バルカン半島旅行記③ ドラゴンの棲む街
普通の高校2年生が、あるとき、ユーゴスラビアに魅せられて、夏休みにバルカン半島を1ヶ月間旅した話。
スロベニア到着
リュブリャナ空港は、規模としては日本の地方空港よりも小さかった。入国審査と荷物の受け取りを早々と終えて、外に出た。空港と市内を結ぶ路線バスがちょうど行ってしまったため、1時間ベンチに座って待つことにした。
本を読んでいると、煙草の匂いが漂ってきた。見ると隣のベンチに座っている人が煙草を吹かしていた。
周りを見渡しても、タバコを吸っていない人はほとんどいなかった。恐るべき喫煙率だ。ヨーロッパの中でもバルカン半島は特に喫煙率が高いと聞いていたが、想像以上だった。煙草は嫌いだが、我慢するしかない。
市内に向かうバスの車窓から風景を眺める。 広大なとうもろこし畑が広がっており、遠くには美しい山が見えた。のどかな風景だ。住宅街もきれいに整備されていた。 なんだか既視感があるな、と思ったらスイスの風景だった。スロベニアは「陽のあたるスイス」といったところか。 ↓
街歩き
バスを降りた後、そのまま駅に向かい、明々後日のクロアチア行きの電車の切符を購入した。
ホステルのチェックインの時間はまだまだ先だったが、とりあえず荷物だけ預かってもらい、街に繰り出した。
リュブリャナにはドラゴンが棲んでいる。市の紋章にも使われており、リュブリャナでは、ドラゴンにまつわる逸話が今も語り継がれているという。
ドラゴンに会うのは簡単だ。ホステルのすぐ近くに位置する「竜の橋」に行くと、小さなドラゴンが4匹佇んでいた。なかなか精巧に作られた銅像で、迫力がある。↓
リュブリャナは、小さくて、落ち着いた可愛らしい街だった。街歩きをしていると、一人旅の緊張と不安を忘れることができる。幸せな時間だった。(今でも戻りたいと思っている。)
アフリカの男
街歩きを終え、ホステルにチェックインしたが、まだ部屋には誰も居なかった。しばらくすると、ドアが開き、アフリカ系の男が部屋に入ってきた。
白人社会のスロベニアでマイノリティにあたるアジア人とアフリカ人はすぐに仲良くなった。
男の名はイライジャ(Elijah)といい、ハンガリーのブダペストに留学中のナイジェリア人らしかった。
少し休憩してから、この街に到着したばかりの彼と、もう一度街歩きに繰り出した。
時刻は17:00をまわっていたが、空は明るく、気温も高かった。暑い暑いと言いながら山の上のリュブリャナ城へ登っていった。
城の塔からの眺めが最高だったので、そこに連れて行こうとしたが、入場料金があると知ると、彼は拒んだ。どうやら節約しているらしい。お金を使わなくても、知らない街をぶらぶら歩いているだけで楽しめるということだった。
メインストリートは、元気な若者で溢れていたが、身長190センチを超える彼と歩けば怖いものなんてなにもない。虎の威を借る狐のような気分で歩いていった。
リュブリャナに限らず、ヨーロッパの街では路上で演奏している音楽家を見ることができる。立ち止まって聴いていると、イライジャが、音楽に合わせてゆっくり踊りだした。長い手足を活かした独特なダンス。 なかなかセンスがある。一緒に踊ろうと誘われたが、やめておいた。僕はあんなに上手にリズムに乗れない。
イライジャはいつまでも街を歩くつもりだったようだが、疲れていたのでホステルに戻った。楽しい1日だった。
どうやらお金を使わなくても楽しめるというのは本当だったらしい。
ありがとう御座います