バルカン半島旅行記④ トリエステ自由地域
普通の高校2年生が、あるとき、ユーゴスラビアに魅せられて、夏休みにバルカン半島を1ヶ月間旅した話。
トリエステの複雑な歴史
トリエステはイタリア北東部の国境近くの都市。その地理的な位置から、歴史的に様々な民族、国家の支配を受けてきた。
第1次世界大戦までは、長い間オーストリア=ハンガリーの重要都市として繁栄したが、「未回収のイタリア」回復運動を経てイタリアに併合される。
その後、ナチスドイツにより占領されたトリエステをチトー率いるユーゴ・パルチザン軍が開放し、その後の領有権問題が生まれた。
結局、第2次世界大戦後は、国連管理下の「トリエステ自由地域」となり、領土問題は棚上げにされ、冷戦の対立の中で、「鉄のカーテン」の最前線の地になった。
「バルト海のシュテッティンからアドリア海のトリエステまで、ヨーロッパ大陸を横切る鉄のカーテンが降ろされた。中部ヨーロッパ及び東ヨーロッパの歴史ある首都は、全てその向こうにある。」
— ウィンストン・チャーチル
イタリアへ日帰りの旅
リュブリャナが思っていたより小さな町で、時間が余ってしまったため、トリエステに行ってみることにした。イタリアとは言ってもバスで1時間半の日帰り圏内だ。
7時過ぎのバスに乗り、寝ている間に国境を超え、目覚めたらトリエステに到着していた。
(何も考えずに寝ていたが、寝過ごしていたらミラノまで行ってしまうところだった。危なかった。)
さて、トリエステに着いたは良いものの、下調べを全くしていなかったため、どこに行けばよいのか見当もつかなかった。とりあえず、適当に街を散策することにした。
イライジャからメールが届いていた。トリエステに行くなら誘ってほしかったとのことだった。昨日、明日の6時にはリュブリャナから移動すると言っていたので、てっきり午前6時のことかと思っていたら、午後のことだったのだ。(ごめんね…)
街を歩いていて感じたのが、街並みがイタリアらしくないことだった。(イタリアは初めてだったが…)
それもそのはず、トリエステの街並みは長くこの地を統治したオーストリアの影響を受けているからだ。
また、トリエステはカフェの街としても知られている。政治家や文化人も通ったと言われる老舗が多く、その雰囲気はやはりどことなくウィーン風である。(らしい。初心者には違いがわからない。)
あの有名なカフェ「illy」の本社が置かれているのもトリエステだ。
せっかくだから本場のカフェを堪能したかったのだが、日本のスタバでさえ一人で入るのに気が引けてしまうこの男が、イタリアのお洒落なカフェに一人で入っていけるはずがなかった。
人が集まる方向に歩いていくと大きな広場に出た。
「イタリア統一広場」と言うらしい。未回収のイタリアとしての歴史からしっくりくる名前だ。
海に面した広場としては世界最大。気持ちの良い海風が吹いていれば最高なのだが、この日は無風だった。
正面の建物が非常にかっこよく、滞在中何度もこの広場に戻ってきた。
さらに歩いていて面白いものを見つけた。
建物の窓にデカデカと
「WELCOME TO THE FREE TERRITORY OF TRIESTE」「USA & UK COME BACK !」
と張り出されている。今だにトリエステ自由地域の復活を望む声があるらしい。
スーパーマーケットのぶどうパンで腹を満たしたあと、高台にある要塞を目指した。ジリジリとした暑さが体力を削る。
途中見つけた公園のベンチで一休みしていると、日本の友達から電話がかかってきた。心配してくれているようで、ありがたかった。
高台にあるサン・ジェスト要塞からはトリエステの美しい景色を一望できた。オレンジで統一された屋根が青空に映える。
要塞の隣にはサン・ジェスト大聖堂がある。大聖堂の中は静かで、ひんやりしていた。
今までに見たことのない形の建物だったので、気になって調べると、どうやら2つの教会が合体してできた建物ということだった。歴史的価値も高いのだろうが、観光客はほとんどいなかった。
帰りのバスの時間は17:30だった。大聖堂から出た時点で、時刻は13:30……
その後4時間に渡って街を縦横無尽に散策した。
トリエステで見るべきものは他には無さそうだったが、異国の街を歩き回るだけでも、充分楽しめるものだ。
運河沿いに座ってボーッとしたり、ベンチに座って工事現場のおじさんの様子を観察したりもした。
最後のハプニング
17:30にはリュブリャナ行きのバスが来るはずだったが、結局1時間以上遅れてやってきた。親切なスロベニア人のおじいさんが行動を共にしてくれたので心強かった。
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旅行記を書くと、もう一度旅をした気分になれるから最高だ。時間はかなりかかるが、最後まで書きたい。
ありがとう御座います