詐欺、それは突然に。
[振込確定]をクリックする瞬間の、最後のシーンが脳内にエンドレスリピートされて眠れない。結末を知っているのに「そっちにいっちゃだめぇぇ」とスクリーンの中の主人公に語りかけるみたいな感じで、修正できない過去を食い止めようとする脳みそ。日中も普通にニコニコ顔をしているが、誰もわたしが、"つい数日前に250万円を奪われた人間"だということを知らないと思うと不思議。どんな時でも陽は昇り、世界は回るってほんとだよな。
だから生きなければいけないのよ。人生は止まらない。事故でもない限りまだわりと寿命もありそう。めそめそしているヒマはまじでない。生活って容赦ない。仕事あるし、おなか減るし、家賃もあるし、休めません。詐欺にあった次の日、朝4時起きで出張に向かったよね。
2025年1月某日未明、わたしは特殊詐欺にあった。警察を名乗るなんちゃらからの電話というやつ。ニュースで流れすぎて耳タコだよね。高齢者でもなんでもない、現役ゴリゴリ39歳のまんまとすってんコロリン。
わたしが振り込んだのは250万円。ひょー。打ってて信じられん。
丁寧に指示通りに、100万円をUFJから、150万円を楽天銀行から入金した。
30代最後の年。実は今年は仕事をすこし抑えめにして、次のステージにつながる活動をしようと企んでた。自費出版の本を絶対つくろうと思ってた(職業はフリーのライター)。歯の矯正もしたかった。悪魔は知ってたのかしら。そんなわたしのキラキラした夢を。電話一本、クリック一つで人生は急旋回。なにが起きたかわからないくらい、速・攻。なにもなくなった。
これを書いているのは詐欺から5日目の夜。
なぜか。この失敗をでっかい花丸にするためだ。
絶対絶対絶対に、下記のようになってはいけないのだよ。
「なんであの時気づかなかったんだろう」
「なんで私だけがこんな目に遭うのか!」
「呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪」
「警察はなんで助けてくれないんだ」
「ファック犯人」
「わたしはなんて不幸なんだろうかぁ!」
まじでダメ。時間がもったいない。しんどい。どこにも救いなし。
いやもちろん一度は思った。ぼこぼこに凹んだ。でも一度だけにした。(なんで気づかなかったんだろうは正直何回か思う)。250万円。すごい金額。
でもでも、大金はなくなったけど、私はなくなってない。
性格もスキルも姿形も、250万円を持っている私と、持っていない私と何も変わってないじゃない。
だから、お金を取り戻せばいいのよね。250万円を取り戻す。
犯人からはムリっぽいけど、稼ぐ。稼げばいい!稼ぐのである!
かくして250万円をこの手に取り戻す闘いが始まった。
ーつづくー