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2024.12.31 加賀原付旅・前編~闇夜に朝ラーメン~
昨日、原付で石川の加賀地域 ※1 に旅に行ってきた。やっぱり日本名水百選を巡るために。夏の時と同じように朝4時に起きて4時半に出発した。前日に雨が降っていたから路面の凍結を心配していたが、最低気温が0℃止まりで氷点下にはならなかったから、凍ってないのを確認して原付に乗った。
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氷点下ではなかったものの充分寒くて、腹あたりに冷たさを感じながら走ってた。背筋を伸ばしてジャンパーと腹を密着させると冷たさが肌に直に伝わるから、ちょい猫背になって腹と服の間に空間を作り、そこに温もりを溜めておくと寒くないというコツを発見した。
下半身は別にどうでもよかった。これは俺の持論だが、脚なんかどれだけ冷えても風邪にはつながらないから。しかしそれでも限界はあるようで、高岡市辺りで寒さがピークに達した。
身の危険を感じて、とにかく次のコンビニでカロリー爆弾の菓子パンを買って食べようと考えた。朝食がカロリー不足だったのだろう。冷たい食パン2枚にバナナとヨーグルト、冷たいコーヒーじゃ体は温まらない。カロリーが足りない。
ただコンビニを見つける前に、ラーメン山岡家があった。ここだ!と思い、急いで駆け込んで朝ラーメンを注文した。冷たいパンよりも熱々のラーメンの方が助かる。トイレに入って鏡を見たら目が充血していて、こんなにも寒すぎたかと後から危険性を実感した。
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けれど朝ラーメンということもあってか、こんな時間にもかかわらず思ったよりもスルスルと入っていった。もっとハイカロリーなラーメンにした方がよかったかな、でも重いと原付の運転の揺れでリバースしちゃう? とりあえず卓上の豆板醤をスープに入れて、香辛料で体を温めた。
そのかいあってそこからは寒さもはねのけて旅を続行した。だんだん夜も明けてきてラブホ街を駆け抜けて、小矢部市に入ったら冬の朝の光景がキレイだった。雲の切れ間のタイミングと重なって空が高く、空気が澄んでいた。
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一方で朝の霧が濃く、山にかかっていたり道の先が見えなかったり、三井住友アウトレットパークが霧に覆われていたりした。観覧車がぼんやりとしていた。
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そこから山を越え石川県に入り、朝8時になった辺りで雨が降り始めた。畜生め、まただよ。夏の能登原付旅でも天気予報では雨は降らないはずだったのに。また雨に降られた。30分以上は雨に打たれていたかな、でも雨が止んだ時の朝焼けがキレイだったから歯を食いしばって許してやることにした。
金沢市を過ぎると「川北町」という町に入った。この町はおそらく、まーちゃんごめんねと、ともはるさんと、ピアノがデカすぎるアンジェラ・アキさんが有名なんだろうなとか思ってた。あんな狂気的なネタとは正反対の、のどかな風景だった。
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そこから山道に入り、細い道を原付でスイスイ走り、1つ目の名水「遣水観音霊水」※2 に着いた。山の中だから雪が溶けきってないんじゃないか、そしたら断念して引き返すしかないなと思っていたが、湧き水の周辺(駐車スペース)に残っていたくらいで、辿り着くことができた。
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看板によるとこの山の明かりが船にとっての目印になったそうで、海の民からも崇拝される山の水という珍しい名水だった。来たこともないのに遠くから崇拝されるというのは、相当助かってたんだろうね。
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山の上から流れている小川と山の高木がいい眺めだった。今まで見た名水の中でトップクラスの景色だった。冬だから水はキンキンに冷えてると思いきや、そうでもない。おそらく気温の方が低いんだろうな。ここに来るまでの寒さに比べりゃマシだと。
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そこからそう遠くない位置にあるのが2つ目の名水「桜生水」※3 という泉。桜というだけあって春に行ったらよかったかなと思いきや、名前の由来とされている桜は道路拡張工事で伐採されたらしい。心の中のエバース町田さんが「…都市開発か」と呟いた。
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また看板によると「ここに浮かんでた桃を食べた翁が不老不死になってしまい、家族がみんな亡くなって1人ぼっちになり、寂しさのあまり放浪生活を始め、今もどこかをさまよっているのかもしれない…」という伝承がある。水関係ないやんけ。
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山と田んぼの間にあり、こぢんまりとはしているが郷愁を感じさせる空間・空気感だった。住宅街の細道や山を走って最後の名水に向かう。何も無い道を走ると何を考え込むのか分からない。歩道や道路脇には雪が積もってて、夏の原付旅のように路肩にポイ捨てされたルックバック劇場特典版を発見して空想にふけることもなかった。
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そのうち、最近見始めたM-1準々決勝の芸人さんの中で、特に中毒性があるネタが頭の中で流れ始めた。マリーマリー、ビスケットブラザーズ、そして特にオダウエダのジョンレノンのネタ ※4 がループしていた。何だよ「ジョンレノンったらジョンレノン」って、バカバカしすぎやしませんか?
そしてたどり着いたのがラストの名水「弘法池の水」※5。山の集落の一角に窪みがあり、円い井戸と川が流れている。昔、弘法大使が杖を岩に突き刺したら水が湧き始めたという、北斗の拳のケンシロウみたいな伝承が残っている。
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窪みの一番中心に続く階段には雪が残ってて、少々危険ながらも近付いて覗き込んだ。足が滑った時は近くのおばあちゃんに心配された。
戻ろうとした時にふと賽銭箱が見えた。近隣住民がボランティアで維持してくれてるケースが多いため、ささやかながら少しは寄付するようにしている。
しかしその賽銭箱がなんか、まあ絶妙にお金を入れにくい位置にあるのだ。階段に雪が残ってたからというのもあるが、手すりも柵もない階段から腕を伸ばしてようやく届く。気持ち少しだけ遠い。足を滑らせたら川に足がチャプンの位置関係だ。
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金をせびるのならもうちょっと投入しやすい場所にいてくれんか? それが要求する側のせめてもの態度ちゃいまんの?と内心ボヤいてた。
※1 石川県南部の地域を「加賀地域」と呼ぶ。
※2 山の明かりは山岳信仰の修行のために灯されていた。海の民とは北前船の商人のことである。なかなか「海の民」って言い方しないけどね。
※3 ちなみに名前の由来となった桜は切り倒されたが、周囲にはまた別の桜の木が生えている。だからやっぱり春に訪ればよかったなぁ。
※4 M-1公式動画では権利関係のアレで一部カットされてるようですよ。
※5 釜清水地区のくぼみの岩穴の底から湧き出る清水で、その形状から「釜池」とも呼ばれている。弘法大使が親切なおばあさんに、お返しとして水を湧かせた。聞けば聞くほどケンシロウみたいな話だと思う。
写真を見返して時系列順に日記を書き、ページ数からだいたいの文量を推定し、前後編に分けてnoteを書く。そしたら名水を3か所めぐる原付旅で、前編で3つとも書いちゃうことになった。
だから後編はね、弱いですよ。体に起こった謎のトラブルとか、ずーっと変なことのたまってるとか、思い出にふけってるとか、そんなもんですよ。