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いち諸星ファンによるスペース☆ダンディ感想

あれは暗黒神話だ」というタレコミを得たTVアニメ、「スペース☆ダンディ」。見たいと思っていたのですが、先日Amazon prime video, dアニメストア等で配信が開始されたので視聴しました! 暗黒神話なら見るしかない。該当回・心に残った回をピックアップして感想を述べます。

この週末にニコ生一挙放送もある!

作品概要

スペース☆ダンディは、宇宙のダンディである。そして彼は、宇宙人ハンターである。見たこともない新しい宇宙人を発見して、新種の宇宙人と認められると報奨金がもらえるのだ。それは、早い者勝ちがルール。宇宙を旅して、誰よりも早く、誰も見たことのない宇宙人を見つけるのが使命。ダンディは、ポンコツロボのQT、途中で拾ったボンクラベテルギウス星人のミャウとともに、未知の星や異星人と出会う。宇宙の果てへの冒険。見たこともない宇宙人の発見。それが宇宙人ハンターの醍醐味なのだ!<Amazon prime video 作品概要欄より>
企画のテーマは「研ぎ澄まされた適当、磨き抜かれたいい加減」。プロデューサーの南雅彦、総監督の渡辺信一郎、脚本家の佐藤大・信本敬子、音楽(参加)の菅野よう子らは1998年放送の『カウボーイビバップ』を手がけたスタッフ。<Wikipediaより>

※ 妖怪ハンターが妖怪をハントしないことは有名ですが、宇宙人ハンターは宇宙人をハントしようとはしているという大きな差異があります。

単話完結なので好きな回だけ見ても全然問題ない、懐の広い作品です。

感想:第7話「宇宙レースはデンジャラスじゃんよ」

脚本:うえのきみこ 絵コンテ:谷口悟朗

レースの優勝賞金目指して~という筋ですね。いきなりですがこれが「暗黒神話回」です。といってもAパートはおろかBパートがだいぶ進んでも「ここからどうやって暗黒神話に…?」感しかなかった。やられました、終盤の暗黒神話展開をしたいがための約20分の茶番だったとは。「ちゃんと回収されるの…?」というドキドキ感を味わいたいかた、ぜひ見てください。気合の入った作画でのドタバタ展開、楽しい。
「THE END」で締められますがふつうに次回も放映されます。……主人公生存ENDだし、宇宙が滅びたわけでもないのにこの回は「THE END」なんですね。アートマンも大変だ…。

感想:第9話「植物だって生きてるじゃんよ」

脚本:渡辺信一郎 ストーリー原案・絵コンテ・演出:CHOI EUNYOUNG

植物にとらわれた星にいるという超レア宇宙人を捕まえるべく~という筋。
この回のメインスタッフは湯浅政明作品で力量を発揮したアニメーター。ここまでの回とは画面全体のトーンががらりと変わり、サイケあるいは幻想的な空間が魅力的です。諸星大二郎も好きと言っていた「ファンタスティック・プラネット」と似た雰囲気を感じました。表現主義的というか。
知性を獲得し移動もできる植物との交流が描かれます。ロングショットが多めで、植物の異様なシルエットや奇妙な建築物の外観内観がすごくかっこいい。音楽も牧歌的なような不穏なような、形容しがたい魅力があります。
ロードムービー的展開、ちっちゃいやつが懐いてくる、博士キャラが出てくる.……心惹かれる要素がモリモリです。
あと、雨に濡れた植物たちが歓喜するシーンがあります(17分ごろ~)。水だ! そうだツァだ!
ということで、ダオナン好きはこの回狙い撃ちで見るべし! イチ押し回です。「つづく」。

感想:第11話「お前をネバー思い出せないじゃんよ」

脚本:円城塔 絵コンテ:高橋敦史

星まるごと図書館という「大図書館惑星(ラガード星)」が舞台で「文字」「書物」「記憶」「時間」「宇宙を記述する方程式」などがキーワードです。テーマがいい!! 巨大図書館はロマン。この回も背景美術が特徴的で見入ります。
ED入って「あ~~これが円城塔回か!」と膝を打ちました。「文字渦」とかのセルフパロディ成分もあるのかも? 

SFファン・ボルヘス好きはきっと楽しめる一篇でした。なんならモロ☆にコミカライズしてほしい。「つづく」。

=ここからシーズン2=

感想:第15話「闇には闇の音色があるじゃんよ」

脚本: 信本敬子 絵コンテ: 池田成
田島昭宇参加回

美女(?)からの招待状につられてホイホイ乗り込んでいったらウクレレ抱えたやべー奴がいる回。
やべー奴はやべーよなーという……。カウボーイビバップの東風回(「道化師の鎮魂歌」)に通じるスリリングな回で好きです。全話中最もホラー度が高いと思う。佐藤健寿が取材に行きそうなアウトサイダーな建物が出てくるのでそこも注目です。
ハートフル方向にも救いのない方向にもオチを着けられる展開なので最後まで目が離せない。「つづく」。

感想:第21話「悲しみのない世界じゃんよ」

脚本:渡辺信一郎 絵コンテ・演出:名倉靖博

幻想的な風景のなか、生と死をめぐって繰り広げられる、少し物悲しくもどこか切ない物語。ユートピアがくる…。
予告から圧倒的な幻想テイストが伝わってきますが本編では輪をかけて描写に気合が入っています。狂言回し的なゲストキャラが蛇っぽいのも素晴らしい。象徴的なモチーフがふんだんに描かれるので見ごたえ抜群です。
作監3人体制で描写される繊細な作画が凄い。星崩壊シーンは圧巻。
ダンディが髪を下ろしているのが新鮮でいいですね・・・
諸星大二郎の「失楽園」のような悲しみが通奏低音な作品が好きな人は必見です。「悲しみも喜びもない世界のすばらしさ」が描かれる一篇なので、「感情のある風景」との類似点・相違点を吟味する楽しみ方もアリ。タイトルも似ている。
あと、メタ要素への言及があるので、スペース☆ダンディ全体の設定のネタバレ回でもあるのがうまい構成ですね。イチ押し回。「つづく」。

感想:第24話「次元の違う話じゃんよ」

脚本:円城塔 絵コンテ:高山文彦

この回はですね、諸星ファンとしての感想というより「三体III 死神永生」とのシンクロニシティの観点で衝撃を受けた回です。詳細は省略。「三体」既読の人は見て! 逆にスペダン勢だけど「三体」未読の人は読んで!

おわりに

スペース☆ダンディ、基調はSF要素・パロディありのドタバタなのですが、幻想方面までカバーしていてかなり楽しめました。諸星ネタを回収するつもりで見始めたのですが、つい2周見てしまいました。

SFと幻想は本質的に親和性が高いというのもありますよね。

神作画とかパロディの小ネタとか、そういったのを抜きにしてもクオリティの高い連作短編として非常に楽しめました! 未見のかたはぜひこの機会にご覧になってください。THE END。

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