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2021.12.29 新旭にて~北へ~

ぶらり途中下車の旅、冬休みで時間があるということで今までで一番遠出した。滋賀県高島市の新旭駅で降りた。

地図を見たら、ガッツリ滋賀の北部なんだよね。福井寄り。今まで行った唐崎とか瀬田よりも遥かに北。

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新旭駅の北東エリアに針江という地域があって、そこの水辺景観を見てみたいと思った。デイリーポータルZ ※1 の木村さん ※2 がそこを訪れた記事 ※3 を出してた。川好きとしてこれは行くっきゃないと思って、冬休みに時間を取って遠出したということ。

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寒いけどいい天気で、こないだ降った雪も溶けてて旅日和だと思ってアパートを出た。京都駅から湖西線 ※4 に乗って琵琶湖沿いを北上する。琵琶湖を眺めながら移動してた。

途中、外国人グループが降りてホームの片隅に残っていた雪で軽く雪合戦をしてるのが見えた。雪の降らない国の生まれなのかなーって思った。そう考えると俺みたいな雪国生まれのやつってなんか冷めてんな、雪が降ったら素直にはしゃげばいいのになとか考えてた。

…いや待て、雪残ってんじゃん。雪が溶けてて歩くのにピッタリだなと思ったからアパートを出たんだけど、まだ雪溶けてないじゃん。京都市内は完全に雪が溶けてたけど、滋賀県北部はまだ雪残ってんじゃん。

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それがまた新旭の5~6個手前の駅で、まだ北へ行くの!?と思った。

その時点で屋根とか生垣が白く染まってる程度だったのが、新旭に近づくにつれてだんだんと一面の銀世界になっていくのが怖かった。屋根雪は分厚くなっていく、道は徐々に車の轍すらなくなっていく。

道の除雪すらされなくなるのを見て、田舎だなぁって思ってた。これはもう、帰る時には靴下がビチャビチャになるぞ。

新旭駅に着いた。まず駅前の道をずーっと東に歩いて琵琶湖を見に行った。滋賀に着たら必ず琵琶湖を見に行く。唐崎でも瀬田でもそうだった。

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その道がちょっとキツかった。歩道が全く除雪されてないものだから、車道の端っこをずっと歩いていた。地域のばあちゃんも車道を歩いていた。

東に延々と真っすぐ続く道で、おそらく田園地帯だったのだろう。360°何もない、白の世界に囲まれていた瞬間があった。家とか山が遠くに見えるだけで、ミステリーサークルのど真ん中にいるような気分だった。

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歩いても歩いても全然琵琶湖に近づけなくて、靴下は既にビチャビチャだし、くじけそうになった。徒労だった。穴を掘っては埋めて、掘っては埋めて…を繰り返してるような感覚。気が狂いそうだった。

数十分歩いてようやく着いたけど、浜辺に雪が積もってて波打ち際まで行けなかったんだよ。琵琶湖を遠くに眺めるだけ。

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そこから琵琶湖沿いを北西に歩き針江地域に向かった。この道も歩道が除雪されてなかった。途中、波打ち際まで行ける道がないか、除雪されてるところはないかと思って見てたけど、全くないまま針江に着いた。

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針江をめぐる前に、疲れてお腹も減ったから昼食にしようと思った。しかし田舎だし年末だしでお店が無く、チェーン店の本家かまどや ※5 に行ったけど時間がかかると言われて(あと弁当をテイクアウトしても、この大雪の中どこで食えばいいのか)、最終的にウエルシアでサンドイッチや菓子パンを買った。

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旅先で知らないめし屋にふらっと入るのが醍醐味なのに、ウエルシアて。日用品を買いに行くついでにパンを手に取る店じゃないか。薄皮つぶあんパン(5個入りのやつ)とかを食べた。

ちょっとお腹と頭が痛くなったけど、このままじゃまだ帰れないから針江を歩いてた。そしたらすごくいい景観が見れた。

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針江は農業用水路とかが複雑に入り組んでて、各家庭がその水を自分ちに引き込んでいる。家の庭に水場があるとか、井戸もあったし。その水がとても澄んでるから、皿洗い・掃除・洗濯とかに利用しているのだろう。水と暮らしが密接している、日本の原風景があった。

まぁ真冬だったから水場で何かしてる人なんか1人もいなかったんだけどね。あんなのに手突っ込んだら寒くて冷たくてちぎれちゃうよ。除雪した雪を水路に流してる人ならいた。

水がとても綺麗だからなのか、鯉を養殖?してる場所もあった。雪とか流して水がキンキンに冷えて、鯉は大丈夫なの?とは思ったが。

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あと水路に碑とか地蔵があった。この水路はもはや地域の信仰にもつながっているのかな、民間信仰なのかな。それだけ地域の人が水路を使っているってことよ。

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原風景を見るのが楽しくて、寒さも腹痛も頭痛も靴下もなんのそのだった。

湧き水も一か所あった。飲めるって書いてあったから飲んだけど、詳しい味はよく分かんなかった。水ってどこでもそれなりに飲めるくらいは美味しいよね。

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後は雪に埋もれた飛び出し坊やとかを撮って帰った。半袖で寒そうだなって思って。

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帰りの電車の車窓からは、南下していくにつれてだんだんと雪の量が少なくなるのが見えた。やっぱ北に行けば行くほど雪って降るんだね。


※1 愉快な気持ちになる読み物サイト。観光・料理・オリジナルゲーム・工作など記事のジャンルは問わない。

※2 木村岳人さん。寺社や文化財・日本の原風景などの記事を書いている。かと思えば突然、飴の噛み心地をレビューする記事を書いたりもする。

https://dailyportalz.jp/writer/kijilist/173

※3 記事「重要文化的景観に見る日本各地の原風景」より。日記でやたら「原風景」とか書きたがっているのはこの記事より。

雪が積もってないシーズンの針江の景観が見れる。むしろこの記事の方が写真が見やすい。こんなエッセイよりもこっちを見た方がいい。

※4 京都駅から琵琶湖の西側を南北に走る電車。

※5 弁当をテイクアウトできる店。


琵琶湖に着いてそこから北西に歩いている時に、おそらくトンビと思われる大きな鳥が飛んでいるのが見えた。

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何だここは、まるで冬の日本海じゃないかと思った。雪が積もってて、海(琵琶湖)が開けていて、トンビの鳴き声が聞こえる。そこはもう冬の日本海だった。

歩いても歩いても琵琶湖に着かない、歩いても歩いても針江に着かない。雪が積もっているからどれだけ歩いても景色が変わらない、似たような場所を延々と歩き続けるだけ。あと寒いしお腹も減ったし、靴下はビチャビチャだし。かなり精神的に来ていた時にふとそう思った。

冬の日本海はどこかもの悲しさを感じさせるね。なんとなく、失恋した人が訪れるイメージもある。「寂寥」という言葉はこういう時に使われるのだろう。どうにもこの虚しさを文章で伝えるのは難しいが、なかなかにきつい旅でもあった。

どうせ来月も滋賀県北部は雪が積もっているだろうから、次は京都府南部を旅しよう。