。
エッセイを書く人の良くないクセというか、ネタが見つかったら意地でも自分の思い込みで面白い町にしてしまいたくなる。おかしな町にしようと必死だった。
日記の裏事情だが「駅の入り口が遠いのっておかしいよな」と思ったのは日記を書きながらだった。日記を書くために旅を振り返ってたら「そういや紫のカップルと駅の入り口っておかしいよな」と気づいたのだ。
旅をしてる最中は「パラレルワールドからは抜けちゃったな、ネタが足りないなぁ」と思いながら電車に乗ってた。正常な世界だなと思いながらカップルを見ていた。
そして日記を書いてる時に「なんかおかしいぞ…?」と思った。パラレルワールドから抜け出した気になってたら、実はいまだに捕らわれているのかもと感じた。
意識してしまうと何も見つからないんだよね。そして面白いことは、実は意識の外で起こっているのかもしれないんだよね。
次からは極力フラットな気持ちでぶらり途中下車の旅をしよう。