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プラチナプリント〜作品シリーズ「み熊野の」その4〜

プラチナプリント制作の話、続きです。


デジタルネガの福音

1800年代後半の古い技法とはいえ、近年ではさまざまな最新ノウハウが導入されています。
その一つが、デジタルネガ制作。プラチナ感光材はとても感度が低く、また紫外線領域の光にしか反応できないため、紙に直接大きなネガを置いて露光する「密着」(コンタクトプリントやべた焼きとも言います)が必須です。
フィルム関係の感材がかなり減っている現状、同時にデジタル系の進化によって、データからOHP用のインクジェット用紙へ出力する「デジタルネガ」が福音となりました。このデジネガ制作は、誰でも簡単にうまくいくようなものではなくて、かなり試行錯誤の上、自身でコントラストカーブを作り上げる必要がございます。


トーンカーブ作成は地道に何度もテストを重ねる

私の場合は、上の写真のようにグレースケールを実際にプリントしてみて、トーンカーブを追い込んでまいりました。何度も繰り返すドブ板的地道な作業ですが、実はこれにも狙いがあって、このトーンカーブを制作する過程で実際のプリント作業の諸条件を決めていくわけです。例えば、薬剤を塗布する際の部屋の湿度(影響大なのです)、薬品ごとの液量バランス、露光時間などなど。
まずはドライに数値から追い込み、そのあとでテーマ性や私個人の表現に合わせてカーブを微調整。この辺りは長年暗室で作品プリントを手焼きしてきた経験値がいきてまいります。正確な数値をどう崩すのか、大袈裟に申せばここが私のアーティストとしての大きな特長になる部分と考えます。

バキュームイーゼルにより真空状態を作る

紙にプラチナ薬剤を塗布し乾燥させたら、次はデジタルネガと紙を密着させて露光をする。よりシャープな写真にすべく、密着露光用の道具にも一工夫いたします。
ガラスとゴムを利用しポンプを使って空気を抜く、真空状態を作り出すことで密着度合いを極限まで向上させます。バキュームイーゼルです。
私は、厚く漉いていただいた和紙を利用しましたので、頑丈なシステムを構築しました。簡易版でしたら布団や衣類の圧縮袋等で可能かもしれません。
(写真の右手にある木のものは、後ろから強力な板ばねで固定するビンテージのコンタクトプリンター、これもまた結構良いです)
 
お読みいただきありがとうございます。
次回へと続きます

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