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【学童】まるで物語のような④ルルカの話
以前、とある放課後児童クラブ(以下、学童)で出会ったルルカ(仮名)の話を書いてみる。
(個人の特定を避けるため、事実を元に大幅にフィクション化してます。)
小学3年生女子、ルルカ。少し変わり者である。
あまり友達と群れて遊ばない。自分がやると決めた事は、一心不乱にやる。でも、基本的に何も執着がない。大人には誰にでも気兼ねなく話しかける。けれども、大人の扱いがとても上手だ。
その学童の運営に携わる方で、少々面倒な方がいた。子どもたちに「義理と人情について」を延々と語るような方だ。私はその方と話すのがすごく苦手だった。あまり興味のない話を、勤務中なのに、私の横でずっと喋ってるので、どうしても好きにはなれなかった。ルルカはそんな年配の男性の方の話も、するりとかわす。深くのめり込みすぎず、かといって無下にもせず、気がつけば会話はルルカのペースになっている。正直、そんなルルカに助けられたこともあった。
ルルカの特に面白いところは、独特の感性だ。
ある日、ルルカがお絵描きをしていた。わたあめみたいな雲みたいなもくもくした丸っこいものに、かわいい目と口を描いて、上のほうにリボンもつけて、手と足を描いて、オリジナルのキャラクターをたくさん描いていた。
私は、ルルカに「その絵可愛いね。何書いてるの?」と聞いたら「あのね、これがりぃちゃん、これはみぃちゃん、こっちがちぃちゃんっていう名前なの!」と返事をしてくれた。可愛らしい。
「へぇー!名前もついてるんだね!この子たちは、、、雲の妖精とか?」と続けて私が聞くと、「ううん違う。この子たちはハナクソなの!あはははは!!」
ハナクソ、、、!?
私は鼻くそキャラクターにしようと思ったことがない。鼻くそを可愛く描こうなんて想像もしない。きっとマジョリティーの考え方じゃないはずだ。そんなルルカの感性が本当に面白い。
また、別の日。ルルカが宿題をしていて、私がそれに付き添っていた。「ここ教えて〜」と言われたり、集中してるかと思いきや、いきなり仰向けに寝そべって「もう宿題やりたくなーい」と言ったり、いつもの自由なルルカだった。「どうする?宿題やめる?」というと、「ん〜〜〜、、、やる。」と言ってまた起き上がり、黙々と宿題に取り掛かる。
しばらく沈黙が続き、ふとルルカが
「ねぇ。赤と青って似てるよね?」
と言い出した。
赤と青に関する宿題はしていない。一体どこからそんな想像が湧いてくるのか。本当にルルカは不思議だ。
それにしても、赤と青が似てるってどういう意味だろうか。水色と青とか、紫と赤とか、それならわかるけれど、どういうことだろう、、、、(ちなみに、こういう時に「赤と青って全然似てなくない?」「どういうこと?」なんてこちらが返してはいけない、と私は思う。小学生の子どもともなると、その子本人に「間違ったことを言った」と思わせてしまったら、その子はすぐに「なんでもない」とはぐらかしてしまうのだ。私は赤と青の話が気になったので、受け入れることに徹する。)私が少し考えているとルルカが慌ててつけ足す。
「あ、似てるっていうか、仲間みたいな。」
あ。わかったかも。「対(つい)」になってるって意味だ。運動会の赤組と青組とか、女子トイレと男子トイレの赤と青とか、ルビーとサファイアとか。そういうことか。
「あぁ〜確かに!仲間みたいだね。」と私を返した。
するとルルカは
「だからね、私が仲良しの友達と遊んでいる時、きっと赤と青のことを思い出すと思うの。」
と、言った。
ルルカはそう言うと、その話をぱったりやめ、また宿題に取り組んだ。
私はとんでもなく素晴らしい感性だと思った。なんて哲学的なんだろう。なんて素敵なんだろう。私はこの言葉を大事にしようと思った。
ルルカは今どうしているだろうか。
今もなお、この感性を持ち続けていて、どこかで元気にしてくれていたら、嬉しいなと思う。