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IR資料から読み解く《企業分析:第一生命株式会社》面接対策

第一生命株式会社の決算説明資料の要点をざっと就活生向けにレビューした内容になります。ホールディングスと株式会社の違いから始まり、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の確認、ホールディングス内の役割まで整理しています。もし自分が採用担当だったとしたら、という目線で訊かれたら嬉しいQ&A質問集も用意してみました。最後に箇条書きにしておきます。

■A-0 第一生命(株)と第一生命(HD)の関係

そもそも第一生命株式会社の経営権はどこにあるのでしょうか。結論から言うと、第一生命株式会社は 、第一生命ホールディングス株式会社(第一生命グループ)の傘下にある完全子会社です。

《ポイント》
第一生命株式会社は、第一生命ホールディングス株式会社の完全子会社

■A-1 そもそもホールディングスとは

ホールディングスとは、所有する複数の企業を管理する目的で設立したホールディングカンパニー(持株会社)を指します。年商30億円を超える複数の事業を展開している、経営の意思決定スピードを早める、金融機関との折衝をグループに集約してM&Aなどを進める、と言ったケースではホールディングス化に移行検討されます。傘下(さんか)の企業群の経営権を有するため、戦略や経営方針の立案を複数社を横断してスピーディに実行できるようになります。企業規模が大きくなると事業の多角化が進むため、おのずと企業のグループ形成、ホールディングス化が進行します。このような経緯で、第一生命グループは成長に伴い2016年4月に《第一生命株式会社 ⇒ 第一生命ホールディングス株式会社》に体制移行しています。

※略称 株式会社=(株)
※略称 ホールディングス=(HD)

■A-2 そもそも子会社とは

完全子会社(100%子会社)とは、ある株式会社の発行済株式の100%が他の株式会社に所有されている状態を指します。つまり第一生命(HD)は、第一生命株式会社の経営資源(人、モノ、金)すべてを所有し経営権を行使できる親会社です。すべて親会社であるホールディングスが保有している状態です。

■A-3 ホールディングスの経営戦略とは

第一生命株式会社は 、第一生命ホールディングス株式会社の傘下にある完全子会社となっています。そのため、ホールディングスの経営戦略を把握することは、傘下のグループ企業それぞれの経営戦略を理解する上で重要であり、ホールディングスと子会社の経営戦略はセットで行うべきです。決算資料スライド(決算・経営説明会資料(2,618KB)PDF)から、ホールディングス(親)の経営戦略を確認できます。

Q:第一生命(HD)の経営戦略とは?
A:第一生命(株)を中心としたCXデザイン戦略を掲げている。
Q:第一生命(株)の経営戦略とは?
A:ホールディングスの経営戦略に倣う。
Q:HDの掲げるCXデザイン戦略とは?
A:国内生命保険事業では、顕在化する社会課題に対し、4つの体験価値(保障、資産形成・承継、健康・医療、つながり・絆)をお届けしていきますが、これらの体験価値をお客さまに日常的に体験いただき、お客さまの期待を超える体験・感動をお届けすることで、当社グループのファンを増やし、持続的な成長につなげていくことがCXデザイン戦略の目指す姿です。

以下決算資料のスライド引用
https://www.dai-ichi-life-hd.com/investor/library/kessan/2021/pdf/2021_statement.pdf

■B-0 MVV(ミッション ビジョン バリュー)の確認

MVVとは、ミッション、ビジョン、バリューの略称です。すべての株式会社には必ずMVVが存在すると考えて良いです。親会社のMVV(B-1)と子会社のMVV(B-2)はセットで必ず確認しましょう。子の理念は、親の理念の影響を強く受けます。

■B-1 第一生命HDのMVV(親)

Mission:一生涯のパートナー
お客さま本位(お客さま第一)を経営の基本理念に据え、生命保険の提供を中心に、地域社会への貢献に努めてきました。これからも、お客さまとお客さまの大切な人々の“一生涯のパートナー”として、グループ各社が、それぞれの地域で、人々の安心で豊かな暮らしと地域社会の発展に貢献していきます。
Vision:すべての人々の幸せを守り、高める。

Values:私たちの大切にする価値観
お客さま満足、コミュニケーション、コンプライアンス、人権尊重、環境保護、社会貢献、健康増進、持続的な企業価値の創造(8項目)

https://www.dai-ichi-life-hd.com/about/aims/mission.html

■B-2 第一生命(株)のMVV(子)

Mission:「一生涯のパートナー」お客さま第一主義
お客さまとお客さまの大切な人々の“一生涯のパートナー”として、グループ各社とともに、それぞれの地域で、人々の安心で豊かな暮らしと地域社会の発展に貢献していきます。
Vision:安心の先にある幸せへ。
笑顔、夢、希望があふれる毎日と未来のために、私たちは生命保険の枠を超えて、一人ひとりの「クオリティ オブ ライフ(QOL)」向上に貢献していきます。

https://www.dai-ichi-life.co.jp/company/info/mission.html

■B-3 まとめ

Missionに関しては、親である第一生命ホールディングスと全く同じ。Visionに関してはホールディングス側は「すべての人々の幸せを守り、高める。」と抽象的だったものが、第一生命株式会社側では「安心の先にある幸せへ」となり若干の変更が加えられています。ホールディングスは「高める」まで明記しているのに対して、第一生命(株)は、お客様の「幸せ」を強く意識する表現になっています。現状のホールディングスのMVVは、第一生命(株)に強く影響していることが理解できました。

《ポイント》
第一生命(株)のMVV ≒ ホールディングスのMVV

■C-0 ホールディングス傘下の企業群

ホールディングス(持株会社)の場合、傘下の企業を中心に資本関係をざっくり整理した上で、グループ内にどのような企業があり、どのように連携してサービスを提供しているのか、グループ全体でどのような事業を行っているのか、全体像含めて把握するとよいでしょう。ビジネスモデルの理解を深めるためにざっと抑えておきたいところです。

■C-1 第一生命(HD)のグループ企業一覧

第一生命ホールディングスのグループ会社が1枚の画像に整理されていました(16社の名前を確認できる)この画像は、あくまで日本国内のグループ企業を抜粋したものです。国外では、「北米」「ヨーロッパ」「アジアパシフィック」まで市場を広げています。グローバル企業と言えるでしょう。

https://www.dai-ichi-life-hd.com/about/info/group_list/domestic.html

Q:第一生命株式会社(子会社)の更に子会社(孫会社)は存在するの?
A:赤枠のグループ最大手の第一生命(株)の傘下にも多数の子会社が存在しています。「親会社の子会社の子会社」なので孫会社と呼びます。以下3世代の構図になります。

(親)第一生命ホールディングス
 ⇒(子)第一生命株式会社
  ⇒(孫)第一生命ビジネスサービス株式会社

■C-2 第一生命(HD)の孫会社を確認する

第一生命ホールディングスの孫会社(第一生命株式会社の子会社)を一部抜粋してみました。
https://www.dai-ichi-life.co.jp/company/info/group.html

・第一生命ビジネスサービス株式会社
 ⇒当社印刷業務・保管発送業務の代行
・第一生命情報システム株式会社
 ⇒コンピュータシステム開発・ソフトウェア開発
・株式会社アルファコンサルティング
 ⇒生命保険、損害保険代理店業務等
・第一生命チャレンジド株式会社
 ⇒名刺印刷業務・清掃業務・書類発送業務

■C-3 まとめ

第一生命(HD)からみた子会社と孫会社を整理すると以下のようになります。今回スコープする企業、第一生命株式会社(★)は、上にも下にも関係する企業が多数存在しているため「第一生命(HD)傘下の大黒柱的な企業である」と推測できます。

親 ■第一生命ホールディングス
子 ⇒
第一フロンティア生命
子 ⇒■ネオファースト生命
子 ⇒■アセットマネジメントOne
子 ⇒■第一生命経済研究所
子 ⇒■第一生命株式会社(★)
孫  ⇒■第一生命ビジネスサービス株式会社
孫  ⇒■第一生命情報システム株式会社
孫  ⇒■株式会社アルファコンサルティング
孫  ⇒■第一生命チャレンジド株式会社

■D-0 第一生命株式会社のIR資料はどこ?

非上場企業の場合は、決算説明資料(カラフルで見やすいスライド)は用意されていません。白黒の数字だけの難しい財務諸表のみになります(新規に株主を募集する必要がないため、視認性の高い資料を作成&開示する必要も義務もありません)一方で、親会社の第一生命(HD)は上場しているため、そちらで第一生命(株)の決算情報が丁寧に開示されています。

■(非上場企業)第一生命株式会社 
 ⇒IR資料の情報量が少ない(公表されていない)
■(上場企業)第一生命ホールディングス
 ⇒IR資料の情報量が豊富にある

■D-1 手早く5分でIRの要点を押さえるコツ

カラフルな図示によるパワーポイントのPDF版の決算説明資料を探しましょう。感覚が掴めるまでは、IR資料室の資料を総当りすることになります。今回は、以下2点だけ見ておけば良いでしょう。

2つの資料に注目する

逆に「決算電話会議の資料」「決算・経営説明会」以外は見なくて良いです。この2点に関しても、ちゃんと見るべきスライドは、たった2~3ページだけだったりします。(売上、営利、戦略、MVVの4点に絞れば10分で見つける速度感を意識すると良いかも)
【IR資料室>決算関連情報】
https://www.dai-ichi-life-hd.com/investor/library/index.html

■見るべき資料2点
①決算電話会議の資料(年4回、赤枠)

⇒最新の売上、営利(粗利)の2点を確認すれば十分
②決算・経営説明会(年2回 グリーン枠)
⇒戦略やMVVの2点を5分で確認すれば十分

■見なくて良い資料5点
①決算短信
②有価証券報告書等
③内部統制報告書
④過去財務データ
⑤子会社の決算資料
⑥統合報告書(アニュアルレポート)

■D-2 四半期決算、中間決算、本決算って何?

会社によって期首が異なるため、Q1が1月~3月の企業もあれば(主にアメリカの上場企業に多い)Q1が4月~6月となる企業もあります(主に日本企業が多い)第一生命株式会社の期首は4月なので、クウォーターは以下の期間を指します。

第1四半期(Q1)=4月~6月(3ヶ月)
第2四半期(Q2)=7月~9月(3ヶ月)
第3四半期(Q3)=10月~12月(3ヶ月)
第4四半期(Q4)=1月~3月(3ヶ月)

中間決算=Q2のタイミングで同時に発表(6ヶ月=Q1+Q2)
本決算=Q4のタイミングで同時に発表(12ヶ月=Q1+Q2+Q3+Q4)

第一生命ホールディングスの場合は以下の通り。直近の四半期資料(★)と、直近の通期決算(本決算)(☆)の2点だけ確認する。本決算は最新の経営戦略を把握する目的で見る。古いものは基本的には目を通す価値は低い。

■2022年3月期(第3四半期(Q3))
=(期間:2021年10~12月)を指す

■2022年3月期(第4四半期(Q4))☆本決算
=(期間:2022年1~3月)を指す

■2023年3月期(第1四半期(Q1))
=(期間:2022年4~6月)を指す

■2023年3月期(第2四半期(Q2))★中間決算
=(期間:2022年7~9月)を指す

■E-0 第一生命(株)のグループ内の役割

第一生命株式会社とはどのような役割を担っているかを把握する上での押さえるべきポイント3点は以下の通り。

・ホールディングス全体の何%を占めている?
・企業単独としては成長しているのか?
・企業の将来はどこを目指している?

以下3点を意識しながらIR資料のパワポスライドを斜め読みで目を通すとよい。一方で、上記3点に関係のない大半のスライドは見なくてもよくて、特に問題ありません。

■E-1 ホールディングス全体の何%利益占めてる?

①グループ全体の利益を赤枠右下にマークした。1,279億円。
②第一生命株式会社の割合を赤枠左にマークした。1382億円。

第一生命ホールディングスは、第一生命株式会社に100%依存している状態です。グループ内のほか企業の赤字事業を埋め合わせるほどの収益基盤と言えるでしょう。ただ、昨年の同期間1,840億円⇒1382億円(下段⇒上段の数値)から分かる通り、利益が低下しているため、将来の業績は先細りしていく可能性があります。海外事業の成長を図りつつ、国内でも新しい商品開発を積極的に進めていく必要があります。

③国内と海外の進捗を青枠でマーク。
国内+31億円、海外 -242億円。

海外事業は今のところ計画通り順調に伸びているとは言えない状況がわかります。

■E-2 第一生命株式会社の単独の成長性

④第一生命株式会社の新規獲得を赤枠でマークした。DL=第一生命株式会社は直近の3ヶ月の結果だけ見ると新規契約保険料がマイナス252億円。昨対で「(△)マーク=マイナス成長」の意味。去年と比べて落ち込んでいる、厳しい状況のようです。

■E-4 まとめ:グループ内役割と企業成長性

第一生命(株)の新規契約の成長はしているとはいえません。むしろ減少傾向にあります。第一生命(株)のもつ保険商品は需要が飽和しているため、ホールディングス内グループ企業の保険商品などクロスセルを行っていく必要があります。グループ内の企業へ顧客を融通することでグループ全体の売上のトップラインを伸ばしていく戦略に切り替えていく過渡期にあるのかもしれません。資産形成を兼ねた第一生命フロンティア生命(DFL)の商品の方が成長性が高く、DL⇒DFLに新規契約獲得の主戦場がシフトしているのが決算書資料から読み取れます。

《決算スライド上の略称》
DL=第一生命(株)
DFL=第一生命フロンティア生命(株)
NFL=ネオファースト生命(株)

23年3月期 2Q(直近3ヶ月の業績)結果
DL=252億円(ー35.3%)
DFL=946億円(+44.0%)
NFL=58億円(+33.9%)

■《appendix1》面接時のQ&A例

Q:入社後に活躍する人材の傾向はありますか?(短期活躍人材の特徴)(以下参考スライド1参照)一人あたりの営業収益で掲げている耐コロナ前+20%の個人目標をいち早く達成して貴社に貢献するために、最短ルートで結果を出すためのポイントはありますか?また、貴社内にて短期で結果を出す人材の特徴を教えてください。

Q:入社後に活躍する人材の傾向はありますか?(長期活躍人材の特徴1)■中長期で活躍する優秀社員のロールモデルを教えてください。変化の早い時代に、あえて変化すべきではないことはありますか?(例:顧客理解など)

Q:キャリアアップについて(長期活躍人材の特徴2)■例えば、直近の企業買収(TOB)計画以降も株式公開買付(TOB)などのM&Aが進むと事業の多角化が進む(以下参考スライド2参照)と求められる役割も変わっていくはず。そこで、変化の早い時代に取り残されないために、様々なジョブロール(職種役割)を経験することでより付加価値の高く貴社貢献する人材を目指したいのですが、営業職から他のジョブにチェンジする配置転換制度はありますか?(人材育成制度はありますか?)

Q:キャリアアップについて(グループ内の人材流動性)■第一生命グループは多種多様なビジネスアセット(グループ内の企業をはじめとした人・モノ・金・3つの経営資源)を持っている。そこで例えば入社3年目で、資産運用事業に興味が出てきた場合、第一生命株式会社から、グループ傘下のアセットマネジメントOne株式会社に移動する。などグループ間の人事異動の仕組みや制度はありますか?

Q:HD内の貢献できる社員になるために ■第一生命(株)にとどまらず、第一生命(HD)全体で良い影響を与えるために期待される成長はありますか?顧客に対する提供価値というよりは、グループ内での存在価値として重点を置くべきことはありますか?顧客への提供価値、社内への提供価値は何でしょうか?(社内向けのインナーコミュニケーション面で意識すべきことはありますか?)

Q:生涯設計デザイナーの高能率層(利益貢献が高い社員率の低下)■生涯設計デザイナー(つまり営業職)に求められるスキルは年々高まっている(はず)ただ、決算上のスライド見る限りスキル面で低迷している様子が伺える。(以下参考スライド3参照 赤枠内にて高能率層23.2%⇒22.5%に低下している)この要因は何でしょうか?(離職率、新人メンバーが増えた、ベテラン社員が減ったなど内部の状況はどうでしょうか)

Q:過去、現在、未来、企業成長フェーズと社員に求められる意識の変化 ■お客様との向き合い方は企業フェーズの変化、市場環境の変化、によってどんどん変わっていくはず、コ○ナ前と比べて、内部の社員の働き方や求められる職能にどのような変化がありましたか?(ふわっとした質問すぎるかも・・・)【質問前提(仮説メモ):第一生命(株)は、過去(拡大局面)では売上貢献度が高いグループ内の成長ドライバーとして機能していた(はず)。現在は生涯設計デザイナーを担い、グループ内でのシナジーに重点が置かれている(はず)】

■参考スライド1 2022年3月期 決算・経営説明会スライド

■参考スライド2 アイペットHD買収計画スライド

https://www.dai-ichi-life-hd.com/investor/library/kessan/2022/pdf/2022_half_phone.pdf

■参考スライド3 生涯設計デザイナーの高能率層の低下(赤枠)

■《appendix2》第一生命HDは外資系?

Q:上記スライドから第一生命ホールディングスはどういう企業?
A:「外資系企業」とはその名の通り外国の投資家や法人が投資した「外国資本によって成り立っている企業」です。 この資本が一定比率以上である企業を外資企業と呼び、第一生命ホールディングスは45%が外国法人の資本が入っているためいわゆる「外資系企業」と言える。

■《appendix3》競合分析を行うと相対評価が可能になる

例えば競合である日本生命のIR資料室から、以下の情報を整理することで、第一生命と比較しての相対的な強みや戦略の違い、を把握できる(「志望動機」の明確化に役立てることができる)

・日本生命のMVVは?
・日本生命の経営戦略は?
・日本生命の事業内容は?(収益柱の事業は)
・日本生命の売上は?(売上、営利の2点セット)
・日本生命の成長性は?(将来の成長性)

【参考URL】決算スライド ダウンロード
https://www.nissay.co.jp/kaisha/annai/gyoseki/kessan.html

【参考URL】2022.11.25  2022年度上半期 業績の概要[896KB]
https://www.nissay.co.jp/kaisha/annai/gyoseki/pdf/kessan202211/gaiyo.pdf


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