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グラス君の教え
私がまだ20歳代だった頃の話です。
特別支援学級に通う子供達がこしらえたグラスを撮影しようと悪戦苦闘、その中で気がついたこと、たどり着いたもの、それが今も私の写真の根底にあるなぁと。
当時のブログ記事が出てまりましたので、こちらに記載いたします。
![](https://assets.st-note.com/img/1738143396-1TEP7Ue8SwihOkzXyHRIugVs.jpg)
今日の写真は、20歳代の頃の作品。
特別支援学級に通う男の子がこしらえたグラス。
何とも言えない愛くるしい形をしている。
気泡もたくさんはいっていって、
一般的なところで言う美しさとは無縁だ。
このグラスに立ち向かうのは容易ではなかった。
スタジオできれいにライティングしたら
所々で厚みも違うし気泡も不揃いだし、
欠点ばかりが目立つ写真となった。
私が感じた愛くるしさ、美しさは出なかった。
で、いつも鞄にグラスを入れて、
あちこちにおいて見続けることとした。
あんまり一緒に出かけるので、友達みたいな気分に。
いつしか私は、グラス君と安易な名を付け
彼にはよりハードなリクエストをするようになっていった。
海まででかけて波にさらわれそうになったり
橋桁から落としされそうになったり
グラス君はさぞ大変だったと思う。
ある時ある場所で。
私は、ついに見つけた。
あー、いいなぁ。
小さな仏様みたいだ。
見た瞬間に、そう感じた。
きれいだなぁ。
愛くるしいと思った気持ちの奥に
この神々しさがあったのか。
男の子の天使のごとき心のありようが
グラス君にちゃんと受け継がれたんだ。
凛として立つ姿が、とても美しく見えた。
私は大判カメラをセットして、見て感じたそのままを撮った。
私の目に小さな仏様の如く映ったこのグラス。
人物を撮影するときも、風景も、若き自分がこのグラスと向き合った体験が、大きく影響しているように感じています。
またこの写真は、その後銀塩プリントをはじめ、鶏卵紙、サイアノタイプ、プラチナプリントとさまざまな手法で焼き付けています。
基本にして永遠。私にとってはそんな存在なのだと思っています。
3.11震災の後のチャリティーに本作品のオリジナルプリントを提供しました。
祈りを込めて。精一杯プリントをした記憶が今蘇っています。
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![森谷修_photographer](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/154267115/profile_bd87d11ca61b7e9a7214e55ab321cc4e.jpg?width=600&crop=1:1,smart)