敵わないと知る 写真のヴィンテージプリント考 1
ギャラリーで美術品として写真作品を販売する場合、最も価値が高いと認識されているものは「ヴィンテージプリント」です。
定義としては、撮影されてからまもなく撮影者本人かその指示を受けて製作された写真プリントを指します。熱が冷めないうちに制作されたから?爆発的なパッションが反映されている?写真家としての私からすると、疑問符がつきますが、どうやらある意味で正しいと思うようになりました。
今回は、そのヴィンテージプリントにまつわる体験をお話いたしましょう。
「バリの祈り」
私の作品シリーズに「バリの祈り」というものがあります。これまで何度か写真展を開催し、写真集や拙書「銘機浪漫」にも作品を多く掲載しております。展示では多くの方々にプリントをご購入いただきました。
実に思い出の多い作品シリーズになります。
私のHPに写真と文章を掲載しておりますのでご参照いただけましたら幸いです。
最初の展示機会は撮影後まもなく
こちら、撮影してすぐに一通りプリントをしており、目黒のギャラリーコスモスで最初の展示が開催されました。自分自身も脂が乗った時期であり、さらにまだ銀量の豊富な印画紙も存在しておりました。南国特有の湿度、どこかに誘われる旅の不思議な感覚、暗室ではそれらを意識してプリントしております。
小さな会場ながら、大成功に終わりました。
2回目の展示はモダンプリントを希望したけれど。。。
プリントした本人はその時々の精一杯で取り組んでおりますので、最高のものと言えますが、人間がそれほどできていないもので、技術的な上達と時を経て解釈が深くなった部分もあり新たに制作したいものです。展示もそうしたいですし、販売でもモダンプリントをお勧めしたくなります。
が、本人的にどれだけ未熟に思えても、その後どれほど成長しようが解釈が深くなろうが、どうやらヴィンテージの持つパワーには敵わないようです。
(もちろんモダンプリントの良さもあります。特に解釈が深くなった点が色濃く反映する点は、お勧めしたいと作家的には思っています。)
敵わない。
次回は、ブログに記録を残してくださった方の記事をご紹介しながら、詳しくお話を進めてまいります。