四季があるからこそ生きていける
こんにちは!秋田県北秋田市でマタギ文化をテーマとした宿屋をやっている織山(おりやま)と申します。
下の写真の通り、山に囲まれて、今現在もカエルの鳴き声がワンワン鳴り響いているところにおります。
さて、今日のお話は、最近だれに会ってもよく言われることについて。
「こんな何もないところに、よく住んでいられるね。」
「時代の流れに逆行しているから、都市部に住んだ方が良いよ。」
「好きで住んでいるなら文句を言うな。」
以前、テレビのコメンテーターさんも下記のようなことを言っていました。
「中長期的に考えると、大雪が降るような地帯にいつまで皆さん、住むのかどうかみたいなことをある種、突きつけられているのかなと思います。」
と。大雪が降るのが分かっているのに、そこに住み続けるなんて頭おかしいんじゃないの?ということですね。
私自身も、この田舎に住んでいただけでは、同じように思ったかもしれません。でも実際は違います。
私は四季があるからこそ生きていける。
そう心の底から思っています。
毎年毎年、白く重い雪が深々と降り積もって、ニッチモサッチモいかなくなる地域ですが、そんな厳しい冬があるからこそ、春の陽のあたたかさが身に染みますし、黄色い花が1つでも咲くと、胸の奥から嬉しさが込み上げてくるのです。これは東京生活では絶対に味わえなかったこと。コンビニスイーツで季節の変わり目を感じていた頃の自分には想像もできなかったことです。
感傷的な話だけではなく、実際に雪があるからこそ狩猟もスムーズにできます。雪の上についた動物の足跡は何でも教えてくれます。いつそこを歩いたのか、そしてその動物は疲れているのか、もうすぐ休もうとしているのか、単独か親子連れかなどなど。雪がない地域では一体どうやって狩猟をやっているのか、想像ができないくらい、マタギ文化の狩猟は雪と一体化しています。
また、山の上に雪として水を大量に保存しているおかげで、田んぼの水に困ることもほとんどありません。豪雪地帯であるおかげで、清らかな水が止めどなく豊富にあり、その恵みを受けて美味しい美味しいお米が作られています。
田舎に住んでいても、狩猟や農業に一切関わらない生活をしていると、雪が憎くて憎くて仕方がなくなってくるかもしれません。年に何組かは雪に耐えられずに出て行ってしまうので、雪のしんどさは半端ないことは確かです。私も雪のありがたさは身に染みているものの、1日に3回、朝昼晩の雪かきが続いた日には沖縄の海が脳裏にチラつきます。
今現在のように春になると、また冬支度が始まります。
薪は春のうちに切って、夏から秋にかけて乾かさないと、すぐ冬には使えません。木の水分量はとても多いので、乾かしていない薪はぐじゅぐじゅと湿っていて煙ばかりの火が付かない未熟燃料になってしまいます。
春に採った山菜もほとんどは塩漬けにしたり、これも1年かけて食べるために保存していきます。これから採れる根曲り竹という小さなタケノコも缶詰にして、ゆっくり時間をかけていただきます。
春になっても冬のことを考えて、その間の夏や秋を楽しみつつも、やはり季節の中心は冬にあります。考えてみれば仕方がありません。うちの裏の日陰のところには5月まで雪が残っています。11月に初雪が降ってから、5月まで雪が残っている地域。1年のうち半分が雪と共にある地域なのです。
厳しい厳しい冬があって、穏やかな春に歓び、一瞬の夏を全力で楽しみ、真っ赤な秋にはどんどん深く森に潜って食料を集めたり、収穫を喜び合ったり、今年の雪の量は多いか少ないかなどと話しながらソワソワしたり。
季節という自然に翻弄されながら、その大きなゆりかごの中で転がっているような生活。自分の足場はいつまでたってもグラグラです。
不安定こそが自然の姿、だと割り切ってしまえば楽なのかもしれません。
短い人の一生なので、あと何回四季を体験できるか。
どうせだったら、四季がはっきりしている場所に住んでみるのも面白いですよ、というお話でした。
コンパクトシティ化をしていくと、このような山奥の地域から切り捨てられていくのかもしれませんが、私からすれば日本のどこに住んでも大きな災害からは逃れられないので、東京のようなコンクリートジャングルに住んでいる方が高リスクだと思うのです。首都圏直下地震や南海トラフ巨大地震などの災害が起こる確率が高い中ですので、もしテレビでそのことが取り上げられてコメンテーターが話をするとしたら、「中長期的に考えると、大地震が起きるような地帯にいつまで皆さん、住むのかどうかみたいなことをある種、突きつけられているのかなと思います。」と言われてしまうかもしれませんね。都市対田舎の構図を作りたいわけではないのですが、早めにリスクの高いところからは離れるのは第一ですし、自分にとって、どれが本当のリスクで、これだけは譲れない部分だというところをはっきりと決めておきたいですね。
私の場合は、どんなに豪雪の被害があっても、雪と共にある生活は切り離せないものになってしまっているので、喜んで雪かきをしていきたいと思っています。
あなたがそこに住んでいる理由。譲れない理由はあるでしょうか?
それがはっきりとしている人は、人生がきっと楽しいですよね。
これからも一緒に楽しんでいきましょう~!