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【レビュー】新「クアデルノ」はどう変わったか

はじめに

7月8日に「QUADERNO Gen.2」が富士通クライアントコンピューティングから発売されました。2018年12月に発売された旧モデルのバージョンアップ版ですが、細かいところがかなりアップグレードされており、より使い勝手が良くなっています。

これについて、Twitterに投稿した内容を修正して再掲し、さらに配布したテンプレートを載せておきます。

電子ノート使用履歴(シャープ、キングジム)

まず新クアデルノの感想を述べる前に、私の電子ノート使用履歴を挙げておきます。シャープの電子ノートを4世代分くらい、キングジムの「マメモ」を2つ、一般販売された「カクミル」、ソニーのDPT-RP1(A4版)と富士通のA5版クアデルノ(旧世代機)を買いました。

シャープの電子ノートはコンパクトで悪くないのですが、以前はメモリ液晶を使用しており、解像度が低い上に画面が暗いのが不満でした。それでも、毎日のタスクをメモするには悪くない機器でしたね。

マメモは第1世代(TM1)を一番よく使いました。電話しながらメモを取るのに便利でした。今でもデスクに置いてありますが、電話がかかってくることが減ったので、あまり使わなくなりました。マメモの第2世代は便利かなと思って買ってみましたが、手に持ってメモする用途だと、もう少し解像度が高くないと常用はしづらいです。

「カクミル」はクラウドファンディングでまず販売されましたが、私は一般販売されてから入手しています。電子ペーパー搭載のメモ帳ということでかなり期待しましたが、起動までの2秒が長く感じてしまい(起動までの時間は1秒以内が望ましいようです)、せっかく買ったのにあまり使っていません…。ちなみに、マメモも含め、もう販売を終了しているようです。


電子ノート使用履歴(ソニー、富士通)

出版業界で編集に関わったことがある人ならいうまでもないことですが、校正・編集の段階では大量の紙を消費します。オペレーターがMacのInDesignで組版したデータを紙に印刷して(これをゲラと言います)、編集者がそれを読んで赤字を入れていきます。

「パソコンで赤字を入れれば良いじゃないか」と思う人も多そうですが、いろいろな問題があって、完全にデジタルだけ、紙なしのワークフローが実現している現場はそれほど多くありません。

その話はまたニーズがあれば書くことにして、ソニーの「DPT-RP1」を購入したのは2018年5月のことでした。その後、ゲラのPDFをDPT-RP1にコピーして赤字を入れ、PDFのまま、オペレーターに修正してもらうというフローを作りました。

2018年に出したムックの作業では、ページが真っ赤になるくらい赤字を入れていたら、決してバッテリー容量の少なくないDPT-RP1が半日で(バッテリー切れのため)音を上げたくらいでした。

もちろん、それ以前にiPadにApple Pencilで赤字を入れる方法を考えないわけではなかったのですが、ペンが液晶に当たる感覚に馴染めず、今でもできるだけ避けています。

富士通の旧クアデルノ(A5)は、2020年1月に毎日のタスク管理と打ち合わせのメモ書きのために入手しました。ただ、その後、コロナが流行って取引先に行っての打ち合わせがなくなってしまい、使用機会が減ってしまいました…。


新クアデルノの旧世代機との違い

旧世代機との違いですが、まずワコムの電磁誘導方式(EMR)に変わったことが挙げられます。旧世代機は「静電容量方式」で、特にどこの技術かは明らかになっていませんでした。個人的にはワコムの「アクティブ静電結合方式(AES)」ではと思うのですが、公表されていません。

電磁誘導方式に変わって何が良かったかというと、まずペン先の精度が上がりました。旧世代機では斜めの線を引くと、ガタガタになってしまっていました。特に画面の端で顕著で、物差しを使って直線を引いても真っ直ぐ引けません。

さらに、縦向きのテンプレートを選択してメモを書き始めると、横向きにして書いたときに文字がかなり乱れます。ペン先と、表示されている線の間に隙間ができてしまうんですよね。おまけに、まっすぐ線が引けない。かなり下手くそな字になってしまいます。

逆に言えば、製品の向きとテンプレートのPDFの向きを合わせれば、向きが合っていないときより、ずっとうまく書けます。


Gen.2(新製品)の改良点

新製品では、これらの問題が全部解決されました。しかも、CPUが高速になったおかげで、ページめくりも拡大/縮小もサクサク動きます。内蔵メモリが16GBから32GBに、使用可能領域も約11GBから約22GBに倍増されました。

まず、ペンのボタンはペン軸の握りとペンのお尻に1つずつ配置されていますが、いずれも6種類から機能を選べます。ペン(赤)、消しゴム、ハイライト、範囲選択、拡大、無効、です。最後の無効は機能ではないので、5種類と言うべきかもしれません。なお、あとで出てくるラミーのコラボペンでは、ペンのお尻にボタンが搭載されていないので、注意が必要です。

純正カバーが軽くなりました。旧世代機は個人用途をメインに考えていたためか、かなり重厚なカバーだったため、結構重かったのです(A5用で225g)。ソニーの同型機種用の純正カバーの方が薄くて軽かったのですが、今回はA4用で195g、A5用で125gになりました。

細かいことですが、画面がやや柔らかくなりました。横から見るとわかるのですが、旧世代機はまっ平で堅かったのですが、Gen.2は若干凹んでおり、柔らかく感じます。ペン先の反映方式が変わったからでしょう。書き味にはあまり関係ないと思います。


Gen.2(新製品)の注意点

旧世代機を持っている人には当然のことでも、初めて電子メモ端末を手に取ると、「あれっ」と思うこともいろいろあります。

オンラインストレージと直接接続する機能はありません。キングジムのフリーノがDropboxとWi-Fi経由で直接接続できますが、クアデルノは必ずパソコンかスマホを経由します。頻繁に更新するデータを単体運用時にもバックアップしたいなら、別の方法でやる必要があります。

ペン先は、旧世代機ではPOM(ポリアセタール、ポリオキシメチレン)とフェルトの2種類から選択できました。POMはボールペン、フェルトは鉛筆に似た書き味を出します。Gen.2は現時点ではフェルトのみの提供です。個人的には、POMよりフェルトが好みですが、選択できても良かったかもしれません(ただし、純正以外のペン向けの替え芯にはPOMも用意されています)。

持っている人にはいうまでもない話ですが、KindleだのKoboだのといった電子書籍は、クアデルノでは読めません。飽くまでもPDFのみ対応です。JPEG画像もNGで、PDFに変換してから読み込む必要があります。このあたりは、Android搭載の電子ペーパーメモ端末を使っている人には不満かもしれません。

また、かなり重要なポイントですが、バッテリーの持ちがやや悪くなっています。旧世代機も持っているユーザーの間では当初から話題になっていたのですが、TwitterでQUADERNO公式アカウントからコメントがありました。

https://twitter.com/QUADERNO_fccl/status/1416894387208953856

また、製品仕様を見たところ、確かに持続時間が短くなっています。まず旧世代機。

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次に、Gen.2。

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ざっくり言って、2割以上使える時間が短くなっていると考えるべきでしょう。ただし、充電にかかる時間は短くなっています。旧世代機で約5.5時間なのに対して、新世代機は約2.5時間です。なんと、半分以下!これは、USB type Cを採用したことと関係あるかもしれません。


Gen.2(新製品)のコラボペン

新クアデルノでは、ワコムのEMR方式を採用していますが、EMR方式対応のペンなら何でも使えるわけではありません。ワコムのペンのEMR方式には、4種類あるとのこと。そのうち、新クアデルノで使えるのはWacom One Penと互換性があるものだけです。

具体的には、以下のペンが使える、または使えると推測されます。
(リストはワコムのページによる)

Hi-uni DIGITAL for Wacom
STAEDTLER, Noris digital
STAEDTLER Noris digital jumbo
LAMY, AL-star black EMR
Mitsubishi Pencil 9800 Digitizer pen for raytrektab, 9800 Pencil
Raytrektab, DG-D08IWP
Samsung, Galaxy Note and Tab S Pen

Hi-uni DIGITAL for Wacomや後述のLAMYのAL-star black EMR、Galaxy Note and Tab S Pen、STAEDTLER Noris digital jumboは、すでに使えることがわかっています。他もおそらく大丈夫でしょう。

また、付属のペン以外にラミーのコラボペンが用意されました。このコラボペンは同社の人気万年筆のSafariをベースにした新規開発の製品かと思っていたのですが、実は一般に広く販売されているようです。

製品名は「AL-star black EMR」で、税込6600円でメーカーが直接販売しています(アマゾン、ヨドバシにもあります)。もともとは万年筆およびボールペンのモデルのペン先と握りの一部を変更して、EMR方式対応のスタイラスペンにしたのではないかと想像しています。ちなみに、AL-starはSafariのボディをアルミ製にしたものとのこと(同社Webサイトによる)。握りの形状もちょっと違いますけどね。

また、AL-starの万年筆の軸は本体にインク残量がわかるように覗き窓が開いていますが、コラボペンには当然ありません。

AL-starとコラボペンで一点異なることがあります。AL-starはペン先の材質がPOMのみで、コラボペンはフェルトのみです。AL-starには交換用のペン先が用意されていないので、ワコムの「Pro Pen 2」用のペン先を別途購入する必要があります。

(注意)
初出で「Pro Pen 2」用のペン先(替え芯)を利用できるとしていましたが、誤りでした。少なくとも私の手元の環境では正常に動作しません。Wacom One Pen用の替え芯を利用すべきです。

ハイライトできるノートのテンプレート配布

(追記 2021/11/1)
2021年10月のアップデートにより、ノートでもマーカーが使えるようになりました。そのため、以下に掲載したテンプレートはもう不要です。
(追記ここまで)

旧クアデルノでは、ノートとドキュメントがはっきりと分類されていました。ノートは真っ白な紙にイチから手書きで文字を書いていく文書で、ドキュメントはWord文書のPDFのように、文字データなどが入っているものです。例えば、ファイル名検索時にノートを探すのか、ドキュメントを探すのかをまず選択する必要がありました。

新クアデルノでは、そのあたりが曖昧になっています。というか、分別しなくても良くなったと考えるべきでしょう。

ノートのユーザーにとって、ちょっとだけ気になるのが、ハイライトの存在です。ハイライトは文字データに対してPDFのマーカー機能を利用するものです。なので、手書き文字にはハイライトがかけられません。

それを解決する?のが、以下のテンプレートです。縦向きの方眼紙ですが、方眼紙の罫線を消さないように見えない文字(実は□という文字です)を配置してあります。そのため、ノートなのにハイライトが可能なのです。

もし使用したい方がいらっしゃれば、ダウンロードしてテンプレートとして登録してお使いください。なお、作成方法を知りたい方は、コメントでもいただければ説明します。

おわりに

2021年2月に、ソニーはカラー電子ペーパー(Kaleido 2.5)を搭載したメモ端末を展示会に出品済みです。

Sony Releases a COLOR DPT Digital Paper with Glowlight - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=4lZ6sBEeIVw

これが近々発売されると思うので、もし旧クアデルノを買ってしまって「しまった!」と思っている方々はもう少し待つといいかも。ソニーか、あるいはソニーのOEMを受けた他社から、カラー電子ペーパー搭載の電子メモが発売されるはずです。ただ、同じKaleido 2.5を搭載した「BOOX Nova3 Color」はカラー部分の解像度が低いという問題を抱えています。いきなり液晶並みの解像度の電子ペーパーが出てくるとは思わない方が良さそうです。

修正履歴

AL-star Black EMRに関する記述を加筆(2021/7/20)
バッテリー持続時間に関する記述を加筆(2021/7/25)
ペンの替え芯に関する記述を大幅修正(2021/11/1)
Noris Digital Jumbo利用可能の記述を追加(2021/11/3)

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