谷さやん さん『谷さやん句集』感想
さやんさんは、元「船団の会」会員で、今はネット句会でご一緒させていただいている方です。
さやんさんの楽しくて明るい俳句が好きで、今回、朔出版さんから出されたこの句集にも素敵な俳句がたくさん載っていました。
その一部と感想を書いていきます。
【 空席と思えば帽子漱石忌 】
ほのかに感じる人の気配がいいですね。
時候や天文の季語を合わせてしまいそうですが、漱石忌とあることで、より空席に存在感が出ています。
【 牡丹雪へこたれそうな長電話 】
思わず苦笑してしまう句ですね。
牡丹雪という花の名前の付く春の季語から、相手はとても楽しそうにおしゃべりしていそうな気がします。
聞く方は頭に牡丹雪が落ちて来るごとく、強制的なうなづきをさせられているような。
早く切りたい、等ではなく「へこたれそう」であることに、この人はまだ辛抱して聞きつづけるんだろうな、と予想されます。
【 すみれすみれ今日は私が励まして 】
すみれという季語から支え合ってささやかに生きている感じがします。健気で可愛い句です。
【 ひらがながち三月の怪文書⠀】
ひらがながちなところに小学生のイタズラのような感じを受けます。三月という季語も明るくて、なんだか児童文学の世界のようです。
章ごとにタイトルが付いていて、またさらに細かくタイトルがあり、たくさんの作品群を楽しめます。
本体、カバー、帯、と被せていくとデザインが変わっていくような装丁もお洒落ですので、是非お手にとって見てください☆