バルカン半島旅行記⑤ カルスト地方への旅
普通の高校2年生が、あるとき、ユーゴスラビアに魅せられて、夏休みにバルカン半島を1ヶ月間旅した話。
ブレッド湖
7月26日。この日はスロベニアのハイライトの1つであるブレッド湖に向かうため、朝7時のバスに乗り込んだ。(このように朝しっかり起きられていたのは旅の前半だけだった…)
ブレッド湖は美しい氷河湖ということで、有名な避暑地になっている。
1時間半程バスに揺られ、湖に着いたのは8:30頃。
暑くなる前に湖の周りを歩いてみる。
歩いていて早速見つけたのが鴨の親子だ。
親鳥と6匹の雛が、並んでじっとしていたので写真を撮ると、向こうの方に並んで泳いで行ってしまった。
微笑ましい光景に癒やされた。
白鳥も優雅に泳いでいた。足を水につけて座りながらその様子を眺めていた。夏にも関わらずかなり冷たい。
のんびりしている間に陽が出てきてしまった。道を急ぐ。
ブレッド湖はどこで写真を撮っても絵になる。
ここらで湖を背景に洒落た写真を撮ることにした。
ここで役に立ったのが、友達にもらったスマホ用遠隔シャッターボタンだった。下の写真を見てほしい。実はこの時、右手でシャッターボタンを押していたのだ。 (一人で写真を撮っている姿は想像しないでほしい)
シャッターボタンはこのあと無くしてしまったため、使ったのはこの一度きりだったが、便利だったので、帰国したら買おうと思った。
またしばらく歩いていると賑やかな場所に出た。家族連れが湖水浴を楽しんでいたり、カヌーをのんびり漕いでいる人がいたり、湖畔で日光浴している人がいたり、皆思い思いの時間を過ごしているようだった。
山の上のブレッド城に登った。
湖を上から見ると、湖面が美しいターコイズブルーに染まっていた。遠くにはユリアンアルプスが見えた。
ブレッド城は、おとぎ話に出てきそうな可愛らしい城だ。日本語パンフレットを片手に城内を歩き回った。
城にのんびり1時間ほど滞在した後、バスでリュブリャナに戻った。
この日の午後は、ポストイナ鍾乳洞に行く予定だったが、洗濯物が溜まっていた為、宿で洗ってから出かけることにした。
シンクに水を貯めてもみ洗い。すぐに水が濁った。
1日着るだけでこんな汚れるのか…
普段から洗濯機を使っていたので知らなかった。
大発見だ。
洗った服は、適当な場所に干しておく。乾きさえすればいいのでハンガーは不要だ。
駅でのトラブル
駅でポストイナ行きの切符を購入した。掲示板でプラットホームをチェックすると、おかしなことに気づく。15:10のリエカ行き。種別は…バス!?
鉄道駅で買った切符である。駅員に尋ねてみると、そのバスに乗れとのこと。ただし肝心の乗り場はわからないらしい… 駅前のバス乗り場を探しても、例のバスは見つからない。6人ほどに尋ねて回ったが、やはり誰もわからない。
待機中のバスの運転手ならわかるかもと思い、尋ねてみると、「俺はスロベニア語とイタリア語しかわからない。あっち行け。シッシッ」と馬鹿にしたような態度で言われた。
こういう嫌な感じのおっさんは万国共通だ!
結局、バスの時間が過ぎてしまい、絶望でその場に座り込んだ。次の電車は15:45発のコペル行きだ。
ポストイナ鍾乳洞
リュブリャナからポストイナまで約1時間。
ボックス席で一緒になった陽気なおじさまのおかげであっという間に到着した。
このおじさまも、英語は話せなかったが、翻訳アプリを使って一生懸命会話しようとしてくるところに好感が持てた。
ポストイナ駅で降りたのは自分以外にいなかった。
駅は無人で、物寂しい。帰りの電車の時刻をチェックして駅から出た。
洞窟大国スロベニアで一番有名な鍾乳洞が、この町のはずれにあるはずだが、ぱっと見では寂れたただの田舎町だ。GoogleMapに従って、30分くらいで洞窟の入り口に着いた。
ポストイナ鍾乳洞に入るには、1時間ごとに開催されるツアーに申し込む必要がある。いろいろなトラブルに見舞われたが、なんとかこの日の最終回に参加できた。
ツアーの参加者は、オーディオガイド(日本語にも対応)を持ってトロッコに乗り込み、洞窟の深部まで移動する。その後、オーディオガイドの案内に従って洞窟内を1時間ほど散策する。
洞窟内は夏にもかかわらずひんやりしていた。上着も用意してきていたが、やはり寒い。
洞窟内には圧巻の景色が広がっていた。天井にぶら下がる鍾乳石は1cm成長するのに100年かかるという。洞窟は、気の遠くなるような時間をかけて現在の姿になったのだ。人間の儚さを感じた。
そんなポストイナ鍾乳洞には、とてもユニークな生き物が棲んでいる。プロテウス(ホライモリ)という、小型の両生類だ。
体長約20cm。蛇のように体をくねらせて泳ぐ。
目は退化しているが、その他の感覚器官は異常に発達している。
絶食に長期間耐えることができ、餌無しで10年間生存した例が存在する。寿命は最大100年。
凄い生き物だと思う。
昔の人々は想像力を働かせ、これを、洞窟の奥深くに棲むドラゴンの子供とした。
この日の夕食
洞窟から出ると、にわかに雨が降り出した。
急いで近くの建物に駆け込むと、そこは小さなファーストフードレストランだった。電車の時刻まで1時間程あったので、ここで夕食をとる。
オーナーの優しいお母さんが、笑顔で迎えてくれた。
アメリカンハンバーガーを注文したが、席に届くまでかなり時間がかかった。しかも想像していたよりデカイ。電車の時刻が迫っていたので、急いで食べる。味を楽しむ余裕は正直なかった。
駅まで必死に走ったので、なんとか電車に間に合った。疲れていたので、席に座ると、すぐに寝てしまった。
リュブリャナに戻ってきたのは夜の10時頃だった。
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帰国後、地理でカルスト地形について勉強した。
地形の特徴など、心当たりのあることばかりで興奮した。(カルスト地形という名前はスロベニアのこの地方からきているから当たり前か…)
ありがとう御座います