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2017.05.17 ふつおた修行中、人間臭くなるために

この4月から、FMとやまのRADIO JAM ※1 にふつおたを送っている。深夜ラジオのネタを1年送ってきた自分には、ふつおた力が皆無だった(にゃんゆる ※2 でもそう)。今日の出来事を、肩の力を抜いて送ってみる。

結構読まれている。シャトルランの話、エアコンの除湿の話、そして今日は散髪に行った話。「ヘアスタイルの伝え方を学ぶよりも、スポーツ刈りを受け入れる方が楽だった」というメールを送ったところ、タナベさん ※3 にかなりウケてて「もろみじょうゆ、面白いわぁ~」と言ってた。

自分ではそんなに面白いか?と思う。変なハマり方をした。「17歳ってそういうヘアスタイルとか一番気にする年頃でしょう? 写真とか持ってきゃいいのに」と。写真かぁ、持ってくのが恥ずかしいんだよなぁ。

この流れでCM明けに俺がリクエストした、The Strokesの「New York City Cops」※4 のイントロの、ギターのハウリング音が流れた。スポーツ刈りは受け入れるのにリクエスト曲は洋楽っていう。


※1 富山県で放送されている、FMの夕方の帯番組。現在は放送終了し、新番組「ヨリミチトソラ」がオンエアされている。

※2 昔、ニコニコ動画に投稿されていたネットラジオ。現在はアーカイブ削除されている。ふつおたを上手に送れなくて恥ずかしいことになったから、削除されてほっとした。

※3 タナベマサキさん。RADIO JAM、そしてヨリミチトソラのパーソナリティ。富山県を中心に活躍するラジオパーソナリティー。大学時代「富山県Uターン就職説明会」というセミナーでMCを担当していて、一瞬だけ「あの番組聞いてました!」とお喋りさせていただいたことがある。

※4


2016年の4月からオールナイトニッポンをはじめとした深夜ラジオにネタ投稿をし始めた。そして1年経ったこの時ふと思ったのだが、ネタコーナーで採用されることはたまにあれど、ふつおたやリアクションメールを採用されることが全然ないのだ。

そりゃいろいろ事情はある。オードリーのオールナイトニッポンなんて頑なにふつおたなんか読まず2人のフリートークが延々と続く、そしてそれが番組の魅力を強固にしてきた要因でもある。2人のフォームが崩れるくらいなら、いっそのことふつおたなんて読まなくていいとも思える稀有な番組。

しかしたまには「先週の放送でこんな話題がありましたが」「今週のテーマメールですが」から始まるふつおたに憧れる時もあるのだ。大喜利で笑わせるのも脳汁が出るが、パーソナリティーの話題からつなげるようにだとか、日々の生活に降りかかった出来事を面白おかしく伝える能力とか、そんなことができるハガキ職人もまた面白くて尊敬している。

昔の自分はトガっていた。「ふつおたなんか送ってパーソナルな部分を晒すのではなく、ひたすらコーナーにメールを送り続ける正体不明の謎のリスナーでいたい。そしてパーソナリティー側から興味を持たれたい」という、カッコつけた気持ちがあった。

今考えると本当に浅はかだなと思う。人気有名人が、わざわざいちリスナーの素性なんか掘り下げるか? 正体は向こうから暴いてもらうのではなく、自分から開示していきなさい! アプローチを待ってたらいつまで経っても謎のまんまだぞ! 謎というか空気なんだよ!

そんなことを1年かけてようやく気付いて、ふつおたの修行をしてみようと思い立った。芸人がやってるAMの深夜ラジオではなく、芸人ではない人がやってるFMの夕方ラジオを舞台に、日々の出来事を投稿してみた。

でもその時送ってたメールも決して面白い内容ではなかったはず。シャトルランの話も「体育でシャトルランをしました!自己ベスト更新しました!」くらいのものだったのではないか。

それでもメールが読まれたりリクエスト曲がオンエアされていたりしていたのは、ローカル番組が故に送られるメールの母数が少なかったというだけだと思う。FMとやまには申し訳ないが、それはどの地方局でも同じだろう。

でもそれが良かったんだよな。本当の本当に何気ない出来事でも読み上げるというのが、深夜とは違って夕方の空気感に合っていたんだよ。夕方のFMですべらない話を送っても逆に採用されないんじゃないか。

だからタナベさんも「17歳だけどスポーツ刈りしてます」というメールで笑ってたんだろうな。明確になりたいヘアスタイル像も無いというのに、理容師にあれこれ注文するのが恥ずかしくて、何よりも申し訳なかった。

憧れの姿があるなら理容師も腕を振るう気持ちになるだろうけど、なりたい髪型も無いのにいっちょまえに条件だけ重ねる。そもそもヘアスタイルのことも分かってないから、伝え方だっておぼつかない。なんてやりがいの無い、そして難しい客だろうか。中学時代の自分はそういうカッコつけ方もしていた。

そういう背伸びした3年間を過ごして、何だコレはと我に返って、めんどくさいからもう「スポーツ刈りでお願いします」でいいやと吹っ切れたのが高校時代。格段に伝えやすくなった。そして向こうもやりやすくなっただろう。

そんな角刈りシャバ像のリクエスト曲がThe Strokes。生意気なこと言うんじゃないよ、まだまだカッコつけたまんまじゃねぇか。髪型と自己開示のカッコつけは終わったけれど、リクエスト曲ではまだまだカッコよくありたかったんだよ。

スポーツ刈り期を経て現在のヘアスタイルは「ベリーショートのソフトモヒカン」となった。なぜならネットで「この髪型が一番女子ウケがいい」と書いてあったから。角刈りほどダサくはないけど、短髪でおでこを出して、それでいてなおかつサマになる。やっぱりネットは偉大だ。

そしてこれでふつおた能力が向上したのかというとそんなこともなかったんだけど、たぶん日記とかnoteが文章力を上げてくれたのだろうか。現在はふつおたを送って採用されることもたまにある。

振り返って何が一番嬉しかったか、成長できたか。推しの芸人のラジオが最終回を迎えるとなった時に「寂しいです、悔しいです。でも変わらず応援し続けます。あなたは私の推しでした」という、素直な気持ちを綴ったメールを送れたことだ。

高校生の時の自分じゃ、こんな一切の衒いの無いメール、送れなかったと思う。くだらないプライドだったのか、幼さが故の恥ずかしさだったのか。最終回には一切触れないなんてこともあったのかもしれない。そんなことを考えると自分で自分にゾッとする。

角が取れてから推しと出会えてよかったし、角が取れたからこそ推しと言える存在に出会えたのかもしれない。笑いに全てを捧げた人間よりも、笑いと感情面を両立できる人間の方が、よっぽど愛くるしいし、パーソナリティーも興味を持ってくれると思うし、何より面白いんだよ。それはfunnyであり、interestingでもある。人間臭い人間になれてよかったよ。