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これからは地域活性化から地域最適化へ

ハマるピースをさがして。

秋田の高校生・大学生がなぜ将来を不安視するのか?

日本の地方の未来について、多くの人が悲観的な見方をしています。人口減少や高齢化の進行という現実を前に、「もう手遅れだ」と感じる人もいるかもしれません。

私自身も、今年は秋田在住の高校生や大学生と話す機会が数回あったのですが、毎回必ず質問されることは「秋田の未来」について。私から見て秋田の将来はどう感ずるか?という質問でした。過疎化ナンバーワンの秋田県にいて、本当にこのままで大丈夫だろうかという不安は若年層ほど強く持っているのかもしれません。(ほんと大人の責任は重い)

しかし、毎回私が言うことはひとつで「これからの秋田は明るいよ」ということ。この状況を新しいチャンスと捉え、より良い未来を築くための視点を変えるべき時期に来ているのではないか。地方は、本当に衰退する運命にあるのか。それとも、全く新しい形で再生するポテンシャルを秘めているのか。そんなことを話しています。
どうも周りの大人から悲観的な意見ばかり聞くみたいですね…。これからの地方の進むべき道について、一例として下記の話をすると「ホッとした」と口に出す子もいました。

本記事では、その時に話した内容をギュッとまとめて、地方の明るい未来について、「地域活性化」という従来の枠組みを超えた「地域最適化」という新たな概念について説明してみたいと思っています。

従来の「地域活性化」の限界

これまでの地方創生策の多くは「地域活性化」という言葉のもと、人口増加や経済成長を目指してきました。自治体は企業誘致や観光地開発、若者の定住促進に力を入れてきました。例えば、観光名所の整備やイベント開催による一時的な賑わい、地方移住を促す補助金制度などがその典型例です。

確かに、こうした取り組みは短期的な成果を生むことがあります。しかし、長期的に見ると人口減少という不可避の現実を根本的に覆すことは難しいのが現状です。また、各地で同じような取り組みが競合する中で、差別化が難しくなり、かえってコストだけがかさむケースも少なくありません。このようなアプローチには明確な限界が存在します。

「地域最適化」という新しい視点

そこで提案したいのが、「地域最適化」という考え方です。これは、人口減少や高齢化を単なる問題として捉えるのではなく、その状況に適応し、むしろそれを活かして地域の仕組みを最適化することを目指すものです。具体的には、以下のような方向性を含みます。

地域最適化の具体例

  1. 公共施設の再編成
     過疎化が進む中で、すべての施設を維持するのは非現実的です。学校や病院、図書館などの施設を統合し、交通網の整備と組み合わせることで、少ないリソースで多くの住民が恩恵を受けられる仕組みを作ることができます。

  2. 行政サービスのデジタル化
     デジタル技術を活用すれば、少ない人員で効率的に行政サービスを提供することが可能です。オンライン手続きの導入やAIによる相談窓口など、住民がどこにいてもアクセス可能なサービスが求められます。

  3. コンパクトシティ化
     生活圏を集約することで、インフラの維持コストを削減し、利便性を向上させます。例えば、高齢者が徒歩圏内で必要なサービスを利用できる街づくりを進めることで、移動の負担を軽減できます。

  4. 広域連携
     自治体間で機能を分担し、補完し合うことで、無駄を省き効率的な運営が可能になります。一つの自治体がすべてを担うのではなく、地域全体で役割分担を行う仕組みが必要です。隣りの自治体と連携していきましょう。

人口ボーナス期の制度からの脱却

日本の多くの制度は、人口増加が前提の「人口ボーナス期」に設計されたものです。右肩上がりのグラフをもとにつくられた過去の遺物、オーパーツ。その維持に莫大な予算を注ぎ込むことはやめましょう。年金制度や社会保障、地方財政の仕組みは、現在の人口減少や高齢化の状況に適合していません。

しかし悲観することはゼロです。これは「制度の設計変更」が求められているだけであり、日本社会そのものの存続が危ぶまれるわけではありません。

制度改革の方向性

年金制度の見直し

積立方式への段階的移行を進めることで、世代間の負担を公平化し、制度を持続可能にすることができます。

医療・介護システムの効率化

ICT(情報通信技術)の導入により、人手不足を補いながら高品質なケアを提供する仕組みを構築します。

教育システムの再構築

オンライン教育を活用し、小規模な学校の統廃合を進めつつ、地方の子供たちが質の高い教育を受けられる環境を作ることが重要です。

行政サービスのスリム化

本当に必要なサービスを選択し、予算とリソースを集中させる戦略が求められます。

地方の新しい可能性

人口減少時代を逆手に取り、地方が新たな可能性を切り拓く余地もあります。例えば、過密都市と異なり、地方は自然との調和を図りやすい環境にあります。これを活かす取り組みをいくつか挙げてみます。

環境負荷の低減

 人口密度が下がることで、自然環境の回復や保全が進みます。これを観光資源や教育プログラムに活かすことができます。

質の高い生活

 地方の広々とした住環境は、都会にはない「豊かさ」を提供します。これを上手くプロモーションに繋げれば、移住者や観光客の増加が見込めます。

テレワークの普及

 通信インフラを整備することで、都会にいながら地方で働く「デュアルライフ」や完全移住の可能性が広がります。

スマート農業の推進

 AIやIoTを活用したスマート農業は、生産性を向上させるだけでなく、若者が魅力を感じる新しい産業として地方に定着する可能性を秘めています。

持続可能な未来に向けて

「地域最適化」は、縮小や後退ではなく、効率的で持続可能な地域社会を再構築するアプローチです。人口減少は確かに避けられない課題ですが、それを受け入れた上で、新しい形の豊かさを創出することができます。

重要なのは、住民、行政、企業が一体となって「何を残すべきか」「どのように進むべきか」を議論し、それを実現する行動を起こすことです。「できない理由」を挙げるよりも、「どうすれば可能になるか」を考えることが求められています。
人口が減っていくことに合わせた社会デザインについて書いた本も多くなってきましたね。時代の変化の波は、もうすぐそこまで来ています。

結論

日本の地方には、依然として大きな可能性が眠っています。これからの地方創生の鍵は、「地域活性化」から「地域最適化」への転換です。

この視点の変化こそが、持続可能な未来を築くための道筋となるでしょう。地方に欠けたピースは、実はすぐ足元に落ちていたりするのではないでしょうか?
背伸びをして上ばかりを探すのではなく、草の根や絨毯の下をひっくり返して見ることで、その隙間にある光ったピースが見つかるかもしれませんよ。

まずは今ある制度が、人口が増える前提でつくられた制度かどうか、毎回確かめてみましょう。そういう制度をひとつひとつ変えていけば、まだまだ明るい未来はつくっていくことができると思います。

とりあえずはここまで。
もし、読んでくださった方がいらっしゃれば、ありがとうございました!!

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織山英行@マタギの足跡を辿る命の山旅
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