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コロナ禍でも通訳案内士を目指したい方へ

通訳案内士関連記事へのアクセスが急に増えているなあと思ったら、JNTROのウェブサイトに2021年度の全国通訳案内士試験の案内がちろりと出たのですね。
(*個人ブログにアップした内容と同じです)

【お知らせ】2021.5.19付
2021年度の全国通訳案内士試験は、筆記試験を2021年9月26日(日)、口述試験を2021年12月12日(日)の日程で実施する方向で準備、調整中です。 但し、緊急事態宣言等の方針および新型コロナウィルス感染症を巡る状況の変化に伴い、延期・中止等となる可能性もあり、スケジュール等に変更が生じる場合があることをご了承下さい。
(JNTROウェブサイトより引用)

仕方ないのかもしれないけど、こんな中途半端な告知だと、試験準備中の方はもやもやしちゃうだろうなと…涙。そんな方に向けてなにかお伝えできることはないかなと思い、今回の記事を書くことにしました。

わたしは2015年春に通訳案内士の仕事を始め、ほぼロングツアーのスルーガイド専門としてつづけてきました。お付き合いのある旅行会社はすこしずつ変わっていき、いまは日本最大手の1社と、アメリカの旅行会社2社に落ち着いています。仕事を始めた当時は息子が保育園児だったので、夫と両親のサポートを得つつも仕事量はセーブしていて、年間稼働日数は最大でも100日間ちょっとでした。

コロナ禍前に最後に仕事をしたのは、2019年10月。臨時で受けたツアーで、アメリカからのお客さん30人ちょっとと10日かけて東京〜広島を周りました。最終日は台風直撃で、全員のフライトキャンセルがわかっていたにも関わらず、代替便へのわずかな希望にすがって暴風雨の中関空に向かい、結果やっぱりだめで、お客さんたち引き連れて京都のホテルに戻りました(すでに道路は封鎖されておりバスは使えず、止まる寸前だった特急列車はるかにぎりぎり乗り込んで)。わたしもソウルに戻るフライトがキャンセルになり、一緒にお祝いするはずだった息子の10歳の誕生日当日に間に合わなくてがっかりしたのも覚えています。
(2019年5月にソウルに引っ越したのですが、仕事量を減らして日韓行き来しつつ、日本のツアーの仕事はつづけていく予定でした)

2020年も4本のツアーのアサインがあったけれど、当然すべてキャンセル(もちろん2021年も)。2022年はいまのところ3本アサインが入っています。

コロナ禍でこれ以上ないくらい明らかになったように、通訳案内士の仕事は不安定です。インバウンド業界自体がそうなのだけど、それまで順調でも、外的要因で、ある日突然状況がガラリと変わってしまう。わたしがデビューした2015年から2019年まではインバウンド業界が急成長し、どんどん仕事も増えていました。先輩方からたった数年前までは全然仕事がなかったこと、それでも伸びつつあったのに2011年の震災後にすべて吹っ飛んだことは聞いていたものの、どこかピンときていなかった。そうしたら、コロナ禍がやってきました。

通訳案内士の仕事が完全に0の状態が1年以上になるいま、みんな、どうしているんだろうと時折考えます。親しい同業者とはたまに連絡をとるのだけど、通訳や翻訳、英語講師など言語に関わる仕事をしたり、観光庁主催の研修講師をしたり、コロナ関連の仕事をしたり、あるいは派遣などでまったく別の仕事をしたり、という話を聞きます。年齢層が高い業界でもあるので、仕事は一時的にストップしてこの機に日本の伝統芸能や歴史などを学び直している方たちも。同業者だけではなく、ツアーのたびに寄っていた観光施設やレストラン、ホテルのスタッフの方たちのことも、たまに頭に浮かびます。みんな元気でいてくれて、またいつか一緒に働けたらと、心から思う。

と、ちょっとしんみりしてしまったけれど、ここからは明るいお話を。

今年に入ってアメリカの旅行会社2社からの連絡が急に活発になりました。というのも、ワクチン接種が進むアメリカでは旅行熱が急速に高まっているようで、この夏には早くもヨーロッパへのツアーが再開されるかもしれないとのこと。お世話になってる本社担当者から「ずっと休職してたけど、戻ってきたよ〜。来年に向けて準備に追われてるよ!」なんて連絡がきて、びっくりしつつもとても嬉しく心強く感じました。

1社は全世界のガイドに向けて創業者兼現代表と話す場を設け、現状と来年度の見通しについて説明してくれました。わたしも日本向けの回に出席し、はじめて代表と直接言葉を交わしました。参加したのは、代表と米本社スタッフと日本のガイド10数名。この場にいるひとたちとは、この1年間の想いを共有できるのだ、つらかったよねって素直に話していいんだと思ったら、ミーティングを終えたあと、涙が出てしまった。

もう1社はもっと積極的で、先週から2ヶ月にわたる大掛かりなオンラインサミットを開催してくれてます。時差の関係で全然出席できていないものの(早寝早起き型なので1:30am開始とかはとても無理…)、アジア地域向けの回にはぜひ顔を出したいなと。来年度の見通しだったり、ツアーの販売状況、コロナ禍でどうツアーをオペレーションしていくかといった講義に加え、ガイド向けのワークショップも多数準備されていて、ものすごい熱量を感じます。

日本はワクチン接種も進まず感染状況も落ち着く兆しがまだみえない。でも、かならず収束する日はくるし、また自由に海外渡航ができるようになる。そのときには、わたしももちろん通訳案内士の仕事を再開するつもりです。同業者を見渡しても、同じように思っているひとたちはとても多いな、と感じています。再開後1本目のツアーは感無量で、お客さんの顔をみた瞬間に泣き出しちゃうんじゃないかと想像してます。その日が、とても待ち遠しい。

ただその一方で、コロナ禍以前のように、通訳案内士1本でやっていくつもりはありません。こんなに不安定な業界にのみ身を置いて働くのは、リスクが大きすぎる。また不測の事態が起きたときに仕事が全部一気に飛んでしまうような経験は、もうしたくない。不安定さは頭では理解していたけれど、今回のことでいやというほど痛感させられました。

ただ、正確にいうと、通訳案内士以外の仕事も平行してやっていきたい、という気持ちは以前からありました。コロナ禍でそう考えるようになったわけではなく、その考えが一層固まった、というのがより的確な表現になります。

わたしは体力がなくメンタルもよわいので、心身の負荷がとても高いツアーの仕事をキャパ以上にやってしまうと、一定以上のパフォーマンスを出せないことに気づいたから、というのがひとつの大きな理由です。ツアーの仕事が好きだから、1本1本のツアーに自分が満足できるレベルでパフォーマンスを発揮したいから、長くつづけていくために、一定量に仕事をおさえる必要があると考えていました。

もうひとつの理由は、天職と思えた通訳案内士の仕事についてもなお、一定時間をすぎたのち、他の仕事もしてみたいという気持ちが芽生えてきたからです。これはもうわたしの性分というか、常にいろいろな世界を覗いていたいという好奇心からです。
(余談ですが、先日「マルチポテンシャライト」という言葉に出会い、これだ!!!と確信して感激しました。マルチポテンシャライトという働き方(というか生き方)については、後日別途まとめてみたいな、と思います)

そんなわけで、コロナ禍の日々をサバイブするのに必死だった1年を過ごしたのち、今年に入ってからはライティングを中心に、他の仕事で収入を得ていく術を探して試行錯誤を続けています。

時代的にも副業やパラレルワークといった単語が浸透しつつあるし、会社員や専業フリーランス以外の働き方もどんどん可能性が増えていくんだろうなと予想しています。自分の能力や経験、スキルを多方面に活かせたら嬉しいし、もっといろいろな仕事をしていきたい。そのなかで、通訳案内士の仕事も細く長くずっとつづけていけたらいいな、と考えています。

と、そんなことを考えながら、この文章を書いています。

通訳案内士の仕事は、随所で心身のタフさが試される、結構しんどい仕事です笑。いろいろなひとと接するし、この仕事をしていなかったらみなくてもすんだだろう、ひとの一面に直面することもあります。

でも、日本旅行を楽しみに来てくれるお客さんたちと日本各地を一緒にまわって、楽しい時間を沢山共有できる、素晴らしい仕事でもあります。朝から晩までネイティブに囲まれるので、報酬をもらいながら英語のレッスンを受けているようなものだし、バックグラウンドが異なるひとたちと会話をするのは自分の視野を広げてくれるし、とにかく歩きまわるので強制的に運動量が確保されます笑。

このような状況下でも通訳案内士の仕事を目指してくれる方がいることはとても心強く嬉しく思います。そんな方々にこの仕事の魅力をもっと伝えていきたいなと思うし、同時によい面以外の経験も共有できたら、と思います。このブログには過去に書きまくった通訳案内士関連の記事が沢山あるので、よかったら覗いてみてくださいね。

長くなりましたので、今日はここらへんで。しばらく書いていませんでしたが、通訳案内士関係のこともまた書いていけたらと思います。知りたいこと、気になることなどありましたら、聞いてくださいね。

ではでは、今日もよい日をお過ごしください。

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