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敵わないと知る ヴィンテージプリント考 2

2回目の展示は2013年でした。プリント技術も向上し、道具類もこだわって、自分的には最高のクオリティーへ辿り着いた時期。
自信満々にプリントしたのですが。。。(しつこいようですが実際今見ても良いです!!それだけに悔しい、という話になります)

前回の続きです。


写真家・渡部さとるさんの証言

旧知の写真家で、現在では写真系youtuberとしても名をとどかせている渡部さとるさんが、その時の様子をブログに書いてくださっています。
少し引用させていただきます。

展示してあるのは2005年にローライ撮ったバリ島の写真。何枚かは雑誌や展示で見覚えがある。大四つ切りがメインだが、小全紙が数点あり、それがよかった。

今回の展示は撮影直後に焼かれたものだそうだ。同じ印画紙はもうないが、それに近い印画紙で新しく焼いたものを見せてもらったが、比べると以前焼いたもののほうがよく見えてしまう。

新しく焼いたもののほうがトーンが整っているし、それだけ見たらとても美しいプリントだということは間違いない。しかし両方を見せると古いプリントがいいと言う人が圧倒的に多いそうなのだ。

これは僕も経験があるが、最初にパッと焼いたものがどういうわけか一番良い。白は飛び、黒は潰れていようが、そんなことはさして重要じゃないと思わせるものが確かに存在する。

出展 渡部さとる「写真生活」2013.8.9記事

体験談として「そういうもんなんだよ」と皆で笑いながら会話をした思い出がございます。下にリンクを貼ります。ご高覧ください!!

平島さんの証言

平島さんは昔私が毎日せっせと書いていたブログのコメント欄で知り合い、実際にお会いして親交を深めた方です。自分のことはあまり記録しない私にとって、平島さんが書き記していただいたブログはとても貴重なアーカイブとなっております。ほんと感謝、頭が下がります。
 
少し引用させていただき、またリンクを貼ります。

森谷さんは冷たい麦茶をグラスについでくれた後、奥の扉の中から印画紙の箱を持ってきた。

その中には「写真」が沢山入っていた。
その「写真」は今回個展会場に展示してある作品と同じ写真である。
どういうことかというと、展示してある写真はビンテージプリントで箱の中身はモダンプリント。

作家が撮影後日を置かずにプリントした写真をビンテージプリントと呼ぶ。
撮影後年数がたってから改めてプリントした写真をモダンプリントと呼ぶ。

森谷さん自身は今回の展示は全てモダンプリントにしたかったそうだ。
それは「昔より上手になっているから」という明快な理由による。
しかし、ギャラリースタッフの意向も入れて今回は全点ビンテージプリントの展示となった。

森谷さんは箱からモダンプリントを出し、同じ作品の展示の横に並べて見せてくれた。そして、どのあたりがどのように違うのかを分かりやすく説明してくれた。

使っている印画紙の違いも大きいが、中には焼き方が随分と変わっている写真もあった。
森谷さんは「解釈が変わった」と表現した。クラッシック音楽の演奏などでも使われる表現だ。

私は初めてそういう経験をしたのだが、両者の違いが思いの外大きいのに驚いた。

私はビンテージプリントの方が断然良いと思った。



確かに森谷さん自身が言うようにモダンプリントの方が綺麗なプリントだと思う。
しかし、それでなくても美しい森谷さんのプリントがモダンだと美しすぎると思えてしまうのだ。
ビンテージに比べるとモダンは綺麗すぎてインクジェットプリントのように見えた。
森谷さんに感想を伝えると、お客さんの好き嫌いははっきり二つに分かれていると教えてくれた。

私自身はモノクロ写真も銀塩プリントもやっていないが、その世界に強い関心はある。
それでモノクロプリントについて森谷さんと1時間以上話しに花を咲かせていた。

ひとりの読者との対話 2020.10.11

ブログでは当時の展示の様子などが写真で見ることができます。ぜひ、以下のリンクより、こちらもご覧いただけたら幸いです。

諦めが悪く応戦している私の様子が面白い

面白いのは、やっぱり新しくプリントした方が良いと言い張っている私。だってやはり進化しているから。当時も往生際が悪く悔しがっています。
平島さんのレポートを再度続けます

私が「ビンテージプリントの方が断然いいと思う」と感想を述べると、
渡部さんは「当たり前。ビンテージを超えるプリントは焼けないものだ」と断言。
森谷さんが「そうかもしれないけれど今の方が絶対に上手く焼けるようになっている」と応じる。渡部さんが「それはそう。でもプリントの上手い下手と写真としてのいい悪いは別」と返す。

なぜビンテージの方がいいのか。その理由は何か? 話は一気に深いところに突き進む。

で、結局は、認めました。パワーが違うんだと。なんだ変わらんがパワーが違う。もう仕方がない事実として受け入れることとしました。
それ以来、私は後輩たちやWSの受講生たちに言い続けています。

「この先、どれほど上手になっても、今この時に撮影したもの・プリントしたものを超えることはないかもしれません。今、この時。貴重な時間を過ごしていると思って欲しいです。強いエネルギーを大事に!」


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