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【家庭教師】中学生の生徒さん

家庭教師をしていたことがある。その時の話を1つ。

私は主に数学を教えていた。時にはその他の教科も教える。

私がモットーにしていたこと。
「わからないことを質問しやすい雰囲気を作ること」

これまで30人の生徒さんと関わってきたが、特に中学生の生徒さんは、思春期真っ只中。人からどう見られているかを、すごく気にする子が多いように見受けられた。
返却されたテストの見直しをしようと、生徒さんに答案用紙を出してもらうと、大概、点数が書かれている部分を、これでもかと折り曲げて、点数が見えないようにしている。あるいはその形跡がある。

友達に点数を見られるのが嫌なんだな、と思う。と同時に、その点数に向き合いたくない本人がいるんだな、とも思う。本人なりのプライドがある。

生徒さん本人のプライドは大事にしたい。本人が感じたことや思ったことから形成されたプライドだから。

ただこのプライドは時に、厄介な壁となる。例えば、わからないことを聞けない、とか。

わからないことを質問してくれると、私も答えられるし、私は、「わからないんです。教えて!」と本人の口から聞きたい。本人が言うことは大事だと思う。能動的な学びに繋がるから。

ではどうやって言わせるか。
まずは本人と仲良くなることが非常に重要だと思う。厳密に言えば、本人への「興味を示し、共感すること」である。
本人が好きな話題を引き出して聞く。「このアニメが好き!」と言われれば、まずは私がそのアニメを見る。私がそのアニメの感想を言う。感想を言うと、何かしらの反応が返ってくる。「私もそのシーン好きなんです!」「先生ってあのキャラ好きなの?私は違うキャラが好きだなぁ」とか。そしてどんどん会話を掘り下げ、盛り上がる。家庭教師を始めたばかりの場合、多くを勉強以外の話に費やす。無駄に見えるかもしれない。しかし逆なのだ。私が「生徒さんに寄り添う姿勢」を見せることで、生徒さんからの信頼を得られる。距離が縮まる。そうすると、生徒さんはわからないことを「わからない」と、言える。

「わかんない、教えて!」と言われれば、喜んで教える。だって私は教えにきているんだもの。ようやく仕事ができるわけだ。そして喜んで教えていることも、生徒さんに伝える。「いいよ〜どんどん聞いて!」と、言葉でも伝えるし、態度や表情にも出す。

そして、質問できるような信頼を得られたら、もう1つ、私はこだわっていることがある。「同じ質問を何度聞かれても教える」こと。
1回じゃわからないことってあるじゃん。それを「こないだも教えたよ」とか「ノート見返してみて」と突き放さない。絶対に。生徒さんが恐る恐る「すみません、前に聞いたこの問題、もう1回教えてくれますか?」と聞いたきたら私は必ず「いいよ。何回でも聞いて」と伝える。

1回で分かった気にならずにいることって、素晴らしいと思う。そして、わからない問題をわからないままにしない姿勢も素晴らしいと思う。何度も分からないってことは、何度もその問題に挑んでいるってこと。それもまた素晴らしい。だからこそ、「何回でも教えるよ」と伝える。そして何回も聞かれることで、私の教える技術も洗練されていくから、私としてもありがたいわけだ。win-winってやつ👍

ある時出会ったとある生徒さんは、この「わからない」がずっと言えなかった。プライドが高く、やたらと難しい問題ばかりを質問してきた。時々私の教え方を小馬鹿にしてきた。でも、その子の習い事や友人関係の話を聞いていくうちに、徐々に徐々に打ち解けていき、2ヶ月後やっと、本当に分からなかったことを「分からない」と言えるようになった。確かに、プライドが高かったら言えないだろうなと思うような、基礎的な部分につまずいていたことが、ここでやっと分かった。「分からない」と言えた生徒さんの表情はすごく恥ずかしそうだったが、とっても柔らかかった。私はいつも通り「いいよ〜教えるよ〜」と言って教えた。(その生徒さんは基礎がわかると一気に応用までわかるようになった。難しい問題を聞くだけのことはある。もともと勉強が苦手なわけじゃない。ただただ聞くのが恥ずかしかっただけだった。)

私はそれが当たり前だと思っていたが、どうやら世の中にはいろんな家庭教師がいて「こんなことも分からないの!?」「なんでこんな簡単な問題も解けないの!?」「これは前に教えたでしょ!?」と生徒さんに対して言っちゃう家庭教師もいるらしい。

「こんな簡単なことを質問するのは恥ずかしいな」「前に聞いたことをもう一回聞いたら怒られるかな?」そんな気持ちを抱えた生徒さんがいっぱいいる。だから、学校の先生じゃなくて、塾の講師でもなくて、家庭教師である私に聞いてくれてる、ってことも大いにある。そんな生徒の気持ち、大事にできている家庭教師が、増えるといいなと思う。

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